PandoraPartyProject

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ザーバクライシス

 量産型エクスギアEX『百合華』は、新設帝国軍に広く配備された新兵器である。
 新皇帝即位にあたって、競った候補者たちの意見を尊重し軍部が行ったプロジェクトのひとつであり、首都防衛能力の強化を目的としたものである。
 飛び越えて通れそうなほど巨大な、真っ白い人型ロボット。彼らは背負ったスラスターユニットから魔力を噴射しながら、器用に着地。
 五体ほどが並び、そして一斉にアサルトライフル型の砲を構えた。
 まるで歩兵が整列したかのような格好だが、発する威力は桁が違う。
 そんな彼らが何に対して警戒したのかといえば……。
「そこで止まれ、ザーバ・ザンバ! 貴様には帝国への反逆の疑いが――」
 かかっている。と言おうとした筈だ。
 しかしその瞬間には呼びかけていた隊長機の頭部が吹き飛んでいた。
 何が起こったのか理解できないという様子で振り返る、左右の百合華たち。
 浅黒い弾丸のようなものがまっすぐに飛んで隊長機をヘッドショットしたかのように見えたが……いや、弾丸などではない。
「疑うもなにもない、のう」
 ぐらりとよろめき、仰向けに倒れる隊長機の胸の上。
 ザーバ・ザンバが穏やかに笑って立っていた。
 間違う筈もない。彼だ。
 彼ひとりだ。
 ザーバは助走を付けてジャンプし、そして巨大なロボットの顔面を殴りつけたのである。
 ただそれだけで、帝国の新兵器は破壊されたのだ。
「足りない、足りない……この程度では空腹だのう」
 目を見開き、そして左右の百合華たちを見る。
 サイズ差はあまりに大きいが、それでも、百合華たちは恐怖に後じさりした。
 ザーバが、飛び上がる勢いを付けるべくグッと腰を落とす。

 スチーラー鋼鉄帝国、首都スチール・グラード。
 つい昨日新たな皇帝が即位した国。
 史上初の選挙によって選ばれたイレギュラーズの皇帝には、最初の仕事が舞い込んでくる。
 それは記念日の制定だろうか? それともテーマパーク建設事業の発案だろうか? それとも文官たちを揃えて地盤を固める作業だろうか? それともそれとも各所への気の遠くなるような挨拶回りだろうか。
 否、どれでもない。
 書類を握りしめた文官が、皇帝のもとへと走る。
 そして走りながら、周囲の者へと怒鳴りつけた。
「ザーバ襲来! ザーバ襲来だ! ギアブルグごと首都へ進撃してきている!
 とったばかりの首都を奪われたくなかったら、今すぐイレギュラーズを集めろ!」

 ――ザーバ・ザンバが首都へ進撃しました!
 ――同時にノーザンキングス連合王国も首都への進撃を開始しています!

これまでの再現性東京 / R.O.O

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