PandoraPartyProject
アアルの野へ至る――
アアルの野へ至る――
ファルベライズ遺跡。それはラサの砂漠地帯で発見されていた『封印の施された前人未踏』の地である。
御伽噺に因れば大精霊が眠りに着いた神秘的な場所である。
外郭から、内郭を目指したイレギュラーズは最奥となる異空間ともするクリスタルの迷宮へと辿り着いた。
中核へと通じる扉より姿を現した土の精霊種であり守護者と自らを名乗る少女『イヴ』がその姿を現し、イレギュラーズへと『最奥』についての情報を齎した。
彼女曰く、内部には『無数の土塊』――否、正確に言うならば色宝を使用し、歪にも死者を『再現』する蘇生方法を駆使したゴーレムの一種――である『ホルスの子供達』が存在して居た。
本人を蘇らせたわけでは無く、それを再現しただけだ。魂も記憶も存在しない人形遊び。
故に、恐ろしい事に色宝と素体となる土塊人形があればその死者は幾度でも蘇るのだと少女は告げていた。
その技術を作り上げたのは『博士』と呼ばれた男である。
彼はイヴの目を盗み色宝を確保して錬金術の応用としてそれを為し遂げたそうだ。
「――博士(せんせい)と呼ばれているのはラサの砂漠地帯で『アカデミア』と呼ばれていた私塾を開いていた旅人でしょう」
渋い顔をしたファレン・アル・パレスト(p3n000188)はイレギュラーズの報告を受け、そう言った。
彼の幼い頃、商家の一人娘が行方不明になるという事件が発生した。少女の名はジナイーダ。
夏の日差しの厳しい頃、ファレンがイレギュラーズに『ジナイーダと思わしきキマイラ』の討伐を依頼した事はイレギュラーズの中にも覚えがある者が居るかも知れない。
「リュミエ様やレオン殿からの情報によれば――」
ファレンはイレギュラーズの中にも面識がある者も居るかも知れない、と前置きする。
「ジナイーダは、魔種ブルーベルやリュシアンと共に『アカデミア』に通っていたそうです。
当人達曰く、ブルーベルは奴隷商に拐かされ藁をも掴む思いで冠位魔種の誘いで反転し今に至っていると。
リュシアンと呼ばれた魔種は先の戦いでもイレギュラーズの前に姿を現したそうですね。
彼は――……彼は、ジナイーダに懸想して居たそうですが、彼女が博士と彼の助手、タータリクスの手でキマイラに化した事で絶望し、その最中に反転の誘いを受けたとか」
タータリクス、と言う名も出たが飯屋の息子(薬師志望の)であった彼がブラックマーケットで流浪の錬金術師である博士の噂を聞き『アカデミア』に辿り着いて錬金術に手を染めたらしい。
その行く末はイレギュラーズの方が詳しいだろうが、妖精女王に懸想した結果、冬を齎し妖精郷を舞台に最大級の愛の告白と共にその命を儚く散らした――詰るところ、全てが『博士』と呼ばれた『推定・故人』から始まった話なのだ。
「私共で纏めた登場人物の情報はここまで。イヴという少女については白紙にも等しい。
大鴉盗賊団の次の動きは未だ分かりませんが……『中核』の扉が開かれたとなれば、その先に進むことは間違いないでしょう。
我々、ラサ傭兵商会連合としてもそれを看過出来ない」
「そう、そうだよね。……放置していればあの『死んだ人の人形』が沢山出てくるかも知れない。
それに亜竜? 竜種? ネフェルストを襲ったヤツらもまた来るかも知れないんだ。
それに、イヴも助けて欲しいって言った。それを放置することは出来ないよ。」
底まで話を聞いていたレーヴェン・ルメスは神妙な顔をした。イヴはあくま扉の守人であり、外に出て行く土塊やモンスターへの対処を行う事はしないだろう。
そも、彼女が敵である上方であるかは定かではないのだから――
「イレギュラーズには我々から正式に、クリスタルの迷宮への探査を依頼します」
「その、クリスタルの迷宮って呼びにくいね。ファレン様……何か、通称を付けたりしてくれない?」
レーヴェンの言葉にファレンは悩ましげに眉を吊り上げた後、
「『アアルの野』」と言った。
「アアルの野?」
「ええ。イヴと名乗る少女より彼方の場所について確認した際に『博士がそう呼んでいた』と聞きました。
旅人である彼のネーミングでしょうが……死後の世界の楽園をそう呼ぶのだそうです。
……生憎、存在するのは楽園でなければ、紛い物の死者だらけですが」
*ファルベライズ遺跡の奥で『クリスタルの迷宮』が発見されたようです!