PandoraPartyProject

PandoraPartyProject

現実に蠢くもの

 R.O.Oにおけるローレット・イレギュラーズたちの戦いは激化していく。
 つい先ごろも、翡翠国のサクラメントが使用不能になり、国境線が封鎖されるという事件が発生。イレギュラーズ達は調査に乗り出しはじめていた。
 また、ヒイズル(かそう)希望ヶ浜(げんじつ)の両方を蝕む『何か』は、その双方を侵蝕する――。脅威は今だ、衰える気配を見せない。
 だが、イレギュラーズ達の活躍により、確実に解決に向かう事件もある。例えば鉄帝国の内乱は大詰めを迎え、そろそろ報告の上がる時期だろう。
 世界は歩みを止めない。それが仮想でも現実でも。良きものであろうと悪しきものであろうと。そしてまた、現実の地にて、悪しきものは蠢動を続ける。

 独立都市アドラステイア――天義から独立し、偽りの神の名のもとに統治を続ける宗教都市。
 その実態は、子供たちを利用し、大人たちが己の昏い目的を果たすためのディストピアに過ぎない。
 多くの子供達が住まうスラムじみた下層を越えて、アドラステイア中層へ。その一角にある大きな屋敷は、アドラステイアの擁する傭兵部隊オンネリネンを指揮する大人たちが詰める、本部施設にあたる。
 その一室。質よく整えられた執務室に、馥郁たる紅茶の香りが漂う。
 執務机に腰掛ける女性=マザー・カチヤ。このマザーこそが、オンネリネンを率いる首魁と目されている。
「子供たちは、よくやっているようですね」
 カチヤが言った。執務机の上に並べられる報告書の類。それは、傭兵部隊オンネリネンが、都市外で活動し、相応の戦果を挙げたことの証左である。
「ノーザン・キングスのロタル将軍などは、痛く気に入ってくれたらしく。継続雇用を申し出ています」
 カソックの男が言う。オンネリネン所属のティーチャーが一人。執務机の前に、姿勢良く立っている。
「しかし、ローレットに対しての戦果は芳しくはありませんね」
「それは頭を痛めている所です」
 ティーチャーの言葉に、カチヤが言った。
「オーナーの要求は対旅人(ウォーカー)用の戦力の拡充。最大の仮想敵がローレットである以上、あまり好ましい結果ではありませんが……」
 ふん、とカチヤは忌々しそうに鼻を鳴らした。
「ですが、金を稼ぐ、と言う面でなら充分に機能しているようです。出資者の方には充分なアピールでしょう。私達の存続もしばらくは安泰でしょうね」
「では、本格的に他国への派遣を?」
「ええ。ローレットと懇意にしてる団体には接触は出来ないかもしれませんが、そうでない者たちなど、この世界には山ほどいます。
 精々利用し合いましょう。私たちの幸せのためにね」
 カチヤはそう言うと、机の上にあった、湯気を立てる紅茶を一口、吹くんだ。眉を顰める。
「やはり、まずい。味も香りもしたものではないですね」
 カチヤはうんざりした様子で紅茶を飲み干すと、執務机の書類をやっつけることにした。
 新たな傭兵(こども)たちの運用計画を、立てる必要があった。

アドラステイアのオンネリネンに、動きが見えます……。

これまでの再現性東京 / R.O.O

トピックス

PAGETOPPAGEBOTTOM