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陽陰家

フォークロア(混沌の民間伝承)

この世界の、皆が知ってる、お伽噺。

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【10月31日(現代時間)】
【FairyTail Of Phantom(フェアリーテイル・オブ・ファントム)】
 退屈屋の魔女が尋ねた。
「貴方はだあれ?」
 仏頂面の男は応えた。
「僕は僕だ」
 魔女は笑った。
「そう。貴方は――貴方なのね」
 仏頂面の彼はもっと怒ったように言う。
「そうだ。僕は僕でしかない――非常に不本意な事にね!」
 彼女の求むるは『楽しい一時』で、彼の願いは『自身が何処までも自分ではない事』だった。
 ならば、話は簡単で――彼女は幻のベールに笑い、彼は仮初の衣装に快哉を上げた。
「楽しいでしょう?」
「楽しいね」
「姿が変わるだけなのに?」
「姿が変わるだけでもね。僕は僕でいなくていい」
「ところで、貴方はどちら様?」
「ただの、何も持ってない王様だ」

――――『笑う魔女』二百九十七ページより
【概要:収穫祭の魔法とお祭り-Trick or Treat?-】
 混沌世界では毎年10月31日に各地で豊穣を祝い、子供たちの成長を願う収穫祭が開催されます!
 古い、古い御伽噺(フェアリーテイル)が伝えるのは幻想の建国王と言われる人物の逸話でもあります。
 その幻のベールは、実は唯の言い伝えに留まりません。
 10月31日の夜から、11月3日一杯までの凡そ三日間の間は世界にとっておきの魔法が掛かります。何と混沌の住民はこの期間の間『なりたい姿になれる』のです。
 不思議な魔法にかけられて街は大賑わい。
 この幻想王都メフ・メフィートでも愉快な事は大好きなフォルデルマン三世によって御伽噺と魔法の騒ぎに合わせた盛大なお祭り(秋の収穫祭)が行われ、幻想国民もこの時とばかりに日頃の鬱憤を晴らすのです。
 魔法とお祭りの熱に浮かされて沢山の悪戯者も出てきます。
 しかし、ご注意を。魔法はあくまで姿を変えるだけ。
 しかも『悪戯の度を超える悪さ』をするとすぐに解けてしまいます。
 姿を変えて悪い事をしよう……というのは出来ません。
 旅人達も多い街の中――
 魔法にかけられた人々はお菓子を求めて練り歩くのです。
『崩れないバベル』は今回のお祭りが
『ハロウィンのようなもの』であると貴方に教えてくれる事でしょう。
 勿論、合言葉は『トリック・オア・トリート!』
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【12月24~25日(現代時間)】
【Scheinen Nacht(シャイネン・ナハト)】
「輝かんばかりの、この夜に!」

 それは、少なくとも今では無い――
 遥かな昔の『実話』であると言われています。
 冷たい北風が吹き荒ぶ、暗い冬の出来事でした。

 長い戦争状態にあった人々は、飢え、苦しみ、死に絶え、
 それでも殺し合いを辞める事は無く……
 ただただ、泥沼の悲劇を演じるばかりであったと言われています。
 
 最早人々の誰もがそれを望まず、兵士も、市民も、権力者さえそれに飽き。
 理由の全てを失っても、それでも振り上げた拳を降ろす術を持たず。
 誰もが、悪戯に意味のない犠牲を積み上げていました。
暗い夜の出来事でした。
 何処にも救いは無い――暗澹たる世界に光が差したのは。
『聖女』と呼ばれた少女は、流麗な『悪魔』と長い話をしました。

「どうしたら、この争いを止める事が出来るでしょう?」
「何故止める。人間の業というものだろう? だから、彼等は――君達は人間らしい」
「沢山の人が犠牲になりました。もう戦いを望む者はいないのです」

 悪魔は鼻で笑います。

「ならば、止めればいい。少なくとも僕は――人間がそう信じ、そう決めた道を肯定しよう。何よりそれは人間らしく――同じく『要らないもの』である僕としては否定し難い。」

