PandoraPartyProject

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大鴉の羽ばたき

大鴉の羽ばたき

 あれはクソみてぇに暑い日の事だった。
「どうした、お前。辛気臭ぇ顔しやがって」
「……うるせェな」
 酒場で1人、日も高い時間から酒をかっくらっていたコルボは目の前へ座った男へ露骨に顔を顰めて見せた。だが相手はコルボの様子など知った事かと言わんばかりに酒を注文し、それを一気飲みするとドン、とテーブルへ置いた。
「なんだなんだ。おっさんが聞くか?」
「いらねェ」
「まあまあそういわず。仲間ってヤツだろ」
 まだまだケツの青かった頃だ。結局相手に根掘り葉掘り聞きだされ、折角遺跡荒らしに向かったと言うのにただの骨折り損だった話をする羽目になった。
「盗賊なんてそんなもんだろ。だから誰かから奪っていくんだよ」
 呵々と笑う彼もまた盗賊だ。彼の言う通りコルボと彼は同じ『大鴉盗賊団』の仲間であり下っ端。故にまあ、多少は他よりも話す機会が多かったかもしれない。
 この頃の大鴉盗賊団は個人活動が多く、所属してはいるもののそこまで団としての活動という訳でもなく。故に燻っているところもあった。だからこそ意気込んだのに――これだ。辛気臭い顔だってしたくもなるだろう。
「コルボ、力を付けたいなら手段は選ぶなよ」
「あ"? なんだ藪から棒に」
 唐突な彼の言葉にコルボは片眉を上げる。早々に酔っぱらったか?
 けれど相手は至極真面目な顔をして告げていた。茶化すつもりだった言葉も思わず呑み込んでしまう。
「今が気に入らねぇなら上り詰めてやれ。そのために手段を選ぶな。盗賊ってのははみ出しモンなんだからな」
 それは結局、この世界中にのさばっているスラムの者と同じだ。奪わなければ奪われ、弱者に落ちて死んでいく。真っ当な事を考えれば潰れるのはこちらだ。
「お前が大鴉盗賊団のトップにでも上り詰めれば、今よりよほど張り合いが出るだろうさ」
「……へェ」
 束の間呆けたコルボだったが、その言葉にニヤリと笑みを浮かべる。この下っ端にいる俺が大鴉盗賊団のトップへ。それはなんとも分かりやすい力の示し方だ。
「じゃあそンときはてめェを右腕にしてやるよ。えー……」
「おいおい、最初に名乗ったろ……」
 語尾を濁らせたコルボに呆れたのか。相手は苦い顔をして自らの名を口にした。

 ――随分と昔の話だ。

「あンときなら負けてただろうな」
 返る言葉はここに無い。彼はコルボの命令のままに部下たちを取りまとめんと奔走している。決戦の時はもうすぐだろう。
 あれからコルボは何でもやった。この手を何度血に染めた事か。この体が何度血を浴びた事か。自分の血も相手の血も、かつての仲間と呼ぶべき盗賊たちの血も混じっている。大鴉盗賊団のトップに上り詰める頃には傭兵たち――特にディルクなどの筆頭たち――が煩わしくてならなかった。
 いいや、本当は全てが煩わしかったのだ。自らを邪魔する彼らも、同業者も、なにもかも。
(それももう終わる)
 終えるために更なる力を欲した。教えられたように手段は厭わなかった。必要ならば誰もの敵に、世界の敵にだってなってみせよう。コルボが全てを手にしてしまえばそんなものはすべてなくなるのだ。
 なんてところまで思ったコルボは不意に顔を顰め、首を振った。
「……チッ、思い返すなんてガラにもねェ」
 イレギュラーズを全員ぶっ潰す。そして俺は全てを手に入れる。それだけで良い。

 倒せるモンなら倒してみやがれ――イレギュラーズ!



 ※<アアルの野>最深部に到達したイレギュラーズが『博士』の痕跡を発見しました!
 ※また、大烏盗賊団首領のコルボも遺跡中枢部へと至っているようです……!

 グラオ・クローネ2021の募集が開始されています!

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