PandoraPartyProject

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歴史修復

 ――遂行者とは冠位傲慢配下の者達の事だ。
 しかし彼らは必ずしも『魔種』ばかり、と言う訳ではない。
 彼らの内にはそもそも『人ではない者』もいるのだ。

「――どこもかしこも過ちの神の使いに阻まれるか」

 その内の一人がマスティマだ。
 彼はかつて聖都第三禁触保管室に保管されていた筈の聖遺物『聖槍』を持つ遂行者――ではなく。 
 奴の正体は『聖槍』そのもの。
 滅びのアークと結びつき、意志を宿した特級の神秘たる塊。
 正しき名を、マスティマ=ロンギヌスとでも称そうか。
 そういう存在は彼のみに非ず。『他』にも幾人か在籍しているものだ……例えば聖女カロル……いや聖女ルルを名乗る遂行者もその一人。彼女もまた『聖遺物そのもの』だ。滅びの因子を宿して生じえたのがルルという人格存在――彼女が実にお喋りでとんきちな存在なのは、滅びのアークが宿っているからかもしれない。とか思ったが違うなアレは素だな。
 ……ともあれ斯様な存在であるマスティマは苛立っていた。
 なにせ遂行者の暗躍は阻まれ続けているのだから。
 特級の神秘として、自らの行いは全て正しいと信じているに関わらず道理が付いてこぬ。
 幻想、練達、海洋、豊穣、鉄帝、傭兵、深緑。
 それらの内辛うじて帳の展開を成功しえたのは海洋ぐらいか?
 あぁ過ちの神の使い――イレギュラーズ共め。
 刹那。マスティマは己が仮面をさすろうか。
 其処には亀裂が走っていた。ある騎士を滅さんと暗躍し、しかし阻まれた証。
 手をかざせば直後には治癒される、が。
 胸の奥底で燻る苛立ちは消えぬ。
 正しき世界を創生せんとする我らを理解せぬ、愚かなる者達の無知なる行為――あぁ!
「やはり『教えて』やらねばならんのか?」
「――あらマスティマ、今日も今日とて苛ついてるわね? 牛乳飲んだら?」
「よく回るご自慢の舌は相変わらずだな。引き千切ってやろうか」
 同時。言の葉を紡いできたのは、噂をすればなんとやら。聖女を名乗るルルか。
 軽口叩き合っているが、マスティマの言っていた『教える』とは単純明快な話。
 使徒の証たる聖痕を刻むという事。

 つまりは――遂行者達が行っている歴史修復へ誘うという事だ。

 聖痕を得るに相応しい存在とされたシェアキム・ロッド・フォン・フェネスト六世のと同様に……
 イレギュラーズ共に刻んでやるべきか?
 さすれば我らの崇高なる意思を理解する者も出てくるだろう――と。
 無論それは今すぐ、と言う事ではないが……
「他の遂行者含め、幾人か目を付けている連中がいるだろう。私もだがな」
「みーんな色々探してる所? ええ、まぁあの子もあの子も欲しい。
 気になってる子はきっと沢山いるでしょうね。でも時間は限られてる。
 ――ふふ、まぁその内のお楽しみと言った所かしらね!」
「そうだな。……それと、ツロはどうしてる?」
「さぁ? どうしたの、気になるの――恋の始まり?」
「やはりその舌、千切るべきか」
 同時、マスティマの思考に過ったのは遂行者の中でも特殊な地位にある者……
 預言者ツロ。冠位傲慢ルストとコンタクトを取れる数少なき存在。
 ……天義と言う水面に小石を投げて波紋を作る奴も、『そろそろ』姿を現わしてもおかしくないだろうと思考を巡らせていたのだ。
 赤騎士、青騎士、白騎士、黒騎士……遂行者の放つ戦力が天義や海洋にて蠢く中。
 連中の行動の狭間にて、純白なる衣への誘いもまた――画策されていた。

 ※天義、海洋方面で遂行者の行動が続いています――天義は対応に動いている様です。

これまでのシビュラの託宣(天義編)プーレルジール(境界編)

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