ギルドスレッド
街のどこかの寝床
◆律・月(p3p004859)様
◇イメージ
BU:https://rev1.reversion.jp/illust/illust/8393
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【銀月の影にて】
眠りに就いた森の底。喧騒が支配する繁華街の裏の道。満ちた月が煌々と照らす世界にも闇はある。そこへ紛れるように男がひとり、歩いていた。
頭髪から靴の先まで黒一色。特徴的な尖った獣耳と大きな尾も同様で、色らしい色は暗がりに浮かぶような肌と気怠げに開かれた瞳だけ。前髪に覆われてひとつきりの赤が空を見上げて溜め息を吐く。
こんな夜には遠吠えのひとつでも上げそうな風貌だが生憎と彼は狐であり、響くのは高く澄んだ笛の音だ。
「——、————」
ゆるりと月光を吸ったような銀の横笛を唇に添え、祈るように紡ぎあげれば、あやしく影に溶ける黒も清浄と静謐の象徴であるかのよう。
樹々に、人に、月に。届くとも知れぬ旋律は揺らぐ湖面の漣に似て、男の溜め息を集めたそれはやがてかすかな余韻を最後に消えた。
誰が与え賜たか、彼の耳が捉えた音は余さず記憶に積み重なる。それでは今宵の音色はいったい誰の中に残るのか。
「……ま、俺の知ったことじゃァないんだが」
笛の代わりに取り出した銀貨を指で弾く。きらきらと星にも劣らぬそれを受け止めた手の甲の上で、捻くれた角の山羊が冷たく笑っていた。
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◇イメージ
BU:https://rev1.reversion.jp/illust/illust/8393
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【銀月の影にて】
眠りに就いた森の底。喧騒が支配する繁華街の裏の道。満ちた月が煌々と照らす世界にも闇はある。そこへ紛れるように男がひとり、歩いていた。
頭髪から靴の先まで黒一色。特徴的な尖った獣耳と大きな尾も同様で、色らしい色は暗がりに浮かぶような肌と気怠げに開かれた瞳だけ。前髪に覆われてひとつきりの赤が空を見上げて溜め息を吐く。
こんな夜には遠吠えのひとつでも上げそうな風貌だが生憎と彼は狐であり、響くのは高く澄んだ笛の音だ。
「——、————」
ゆるりと月光を吸ったような銀の横笛を唇に添え、祈るように紡ぎあげれば、あやしく影に溶ける黒も清浄と静謐の象徴であるかのよう。
樹々に、人に、月に。届くとも知れぬ旋律は揺らぐ湖面の漣に似て、男の溜め息を集めたそれはやがてかすかな余韻を最後に消えた。
誰が与え賜たか、彼の耳が捉えた音は余さず記憶に積み重なる。それでは今宵の音色はいったい誰の中に残るのか。
「……ま、俺の知ったことじゃァないんだが」
笛の代わりに取り出した銀貨を指で弾く。きらきらと星にも劣らぬそれを受け止めた手の甲の上で、捻くれた角の山羊が冷たく笑っていた。
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◆ エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)様
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ピンナップ:https://rev1.reversion.jp/illust/illust/29651
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【縁のある日に誘われ】
焼き付いた西陽はとうに失せ、冷たい石畳の上にも踊るような祭りの騒めきと提灯あかりに目が眩む。不意に引かれた袖の先、ころころと鈴鳴る声に視線を下ろせば金色の乙女のまろい額にも熱が宿っていた。
愛らしくもほんのりビターなチョコレイト細工の肌に、大人びた浴衣とレースたっぷりのスカートを合わせた和洋折衷がよくよく似合う。弓で射た矢は戻らない、ただ真っ直ぐに突き進む——矢絣を身に纏った彼女から、ずいっと差し出されるまあるい雪洞。
「林檎飴、美味い、ぞ」
真っ赤に艶めくそれは真昼の太陽のようで、ひと口どうだと見上げる瞳に映る神秘的な夜空とは対極だ。涙を湛えた瑠璃色の泉に揺れる月と瞬く星に魅せられ、愚かにも誘蛾灯へ触れてしまう羽虫さながらに頭を垂れた。
ゆらゆら、ゆらゆら。豊かな金糸が今か今かと待ち受ける。紅が縁取る黒と白がその左右から問い掛けた。
——さあさ、おたべ、おたべ。かじりかけのつみは、どんなあじ?
