PandoraPartyProject

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霊喰集落アルティマ

 ドラゴンという伝説がある。
 少年が絵本を開いて見るような、古い遺跡の壁画に描かれたような、あるいは誇大な嘘吐きが空を指さして叫ぶような。
 それが嘘でも伝説でも、空想でもないと、ある日誰もが気付かされた。
 練達(探求都市国家アデプト)のドームを割ってJabberwock(ジャバーウォック)が現れたその日に、気付かされたのだ。
 
 覇竜領域デザストル。
 ここは、そんなドラゴンたちがやってきたとされる土地。
 あまりに危険であったがために、誰も奥深くまで訪れることのなかった前人未踏の秘境であった。そう、過去形だ。
 ローレット・イレギュラーズは過酷な試練を乗り越え亜竜種たちの集落フリアノン、並びに洞穴に開けた地中深くの集落ペイト、地底湖周辺に築かれた集落ウェスタをそれぞれ発見し、彼らとの友誼を図ることにした。
 彼ら曰く、覇竜領域で生きていくだけの強さと賢さを持つものでなければ、友誼を結ぶことすら難しい。そうして各集落からはローレットへ向けて様々な依頼が寄せられ、ローレット・イレギュラーズたちもまたその依頼群へと挑みはじめた。
 ここまでが『覇竜領域トライアル』と呼ばれた一連の依頼群である。
 今宵語る物語は、そのひとつであり――『大きなひとつ』だ。

「ブラックアイズ、ホワイトライアー、それに超越者ヴァイオレットの存在が確認された。いずれも集落付近まで迫っておる」
 長い髭と眉毛によって鼻を除く殆ど隠した老人が、顎の髭をなでながらそう言った。
 フリアノンの集落集会場。床に敷いた乾いた植物性の敷物にあぐらをかいて、ムウと重くうなりながら。
 その場にはフリアノンの知恵者であるかの老人と、ウェスタで占いを司っている双子巫女、そしてペイトの坑道採掘を管理している痩せた眼鏡の男性が集まっている。普通ではありえない組み合わせだが、彼らの共通点は先ほど述べた老人の一言に集約されている。
 眼鏡の男が縁をつまみ、苛立った様子で声を荒げる。
「そんなことは分かっています。早く戦士を招集すべきだ。こっちは坑道ひとつを潰されているんだぞ」
「「お待ちを」」
 先を続けようとした男を制したのは、双子巫女である。二人まったく同時にしゃべり、同時に手をかざす。
「「ローレットに、依頼するべきです」」
「……ッ」
 鋭いまなざしで振り返った男に、『先を聞こう』と手をかざす老人。
「「あの三匹の怪物は私達の古い文献に残っています。
 間違いなく霊喰集落アルティマからの使者です。
 おそらくは色にちなんだそれぞれの眷属――ブラックブライア、ホワイトホメリア、そしてヴァイオレットウェデリアよりの眷属でしょう。
 そうした存在が動き出したことには、意味があります。ローレットがこの地を見つけたことと、無関係とは思えません」」
「占いで、そう出たと……?」
 眉間に皺を寄せる男だが、双子巫女は何も言わない。
 一触即発の空気だが、老人は深くため息をつくことでそれをなだめた。
「確かに、そうかもしれんのう。本当にアルティマが動き出したというならば、ワシらだけでは対処できまい。ローレットと手を取り合うか否か……見定める絶好の機会じゃろう」
 老人はそう言って、三人によいなと視線を動かした。
「この件は、ローレットへと依頼する。それぞれ集落に戻って、説明の準備をするように」
※覇竜領域の各亜竜種集落から危険な依頼が舞い込んでいます

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