PandoraPartyProject
月の謀略/砂漠の獣

自由な気風を愛していた。
誰かを囚える事はあっても、誰かに囚われる事は無く。
何時でも、誰よりも自由な生き方を望んでいた。
父親も、幾世代も前の男も皆等しく同じだったように――エッフェンベルグは乾いた砂漠の風だった。
だからこそ、粘つくような想いの強さが嫌いだった。
それは一方的であり、他罰的であり、決して報われないから澱んで腐り果てるだけの代物だからだ。
『誰かにそれを向けられる事も、関係ない誰かが縛られている様も決して彼は好きではない』。
「さァて……」
『古宮カーマルーマ』の胎の中。『月の王国』と称される場所の中心部でディルク・レイス・エッフェンベルグは全く自由な時間を過ごしていた。
エルス・ティーネ(p3p007325)への当てつけとして『招かれた』ディルクは月の賓客であり、行動は自由そのものだった。
リリスティーネとしては実際の所を言えばそんなディルクを苦々しく思う筋もあったのだが、『博士』をはじめとした月の勢力はそんな彼女よりは幾分か冷静だったと言えるだろう。外に野放しておいては何もかもをご破算にされかねないディルクを一先ず大人しくさせておける事は『月』にとって最良の選択肢だと言えるからだ。
元より砂漠の狂犬を無理矢理押し止める事が出来るならば、誰も何の苦労もない話なのだから。
「……しかし、面倒臭いね。こうまでしなけりゃまともな『喧嘩』も出来ねえか」
宛がわれた豪華な居室で一人ごちたディルクは血の雫のような赤々しいワインを一気に呷って天を仰いだ。
状況を見て回れば大体の所、『あの手の女』が何をしたいか等すぐに分かったし、その時点でもう目的は達成されているに等しい。
その上で暴れようと思えば簡単、無理矢理脱出しようと思っても簡単だったがディルクは今の所そうしてはいなかった。
(まさか一から十まで俺の御守りが必要な連中じゃねえだろ? ラサも、ローレットも)
乗りかかった船と言えばそれまで。
自分が手を出すのに興が乗らないというのも事実だ。
理由を考えればそれは簡単な話であり、要するにこれは『特別』なのだ。
面倒臭く、野暮ったく、手がかかり過ぎる『お嬢ちゃん』である事は確かだが――エルスが関わるのなら、まぁ見届けてやるのも必要だろうとも思っていた。
「……信じられねえ話だよ」
――甘口過ぎる。
ワインのラベルを眺め直してディルクはもう一言呟いた。
この状況を是認する自分に驚くと同時に、それも自然かと納得する気持ちがない訳でも無かった。
要するにこれは自分の戦いでは無いのだ。必要な連中が必要なだけやり合えないのなら、この無為な時間はもっともっと無駄になる――
だから、ディルクは『もう少しだけ』ここに居る。
月の望む通り大人しく。それは我が為ならず他が為である。何より『彼女』の越えるべき意味になる。
「ああ、それにしても――もう少しまともな酒は無ぇもんか?」
※黄昏の園『ヘスペリデス』に到着しました――!
※新イラスト商品『イクリプス全身図』が実装されました。
※幻想でフィッツバルディ派の対立構造が急激な悪化の兆しを見せています!
※ラサに存在する『月の王国』にて大規模な儀式が行なわれています。反撃し侵攻しましょう――!
※天義騎士団が『黒衣』を纏い、神の代理人として活動を開始するようです――!
(特設ページ内で騎士団制服が公開されました。イレギュラーズも『黒衣』を着用してみましょう!)