PandoraPartyProject
死竜の怒り
――ああ、ああ、かなしく、むなしく、そしてはらだたしい。
今や『真なるザビアボロス』を名乗りしその竜は、空を見上げて嘆いた。
――我が不出来なる娘よ。その従者よ。我はお前たちを評価しすぎていた。
嘆く。怒る。そのないまぜになったような感情は、真なるザビアボロスがまた、おそらくは生まれて初めて味わった裏切りであり、絶望である。
――ああ、まさか、まさかお前たちが。
――『羽虫ごときに助力をこうなど!!』
反逆は、良い。強き者の特権である。弑逆は、良い。強き者の特権である。
我らは竜である。頂点存在である。世のすべての頂点に座し、世のすべての理を決める。
この世界において、彼らは比肩すべきものなき存在であった。
だのに。
だというのに!
『お前たちは、竜の誇りを捨てた! 穢したのだ!』
彼女が、単独で、我に刃向かい、殺すのであれば好い。ムラデンとストイシャが、己の力のみで弑逆を企てるなら、我はそれを受け入れ、全力を以って相対した!
だがこれはなんだ! 羽虫ごときに頭を下げ、その力を借り――ああ、そう思うことすら吐き気を覚える――、そのうえで這う這うの体で目的を為した!
これが竜のやることか! これが竜の誇りか!
『ヒトはつながりを求める。違う種族の間でも、解りあえると嘯く。
だがそれは、傲慢なる弱者の理論である』
どれだけきれいごとを言ったとしても、たとえ人類が、『人語を介する羽虫』と遭遇したとして、彼らを対等と認めるものか!
人類は驕っている。自分たちが頂点だからという驕りがあるからこそ、『解りあえるなどと嘯く』! 生命は等価値だ、などと、人の価値観で嘯くのだ!
『下らぬ! 堕落した竜も、驕れる羽虫どもも――おのが欲求を抑えきれぬ、ベルゼーも!』
思えば、そもそもベルゼーを受け入れたことが間違いだったのだ。はるか昔、彼の冠位を、何故竜は受け入れたのだ。
ザビアボロスにはわからない。ましてや、自らの命をささげて『奴の空腹を満たしてやろう』などと考えた愚者もいた!
竜が! 自らを犠牲にする! ありえない!
『すべての歯車は、もう狂っていたのだ』
ザビアボロスは諦観と絶望と憤怒の中にいた。頂点存在である竜が、ここまで堕落していたことに、悲憤すら感じていた。
『この悪徳の都、ヘスペリデスも。ベルゼーも。零落した竜も。我こそが粛清する』
ザビアボロスは、絶望と怒りのままに、己が毒を解き放たんとしていた。
ザビアボロスの一族に伝わる、怨毒。すべてを殺し、浄化する、竜の慈悲。
『この地をすべて洗い流し、ゼロから真なる竜の世界を構築するとしよう』
――イレギュラーズたち。そして、ザビーネらがザビアボロスの存在を補足するのは、この少し後のこととなる。
※ザビアボロスが、すべてを洗い流すべく活動を開始しています……!
※『双竜宝冠』事件が新局面を迎えました!
※豊穣に『神の国』の帳が降り始めました――!
※練達方面で遂行者の関与が疑われる事件が発生しています――!
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