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美少女道場
だが、アイオンもアペサイデスも、アーベイシーズが唱える誘惑を幾度も退けた。
信仰を笠に私腹を肥やす魔種の、その黄金の誘惑と、力の誘惑を。
結果としてアーベイシーズの手によって奪われる命は存在したし、1度目の戦いの中では退けるのみで、2度目の戦いでは撤退銭ということになったが……けれど、劇中においては何者の心も魔種の手に落ちることはなかった。
野心と歓楽をよしとする街にいるものが、このように魔種の誘惑を退けるとは大した話だよ。
見方によってはこれを勝利とみてもいい。精神面に限る話だが。
グラス出せ。気分がいいから注いでやる。
信仰を笠に私腹を肥やす魔種の、その黄金の誘惑と、力の誘惑を。
結果としてアーベイシーズの手によって奪われる命は存在したし、1度目の戦いの中では退けるのみで、2度目の戦いでは撤退銭ということになったが……けれど、劇中においては何者の心も魔種の手に落ちることはなかった。
野心と歓楽をよしとする街にいるものが、このように魔種の誘惑を退けるとは大した話だよ。
見方によってはこれを勝利とみてもいい。精神面に限る話だが。
グラス出せ。気分がいいから注いでやる。
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狂乱に飲まれたポンペイの街も今は静かに死の灰が降り積もるばかりです。
その様子を小舟の上で奴隷のニディアだけが感じていました。
盲目ながらも彼女の素晴らしい感覚はチリチリと肌を焼く熱気と灰の匂い……或いは滅びの匂いを正確に感じ取っていたのです。
恐ろしくなってニディアは主人のグローカスを探す様に手を彷徨わせましたが、すぐに諦めて船の縁を掴みました。
きっとグローカスの横にはアイオンが居るに違いありません。
この船が陸に着いたら、グローカスが国元に帰ったら、二人は結婚してしまうでしょう。心を狂わせる薬さえも二人の愛を引き離す事は出来なかったのですから。
ニディアは残る力を振り絞って立ち上がり、磯の香りが濃い方に踏み出しました。
「さようなら、グローカス様」
水音に船を漕いでいた船頭が振り返りましたが、ニディアの体はとても小さくやせ細っていたので魚の跳ねた音だろうとかたずけてしまいました。
小舟は陸地を目指してゆらゆらと進んでいきます。
やがて水平線から日が昇り、疲れ果てて眠るグローカスとアイオンを照らし出しました。