PandoraPartyProject
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「それで……例の話に……間違いは無いのですな?」
そう問うたリシャール・エウリオン・ファーレルの表情は険しく、その口調は強張っていた。
「……はい。実に残念ながら、誤報の類では無かったようです」
頷いたフェリクス・イロール・フィッツバルディにリシャールは見て分かる位に大きな溜息を吐き出した。
(……お父様……)
愛娘たるリースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)がついぞ見た事が無い位に緊迫感が漂う父の空気を作り出したのはつい先程届いた或る一報だった。
「『まさか、こんなに早く次の犠牲が出るなんて』」
フェリクスの言葉に誰も応える者は居なかった。
それは想像の外に出るものではなく、同時に決して本当になって欲しくなかった予想の一つである。
黄金双竜の跡目を争う後継レース――即ち『双竜宝冠』はミロシュ・コルビク・フィッツバルディの死と共にその性質を変化させた。
リュクレース・フィッツバルディ暗殺の報はその延長線に過ぎないが、同時に『もう絶対にこの事態が引き返さない』事を決定付ける凶報に他ならなかった。
「フェリクス様、御心中をお察しいたします」
「ああ、ありがとう。巻き込んでしまって……すまない」
「いえ……」
リースリットがその美しい瞼を伏せたのはそう述べた自信がフェリクスの絶対の無罪を担保出来ないからでもあった。
ファーレル家の政治的立ち位置はレイガルテの子竜の一人たる彼を絶対的に後援すべきものである。
彼女も家の方針に異論はなく、リースリットもまた幾度か言葉をかわす機会のあったこの貴公子の事を嫌っていない。
『だが、それでもイレギュラーズとしての彼女はフェリクスを完全な容疑の外に置けはすまい』。
無論、彼女はファーレルである。事の真実を問うよりも優先すべき事があるのは余りにも明白なのだけれども。
「……リュクレースには可哀想な事をした。
だが、事態はそれ以上に最悪になるだろう。問題はもう兄妹喧嘩に留まらない」
ミロシュ程ではないが、リュクレースを推す貴族派があった事も確かである。
下手人は彼女の私兵の一人だったと言うが、誰の息が掛かっていなかったとも限らない。
なればこの殺しは元より小康さえ望む事の難しかった後継レースに火を注ぐものになるのは確定的に明らかだった。
「……戦争が始まる」
コップの中の争いで済めばどんなにか幸いだろう、とフェリクスは深く嘆息した。
事これに到れば兄(アベルト)とも、弟(パトリス)とも話し合いで済むという事にはならないだろう。
ミロシュを喪ったコルビクも含め、或いは性質の悪い叔父も含め――もうこれは止まらない。
血で血を洗う骨肉の争いは、やられるより前にやれ、という性質を帯びるのは間違いなかった。
支持者は態度を硬化させ、集まった戦力は殺気立ち、些細な衝突から争い、やがて更に大きな暴発へ。
そうして繰り返されるサイクルは燎原を焼き尽くす怒りの炎となって黄金の子竜達を灼くのだろう――
「世の中はままらないものですな。
望んでいない結末程、容易に気楽に顔を出す。
しかし、何れにせよファーレル家は、間違いなく御身を後援いたしますぞ」
「ありがとうございます」
「……」
リースリットの見つめる父と貴公子とのやり取りに不自然は無かった。
だが、彼女の胸に影を落とすのは、この後訪れるだろう嵐の音色ばかりに違いなかった――
※『双竜宝冠』事件が望まない形の進展を見せたようです。
各地でアベルト派、パトリス派、フェリクス派が武力衝突を開始し、市中にも被害が出ているようです……
※R.O.Oのエラー領域『ORphan』での事件が終結しました。
境界図書館から行なう異界渡航の準備を始めたようです――
※<月だけが見ている>の決戦に勝利しました!
※烙印状態が解除されました。
※烙印の後遺症には個人差があることが判明しました 。
※海洋王国方面にも『帳』が降り始めたようです! 神の国に渡り対抗しましょう――!
※天義騎士団が『黒衣』を纏い、神の代理人として活動を開始するようです――!
(特設ページ内で騎士団制服が公開されました。イレギュラーズも『黒衣』を着用してみましょう!)