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ギルドスレッド

美少女道場

RP『ポンペイ最後の日』鉄帝公演

 ――かくして、悪しき魔種アーベイシーズは神の怒り……ベスビオ火山の噴火により滅び去りました。
 狂乱に飲まれたポンペイの街も今は静かに死の灰が降り積もるばかりです。
 その様子を小舟の上で奴隷のニディアだけが感じていました。
 盲目ながらも彼女の素晴らしい感覚はチリチリと肌を焼く熱気と灰の匂い……或いは滅びの匂いを正確に感じ取っていたのです。
 恐ろしくなってニディアは主人のグローカスを探す様に手を彷徨わせましたが、すぐに諦めて船の縁を掴みました。
 きっとグローカスの横にはアイオンが居るに違いありません。
 この船が陸に着いたら、グローカスが国元に帰ったら、二人は結婚してしまうでしょう。心を狂わせる薬さえも二人の愛を引き離す事は出来なかったのですから。
 ニディアは残る力を振り絞って立ち上がり、磯の香りが濃い方に踏み出しました。

「さようなら、グローカス様」

 水音に船を漕いでいた船頭が振り返りましたが、ニディアの体はとても小さくやせ細っていたので魚の跳ねた音だろうとかたずけてしまいました。
 小舟は陸地を目指してゆらゆらと進んでいきます。
 やがて水平線から日が昇り、疲れ果てて眠るグローカスとアイオンを照らし出しました。

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(鉄帝国立劇場からほど近い位置にある酒場。
 メニューは酒から飯まで様々にあるが祝日なのでいつもよりも豪華なメニューが多い。

 テーブルの上にはただいまケーキが3つほど並んで注文した主は紅茶を片手に黙々と片付けている)

(多分起こっている硬直解除待ちの姿勢)
(………そうして、壁越しに響く雪を踏み歩く音、開閉を繰り返すドアに幾度も揺らされるベルの音が。転寝を惜しむような深い余韻から、己を現実へと引き戻した。

 観劇はいい。
 もう全体の3、4割程度しか残らない身の上でも。
 純粋によいものを楽しむ感覚だけは何者にも邪魔をされないからだ。)
―――……今回もよかった。
(浅い息を漏らすようにそう零した。虹彩が微睡むようゆれている。)
(二つ目のケーキの半分ほどに手を付けた時だった。
 これは見た目は地味だがドレインチェリーと数種類のナッツが練り込まれていて美味しい)

……おはよう。

(深い余韻に浸る様子をやや揶揄う様に、あるいは微睡む様な姿勢になぞらえてか)

相変わらず連れ出し甲斐がある。
それにしても今回の公演は以前のものと比べても気合が入っていて驚いたが……。
(今一つ意味を理解しかねる挨拶に、眉を顰めた。
 だが、大した意味はなさそうなので流すことにする。)

……題材がよかったんだろう。
あの絡繰り舞台は大仕掛けな演出と噛み合う。
動く神像や、天変地異の表現とか……題材そのものも、そういった派手な描写が多い。
舞台の良さを最大限生かせていたのもあったし…それに、原作と比較しても殺陣が多かったな。
闘技試合で獣と戦う改変はともかくとして、実際に猛獣を出してくるとは思わなかった。
そこは鉄帝人だからな。
もちろん演出上の都合もあるだろうが殺陣があればあるほど盛り上がるし……普段からラド・バウを見ているような客層にハリボテの獣を倒しましたとしても納得するかは否だろう。
細かい改編といえば、グローカスが貴族ではなく軍人になっていたな。
アイオンは貴族令嬢のままだが……鉄帝的感覚だと貴族は戦えて当然であるし。
逆にジュリアは一切戦闘が出来なかったな。
この辺は強い方が正しい、という価値観もあるんだろう。
北方(鉄帝)基準だとヒーローもヒロインも武闘派だな。そこは変わらないらしい。
戦わずして望みをかなえようなんて思想そのものの受けが悪いから、当然といえば当然の改変でもあるな。逆に文官扱いだったクローディアスの結末がああだったのは…まあ、そういうことなんだろう。軽視というか、死んでしまっても仕方ないという割り振りになったんだろうな。
だがグローカスが軍人扱いだったおかげで、アイオンとの関係が一目惚れではなく、長い片思い扱いになった展開は…賛否が分かれるところもあるがボクはそっちのが好きだな。

清貧をよしとし、贅を戒める異教徒が、歓楽都市の終わりの中で生き残ったのも印象的だったな。原本でも明確に死んだという描写はなかったが。この国の風潮的にも信仰をよしとするとかじゃなく、贅を戒める側面のが強いんだろうな。
物語の中では異教徒であるが、アーベイシーズの作り出したカルトに対しての天義の宗教という立ち位置だからな。
幻想程ではないが割に信心深い者もいるし、信仰賛美の側面もあったと思うぞ。
オリンサスの格好なんて天義の神官そのままではないか。

