PandoraPartyProject

イラスト詳細

佐藤 美咲のヤぴによるおまけイラスト

イラストSS

「————、——」
 照明を落とした室内に、情熱的な掛け合いはしっとりしたピアノとヴァイオリンを添えて。ラストへ向けて盛り上がるやや古ぼけた映画の光が、空いたグラスや瓶、食べかけのつまみで渋滞するテーブルを照らしていた。

 最強として君臨していたヴェルス帝の行方不明に端を発し、鉄帝は未だ動乱の中にある。それでもシャイネンナハトだけは、約束されたこの日だけは比較的穏やかだというのに——エッダが彼との時間を過ごすことは『絶対に』ないという事実が、突然の映画鑑賞会を開催させるに至った。
 励ます会と裏で銘打ち、思い思いの品を持ち寄ってエッダの元へ集まった(押し掛けた)4人だが、示し合わせのひとつもしていないのだから彼女の人徳が成した奇跡といえよう。ソファーと大きなクッションの上、寝巻きに着替えて随分と寛いだ様子の面々には特別な派手さなんて何もないけれど、きっとそれでよかった。
「——、————」
 繊細な面立ちの女優の台詞に、むにゃ、と微かに乱入したのは後生大事に酒瓶を抱えたヴァレーリヤの寝言だ。クッションに沈む感触が気に入ったのか、数分前まで楽しげに酔っ払っていた彼女はすとんと気持ちよさそうに寝落ちていた。今は真白いネグリジェにシミが出来ないことを祈るターンだ。
 そんなヴァレーリヤの肘置きになりつつ、美咲は新しいスナック菓子を開けた。既に空になった袋が足元にいくつも転がっており、なかなかのペースだ。けれど映画に飽きているというふうでもなく、有名どころ故に時折『あ、このシーンだけ知ってる』という顔をしながらサクサクぽりぽりしているのだった。
「——! ————!」
 ソファー組はというと、紺のシルクのパジャマが似合いのブレンダもエッダに腕を取られていた。振り解いたり、特段のアクションを起こしたりはしない。テレビへ向けたままの真面目な顔も、足を組む優雅さも常と変わらない。静かにグラスを傾けながら、そうして側にいることが最適解であると理解しているように。
 ブレンダとは反対側を埋めるお団子頭のアーリアは、身に着けたふわもこのルームウェアと揃いのやわらかい笑みで包み込む。何を隠そう、この古い恋愛映画を選んだのは彼女である。あらあらまぁまぁと涙ぐむエッダにティッシュを差し出しながら、お気に召してもらえたことに安堵したに違いない。
 そんな4人が作り出した空間の中だからこそ、たとえひと時でもエッダは気を緩められた。ネグリジェと共に被ったナイトキャップの下、いつもの真顔に感動を滲ませ、寂しいという心で手を伸ばしたのだろう。

 今はただゆっくりと。名作のように色褪せない友情で満ちた、女子だけの夜が更けていく——

 ※SS担当者:氷雀

PAGETOPPAGEBOTTOM