PandoraPartyProject

ギルドスレッド

木漏れ日の中で

一周年記念SS~続~

第2部 Retribution

~注意~
紆余曲折を経てかなり当初の予定と変わっている。
また時間が経ち過ぎた件は本当に申し訳ない。
まずは短いがリハビリを兼ねての投稿だ。

我ながら書き方というか、自分の文章に違和感しか感じないのでもしよければ手紙なりで意見や感想を貰えると助かる。
かなり切実に助かるのでお願いしたく(深々)
場合により書き直し又は構成から直すつもりだ。
楽しんで貰いたいし、自分も納得出来ないと、な(苦笑)

2部に関してはPCの皆さまやNPCの皆さまが出てくるかどうか現段階では不明だ。すまない。
SSだけの登場とはいえモブ(PC様やNPC様以外のキャラはこの呼称固定で)の背景もないと、仮に皆さまと敵対したとしてもモブに魅力が感じられずSS自体が更につまらなくなってしまうのでは、と判断した結果だ。

こんな感じで手探り状態かつマイペースだが、もし良ければ付き合ってやって欲しい。

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序章


俺が成そうと思ってどれだけの月日が経っただろう。
また、間に合わなかった。少年を1人辛うじて救えた。それだけだ。

世界救済を謳う者共よ。
貴様達が招いた破滅を、結果を知っているか?

