PandoraPartyProject
小さな約束
癒しが届かないなら――
加護が届かないなら――
世界は理不尽だけれど、それでも順当に回っている。
なら、その痛みを分けて欲しい。重たい荷物は二人でなら持って居られるはずでしょう?
シルキィは願った。『あの子』のその力を、鏡面世界をほんの一部でいいから、どんなに歪でもいいから。
自分の神秘の全てを懸けて、再現と防御を。
シャルロットの負担を少しでも肩代わりできれば。
シルキィの周りに漂う白き光にシャルロットは彼女を呼んだ。「ダメ」と「嫌」と。
「……可笑しいなぁ、なぁんにも聞こえないけど、キミの考えてること、何となくわかるよぉ。
それでもわたし、キミに死んで欲しくないんだ。だから、あの時みたいに痛みを分かち合おう?」
そっと、シャルロットを抱きしめていたムスティスラーフが彼女の背を押した。
鏡の魔種『ミロワール』のその姿は奇跡の残滓が触れた部分より、影が抜け落ちていく。
「やっと、キミの顔、見れたねぇ」
微笑が、薄れるように消えていく。荒れ狂う波濤を、天より落ちた白雷を受け止めた『鏡面世界』の罅が修復されていく。
それが、シルキィという特異運命座標が肩代わりしたという証左であった。
「……だめ。だめよ。わたしは、魔種だもの。死んだってそんな魔種が居たって話で終わるでしょう!?
あなたは、あなたは未来があるの。あなたはイレギュラーズなの。あなたは……わたしの、友達なの」
シャルロットは、無量が言ったとおりに『イレギュラーズを映した』事で、イレギュラーズの少女の様に振舞った。
魔種でありながら、破滅を蓄積させながら、聖なる光の中でも尚、何処にでもいるような少女の様な顔をして。
「わたしが、わたしが全てを受け止めるから……!」
囁いたその言葉に首を振る。
また会えるよ、とアカツキは微笑んで手を振った。
白紙の頁に物語を書いてください、とリンディスに乞われていた。
ムスティスラーフは守るよと、その手を握りしめてくれた。
ミーナはもう二度と手を振り払うなと願い、ウィリアムは彼女を守る結界を欲した。
全ては一つの約束を守る為に――
その上に、たくさんの約束が積み重なって、奇跡の光の中で淡く光る。
「だから……わたしからも、お願いがあるんだぁ。約束して、シャルロットちゃん」
シルキィの掌が、そっと。シャルロットの頬に触れた。
――もしも、わたしが生きていたら、一緒にこの海を出よう。
もしも、わたしが死んでいたら……キミは生きて、この海を出て。
この海の外で、ビスコちゃんに綺麗な花を一輪買って、弔ってあげて
……約束だよ、シャルロットちゃん――
いやだと叫び声が響いた。何かが、割れる音がした。
それが、シルキィと『分かち合った』痛みである事に気付いた時、『鏡の魔種』ミロワールは――シャルロット・ディ・ダーマは泣いた。
※シルキィ(p3p008115)さんがPPPを発動し、鏡面世界へのダメージを『分け合いました』!
魔種ミロワールの纏う影はその余波で消え去り、『鏡面世界』維持に幾許かの猶予が生まれたようです!
※特別クエスト『斉射三連! 絶望を貫け!』は、そろそろ終了予定です。