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商人ギルド・サヨナキドリ

白狐の部屋

とある眷属の部屋。

質素でやや殺風景な印象を受ける。

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死ぬからといって、気休めだからといって、誰かを守ることを諦めるのは違うと思いますよ。それが道理なら、きっとあの方はとっくにニンゲンに飽いていたでしょう。それに私(わたくし)、頭の固いわからず屋らしいので。(ふふ、と青年は笑みをこぼした)
…そうね。私の兄様は本当に頭の固い分からず屋だわ。身体は息をしていようとも精神は息も絶え絶え。本来なら守られるべきは貴方である筈なのに、報われないと識ってもいるのに、それでも他人を守るのね。兄様は優しいね。哀しいぐらいに優しいね。
いいえルミエール。私(わたくし)の同胞(はらから)、御伽噺の様に儚い妹分。私(わたくし)が動いて、たった1人でも助けられるならそれで充分な報いなのです。
…私が今の私でなかった頃、貴方を疎んだのはきっと、同族嫌悪でもあったのでしょうね。
だってほら、私だって本当は誰にも死んで欲しくはなかったのだもの。誰も喪いたくはなかったのだもの。
……そう、ですね。私(わたくし)は、きっと、誰にも死んでほしくない。……貴女にも。
誰かが死ぬの、哀しいものね。
哀しくても私は殺してしまうのだけど。
ええ。なので、手の届く限りでは止めようと思っていますよ。
苦労かけてごめんね、兄様。
私も頑張って我慢するね。
我慢できる限りはだけど。
……何年貴女たちの世話をしていると思っているのですか。もはや今更ですよ。(嘆息)
普通の人なら素足で逃げ出してるよね。
兄様なんで逃げないの?ドMなの?
「逃げたってどうしようもないからですよ。私(わたくし)はアレの一部ですし、アレの傍にいて少しでも周りの被害を抑えられるだけマシです」
…薄幸系白狐獣人と慈愛系白狼のハートフルラブストーリー…。(ぼそっ
薄幸系白狐獣人と慈愛系白狼のハートフルラブストーリー!(目を輝かせハキハキした声で
「……何て?」(やや現実逃避気味に遠い目をして再度尋ねる。聞きたいのは「なぜこの場面でいきなりその様な奇怪な単語が飛び出したのか」ということなのだが、あまりに突拍子の無さに青年の質問も随分と端的になってしまっていた)
だからね。
兄様とルクスのハートフルラブストーリー。
新作同人誌、どんなネタで書こうか迷ってたの。
兄様の様子をみてたら閃いちゃった。
兄様幸せにしてあげるね。ルクスが。
「趣味は人それぞれとはいえ同僚から同人誌のネタにすると宣言された私(わたくし)、ルクスに幸せにしてもらうには彼と協力して貴女を止めるしか無いのでは?と一抹の疑問が過るのですが」
子供が読んでも安心安全な全年齢仕様にするよ?
そういうことじゃねぇでございますよこの理性蒸発暴走娘。
だってー。二次創作の中じゃないと兄様を幸せにできなさそうなんだもん。兄様ったら自分から不幸になりにいっちゃいそうなんだもん。
不幸を好んで望むほど、破綻しておりませんのが幸いですけどね。(肩をすくめる。ただし、自分から不幸になりにいくことはあまり否定する気はなさそうだ)
…困った人ね、本当に。悪いコだわ。(表情こそ変わらぬものの、青の瞳に哀に揺らし、「人助けは本来、自分を救ってからするべきことなのに」と途方にくれた声音で呟いた)
それが、私(わたくし)を構成するモノでございますから。
兄様が反転したらとびきりの化け物が生まれそうね。いっそ狂ってしまった方が楽なのではなくて?
旅人はーーいえ。従者は、反転いたしませんので。(至極真面目な顔で)
現時点ではそうかもね。けれど「だから諦める」というのもつまらないでしょう?理を捻じ曲げ、不可能を可能にする方法を模索する方がずうっと愉しいわ。そうでしょう?
ええ、貴女はそう言うでしょう。ですので貴女の無聊をお慰め出来ないのは至極残念にございます。
まあ。兄様ったら酷いわ。私のこと馬鹿にして。私、父様の娘だもん。私だって頑張ればいつかはそれぐらいできるようになるもん。(頰を膨らませ唇を尖らせる
そうならないことを、心から祈りますよ。永遠に幼いルミエール。(しょうがないなぁ、って顔で笑って)
兄様も父様も私が幸せにするんだもん…。私が…。うー……。
ああ、ほら…泣かないでくださいませ。貴女は泣き虫ですね……。
…………。(くすんくすん)

…私が良い子にしてたら兄様もそうしてくれる?
ちゃんとお休みしてくれる?
少なくとも、貴女が私(わたくし)とこうしてのんびりしている間は、私ものんびりする時間が増えるのは間違いございませんね。(にこっ)
うん…。
…どうして世の中って哀しいことでいっぱいなのかしら。もっともっと楽しいことばかりなら、私も暴れたくなったりしないのに…。
哀しくて暴れるのも大概ではございますが……悲喜交々とはよく言いますから、喜ばしいことも入り交じっているのでございましょう。哀しみの方が些か主張が強うございますが。
兄様は哀しくて暴れたくなったりしないの?ちょっと村を焼きたくなったりしない?私は今凄く村を焼きたい。
なりません……ね。私どもがただ暴れるだけですと、それだけ悲しみの総量が増えていきますから……。
…うん。乗算的にどんどん増えるね。
それでまた悲しくなってまた暴れたくなるの。
だから、私は暴れようと思いません。悲しみを、ほんの少しでも無くしたいので。(真っ直ぐにルミエールを見ながら)
……兄様が一緒に寝てくれるなら今よりもう少しいい子になれる気がする。
……たまにでしたら、添い寝もお付き合いしましょう。
レパートリーは、さほどございませんが。
うん、いいよ。
いい子にすることと引き換えに何でも聞いてくれる真砂にーさまー。
しれっと要求を引き上げないように。なんでもはしません。
なんでもは駄目?
たまに真面目にするのやめて、お店番サボって一緒に遊びに行くのは駄目?
どこでもいいよ?花畑でも海でも街でも。
兄様が楽しい場所ならどこでもいいの。

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