ガリッと脳裏に響く破砕音は果たして飴か理性か。蛇ならぬ狐が答えてくれることは、決して無い。
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◇イメージ
ピンナップ:https://rev1.reversion.jp/illust/illust/29651
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【縁のある日に誘われ】
焼き付いた西陽はとうに失せ、冷たい石畳の上にも踊るような祭りの騒めきと提灯あかりに目が眩む。不意に引かれた袖の先、ころころと鈴鳴る声に視線を下ろせば金色の乙女のまろい額にも熱が宿っていた。
愛らしくもほんのりビターなチョコレイト細工の肌に、大人びた浴衣とレースたっぷりのスカートを合わせた和洋折衷がよくよく似合う。弓で射た矢は戻らない、ただ真っ直ぐに突き進む——矢絣を身に纏った彼女から、ずいっと差し出されるまあるい雪洞。
「林檎飴、美味い、ぞ」
真っ赤に艶めくそれは真昼の太陽のようで、ひと口どうだと見上げる瞳に映る神秘的な夜空とは対極だ。涙を湛えた瑠璃色の泉に揺れる月と瞬く星に魅せられ、愚かにも誘蛾灯へ触れてしまう羽虫さながらに頭を垂れた。
ゆらゆら、ゆらゆら。豊かな金糸が今か今かと待ち受ける。紅が縁取る黒と白がその左右から問い掛けた。
——さあさ、おたべ、おたべ。かじりかけのつみは、どんなあじ?
ガリッと脳裏に響く破砕音は果たして飴か理性か。蛇ならぬ狐が答えてくれることは、決して無い。
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◆カルウェット コーラス(p3p008549)様
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BU:https://rev1.reversion.jp/illust/illust/37302
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【あわいおもい、あまいはなびら】
——ふわりと花が綻ぶような笑みでした。
ホイップクリームで飾りつけたシフォンケーキ。さくさく甘いアイシングクッキー。指先でそっと摘むマシュマロ。どんなにかわいらしいスイーツに喩えても、あわく波打つ紫色に映えるパステルカラーには敵わない。
「××、××! また会う、しに来たぞ!」
名前を呼ぶ声に、見つめあう視線に、伸ばされた手に、些細な仕草ひとつでやわらかく色を変える。そこには誰が見てもわかる、拒絶の『き』の字も存在しないふたりだけに許された空気があった。
「ひっひー、ボク、いい子する、した?」
肯定もこめてやさしく撫でてくれるその人からぎこちなくも伝わる温度。砂糖菓子の星のようにカラコロと小気味よい音をたてる幸福が、小さな体いっぱいに満たされていく。
ふわふわ、うれしい、でも、だってまだ、ここにいる、したい、だから。
今にも駆け出してしまいそうなたんぽぽの綿毛の気持ちを、ぎゅっと握られた両手で留めて。春の陽射しにそっくりな表情のなか、ぱちりと見開いた濃桃色に映り込むのは——
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◇イメージ
BU:https://rev1.reversion.jp/illust/illust/37302
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【あわいおもい、あまいはなびら】
——ふわりと花が綻ぶような笑みでした。
ホイップクリームで飾りつけたシフォンケーキ。さくさく甘いアイシングクッキー。指先でそっと摘むマシュマロ。どんなにかわいらしいスイーツに喩えても、あわく波打つ紫色に映えるパステルカラーには敵わない。
「××、××! また会う、しに来たぞ!」
名前を呼ぶ声に、見つめあう視線に、伸ばされた手に、些細な仕草ひとつでやわらかく色を変える。そこには誰が見てもわかる、拒絶の『き』の字も存在しないふたりだけに許された空気があった。
「ひっひー、ボク、いい子する、した?」
肯定もこめてやさしく撫でてくれるその人からぎこちなくも伝わる温度。砂糖菓子の星のようにカラコロと小気味よい音をたてる幸福が、小さな体いっぱいに満たされていく。
ふわふわ、うれしい、でも、だってまだ、ここにいる、したい、だから。
