PandoraPartyProject

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夢の終着点

 あの呼び声をきいてから、頭はずっと、まどろみの中にいるようだった。
 全てが曖昧で、茫洋としていて――果たして、何が、希望であったのか、それすらも解らぬほどに、ぼんやりとしている。
「右翼巨人部隊、か、壊滅状態です……!」
「さ、左翼騎士団もです……! い、イレギュラーズ達が中央に……!」
 ああ、イライラとする。分からないなりに、神経が逆立つのだけは自覚できた。
 僕の夢を壊したのは、幻想と言う国だ。僕を壊したのは、幻想と言う国だ。
 だから僕には、この国を壊す権利があるはずだ。そう思う。
 そう思っていた――本当に?
『ああ、お美しく、哀れなクローディス様』
 僕の頭の中でレヴォンが言う。
『もはや自分が何を行っているかもわからないのですね。何とも、ああ、その様が喜ばしい』
 本当にレヴォンなのか。分からない。だが、それはたぶん、僕が思う、レヴォンと言う存在なのだろうとは思う。
『レアンカルナシオンは国王の暗殺に失敗して敗走。この私も、じきに命潰えるでしょう! ああ、哀れなクローディス。お前にはもう何もない』
 違う! 違う! 僕にはまだ、夢がある。ベルナールがいる!
『ああ! 愚かしい、哀しいクローディス様。もう気づいているのでしょう、この呼び声を受け入れた時に! ベルナールと言う人間は、もはや死んでしまったのだと』
 違う!
『ああ、ああ、あなたのその顔が見たかった! あなたのその顔を見て、その醜く苦悩する顔をみて逝けるのならば、こんなにも幸福な事はない――』
 止めろ! やめろ! やめろ!
 レヴォン、やめろレヴォン……僕をそんな目で見るな……。
『あなたは結局』
 リルの顔が頭に浮かんだ。
『人の期待に応えられないのが怖かったのですね。ただほしかったのは、ありのままの貴方を受けれてくれる人だけだった。
 私は受け入れようとしましたよ、クローディス様。貴方に恩義を感じていました。本当です。
 でも、可愛そうなあなたは、それを受け入れることが出来なかったのですね』
『だから、他人を傷つけることでしか自分を維持できなかったんだね』
 アンジェロが、そう言った。
『その罰を、受けなければいけないんだ。貴方は』
 アンジェロが、言った。違う、これはきっと、アンジェロではないのだ。なんなら、レヴォンでもないし、リルでもない。これは最初からずっと、僕だったのだ。恐らく魔種とかして消えゆく最後の人間性のようなものが、僕を今、苛んでいるのだ。
 僕は間違えた。どこから。多分最初から。
「貴方が本当に欲しかったものは、あの二人じゃなくて何だったの?
 欲しい物はちゃんと言わなきゃ、だめなのよ。
 答えて。私は、『貴方』について知らない。私は、今の『貴方』しか見ていないもの」
 だから――この丘で。死に瀕した僕にそう言ったあの女 の問いに、僕は。
「――――」
 何かを言おうとしたのだけは解る。
 だが、きっと、なにも、言えなかったのだろう。
 失望したように目を伏せる女の顔が、僕がこの世で見た最後の光景になる。
 この時。本当の望みを言うことが出来るような人間だったら。
 なにか、変わったのかな。

 ヴィーグリーズの丘にて、イレギュラーズ達がクローディス・ド・バランツを討ち取りました!
 決戦に『守人』アンジェロ、『太陽の翼』ハイペリオンが友軍として到着しました。
 イレギュラーズ達の快進撃が続いています!

これまでのリーグルの唄(幻想編) / 再現性東京 / R.O.O

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