PandoraPartyProject

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もうほんの少しのおせっかい

「……やれやれ」
 シュペル・M・ウィリーは苦笑いを浮かべていた。
 面倒くさそうで、呆れたように。
 苦虫を噛み潰しているけれど、『彼には珍しく自嘲しているかのような』。
 何とも複雑な表情を浮かべた彼は掌の上で小さなキューブを転がしながら暫く前の事を考えた。

 ――シュペル君。
   いつもお世話になっているね。
   今回はお願いがあって手紙を送ったんだ。

「送るなよ」

 ――今練達に未曽有の危機が迫っている。

「知っている。だが、知らせるな」

 ――君が私達に力を貸す義理などないことなど百も承知だ。

「分かっているなら――」

 ――だから私やヴァリューシャやローレット、世界の為なんかじゃなくていい!
   クリストとクラリスの為と思って力を貸してくれないかい?

「――この小生に何時まで子守をさせようというのだ、イレギュラーズ。そして、旧友(チューニー)よ!」
 後見なぞを頼んだ友人が不快である。
 先の事件では結局折れさせ、自身に手を出させた子供達の不甲斐なさが不快である。
 何よりこんな風に――頼めば聞いて貰えると思っている連中が不快である。
 シュペルからすればその全てが、何もかもが『実に不快』極まりない。
 取り分け、最高に彼の機嫌を悪くしているのは――
(――ああ、実に。実に度し難い!)
 ――あまつさえ「仕方ないか」等と思ってしまった自分自身の気分であった!

 ――重ねて言う!
   どうか、どうか……皆に力を貸して欲しい!

 一度見た事がある程度の誰かである。
 神なる自身は実際の所、こうも気軽に頼られた事等無かった。
 不敬なる連中は何時も適切な距離感をというものを勘違いしているのだ。
 早々に死んで遺した子等の後見を押し付けたチューニーも。
『ローレット』なる有象無象の面倒を見ろといったレオン・ドナーツ・バルトロメイも。
 勝手にアーティファクト(シュペル・シリーズ)を押し付けてきた今回の猫も。
 それから――

 ――アンタ、意外と優しいトコあるのよねぇ!

 ――目を閉じれば、瞼の裏でしたり顔をする最高にムカつくあの女も。
「今度だけだ」
 シュペルは呟いてキューブを宙に放り投げた。
 宙のキューブは転移を果たし、持つべき者はまた神の恩寵を知るだろう。
『今度だけだ』。『代価は相当に受け取った』。『勝たせてやる程の面倒は見ない』。
「――フン、後は勝手にすればいい」
 それで負けても自分は知らぬ。
 それはひねくれた彼の免罪符であり、諦念だったに違いない――


※何かが起きたようです

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