PandoraPartyProject

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「客じゃねぇなら」

『古宮カーマルーマ』を舞台にした『月』の暗躍はまさに佳境を迎えようとしていた。
 リリスティーネの性質を考えれば成り行きというより必然的に敵対する事になったローレットとは互いに煮え湯を飲ませ合うような関係だが、得てしてそんな関係は長続きはしないものだ。慌ただしさを増した空気はいよいよ張り詰め、彼我の緊張は『この先』……どうなるとも知れぬ激変の気配を隠してはいなかった。
「……おい、貴様!」
「あん?」
 そんな緊迫感を増した月の宮殿でまさに今、状況を証明するようなシーンが展開されていた。
「何をしている? 貴様の居室はこの辺りではない筈だが……?」
 端正な顔に乗った眉を吊り上げ、詰問する調子で言ったのはアレイスター。
 銀色の狼の如き美しさと獰猛を兼ね備えるリリスティーネの『番犬』だ。
「何も彼にも無ぇよ」
 一方、刺々しい敵意と警戒を隠さないアレイスターの様を鼻で笑ったのはディルクだ。
 砂漠の傭兵王にして、月の賓客――という事になっている――アレイスターとは出会い鼻から幾分かぶつかった関係。
「そろそろ、帰ろうかと思ってよ。広いトコだからまあ……今、テメェと遭ったって訳だ。
 知った顔なら丁度いいや。帰り道はどっちだい?」
「……は?」
 アレイスターの表情に怒気が篭った。
 リリスティーネは確かにディルクを『招いた』。
 この不敬な男は確かに形式上は『月の賓客』である事は間違いない。
 しかし、アレイスターに言わせればそれはあくまで形式上の話である!
「誰の許可を得てそんな事を」
「あん? 許可だ? お客様がお帰りってんだ。お土産でも寄越すのが筋だろ?」
 リリスティーネへの度重なる不敬、そしてこの偉そうな現状認識にアレイスターは明らかな苛立ちを禁じ得なかった。
 客といってもここは謂わばアウェーなのだ。その気になれば結集可能な月の勢力に対しディルクは一人。
(一体何を考えている? 事実上、軟禁されていると分からない位――愚かなのか?)
 睨みつけたディルクは相変わらず隙だらけであり、気楽に見えた。
 アレイスターはそんな姿もやはり、侮られた気がして不愉快極まりない。
「何れにせよ、リリスティーネ様のお言葉なくてはな。部屋に戻れ、赤犬」
「……へえ」
「さもなくば、此方にも考えがある。『客扱いして貰える間に聞き分けろよ』」
「成る程、成る程」
 からからと笑ったディルクは合点したように一人ごちた。
「『じゃあ、テメェに逆らったら俺は客じゃねぇんだな』」
 そこから先は――まさに電光石火のようだった。
「……は?」
 夜に瞬いた黒の閃光は一切の躊躇なく敵対者の命を刈り取るディルクの流儀。
 ひとかどの戦士であるアレイスターは自らの首と胴が永遠にさよならした事を恐らく理解してはいなかった。
『彼の最大の失敗はこの男が月を一人で皆殺しにしてでも帰ると言ったら帰る男である事を知らなかった事だ』。
「あーあ。折角大人しくしててやったのによ」
『最終局面』ならあの手間の掛かるお嬢ちゃんも『やらかし』かねないのは目に見えている。
 積極的に手を出す心算はないが、もし、万が一。
『何か』必要なら、こんな場所で油を売っている訳にもいかないというだけだったのに。
「口は災いの元だなあ。え? 番犬(わん)ちゃんよ?」
 月が淡く見つめる暗夜は血腥さ等無かったかの如く。
『赤犬』は自分の事を棚に上げて、再びふらりと出口を探して歩き出すだけだった。

 ※月の王宮に動きがあったようです――!
 『月の王宮』攻略作戦の提示がなされました


 ※天義騎士団が『黒衣』を纏い、神の代理人として活動を開始するようです――!
 (特設ページ内で騎士団制服が公開されました。イレギュラーズも『黒衣』を着用してみましょう!)

これまでの覇竜編ラサ(紅血晶)編シビュラの託宣(天義編)

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