PandoraPartyProject

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Carpe diem

 誰もが過去を羨む。
 あの日々は良かったと。あの日々は至高だったと。
 あの日々は散々だったと。あの日々は碌でも無かったと。
 ――誰も忘れない。
 或いは忘れられないのだ、過去は。

「で? つまりホルスの子供達は使えねぇってか!?」
「だからもーさー初めからそういう説明があったでしょー? エドガーのバッカ君はアホだなー」

 だぁれがなんだってぇ!? ――とある一室で取っ組み合いの喧嘩が行われかけていた。
 話題はラサで話題の『ホルスの子供達』
 過去の。死人の姿を再現する悪趣味な死者蘇生――しかしその『姿を再現する技術』を狙った一団があった。
 色宝を狙う大鴉盗賊団とは異なる団体。それは『レアンカルナシオン』
「うるせ――!! 世の中やってみなきゃ分からねーだろうがよ!!
 人類はそうやって進歩してきたんだ!!」
「おぉ『やってみなきゃ分からない』で空間転移を試してそのまま行方不明になった奴はやっぱり言う事が違うね!」
「テメ――!! ぶっ殺すぞ!!」
 白き衣を纏いてからかうような口調で話すのはアルハンドラなる人物。一方で軽く言葉を交わしただけで凄まじく沸点が低い様子である蒼き女性はエドガーバッハ。
 双方ともに『既に故人』である人物の名を持つ者達だ。
 だが彼女らは死人の姿を模すホルスの子供達ではない。ホルスの子供達は死人の姿を模しても、その記憶に根差している者にとって都合のいい言葉ばかり吐き出す――人形やゴーレムに近い存在である。思い出や記憶、独自の魂を感じる事は出来ない。
 ――それと比べれば彼女らは異なった。
 表情は柔軟、零れる言葉も様々であり人形ではない。いやそればかりかエドガーバッハの方は生前とは姿はおろか『性別』も異なっていて……
「結局、ホルスの子供達が使えぬ理由は余計な神秘が混ざっているからだ。色宝に加え『博士』の技術が入り乱れている。これを器には出来ん……私達の様な存在を増やす為には『生前の姿によく似ている』上で、純白足る入れ物でなければならないのだ」
 同時。『そういった筈だがな』と言葉を紡ぐのは――カーバックという男。
 彼は大鴉盗賊団の一員としてファルベライズ遺跡を巡る戦いにも幾度か出現していた者である……が、先日。大鴉盗賊団の多数がネフェルストで迎撃されたのを機に離脱して別なる行動を取り始めた。
 それは彼がとある目的を携えて大鴉盗賊団の中に混ざっていたから。
 『ホルスの子供達』――精度が高いと思われたゴーレムを確保するために――しかし。
「それをそこのバカが『どうしても』と強行するから無駄な足を……」
「いや俺はそんな事は言ってない。あーあー言ってない!」
「往生際が悪いぞ」
「まぁバカはともかくとしてどーすんの? 結局完全な無駄足?」
 耳を塞いで『あーあー』言い出したエドガーバッハを放って二人は話しだす……途中の経緯は割愛するが、要するに彼らは高精度なゴーレムを欲していた、が。いざや手に入れてみれば期待に沿う物ではなかったのだ――彼らの言う『器』とやらの一端にする為には。
 ファルベライズ遺跡を巡る中において噂の『博士』とやらが色々と手を加えていたが故に。
 少なくとも、遺跡の中にてイレギュラーズ達との邂逅とやり取りの果てに手に入れた一体を解析した結果がソレであった……或いは二体、三体と研究を続ければ話は別かもしれないが――或いは。

「『博士』をとっちめてボコボコにして連れてくりゃあいいのかもしれねーな」

 飴玉。口に含んでかみ砕きながらエドガーバッハは言葉を紡ぐ。
 『博士』。ホルスの子供達の技術を造り上げた人物。
 恐らく大多数の人間にとって死ぬほど迷惑な事をしている人物――だが上手く利用できればと。
「やっぱもう一回行くかファルベライズ。今ならまだ侵入出来るだろ」
「マジでー? 奥からなんか出てきたとかいう話も聞くよ? あっぶなくない?」
「俺が雑魚に負けるかよ。テメェも『古巣』にはなんか用があるんじゃねぇのか?」
 アルハンドラに指立てながら、視線はカーバックの下へ。
 カーバック。カーバック・ファルベ・ルメス。
 元々はパサジール・ルメスの民であった『記憶』を持つ彼にはなんらか因縁もあるだろう? と。
「……私は最早あの地に執着などない。ファルベリヒトがどうであろうと終わった事だ」
「ほーん。別に大精霊の名前なんて出してねーけど?」
「が、貴様一人に行かすのは眼に見えた地雷だ。行くだけ行くか」
 はっ??? と零すエドガーバッハを無視してカーバックは立ち上がる。
 ファルベライズ遺跡では動きがあるという。最深部からは金色の圧を纏った存在が姿を現し、大鴉盗賊団首領コルボも遺跡中枢部付近で目撃されたと……
 蠢く理念の数々は遂に最終局面を迎えようとしている訳だ。
 死者を歪に再現する博士と、色宝の神秘を狙うコルボ一党……
 そしていずれなる目的も果たさせまいと介入するラサ商会と――イレギュラーズ達。
「大精霊の膝下で暴れるとは、奴が生きていれば憤怒しそうな状況だ」
 瞬間、カーバックは想起していた。
 かつての栄光。まだファルベライズが忘れ去られてはいない頃。
 悪しき獣を打ち祓わんとする……太古に光り輝いていた、偉大なる大精霊の姿を。

 恐ろしい伝承の魔物との戦い以来。
 今再びファルベライズにおいて――大きな戦いが始まろうとしていた。


 ※<アアルの野>最深部に到達したイレギュラーズが『博士』の痕跡を発見しました!
 ※大烏盗賊団首領のコルボも遺跡中枢部へと至り、各組織が動き出しています……!

 グラオ・クローネ2021の募集が開始されています!

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