神官と言えばアーベイシーズが単なる悪徳神官ではなく魔種という事になっていたな。
魔種といえば本来は忌避すべき存在であるが、その辺はやはりローレットが流行っているという事なのだろうか。
もっと言えば、イレギュラーズが魔種を倒す、という展開か。
逆じゃあないか?
この国だけでも十分魔種と戦えるようになろうぜ、って主張したいのかもしれないぜ。

(ようやく、なにかを注文する気になったのか。
 視線は献立表をなぞって…………少し値の張るボトルを頼んだ。)
実際、正面からカチ合えばそうそう負けはしないんだろうがな。
そうすると、グローカスとアーベイシーズの一騎打ちはどう見る?
たしかにグローカスが勝ちはしたが時間切れで撤退、トドメは火山の噴火だ。
お前の言う意図ならば、グローカスに息の根を止めさせるべきだったのでは?

(ボトルが来ると同時に、残っていたケーキをすっと其方へと差し出した)
だが、アイオンもアペサイデスも、アーベイシーズが唱える誘惑を幾度も退けた。
信仰を笠に私腹を肥やす魔種の、その黄金の誘惑と、力の誘惑を。
結果としてアーベイシーズの手によって奪われる命は存在したし、1度目の戦いの中では退けるのみで、2度目の戦いでは撤退銭ということになったが……けれど、劇中においては何者の心も魔種の手に落ちることはなかった。
野心と歓楽をよしとする街にいるものが、このように魔種の誘惑を退けるとは大した話だよ。
見方によってはこれを勝利とみてもいい。精神面に限る話だが。


グラス出せ。気分がいいから注いでやる。
魔種と対峙するときに何よりも重要となるのはその呼び声に耳を傾けない事だからな。
なるほど、確かに戦いきれていると言える。
運命を横紙破り出来る力を誰も持たなかったが、それでも、というやつだな。


……ふぅん?
(空のグラスを其方に向けて差し出した)
(あなたのグラスにワインを…いつもの赤色の葡萄酒を注ぎ、同様に自分のグラスにも注いだ。
 意図があるのか、それとも笑顔なんてこれっぽっちも見せない癖に、純粋に気分がいいからなのか……。)


意図や事実はどうあれ。
そういう強い意志が魔種の誘惑をはねのける、という内容は…ボク達混沌の人間基準では気持ちのいい内容である。安心するとも言い換えていい。
こういう身の上になっても、ああいった存在になり果てるということには……多少の不安がないでもないからな。

(すぐには口に含まず、酒香を楽しむようにグラスを間近においた。
 指先はグラスの縁を辿って円を書いている。)
(花のような芳香がした。
 上等なワインらしい。その事実に片眉が一瞬上がる。
 割と見栄を張る奴だと思っているが……案外浮かれているのかもしれない。そう思うことにした)

ふうん。
吾は旅人故、呼び声を受ける事はないとされているからな。そこまでは思い至らなかった。
実際に魔種とは何度かやり合った事があるが感じたことはないし……。
だが、そうだな。甘言を跳ね除けるというのは見ていて快いものがある。

(軽くグラスの中のワインを遊ばせるように回して)

……乾杯でもするか?
(静かにグラスを差し出し……)

誕生日、おめでとう。

(月並みな祝いの言葉を述べた)
ん……
        そう。そういえばそういう趣旨だったな。
まあ…めでたいか。
価値あるボク自身が生まれたこと、それ自体を、たまには祝ってやるべきだろう。
(グラスを軽く擦り合わせることで、乾杯に応じる)
(涼やかな音が喧騒の中に溶けて)

人にとって生まれた日は特別な日なんだろ。吾も祝ってもらった事がある。
……お前の知る祝い方とも然程違わないみたいでよかった。
70も繰り返せば、めでたいという感覚もなくなってくるそうだがな。

それはそれとして大したもんだよ。
1日外したとはいえ、あの席を2つ取るのはそう簡単なことじゃあなかったろう。
実際のところはわからないが…少なくとも、そう思わせるくらいにはいいものを見させてもらった。想像以上に満足している。
悔しい話だがな。
……………。

(沈黙が落ちる。
 僅かに見開いた瞳が語るのは驚きか。じっと貴方を見つめて)
よかった。

(同じ言葉をもう一度繰り返した)
 

そう。

(続く言葉を言いかけるよりも前に、グラスを傾けて、芳香ごとそれを飲み干した。
 なんということはない。こいつが何を望んでこんなことをしているか…それがわからないことからくる、ほんの小さな苛立ちである。
 自分の欲望を表には出すようになったのだ、対応もしやすくなったのだが……果たしてどういう下心を内に秘めているか迄が読み切れない。
 質問を投げかけてやってもいいが、それではヒントがなければわからないようで、後で腹が立ってくるにちがいない。
 だから、出そうと思う前に飲み込んで一息つく。)


…ただ……そうだな。
満足はしているが…劇の内容で一つだけ残念な所があったな。
ごく、ごく個人的な感想だが。

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