PandoraPartyProject

PandoraPartyProject

介入対策局

「これより、介入対策局特別会議を行う!」
 マントをバッと翻し、異常に背もたれの長い椅子に腰掛けるXXX四天王第三席次:多次元侯爵ZERO
 絶対普段使いできないだろうなっていうやたら細長いテーブルには、それぞれ一(p3x000034)H(p3x009524)純恋(p3x009412)澄恋(p3x009752)ライトニングクイーン(p3x002874)加羅沢昭利アイ(p3x000277)ロード(p3x000788)がそれぞれ座り、空いた一つの椅子にスッと金髪の美男子が腰掛けた。
 悪の大幹部たちが一斉に登場するときみたいに、それぞれが背にもたれかかったり両手を組んで肘を突いたり頭の後ろで手を組んだり机に脚を載せたりとちゃんとキャラと個性をたたせていた。もうこれだけで一枚の絵にしたいくらいの出来映えだった。
「……完璧だ」
 一時間かけてリハーサルした甲斐があった……と小さく漏らすZERO。
 一(ニノマエ)がぽつりと小さな声で隣のHに問いかけた。
「これ、意味あるんですか?」
「初見の人がキャラを把握しやすいだろ」
「え、あ、え……?」
「姿勢を乱すな。台詞はないんだから、感情だけを声にだせ」
 鋭い声でそのまた隣の加羅沢が声をかけてくる。
「感情……だけ……?」
「『フッ』とか『ン』とか『ハ……』みたいな息づかいで感情を乗せるんだ。見ろ」
 指し示すと、ライトニングクイーンが首をちょっとかしげ唇の片方をちょっとあげるだけの動きをしながら『フフ……』と不敵な声をあげていた。
 悪の大幹部会議にありながら不敵な姿勢を崩さない精神的余裕とそれを裏付けるだけの強さ、そしていつトラブルが起きてもいいという豪胆さ、更には少しだけ斜に構えつつも場を乱すつもりは無いという真面目さと不真面目さのグラデーションが見事に現されたモーションであった。
「流石、本物は違うぜ。なあニノマエちゃん」
「は、はい……」
 加羅沢とニノマエの関係性は、非常に複雑だ。
 アルプスローダーというバイクが出身世界で相棒としていたヒーローレッドジャスティス。その変身前の姿である。
 彼とはROOの世界で出会い、この世界での宿敵秘密結社ネオフォボスとの戦いに敗れた彼を元気づける後輩として接していた。だが彼はその戦いの後に消滅し、別の場所でHの出身世界におけるスーツアクター時代の大先輩加羅沢として出現していた。
 秘密結社XXXとの戦いの後、ニノマエが預かっていたジャスティスキーの光と融合する形で二つの記憶が混ざり合った加羅沢は、ニノマエの先輩でありH(英司)の先輩でもあるという奇妙な立場におかれたのだった。
 加羅沢は少年のような目で、ジャケットのポケットからキーを取り出して見せた。
「俺は落ち込んでた時ニノマエちゃんの世話になった記憶がある。その恩を返した記憶もない。ってことは、その恩を返すのは俺の役目だ。
 アストラルレイヤーとか出身世界とか関係ない、しっかり恩は返すぜ、ニノマエちゃん!」
 まっすぐな目で言われて、ニノマエは目を伏せた。
 そんなんじゃない、といえば嘘になる。自分は彼の相棒だった。そうじゃなかったら、人間のヒロインみたいな少女だったらどうなんだろうとこのアバターを作った途端に、彼は目の前に現れた。そんなのずるい。そんなの……。
「あの、話が始まるみたいですよ?」
 澄恋がそっと声をかけてくる。そして、テーブルの上に置かれたチョコバーをもぐもぐしていた純恋を小突く。
 この二人にとっても、今この場に居る意味はある。
 秘密結社XXXの四天王である処恋(Mourning widow)は二人にとって失敗と喪失の未来だ。彼女を救うことは、自分たちの未来を救うことと同義であると言っても過言ではない。
 ロードとアイに至っては、なんとなく話の流れが読めていたらしく黙って話を聞いていた。
 じゃあまず何から話すのかな……と彼らが様子をうかがっていると、なんとライトニングクイーンがドンと机を叩いて立ち上がった。
「聞きたいことが二つある」
 親指と人差し指を立て、横目でZEROを見た。
 洗練された動きに、ZEROはフッと笑い頷く。
「ひとつ――さっきからそこに座ってるその金髪イケメンは誰だ!
 ふたつ――私もそのチョコバー食べたい。食べていい!?」
「いいぞ」
 答えたのはさっきの金髪だった。
「もう一つの答えも、俺からはなそう」
 彼は立ち上がり、早くもチョコバーの包みを開いてかじっているライトニングクイーンたちに向けて自己紹介をするように胸に手をあてた。
「俺に名前はない。『オートマティスムチャネラー』――チャネラーと呼ばれてる。
 元はこの世界における別レイヤー、『アストラルレイヤー』で生まれた存在だ。
 この世界を見守り、大きく乱れないように管理するのが俺の使命だった。
 だが、あるとき現れた『原罪』に連なる存在たちによって俺の力は奪われ表層世界に放り出された。この世界をかき乱す蛮行を許すはめになったわけだ。
 君たちも知ってるだろ? 『リセット現象』ってやつだ」
「「――!?」」
 全員がカッと視線を鋭くした。
 二人ほどチョコバーに夢中だったけど。
 いや、ZEROに関しては『大幹部会議っぽい……』となんか感動していた。
「この力は、言ってみれば限定的な世界支配権だ。
 こいつを求めていくつかの勢力が既に動いてる。
 アンロットセブン、八田の系譜、魔神軍、ネオフォボス……このうち二つは大きく様変わりしたが、彼らは共通した狙いで動いていた。
 それが、アストラルレイヤーへの行き方。そしてその鍵を手に入れることだ」
 そこまで話したところで、スッとZEROが手をかざした。
「そこからは私が説明しよう。
 我々はアストラルレイヤーの管理権限を奪い返し、元通りに見守るだけの状態を取り戻す。そのために『介入対策局』を結成した。
 奪還と保全だ!」
 拳をグッと握り、顔の前にかざすZERO。
「だが同時に、この力を狙う者を排除する必要もある。世界の支配や最適化などという理由でアストラルレイヤーを改ざんすることを我々は許さない。
 世界はいま混乱の中にあるが、それでも幸せを享受している人々がいる。
 それを『リセット』などという現象によって奪うことが許せるか。たとえそれが、ありえた幸福を目の前に召喚する儀式であったとしてもだ!
 幸福とは、己の手と人生でつかみ取らねば意味はないのだ!」
 その言葉に、Hと純恋はそれぞれ異なる形で頷いた。
「たとえ、今すぐハッピーになれる薬があったとしてもそいつはリアルな幻でしかない。
 積み上げた努力も、塗りつけたクソみたいな罪も消えない。己の中に残ったままだ」
「奇跡が起きて突然現れる旦那様よりも、自らの手で丹精込めて作り上げたものでなければ愛せませんからね」
 その通りだ! と後半なんとなく勢いで頷くZERO。
「手札はもう揃っている。アストラルレイヤーへ行くために必要なものは、『リセット前の記憶をもった人間』たち。そしてアストラルレイヤーを知覚している存在。更にそのためのコードだ」
 一つ目は既にこの場にある。加羅沢たちがそうだ。他にも何人もの人々と出会い、彼らを仲間にしてきた。今アストラルレイヤーに最も近づいているのは、イレギュラーズたちなのだ。
 それはもちろん、成功と約束に手を伸ばし続けたからに他ならない。
 そして二つ目はここにいるZERO。三つ目は、協力者である清水博士だ。
「最適なタイミングは、次のリセット現象が起きたときだろう。そう連続で行える者ではないはず。邪魔の出来ない隙を突き、アストラルレイヤーへと突入するのだ!」

