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月夜二吼エル

瑠璃色馨るは黎明の穹

甘く芳醇な香りは恋の花とも呼ばれてるな、木立瑠璃草は。
黎明に馨る彼の馨りに誘われたのは果たして彼女か俺か?ま、考えるのは無粋だろう。今はこの空に祝杯を。
(鼻腔を擽るのはまるで誘惑する様な甘い馨り。色とりどりの瓶が所狭しと並ぶ棚はちょっとしたガラクタ箱の様相を示す。
そんな中、館の主の青白い指先が弄ぶのは小さな精油瓶。可憐な匂ひ紫の花を凝縮した雫石、そして赤ワインが注がれたグラスを執務机に置いたままーー夜色の影は席を立ち、彼女を廃墟に迎え入れるだろう。絹糸の如き髪は時に御酒の鮮やかさを纏い、その美貌は月魔女の名に相応しい妖艶さを誇る。)
めでたい事に新入りサン二人目だ。
彼女はアーリア・スピリッツ。天義のアレソレでは俺らと同じ戦場だったからなァ、知ってる奴も多いンじゃないか?

ようこそ、化け物達の巣窟へ。楽しむのも恐れ戦くもお前次第だ。屋敷の主として歓迎しよう。
ま、改めて宜しく頼むぜ。

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……はぁもう、ほんっとーにびっくりしたんだからぁ!
ツェリくんを探してここに入ったら、人が出て来るなんて思わないじゃない……。
(屋敷へ迎えられた彼女は、手近な椅子へと座るとむぅ、と頬を膨らませ目の前のレイチェルを見やる。その膝元には、主人の訴えなぞどこ吹く風――、ツェリ、と呼ばれた黒猫が丸まって寝息を立てていた。そっとその黒い毛並みを撫でた彼女は少し不満気に眉を顰め、それでいてこの偶然の出会いに口元を緩ませる)

それでも、結局はこの子のお陰でまたレイチェルちゃんと会えたんだもの。
結果おーらい、ってやつねぇ。
……あ。
(黒猫の顎の下をゆるゆると撫でていた手を止め、向き直る。その顔は素面と思えないほど赤く染まり)
レイチェルちゃんに出くわした瞬間のあのリアクションは、忘れてちょうだいねぇ……。

ということで、改めて。
アーリアよぉ、よろしく頼むわねぇ。
ということで、お近づきの一杯でも!
(そう告げると、足元に置いていた袋から真紅の――まるで、ここの主の愛する血かのごとき色をしたワインの瓶を掲げ、悪戯っぽく笑ってみせた)

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