PandoraPartyProject

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アンチ・ウォーカー・フィールド

 ――ジョン・ウォーレン・ロスフェルドは混沌世界各地に商いの手を広げているロスフェルド財閥の長だ。老齢ながらその商才と当主としての鋭さは年々威圧感を増しており、彼の全盛は衰えるどころか留まる所を知らない。
 そんな彼はこの世の外より訪れし者。
 『ウォーカー』に対して反感を持っている人物でもある。
 厳密には無差別にウォーカーに対し敵意を抱いている訳ではない。彼が危険視するのは混沌世界の統治にウォーカーが関わる事だ……あくまでもこの世の政治は、統治は。混沌世界の民でのみ成されるべきだと、そう考えている。
 そんな彼にとって先日の世界サミットで行われた領地政策などは『遺憾』極まる事だった。
 その折からか――或いはそれ以前からか――ハッキリとはしないが。
 ジョン・ウォーレン・ロスフェルドは『ある組織』と内密に関わりを持ち始めていた。
 同じく『反ウォーカー』を掲げている組織に……

「――つまり、失敗したと」
「ま、つまりはそーいうこったな。カーバックのクソ馬鹿野郎がしくじりやがって……意志を持ってるからなんだっつーんだ。いいからサンプルの一体でも持って帰ってこいやっつー話なんだよクソボケカス馬鹿がよ」
 その組織が一人とジョンは会話を行っている。
 対面に座る――と言っても椅子に腰かけながら机に両足を載せているその姿、言動はおろか態度も非常に酷い。ジョンは一切気にしていない様子だが、普段からこうであるから許容しているのか、それともジョンの器が広いのか。
 いずれにせよ会話の中で出た単語――
 『ホルスの子供達』と言えばラサで渦中のファルベライズ遺跡に関する事であった。
 遺跡の奥で発見された土塊。
 死者の姿を形取り、まるで再現されたかの様に惑わしてくる存在達。
 ……それらを歪なる死者蘇生と呼ぶ者もいる。なんでも事の元凶には『博士』なる者が関わっているのだとか。
「あーイライラするぜ、どいつもこいつもカスかよカスカース。なんだってゴーレム共が意志をもって動、くのはともかく速攻形作るのはどーいう理屈なんだ? 興味がねーから別にしりたくもねぇがパッと分かんねぇのが苛つくぜクソがよぉッ!! クソカスカスカ――ス!!」
「お前は本当に悪口の語彙がないな――で、カーバックからはなんと?」
「あ”ぁ”ッ!? コルボとかいう悪人面は奥をまだ目指すんだとよ! それについてくとさぁ!」
 口に含んでいる飴玉を盛大にかみ砕きながら『彼』は天にのたまっていた。
 カーバックとはファルベライズ遺跡を巡る戦いの中において何度か目撃されている大鴉盗賊団の一人であったはずだが……物の言い方からするに、大鴉盗賊団よりも『こちら』に属している人物なのだろう。スパイかなにかか――?
「しかもあの野郎イレギュラーズに生かされたかなんかで『連中は面白いな』とか言ってやがってよぉ……なーにほざいてんだボケッ――! イレギュラーズに興味を抱てる暇があったらテメーさっさと博士とかいうロクデナシをぶっ殺してこいや――!! そんで『土塊』手に入れてこんかい!!」
「――お前達はそんなにアレが欲しいのだな」
「ちげーよ! んなに興味はねぇ、ただ精巧なゴーレムがあると便利だから手に入れてーだけだ!」
「だからそれが欲しいという事だろう」
 口の中で笑みを含ませるジョン。
 『彼ら』がなぜ高度なゴーレムを欲するのか、それはどうでもいい。
 だが自らも陰ながら支援している組織が、より強大な力を持つ為なのであれば歓迎だ。
 自らの『反ウォーカー』の思想を共にする――彼ら。

 『レアンカルナシオン』の繁栄は。

 彼らもまたウォーカーを敵視している組織だ。ウォーカーを不純なる魂などと蔑み……アドラステイアの方でもその構成員が目撃されていたという話がある。ジョンよりも直接的にウォーカーに害を成してくる組織であると言えるだろう。
「……いずれにせよ、ラサの方で発見された遺跡を巡っての争い、と言う程単純ではなさそうだな」
 ジョンは思考する。あの遺跡を巡って複数の思惑が関与しているのは間違いなさそうだ。
 大鴉盗賊団。ラサ商会。博士(せんせい)。そしてその間を影の如く潜む『彼ら』……
 竜の姿すら歪に再現されたというホルスの子供達――そして色宝。
 遺跡の最深部に続く道が発見され、さてどう状況は動くのか――
「あーつかめんどくせーな……俺もその内あっちに顔出すか? 冬でもあちー場所なんざ御免だが、いい加減影でごちゃごちゃ支援だけするのはマジつまらねーんだよなぁ……偶には俺にも動かせろよ。カーバックのバカもぶん殴って来るからよ」
「ほう」
 と、その時。
 青き髪を携えた『彼女』の紡ぎに、ジョンは一息零して。
「動くのかね――エドガーバッハ。お前が」
「うるせぇクソジジィ。『生前』の俺は、割とアウトドア派だったんだぞ。身体うごかさねーとキノコ生えてくるわ。あのパーティでも派手に動いてやるべきだったか……?」
 嘆息し。エドガーバッハと呼ばれた『女性』は席を立つ。
 至極めんどくさそうに。髪をかき上げながら。
「魂に反応して形を作る土塊だァ?」
 その口端を吊り上げて。
「ま――実際に見てみたら面白いかもしれねぇしなぁ……?
 アアルの野? 天国ってか? ハハッ! 死者が出た所だから天国たぁ――大したジョークだぜ」
 クリスタルの迷宮。アアルの野に――興味を示していた。


*ファルベライズ遺跡の奥で『クリスタルの迷宮<アアルの野>』が発見されたようです!

これまでのファルベライズ / これまでの再現性東京

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