PandoraPartyProject

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希望の息吹

 R.O.O-patch 4.0『ダブルフォルト・エンバーミング』――

 突如として告知されたその文面を練達がなんとか解析せんとしている――が、その間にもR.O.Oの世界、ネクストは廻る。
 現実の世界の様に。人の営みは続いており……
 そして翡翠の国の一角。大樹ファルカウの膝元には、多くの幻想種が集っていた――

「そうですか――パラディーゾ。そのような存在が此度の元凶だったとは……」

 先の騒乱……特殊クエスト<Closed Emerald>が解決を見せて暫く。
 翡翠の国はその後の対応に追われていた。
 『外の者』を敵視し、国境線を封鎖しようと戦力を外側に集中させた結果――その裏を突かれ、ファルカウを中心に各地を奴らに襲撃されてしまったのだ。もしも奴らの暗躍が成功してしまえば、より甚大な被害が翡翠には広がっていた筈だ……
 だがイレギュラーズらの介入により多くの戦場では撃退を果たす事が出来た。
「あちこちに被害が出ているみたいだけれども――
 概ね想像されていたよりは軽微と言えるわね。大事には至っていないわ」
 言うはフランツェル・ロア・ヘクセンハウスだ。ファルカウの麓に存在するローゼ大聖堂の司教である彼女は、事が沈まった後に翡翠に齎された被害の確認に努めていた……その結果、無傷ではないが、各所の被害は比較的軽微に収まったと言える事が判明した。
 警備隊の多くが国境に裂かれ、奇襲気味に攻撃を受けたにしては――幸いと言えるか。
 それもこれも箱庭の外より訪れてくれたイレギュラーズがいたおかげ……
 そして各地で暗躍していた者らの情報は深緑の長たるリュミエの耳にも入っている。いやむしろ彼女も、そのパラディーゾや暗躍していた中心人物の一人である『ピエロ』に直接相対した者だ――今更そういった影が潜んでいた事に疑いはなく。
「しかしリュミエ様! だからといって外の者が信用に足るかは話は別ですぞ!」
「然り然り! ファルカウの膝元まで侵入し遺跡を荒らす冒険者や、貴重な木々を伐採する密樹者もいるのは昔からの事――やはりこれを機に封鎖を続行すべきでは!?」
 が。『それはそれ、これはこれ』とする過激な幻想種も未だ多かった。
 外の者に助けられたのは事実……しかし外の者が危険なのもまた事実だとばかりに。
 斯様に鎖国続行を唱えるのは特に幻想種の中でも古株の者達だ。
 彼らは、翡翠は翡翠の者だけで固めるべきと強固に意見を述べて。
「しかし閉鎖自体が暗躍した者らの目的であった以上――それを殊更に続ける意味もないでしょう。この期に及んで彼らの目的通りに動いて差し上げる理由が何か、ありますか?」
「むっ、それは確かに……ですが……」
「――無論。私も外の者達を今すぐ全面的に信用しろ、などと言っている訳ではありませんよ」
 しかしリュミエはそういった意見を――強くではないが、退ける。
 なぜならば奴らの目的。翡翠を閉じこもらせる事が目的であったのならば、その逆を行うのが奴らの思惑に乗らぬという事なのだから……まぁリュミエ自身、過去にあったとある事件により外の者――特に男性――には不信があるのだが。しかしそれこそ『それはそれ、これはこれ』である。
 些か思考を深めてみれば、鎖国させ外との介入を閉ざさせた事の『真の目的』がまだ読めぬのだから。
 もしも鎖国が完了し、奴らの襲撃も完遂されていれば――どうなっていたのだろうか?
 翡翠の国は内部が荒れに荒れ、外へ目を向ける余力すらなくなっていたかもしれない。
 そうして更に閉じこもろうとする動きが加速していただろう……
 つまり『身動きを取らせないようにする』事があのピエロの目的だったのでは?
 『その先』に何があるのかは、知らぬ。
 だがそうであるのならば外との交流を閉ざし、自らの動きを縛るのは愚策であると――彼女は判断した。『何が』起こってもこの先、動きやすいように。

「――賛成ですリュミエ様。石花病の治療に関しても……窓は閉ざすべきではないかと」

 そして、リュミエがその方針を打ち出せばその動きに同調する者もいるものだ。
 それが『蒼穹の神官』と呼ばれるアレクシア・レッドモンド
 大樹ファルカウの強き信仰者であり、神官でもある彼女は『石花病』という奇病の治癒を担当している者でもある。そして彼女は先日、パラディーゾに襲われあわや……という事態に陥ったのだが、そこをイレギュラーズに助けられたのだ。
 石花病の試薬が失われれば今までの研究が全て無為に帰す所を。
 それ故に彼女は彼らに恩義を感じている――いやイレギュラーズにだけではない。
 己を助けた内には、己らに偏見を抱いていた筈のある騎士ですら……手を取って助けてくれたのだ。
 ……そうだ。偏見だらけで曇っていた目では何も掴めないと知った。
 人の命を前に『内』も『外』もありはしないと。
 誰しもを救う『希望』はきっと――晴れた瞳の先にこそ映るのだから。
「それに、私だけではありません。架け橋となってくれた――『彼ら』によって救われた同胞も数多くいます。彼らに感謝している同胞もいるのであれば……今少し様子を見るのも肝要かと」
 彼女の言は穏やかな調子だ。
 そして事実でもある。翡翠の幻想種は非常に過激な者も多いが――しかしだからと言って何があろうとも排他的、という訳ではない。受けた恩あらばそれに感謝する事も当然あろう。それが命を救われた様な場面であれば、特に。
 ――彼女の言葉を皮切りに、多くの幻想種が集ったその場の空気が変わり始める。
 確かに様子を少し見てもいいかと、いやそれよりなにより……
「外との輪が未だ続けば、翡翠を襲った者達への報復もいずれ成せるか……!」
「うむ。受けた恩を返すにも動きやすい方がよかろう――借りを作りっぱなしは落ち着かんしな」
 過激な思考を宿している者らの脳裏には、翡翠を襲った者らへの報復をどう行うかも浮かびつつあった。鎖国をしていては奴らが翡翠の近隣などで暴れている時に殴り飛ばしにいけぬと……その思考と発想が正しいものであるのかは、まぁ、その、ともかく。
「では、宜しいですね?
 暫く国境線の警備強化は行います。しかし完全なる封鎖は今少し見送ります。
 キャラバンなどの商人に関しては信用のある者は再開してもよいでしょう」
 リュミエは決を下す。
 外への警戒は行う、しかし鎖国は見送ると。
 身命を賭して戦ってくれた者達がいたからこそ『外の者は危険』と一括りにするは失礼――故に見直す。
 これまでの政策を。そしてこれからの事を。
 万象を包み込むかの様な大樹――ファルカウの下で。

 ※翡翠は鎖国政策を見直そうとしているようです――
 R.O.O-patch 4.0『ダブルフォルト・エンバーミング』が先行告知されています!

これまでの再現性東京 / R.O.O

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