PandoraPartyProject

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デザストル・トライアル

 練達にジャバーウォックが襲来した便りを聞き、珱・琉珂は「オジサマは帰ってきていないの!?」と叫んだ。
 近頃は留守にしがちな里長代行の一人、古くから亜竜集落フリアノンの世話をしている彼は幼い亜竜種達に『ジャバーウォックには気をつけろ』と教えていた。
 勿論、その教えを琉珂は幾人もの里長代行から聞いてきた。
 里の外でジャバーウォックが羽休めをしているのを見た時は恐れ戦き震えを禁じることが出来なかったのだ。
(あれだけ巨大な竜を――『滅海竜』より弱いにしたって上位存在である竜種を――彼らは撃退しなくてはならないの?)
 息を呑む。幾ら、己の身に竜の因子が宿っていても所詮は人だ。竜種どころか『亜竜』と呼ばれるモンスターでさえ自身等にとっては害ある敵なのだ。
 亜竜を伴った竜種の軍勢。其れ等が攻め入る練達という国を琉珂は知らない。
 隣接して居れど閉鎖的であった覇竜領域デザストルでは『外』との交流はほぼ無かった。せいぜい、時折ラサの市中に出る程度だ。
 それ故に、琉珂はその地がどのような場所であるかは分からない。
 唯一、『イレギュラーズがこの集落に到達した理由が練達という国の驚異的な技術力の成果』であったという事だけだ。
(助太刀――に行くには遠すぎる。私はあの場所を知らないもの。足手纏いになる。
 それに、『オジサマ』が気をつけろと言った相手……怖いわ。怖い。そんなものを普通の私が相手出来るわけ……)
 フリアノンに鎮座した竜の祭壇の前で琉珂は項垂れる。
 彼女はイレギュラーズではない。否、言い方を変えれば『イレギュラーズとの縁が彼女達を導く可能性』を内包している状態に過ぎない。
 琉珂自身はデザストルにイレギュラーズが慣れ親しんでくれることを願っていた。
 其れが多くの同胞を更に外に導くはずだと知っていたからだ。巨大な亜竜集落、その三つの内、二つの祭壇が光を灯したのはそう言う理由であるはずだ。
「……里長代行を集めて頂戴」
 琉珂は決意したように振り返った。
 彼らの足手纏いになるくらいならば、自身等がやれることを今やるべきだ。
 彼らの手を借りなくてはならないのは仕方が無いが、それが何時の日か強固なる縁を結び導かれる日が来ることを願うしかない。
「我らが竜骨、フリアノンは『亜竜種』の未来を示した。祭壇の光が、私達が辿るべき新たな道が開かれたことを知らせてくれている。
 だから……私はイレギュラーズにこの地の立ち入りを許可し、依頼書を出したわ。彼らとの冒険が私達に良き未来を齎すと信じているから」
 琉珂は里長代行達へと確りとした声音で言い放つ。

 異国の地では、『怪竜』ジャバーウォックが襲来した。イレギュラーズ達は其方の対応に追われることとなる。
 今回は間に合わずとも次回、何かあったときに彼らがくれた可能性を辿り良き未来を齎す力になれるように。

「ローレットのイレギュラーズ、彼らと共に集落周辺を探索しましょう!
 私も勿論、『可能性の鍵』を探すわ。けれど、此の辺りになれて貰わないと、亜竜種達とも関係を深めて貰わないと新しい縁は紡がれない」

 自身等も彼らと共に冒険の民に出られるのだろうかと、期待の瞳を向ける亜竜種が居る。
 外の者達へと懐疑的な視線を向ける者も、これまで鎖した外界を受け入れることに忌避感を抱いた者も居る。
 あの領域に閉じこもっていた竜種が外に飛び出した。だと言うのに『彼らより縁を紡がれた』自身等が集落に閉じこもっているわけには行くまい。
「さあ、デザストルでのトライアルを始めましょう! これは、『未来』の為の大きな選択。竜骨フリアノンが認めてくれた新たな一歩を祝福するように――」
 ――『今』は駄目だ。足手纏いだ。だからこそ、ジャバーウォックの襲来を越えた後の彼らの力になるために。
 琉珂は微笑んだ後で誰にも聞こえぬ声で呟いた。
「オジサマのばか。どうして今居ないのよ……」
 世話役をしてくれた『竜王』とも渾名された彼が傍に居ないことが、少女にとって何よりも心細かった。

 ※亜竜集落より『デザストル』での冒険依頼が舞い込んできました――
 ※練達に襲来する竜種対応クエストLIMITED QUEST『The Hunting of the Snark』が開放中です!

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