PandoraPartyProject
『魔法使い』と異なる世界
――元の世界に戻れるならどうする?
それはR.O.Oで入手したデータを元に境界図書館での事象を研究していた佐伯操の言だった。
帰るという選択を行なう者も居れば、この混沌に残りたいと口にするものだっているだろう。
その選択は人それぞれ、自由であるべきだ。操の傍には期間を心待ちにするものも居れば、世界がどの様な絡繰りで動いているのかを解き明かしたいと言うだけの者だっている。
「混沌と行き来が自在になる可能性だってあるだろう。まあ、どうなるかはその時次第だが」
夢物語を語るようにそう言った。このプーレルジールが『特異』なだけなのだろう。
世界を渡るという事は出来やしない。幾つものライブノベルを見てきた回言 世界(p3p007315)は一冊の書物を読み解くように無数の異世界を眺めて遣ってきた。
「戻れるとは限れないし、その情報が得れるのかも分からないか」
「ああ。『難しい理由』くらいは得ておきたいが。
……まあ、単純な異世界旅行として楽しむ気概は持ち合わせておきたいものだな。
最も、此処で彼方を放置して『異世界からの進軍が可能だ』と言われたら頭を抱えたくなる。芽は摘むべきだ」
操は椅子に深く腰掛けながらそう言った。世界は傍らで俯いていたクレカを一瞥し眉を顰める。
「何か困りごとでも?」
「ううん。異世界から、来るのかなって思うと放っても置けないんだね」
「ああ。『IF(もしかしたら)』と言ってR.O.O等でも度々観測してきたとしても、それは所詮は只のデータだった。
だが、『IF(ありえたかもしれないもの)』は異世界に別物で存在して居る。それは、同一種ではなく別個のもので――」
「うん。別物だから、きっと、私達の知っている者じゃなくなってる」
「だろうな。それでそれ以上に何か心配が?」
「……ううん、ただ、ちょっと」
ちょっとだけ――『生身のまま』で世界を跨ぐ事が恐ろしく感じられただけだった。
そんな操と世界との会話を思い出してからクレカは小さく息を吐いた。
「恐ろしいと言って居たが綺麗なところだな」
「……うん、でも『この世界は滅びに面してる』らしい、どうしてかは、分からないけど。
だから、知らなくちゃならないね。この世界のことを……」
クレカは世界と共にギーコの説明を受けてからギャルリ・ド・プリエを見回していた。
美しい回廊に人工太陽の眩い光に焦がれるように視線を送る。
ふと、その視線の先に『知り合い』に良く似た姿の誰かがいた気がしてクレカは「あ」と声を漏した。
「……待って」
手を伸ばすが、声は届いていない。前のめりの姿勢になったクレカへと「どうかしましたか」と声を掛けたのはグリーフ・ロス(p3p008615)その人だった。
「グリーフ……」
「何か探していたのか」
「世界も、……その、グリーフに良く似た人が居た気がして」
ぴくり、とグリーフの肩が揺らいだ。『この世界は混沌に密接に通じている』という。
何処からか、迷い混む者が居る可能性だってある。
グリーフ・ロスは秘宝種だ。ニーヴィアというアルビノの女性を模した機械人形である。
つまり、グリーフはクレカと同じように人の手によって作られた存在であり、この世界では『心なし(ゼロ・クール)』と呼ばれる機械人形に分類される可能性もある。
「……まさか……?」
そんな、まさかが有り得てしまう『かも』しれないのだ。
この地に、秘宝種を造った者が迷い混んでいたならば。逆説的に『この地で造られてから混沌に飲み込まれていたならば』。
その何方もが有り得る可能性がある。魔法使いと呼ばれた職人達がこのプーレルジールから技術を送り出し、果ての迷宮を『掘り進んだ』事で秘宝種が混沌世界に飲み込まれたとすれば。
「グリーフの、『お父様(マスター)』も此処に居るかもしれないね」
「……そう、かもしれませんね」
グリーフは嫌な気配が背中にぴたりと張り付いている気がした。
――愛しているよ、ニア。
その言葉だけが背中に張り付いている。
自壊するための言葉。ニーヴィアとして認められなかった『機械人形』のなれはてへの唯一の情け。
「グリーフ」
「……いいえ」
秘宝種のルーツだって、此処にあるかも知れない。
魔法使い達の元に『迷い混んでしまった』誰かが作り出した命。
「少し長い一日になりそうですね」
グリーフはそう囁いてから、クレカの視線の先を眺めてから目を伏せた。
※『アトリエ・コンフィー』を拠点にプーレルジールの探索・調査が始まりました――
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