暗黒大連合


 真っ暗な部屋に、水槽に入った脳がある。
 ぽこぽこと空気の泡がのぼるそれを、黄金の人型ロボットが両手でそっと掴み上げ、そして自らの頭部へ、王冠を被るかのように装着する。
 ヘルメットバイザーのようなシールド部分がギラリと凶悪に光り、ロボットに明確な意志が宿ったことを示した。
「このボディ……やはり良い」
「……」
 振り返ると、ドクロを頂く暗黒の鎧に身を包んだ存在。ナンイドナイトメアが立っていた。しかも、五体。ジーニアス・ゲニー・ジェニ博士によって作られたロボットに、それぞれ洗脳した強者のボディを組み込んだ『全員が影武者』の総帥である。これによってナンイドナイトメアはあらゆる分野で強者であり複数のギフトをもつという異常な噂を人々に抱かせることに成功していた。
 ジェニ博士の脳を装着した黄金のロボット、GGGローダーはフッと皮肉げに笑った。
「あれだけ多くの怪人を生み出し、私という天才を洗脳までしてのし上がった秘密結社ネオフォボスが……よもやこの私に乗っ取られようとはな」
 皮肉げな笑みはそのまま、クククという嘲笑に変わる。
 パッと手をかざすと、灯りが灯った。
 濃い霧が足下を覆う、薄暗く巨大な……玉座の間であった。
 灯りで照らされた一本の道を歩くGGGローダー。
 その左右では、怪人油圧ワニファラオやバズーカライオン大佐といった傑作怪人たちが跪き頭を垂れている。
 その中には、秘密結社XXXの四天王……のうう二名。暗黒騎士とMORNING WIDOWの姿もある。
 玉座にGGGローダーが腰掛けると、彼の前にスッとダークネスクイーンが膝をついた。
 秘密結社XXX(トリプルクロス)の女総統ダークネスクイーン。彼女を屈服させることなど到底できはしない。だがそれを可能にしたのが、ネオフォボスの洗脳技術でありGGGローダーの技術力なのだ。
「ジェニよ」
「GGGローダーと呼べ」
「ジェニ殿。戦闘員の配置、完了致しました。ご命令を」
「…………」
 GGGローダーは部下も敵もあんまり自分をその名前で呼んでくれないことに軽くいらだっていたが、全く気にしていないかのように手をかざして見せた。
「我が配下の者たちよ、聞け。
 イレギュラーズどもがアストラルレイヤーへの門を開こうとしている。
 だが、世界を改ざんする力は我らにこそ相応しい。
 ポートとなっているエリアを襲撃し、接続者であるレッドジャスティスを捕らえるのだ!」
「「ハッ!」」
 一斉に返事を返す幹部達。GGGローダーは顎を上げ、そして満足げに深く頷いた。

これまでの再現性東京 / R.O.O

トピックス

PAGETOPPAGEBOTTOM