PandoraPartyProject
かみさまの疵痕
――『天義は嘘をついている』
――『法王は魔種を見抜けない』
――『子供たちに自由な未来を』
――『アストリアの悲劇を繰り返すな』
――『神聖な国を取り戻そう』
そんな張り紙を、『探偵』サントノーレ・パンデピス(p3n000100)は苦々しい顔で引き剥がした。
「こんなチラシが最近じゃああちこちに貼られてる。
これ、正しいことを言ってるように見えるか? ラヴィちゃん?」
後ろを歩く少女ラヴィネイル・アルビーアルビーへ、サントノーレは身体ごと振り返る。
黒く袖のちょっぴり余ったドレスをきた、いまだ顔立ちの幼い少女。
「……ん」
少女は少しだけ言いよどんでから、首を横に振りかけて、そしてうつむいた。
この国がアストリア枢機卿によって圧政をうけていたこと。アストリアが魔種だったこに気づけず、枢機卿などという高い地位に長年つけてしまっていたのもまた事実だ。
その事実は巨大な疵痕となって、この国に重く横たわっている。
たとえ冠位魔種ベアトリーチェを倒したとしても、『自分たちが間違っていた』という事実だけは、消すことができないのだ。
そして同時に、一度崩壊した政治体制や隠蔽されていた数々の悪からの回復についやすべく国の体力は疲弊し、カルトの台頭を許すまでになってしまった。
「そういうこった。カルトってのはいつも『正しいこと』を言いやがる。
けど、いくら書いてあることが正しいからって町中勝手に貼り付けるのは正しくない。だよな?」
「はい……」
「そんな奴とは友達になりたくない。だよな?」
「はい……」
「そうやって拒絶された連中は、日常に居場所をなくし、カルトだけを居場所にする。『一生懸命やってるのに酷いよね』ってなもんだ」
チラシをくしゃりと握りつぶし、サントノーレはそれを投げ捨て――ようとして、ちらりとラヴィネイルの顔を見た。気まずそうに紙くずををポケットに入れる。
でもって、同じポケットからコインを数枚取り出すとそれをラヴィネイルへ突き出した。
「そこのカフェで待っててくれ。しゅわしゅわするソーダにアイスクリームをのっけてもいい。いまから『助っ人』を連れてくるから、それまでな」
「はい」
ラヴィネイルは従順だった。
大人のいうことに頷く。出されたものを素直に受け取る。
そんな子供だから。
そんな純粋さだから。
彼女は。
……カラン、とウェルカムベルの音をならして、ラヴィネイルがカフェへ入っていく。
その後ろ姿にサントノーレは目を細めた。
反射的に取り出した煙草をくわえ、火をつける。
閉じる扉に見える背中。
ぴったりと黒い服に覆われた背中。
あの背中には、『魔女の刻印』が焼き付いているのを知っている。
「……くそったれが」
手帳を開く。
国から依頼された内容はこうだ。
独自の神ファルマコンをかかげ、独立都市アドラステイアを名乗った集団が天義東部に出現。
塀で覆った都市には戦災孤児たちが集められ、内部では魔女狩りが行われているとのこと。
また国内から捜索願のでた子供も多数内部に存在しているとの報告あり。
内部を調査し、報告せよ。
「子供の涙ひとつ、拭う余裕もないのかよ。大の大人が」
それは夏の終わりもさしかかる、天義首都フォン・ルーベルグでのこと。
西は妖精郷を冬が覆い、東は豊穣郷に呪詛が蔓延り、南は再現性東京に怪異が渦巻く。そんななか、順調にというべきか……天義もまた、悪しき信仰に食われようとしていた。
――『独立都市アドラステイア』が発見されました。調査依頼がローレットへ発行されています!
※サミットの結果、各国に領土が獲得出来るようになりました!
キャラクターページの右端の『領地』ボタンより、領地ページに移動出来ます!
→領地システムマニュアル