地図にも載らないような小さな村や辺境の町。自給自足で過ごし閉じた街。
公に存在を認めらていない、知られていない人々。

貴様達が認知していないところで何が起きているのかを。
何を呼び寄せたのか、知りもしないのだろう。

……別に構わない。俺を救う者など現れないと理解したのは遥か前だ。
俺達を救う者が現れることに期待など最早していない。

俺達は自分の身を自分達で守ることにした。
同じ境遇の者を助け、共感してくれた者達と共に今日も同胞を救うために走る。

日々を過ごし変わる顔ぶれに慣れてしまったことへの苦鳴が聞こえているか?
変わらなかった俺達の想いすら摩耗して変わり始めた。

目的は変わってしまった。いや、それが当初の想いを果たす手段だと思い至った。
ずっと遥か前に産まれ燻っていた黒い黒い炎が殻を焼いて見えるようになったに過ぎない。

俺達を燃やし尽くすまで黒い炎が消えることはないだろう。いや、俺自身が炎なのかもしれない。
目を閉じればいつも雨だ。酷い曇り空だ。それでも瓦礫の炎は――消えない。
「いきなりここは異世界ですとか最初は意味わからなかったが」
荒野で休む数人の男たちが雑談をしている。『この世界』では見かけない服装だが然程違和感を感じない。
『この世界』に来てからそれなりの日数を過ごしすっかり空気に馴染んでいるのだろう。
「いやぁー崩れないバベル様々ですな!」
酒を派手に飲みながら調子よく応える男。
「流石に諸々の力が調整されてるのは焦ったな。まぁ培ったノウハウまでリセットされなかった分は儲けか」
男たちの中では落ち着き知性を感じさせる者。
「次はあそこの村だったか?なぁ早くいこうぜ兄弟!俺ぁ待ちきれねーよぉ」
目が血走り明らかに普通とは思えない者もいる。
他にも一心不乱に飯を食べる者や戦果を確認し悦に浸る者、嘘か誠か半信半疑で仲間の武勇伝を聞いては茶化し盛り上がる者達など様々だ。
最初に話始めた男がメンバーを見回しニヤリと嫌な笑みを浮かべる。獰猛というには下卑た笑みだ。
(慎重に、始めは身の丈にあった泥臭いこともやってきた。あれはくそったれな日々だったぜ。だがおかげで今じゃ前の世界よりも確実に強くなった。人数も集まった。……そろそろ本格的に動くか)
気付けば男は哄笑していた。急に何事かとメンバーの視線が集まる。気付いた男はちょうど良いと酒を一気に飲み干し声をあげる。
「お前ら、いい加減こんな小さいことじゃ退屈だろ?まずは次の村だ。あそこはただ潰すんじゃねぇ。俺達が世界を救ってやると名乗りあげようじゃねぇか!」
メンバーに計画を明かす。こんな所で腐って終わるのはごめんだと。『この世界』でなら俺達は自由だ。前の世界での面倒な関係とかの縛りは最早ない。
それに俺達は『この世界』を救う救世主様達だぜ?全ては世界を救うため、そう【俺達のための世界を救う】ただそれだけのことだ。
――俺達が救世主であり、救世の名の元に行われることは全て正当化されるのだ!
彼らのやり取りを聞く者が数人。連中の様子を見る限りここまで入念に隠れる必要はもう無さそうだ。
「……くそったれが。旅人(ウォーカー)ってのはこんなんばっかりかよ」
唾と共に吐き捨てる青年。盛り上がっている連中に比べれば細身だがしっかりと鍛えられ芯の強い精悍な体をしている。
「今更だろう。じゃなければ俺達は存在していない」
大地に根を張っているような印象を受けるどっしりと構えた男が応える。平素にあっては大木、荒事では巌。そんな在り方が自然と浮かぶ。
「どうします?この調子じゃ村を襲うってこと以外は分かりそうにない、というか具体的な作戦とか考えてなさそうですけど」
幻想種(ハーモニア)だろうか。唯一の紅一点にして長い耳に綺麗な髪、整った顔立ち。大人というのには子供、だが子供といえるほどではない。そんな外見だ。幻想種の外見年齢は当てにならないが。
「この様子じゃ暫くは飲んで騒いでるだけだろうな。動きがあれば合図を忘れずに。リーダーにどうするか報告を兼ねて聞いてくる」
このメンバーの中では会話に混ざらず淡々と連中を観察していた青年が動き出す。あまりに普段と変わらない雰囲気に目立たない、というよりも皆の中に溶け込み空気の如くそこにいるのが当たり前と感じさせる。
誰かがポツリと呟く。異常の中でも普通って……なんか色々と怖いよな、と。底が知れない怖さ、浮かび上がる異常性と不気味さ、脆いのか堅いのか、壊れているのか。色々と思うことや気になることはある。
だが大なり小なり皆そういう面を抱えた奴らばかりの集まりだ。例え恐怖を感じることがあったとしても、少なくとも中枢のメンバー達は誰も互いに敵か味方かと疑うことはない。
――何故なら、皆が等しく同じ者に救われ、想いを共にし【この世界を救おうとしている】集まりなのだから。
報告を受けた男の判断は早かった。
「わかった。それなら今潰す。ここなら村の者が知って不安な思いをする心配もない。いこう」
偵察組への合図を出す瞬間に別の者が駆け込んでくる。別方面に気になる場所があり念のため見張りを頼んでいたことを思い出す。
「旦那!あんたの懸念通りだ。くそっ!あいつら馬鹿だ。まさかなんの準備もせずに勢い任せで襲撃しようってんだからよ!」
すぐに頭を回転させる。
呼び方は各自に任せ部下や手下ではなく仲間として対等だと周知してはいるものの、この集まりを作ったのは俺であり、皆が俺の指示を待つ以上は指揮をせねばならない。
先の方は宴の最中だ。猶予はある。だが後回しにすれば走り回った挙句の連戦になる。
なら先に宴している連中を潰すか。連戦自体は避けられないが酔っ払い相手への奇襲ならまだ疲労や被害は少なく済む。その代わり後の方は民への被害が出るだろう。
皆ずっとこういう事に付き合ってきた仲間だ。何を考えているかなど察しているだろう。心配そうに見詰める者もいる。
「……どうする」
想いを共にする友が問う。チラと覗き見、他の連中の顔を見る。でもあんたならこう言うんだろう?まるでそう顔に書いてあるようだ。
――そうだな。そのための【俺達】だ。やることは始めから決まってる。
俺はただ可能性が高い、可能性をあげる方法を考えれば良いだけだ。あとは可能性を確実に変えてくれる仲間に頼れば良い。いつもの通りだ。
「どちらも救うぞ。『俺達』はそのためにいるんだからな。【――】の盾であり、【――】を討つ剣。それが、俺達だ」
不敵に笑い皆に告げる。待ってました!とばかりに士気が跳ね上がり各自が最終確認を始める中、作戦を伝える。
幻想種としての特性を活かした彼女は、自然と語らい情報を入手し神秘術と合わせて巧みに戦況を動かす。詳細の変更はあったがやること自体に変わりはない。
「それじゃ、幻想種らしくいきますか」
他に残っていた仲間もそれぞれ仕掛けや配置についた頃合いだろう。負け自体はない。そもそもが戦いにすらならないだろう。
問題は事を終わらせる速度と如何に余力を残すか。もう一つの方の戦闘場所は村に近い可能性がある。そうなると派手な術は控えたい。間違えて守る対象に被害なんて出したら……。
「それなら私は温存せずに皆に任せる方が良い、かな?」
彼の指示ならば悩むこともなく動けるが、自分で判断して動くのは不安だ。一言それで頼むとでも言って貰えれば、なんて思いもあるが作戦の成否自体が私にかかっている以上雑念は消さなければ。


