PandoraPartyProject

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グランドウォークライ

グランドウォークライ

 鋼鉄の帝都スチールグラードを、機動要塞ギアバジリカが突き進む。
 無数の鉄塔を思わせる脚が石畳を貫き、超巨大な質量が無人の荒ら屋を次々に挽き潰した。

「なあ。俺達の故郷は、いつから可愛い可愛いお姫様のお部屋になっちまったんだ」
 ブリッジの司令席に背を預けるヴェルス・ヴェルク・ヴェンゲルズ(p3n000076)は、前方のスクリーンに投影された街並みに一言だけぼやき、そのまま絶句した。
 町中にクリスタルが突き立ち、淡い桃色の光を放っている。
 それは異様な光景だった。いたるところが、桃色に染まっているのだから。
「敵部隊、左方へ撤退していきます!」
「何を企んでいやがる。まあいい、進撃を続ける!」
 このタイミングでの迎撃戦を予測していたヴェルスは、そう答えると下唇を噛んだ。
「おい、あれ」
「路面汽車(スチームトラム)、つっこんできます!」
「まさか、いや――全員掴まれ! なんでもいい!」
「――ッ!」

 ――衝撃。
 クルーの数名が、硬い鉄の床へと強かに叩きつけられた。
「爆薬を仕込んでいやがった!」
「路面汽車爆弾だ!」
 クルー達が怒声をあげる。
 爆炎を突っ切ったスクリーンに表示されたのは、ギアバジリカへ迫る無数の路面汽車だった。
「数は、不明。見える限り二十三です!」
「ヴェルス! いいから、このままつっこませなさい!」
「なるほど。軍人のお嬢さん、そいつは考えたね。全くの同感だ」
 にやりと笑ったヴェルスに、リーヌシュカ(p3n000124)は瞳をとびきり輝かせた。
「これが帝国軽騎兵(フルメタルキャバルリー)のやり方よ!」
「万事了解だ。速度を上げろ! このまま突っ切る!」
「了解!」
 立て続けの爆発と振動に、床が大きく傾いた。
「左舷脚部に異常! 進行速度低下! ですが、まだいけます!」
 正面の数台は直撃したものの、左右から迫っていた多数の路面汽車達は、後方で爆発四散する。
「Хорошо(ハラショー)! 予想的中じゃない!」
 帽子を押えながら床を転げたリーヌシュカが跳ね起き、口角をつり上げた。

 進撃は止まらない――が。
「列車砲です!」
「だったらスピード勝負と行こう。連中と俺達、どっちが早いかな!」
 ぞろりと生え揃った砲門が、一斉に輝く。
 轟音が届いた直後。砲弾が掠めた天井の半分が空の彼方へ消えていった。
「良い日差しですね、軍団長」
「ああ、絶好の戦日和ってやつだ」
 ショッケン・ハイドリヒ(p3n000161)とヴェルスがひじを打ち合わせる。
「で、次は何だ?」
「蒸気機関車です」
「なるほど」
「蒸気機関車爆弾と思われます!」
「いいね、きやがれ!」
 衝撃――しかし腹に大穴を開けたギアバジリカは、止まらない。
「見えました! 城です!」
「このまま体当たりだ。エクスギアEX(エクス)! 発棺準備!」
「了解! エクスギアEX(エクス)! 発棺準備!」
 巨大な歯車が駆動を始める。
 アームクレーンによって運ばれた棺型の砲弾が巨大チャンバーへと次々にセットされた。

「悪いね。こんな事に付き合わせちまって。本来こいつは、俺達の問題だ」
 ヴェルスは改まった表情で非ログイン時のデフォルト文言を見つめた。
「申し訳ないが、今はその『攻略』ってやつに甘えさせてもらう。借りは必ず返させてもらうが」
 イレギュラーズはゲーム様に変貌したネクストにおいて、イベントの攻略を突きつけられていた。
「けど何もかもは、勝ってからだ。俺も行くが、なんたって、ここからは君等こそが頼みの綱だ」
 これまでR.O.Oの攻略を続けてきたイレギュラーズは、今や切り札に等しい。
「だから願うぜ。勝利が俺のWISHだ。そして必ず、俺達の手でつかみ取る!」
 半ば瓦礫と化したブリッジの鉄くずの山に、ヴェルスは片足を乗せて城を指さす。
「ダークだかピンクだかウイッスだか知らねえが、まずはこの街を、俺達の手に取り戻す!」

「エクスギア発棺準備良し!」

 ――発棺シーケンス開始。
 ――発棺まで3
 ――2
 ――1
 ――hallelujah

「――行くぜ! 作戦開始だ!」
「了解!」

 ――新規レイドイベント、グランドウォークライが開始されました。
 ――軍閥ゼシュテリウスが、帝都中心へ到着しました。決戦です!

これまでの再現性東京 / R.O.O

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