PandoraPartyProject
ミスティルテインの枝折り
幻想王国レガド・イルシオンの夜は、いつにも増して騒がしかった。
獣の咆哮や爆発音。剣のぶつかる音や雷の音がひっきりなしに響いている。
「ここも怪物だらけか。一体どうしてしまったっていうんだ」
フルフェイスヘルメットの奥でため息をつく男、ギルド風護院のマスタークリス・ヴァイラス。巨大な鴉めいたモンスターを魔力を纏った両手剣によって斬り捨て、暴風と雷の魔法で焼き払っていく。
ぼとぼとと落ちていくモンスターたちの死骸をまたぎ、十字路の脇より現れた一つ目の巨人へと剣を構える。
「やはり、あの噂は本当だったということかな……」
咆哮をあげ、棍棒を振り上げる巨人。
が、巨人が振り上げたそれを下ろすまえに、ふっと脱力し仰向けに転倒。
そのまま気を失ってしまった。
何が起きたのかわからず剣を構えたままのクリスを、『待て』と野太い声が制した。
「俺だ『騎士様』、魔法は撃つなよ」
巨人の影から現れたのは、クリスが見上げるほの巨漢をした……。
「『パン屋』」
「いかにも」
どこからどう見てもパン屋の店長さんといった風貌の男はしかし、本名不詳のパン屋は固そうなのばし棒でを肩に担いだ。
「くるみ亭の店長がこんな所で何を? 怪物だらけで危険……だけれど」
心配いらなそうだな、と顎をあげるクリス。
「『衛兵さん』に呼ばれてな。どこもかしこも人手不足らしい」
あいつだ、と親指で後ろをしめすと、茶色いポーション瓶を一気飲みしているライオット・スタークがいた。
騎士様、店長、衛兵さんと本名以外で呼ばれがちな彼らが一同に会することはそうない。
それぞれが別々の活動範囲をもち、町や店の平和やを守っている者たちである。
しかし……。
「緊急事態でね。神翼庭園ウィツィロと古廟スラン・ロウから大量の魔物が湧き出したらしい。
ここを襲ったのもそいつらさ。というか……幻想のあちこちの領土をモンスターの大群が襲ってる。まるで蝗害だな」
「なるほど、どおりで……」
クリスはスラン・ロウから湧き出した大量のモンスター退治に追われ、ギルドメンバーの殆どが出払った状態にあった。
幻想貴族たち自己防衛に追われ、領土を貰ったというローレット・イレギュラーズたちも例外ではない。数ある冒険者ギルドもその対応にかり出されているという。
「この騒ぎは、しばらく収まりそうにないな」
重々しく述べる店長さんに、クリスとライオットはため息まじりに頷いた。
「とにかく、スラン・ロウの方は私たちの仕事になりそうだ。それでも止めきれるとはおもえないけど……。ウィツィロのほうは?」
「そっちは、ローレットに依頼が出たらしい。あれだけの規模のギルドが動けば、完璧にとは言わずともかなりの被害を抑えられるはずさ」
クリス、ライオット、そして店長さん。みなローレット・イレギュラーズに縁のある者たちだ。それゆえ彼らの力と熱意を知っている。
「神翼庭園ウィツィロへの討伐依頼は彼らに任せよう。その間、俺たちは……」
剣を両手に握って振り返るライオット。
両手剣をまっすぐに構え振り返るクリス。
両手にパンを握って顔を厳めしくする店長さん。
「「幻想の町を、守る!!」」
――限定クエストミスティルテインの枝折りが解放されました!
これまでのリーグルの唄 / 再現性東京
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