「やれやれ、これは貧乏クジっぽいなー」
精悍な青年は敵に混ざっても違和感のない服装に変え察知されないギリギリのところで時が来るのを待っていた。
「そう言うな。背中は任せておけ」
巌のような男は口よりも纏う雰囲気が雄弁に語っている。この身を賭してお前を守る、と。
野郎同士でこんな感じになってもなーとボヤキながら照れ隠しに頬を掻く青年。互いに認め合った仲間だ。純粋な嬉しさはある。口には出さないが。
本来なら他に仲間を引き連れ敵の後方に伏し、逃げ始めたら退路を塞ぎつつ包囲殲滅する予定だったのが、二人だけで敵の真っ只中に行くことになったのだから文句も言いたくなる。
少なくともその予定で既に準備を済ませていたのが無駄になったのだ。八つ当たりも兼ねて暴れるか、などと思えば巌のような男が静かに見つめてくる。落ち着け、と。
おそらく敵だけでなく彼女の敵へ向けた神秘術の中を掻い潜ることになる。敵にだけ捉われていたら仲間の攻撃でやられるなんて笑えないことになりかねない。
今回最も危険な役回りだろう。だがそれでも、恐怖はない。彼女の腕は十分に信じているし、隣には頼れる仲間が相変わらずどっしりと構えている。自分も変わらず良好。
そして何より、ここにやってくるのは俺達を救ってくれたヒーローだ。仮にヘマをしてもあの人なら自分の身を顧みずに無茶をしてでも助けてくれる、という一切の疑いのない信頼があるのだ。
もう一つの現場へは普段と態度が変わらない男が指揮を任され急ぎ向かっていた。間に合うか微妙なラインだが表情も何も相変わらずだ。周りの連中もそれが当たり前になっているので問題はないのだが。
「リーダーからのオーダーは襲撃前に辿り着き時間稼ぎ。可能なら殲滅か」
先の件は少数精鋭と策を合わせての一気殲滅。俺達が食い止めている間に連戦組が仕掛ける形での作戦になっている。消耗具合にもよるがこれで歴戦と言える連中だ。凡そ問題ないだろう。
正直なところ、こちらの被害を減らし効果的に敵を減らすなら敵が襲撃をするタイミング、目の前の獲物に意識が完全に向いた瞬間にこちらが横腹に食いつくのが良い。
民を守るという観点からしたら少しでも近付けない方が良いんだろうが、これだけの練度がある連中を失うリスクを犯したくない。……さて、どうするか。
リーダーならそういうタイミングで辿り着いたといえば何も言わない……いや、見抜かれたうえで叱責させるな、と思わず苦笑する。リーダーは甘くみていると気付けば後ろを取っているようなタイプだ。
俺自身リーダーの想いに共感してこうしているのだし不興を買いたくはない。仲間思いだがそれ以上に【――】思いで【――】憎しだ。特に今回の敵と守る対象は分かり易い構図になっている。
……割と俺も損な性格をしているのかもしれないな。ふぅ、と一つ息をつき気持ちを切り替える。……やるか。
「速度を上げる、遅れるな。敵の位置は正確に伝えろ。勢いのまま奴らを貫く。敵が乱れたままなら取って返し蹂躙。ただし深入りだけはするな。敵の気を引き付けたら民から更に引き離しにかかるぞ」


~続~

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