PandoraPartyProject
ラドンの罪域
ピュニシオンの森――嘗て、その場所は『死の森』とも称された。
茂る草木は天を仰ぐことをも拒絶し、暗闇を作り出す。湿り気を帯びた土には外界とは別の植生が存在した。
外に棲まう巨竜フリアノンを避けるようにして亜竜達が作り出した外敵を避け得る森はモンスター達にとっての楽園であったであろう。
亜竜種達にから見れば状況は変化する。上位存在たる竜種を避け、森に棲まう亜竜(モンスター)は脅威に他ならず、其れ等が存在するならば『食物』が多いからとその地に居を移した竜種達も存在している。つまり、危険地帯なのだ。
人の身から見れば、広大すぎるピュニシオンの森は、そしてそこから先に広がっている岩山や荒野は未知の領域だ。
先を夢見る者も居た。
覇竜領域は『人』が棲まう場所が余りに少なすぎるからだ。
そうして森に踏み入れる者は数多く居たが――誰も帰ることはなかった。
故に、今はその場所を『帰らずの森』と呼ぶ。
誰も踏み入る事の無いように、踏み入った者が居たならば二度とは帰らぬだろうその人を悼む為に名を記した。
志遠の一族と呼ばれた亜竜種達はこのピュニシオンの森の入り口で先行く者の管理をして居た。
今やそれは機能せず、異変を感じ取るイレギュラーズ達は深き森の探索に乗り出した。
そして――一つの情報を入手したのだ。
ピュニシオンの森から西方、黄昏の地には『ベルゼーが作った竜種達の里』が存在している、と。
それは想像するにも難しい未知の場所だった。
男がその地に逃れたのは亜竜種達との決別に他ならない。
――彼は竜種達が、何にも苛まれず過ごす事の出来る安寧の地を作ろうとしたらしい。
その地で、我々との共存ができればと願ったのだろう。
その地の名はヘスペリデス。
冠位魔種、冠位暴食。それでも『性質が優しすぎた』男は上位存在である竜種と人が共存できる場所を作らんとしたのだ。
ヘスペリデス。その場所は、伝説の地にも似ている。冒険心を有する者ならば、踏み入れることを願うだろう。
「……好奇心だけで行くのではないわ」
フリアノンの『里長』会議にて、里長代行達に里を任せることを決めた『亜竜姫』珱・琉珂 (p3n000246)は厳しい声音で言った。
「私は、フリアノンの里長。珱に産まれた娘。
好奇心だけで、人は生きて行けないことを知っている。だから、きちんと宣言するわ」
齢にして17歳。年若い里長は幼き日に両親を喪い、親代わりとして『冠位暴食』を慕い暮らしてきた。
男の正体を知り、ただの一人きりになったと悲観しなかったのは――『イレギュラーズ』が居たからだ。
突如として里に現れた『特異点』達は、少女の在り方を大きく変化させたのだ。
彼等が命を賭ける何かを有するように。珱・琉珂は『フリアノンを護る』事に命を賭ける。
「父の手記によれば、ベルゼー・グラトニオスは『権能』を有している。
冠位嫉妬の『廃滅病』のような、冠位強欲の『暗黒の海』のような、冠位怠惰の『夢の牢獄』……。
特別製の力の中で、ベルゼーは『自分で管理できない』ものがあるらしいの」
それは、彼は冠位暴食であるが故。飽くなき、空腹。飽くなき、欲求。
彼の権能が未だ静まり返っているのはとある竜の消化中だからだ。
少しでも権能を解放した場合、「小腹が空いた」と言わんばかりの状況となりその隙間を埋める『食事』を摂る。
「……オジサマ――いえ、ベルゼーの『消化が終った』なら、次の権能の暴走が来る。
彼の暴食は世界を喰らうような力を持っている。それこそ、覇竜領域の一つをも食べきってしまうような」
その暴走から逃れるように竜種達は直ぐに領域を脱出するだろう。行く当てのなくなった竜は、周辺国を蹂躙することも推測される。
「それを止めなくてはならない。だから、ヘスペリデスを目指しましょう」
――その前に、関門がある。ラドンの罪域を超えねばならないという。
ラドンとは、ベルゼーの友であった竜種の一人なのだそうだ。
「ラドン……『狂黒竜ラドネスチタ』の坐す、その領域を越えなくてはならない。
その竜に、私達がヘスペリデスに至るにふわさしい『存在』であると、認めさせましょう――!」
※『ラドンの罪域』攻略作戦が始まりました――!
※ラサでは『月の王国』への作戦行動が遂行されています!
※昨日(4/1)は何もなかったよ……?