「……第一、君はどうして僕にそれを言う。解せないな、僕は不倶戴天の『悪魔』だろう?」
「貴方ならば、これを止める力さえ持つから」
「僕に戦争を止めろって? 面白い冗談を言うね。七罪を統べ、狂気の声で混沌に混沌を呼ぶこの僕に? 要らないものとして切り離され、誰にも憎まれるこの僕に!」
「でも、貴方は私の友人です」

 全く馬鹿げた事に――人々の心の支えとなる『聖女』と世界の敵たる『悪魔』は友人同士でした。切っ掛けが何であったかは伝わっておらず、また大した意味も無いでしょう。
 唯二人は、雪の降り積もる夜――淡い月光の照らす聖堂で、こんなやり取りをする仲でした。

「力を貸して貰えませんか?」
「……言葉の意味、分かってる? 『聖女』が反転して――どうするのさ」

『悪魔』の声に耳を貸せば、大きな力が得られます。
 人の欲望を、人の狂気を――人の業を煽り、すがる者を破滅せんとす『反転』。
 それは、この混沌の禁忌であり、冒涜そのものです。原初の『悪魔』に際して尚、その声を意にも介さなかった『聖女』は全く、最もそれに遠い人物に他ならなかったのに。

「君は友人らしいから忠告するけれど――『反転』は都合のいいものじゃない。『君のような人間なら』間違いなく大きな力を得る。ああ、君は戦争を止める力を持つだろう。だが、君の願いは正しい形では叶うまい。決してそういうものじゃない。過剰な力で皆死ぬ。」
「……まさかとは思うけど、それを望んでいるとでも?」
「いいえ」

 小さく首を振った『聖女』はこう続けました。

「簡単な事です。力を貸して欲しいと言ったでしょう?」
「言ったね」
「簡単な事だわ。願いが叶ったら」
「……」
「『私の』願いが叶ったら、貴方が私を――」
「言うと思った」と溜息を吐いた『悪魔』は苦笑いのままに言いました。
「悪魔に何て役を押し付ける」
「貴方に向ける私の『祈り』、よ」
「成る程、上手な嫌味だ。今後の参考にしよう」

『悪魔』は肩を竦めて諦めたように独白します。

「君の願いを叶えよう。やはり僕は、余りに人間らしい人間が好ましい。それに、君はどうしようもなく――放っておけない。きっと、全然妹に似ていないからだろうけど」
 暗い夜は輝かんばかりの夜になりました。
 その時起きた奇跡が如何ようなものだったかは不明です。
 しかし、暗い闇を切り裂いたその光は余りにも鮮烈で、人々は『聖女』が身を賭して争いを終わらせた事を知りました。
 ……『悪魔』の名は伝わっていません。しかし彼にとっては恐らく迷惑な事に……彼の事が伝承に伝わったのは、『聖女』がそれを遺文に残したからです。『聖女』からすればお礼だったのか、意地悪だったのか……答えは何処にもありませんが。
 毎年12月24~25日は混沌において戦いの禁じられる日です。
 幻想の勇者王も、鉄帝の皇帝も、厳粛たる天義の王も剣を置いたとされます。深緑に住まうとある魔女はヤドリギの木に祈りを込め、平和への願いの成就を祈り、輝かんばかりの夜に思いを馳せたと言われます。
 平和への祈りは、満願への成就にも通じました。
 やがて長い時が経る中で、輝かんばかりのこの夜は、願いを捧ぐ夜へと姿を変えました。

ある者は己が冒険の成功を祈り、
ある者は恋の成就を祈り、
ある者はこんな夜(クリスマス)爆発しろと祈り――

当時のままの魔女はヤドリギへと願い祈りし者たちの願いを捧げ続けました。
 さぁ、その願いが叶ったのかは分かりませんが魔女は言うのです。

「――願い祈りし者たちに祝福を与え、今日という日を幸福に満ち溢れさせるのです。 きっと彼女が望んだのは――そんな優しい夜だから」
 
 その夜には祝福の星が煌き落ち続けます。
 旅人はその流星を雪のようだと称しました。

 ――この御伽噺は、これでおしまい。
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【2月14日(現代時間)】
【Grau・Krone(グラオ・クローネ)】
「グラオ・クローネの御伽噺をご存知か?」

『グラオ・クローネ』は混沌に伝わる御伽噺の一つ。
 今の幻想種さえ知らない――もっと、もっと古い言い伝え。
 深緑の大樹ファルカウと共に生きたと言われる『最初の少女』の物語。

 アルティオ=エルムに住まう幻想種、ルドラ・ヘスは深緑の大魔導士たる大樹ファルカウの巫女、リュミエ・フル・フォーレよりグラオ・クローネの御伽噺を特異運命座標へと伝える命を受けました。
 ローレット・ワークスで少しの縁を結んだ両者です。遥かな昔の2月14日――グラオ・クローネ(バレンタインデイ)は深緑における大樹ファルカウと幻想種の成り立ちに大いに影響を与えた事を伝えたかったのかも知れません。

経緯は兎も角、ローレットに彼女の声が、
いいえ……差し出された本を受け取った吟遊詩人が、
もしかしたら、魔法媒体による幻影(ホログラム)が、
太古のお伽噺を紡ぎます。
 彼女は気付いた時には一人きりでした。
 身寄りもなく、どうしてそうなったかの記憶もなく。
 何より彼女には体の自由と、五感さえも満足に存在していなかったのです。
 それでも、彼女は大樹を愛していました。
 どうして孤独なのか、どうして自分はそうあるのかも知らず。分からず。
 それでも彼女は直向きに、愛するファルカウと共に存在し続けます。
 木々のざわめきを感じることが出来なくとも、その鮮やかな色彩を見ることが出来なくとも、触れた指先の感覚さえ分からずとも、その森の匂いを感じることが出来なくとも――その舌が味を理解できなくとも。
 少女はそれでも絶望せず、その場に佇むファルカウと共に一生を過ごしたのだと言います。
 きっと少女は幸せでした。
 そして、少女と共にある大樹も幸せでした。
 しかし、大樹は酷く悲しんでいました。
 大樹は少女の制約が戒めである事を知っていました。
 理不尽に押し付けられた戒めが、彼女の罪でない事を知っていました。
 それは或いは『ヒト』という形の抱く原罪で、誰かに端に発したものではない事を知っていたのです。
 偉大なる大樹は願います。大樹の力をしても、振り払えぬ呪いは絶大でも。
 可哀そうな少女の眼が何かを映せるようにと、可哀そうな少女の舌が甘さを感じられるようにと。
 ある時、己が力を振り絞り、天に願いを届けました。
 幾重もの呪いに満ちた少女の生に僅かばかりの光を届けたのです。
 嗚呼、それは気休めばかりだったに違いありません。
 少女の呪いは解けず、僅かに減じたばかり。
 彼女の目にはどんな鮮やかな王冠さえもくすんだ灰色に見えた事でしょう。
 彼女の舌はどんなに美味しい果物を食べても、その感動を届けはしない。
 それでも少女はもっともっと幸せになりました。
 僅かに緩んだ制約は、彼女に同胞の存在を許したのです。
 唯一の一はそうでなくなり、孤独は癒え、指先は触覚を知りました。
 その目は灰色の世界を、舌は微かな味を知ったのです。
 大樹と共に過ごし、自然への感謝の気持ちを贈った彼女は、何時しか一人ではなくなったのです。
 彼女は、ある時、同胞に――子供達に一杯の愛情を届けます。
 不格好で甘くない灰色の王冠(グラオ・クローネ)は見よう見まねのお菓子の形。
 深緑の奥深くに伝わる秘伝の味とは違うでしょうが、チョコレイトはそれを模したものとされています。
物語が余韻を残し、終わりを告げます。
朗読が終わり、深く呼吸をし、少し照れくさそうにする、
ハーモニアの使者が居たかもしれません。
本を閉じる音が聞こえたかもしれません。
役目を終えた幻影(ホログラム)が少しずつ消えて行く様子が見えたかもしれません。
終わった後、ローレットに居た皆は、各々反応を示すでしょう。
拍手が聞こえるかもしれません、野次が飛ぶかもしれません。
ですが、優しく、甘い物語であることは、確かです。

 心温まるグラオ・クローネの御伽噺。その甘やかな伝説に酔い痴れて。
 ――どうぞ、皆さまも大切な人に『灰色の王冠』
 ――チョコレイトを贈ってみませんか?
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