今にも駆け出してしまいそうなたんぽぽの綿毛の気持ちを、ぎゅっと握られた両手で留めて。春の陽射しにそっくりな表情のなか、ぱちりと見開いた濃桃色に映り込むのは——
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◆ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)様
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浴衣2019:https://rev1.reversion.jp/illust/illust/17764
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【待ち人来たりて】
てん、とん、てん。跳ねた音色が眠る草木を呼び起こす。ぼぅっと夜を煮詰めた燈は誰が供をするでもなく、気侭な童のように独りでに出で、遊び回る。
「さぁ、奏でよう……失われし月の音を……」
ゆらり、ゆら、ゆらり。葬列のようにさめざめと。嫁入りのようにしずしずと。赤い赤い爪先が足音も無く顕れた。
彼の供する三味線が墓所の静寂を叩き、爪弾き、描き出すのは空を遮る今宵の雲。妖しき調べは草葉の陰に、地の底に。騒めき、蠢き、聞き届けるものの声が谺する。
なくした生命を、未来を、過去を、名を、我を慰めよ。呼ばうものらと星明かりの瞳は決して出逢わない。袖を払い、ただひたすらに撥を振る舞う。
はて。闇を背負う青年が迎えに来たのは、彷徨える死者か、それとも——
程なく、狐面の下に赤く灯る焔の瞳が瞬いた。月下に香る麗しの花のような貌に朱をのせ、唯一を認めた彼は謳う、ソレの名を。
——嗚呼、丑満時の夜の向こう、紫の闇が笑った。
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◇イメージ
浴衣2019:https://rev1.reversion.jp/illust/illust/17764
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【待ち人来たりて】
てん、とん、てん。跳ねた音色が眠る草木を呼び起こす。ぼぅっと夜を煮詰めた燈は誰が供をするでもなく、気侭な童のように独りでに出で、遊び回る。
「さぁ、奏でよう……失われし月の音を……」
ゆらり、ゆら、ゆらり。葬列のようにさめざめと。嫁入りのようにしずしずと。赤い赤い爪先が足音も無く顕れた。
彼の供する三味線が墓所の静寂を叩き、爪弾き、描き出すのは空を遮る今宵の雲。妖しき調べは草葉の陰に、地の底に。騒めき、蠢き、聞き届けるものの声が谺する。
なくした生命を、未来を、過去を、名を、我を慰めよ。呼ばうものらと星明かりの瞳は決して出逢わない。袖を払い、ただひたすらに撥を振る舞う。
はて。闇を背負う青年が迎えに来たのは、彷徨える死者か、それとも——
程なく、狐面の下に赤く灯る焔の瞳が瞬いた。月下に香る麗しの花のような貌に朱をのせ、唯一を認めた彼は謳う、ソレの名を。
——嗚呼、丑満時の夜の向こう、紫の闇が笑った。
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◆辻岡 真(p3p004665)様
◇イメージ
BU:https://rev1.reversion.jp/illust/illust/16385
◇同行
境界案内人・Wächter
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【本の海で巡り会う】
「……おっと、こんなトコまでお客さんとは珍しいネ☆」
境界図書館の何処かの端。正確には端など無いのかもしれないが、奥まっていて行き止まりなら端は端。そんな本棚の隙間の邂逅だった。
「そういうあなたは休憩かい、境界案内人さん? どうもお仕事中には見えないよ」
大きなライオンに深く埋もれて笑う少年は、気にしないどころか側の椅子の座面を叩きすらした。
「話し相手なら他を当たってと言いたいところだけれど、偶然の再会も旅の醍醐味だしね」
「覚えててくれたとは光栄だねぇ。一度会ったっきりだからサ、辻岡 真サン?」
そこはお互い様だよ、と荷を下ろした青年・真の表情は陰になって窺えない。
「してやられた相手の顔は、忘れやしないさ……ふふ、冗談だよ。随分と楽しませてもらったからね」
黒い瞳に揺らいだ焔は瞬きの合間に消え、椅子に腰掛け、背凭れに頬杖をつく頃には言葉通り愉快そうに細められているだけだった。
「そうそう、この間、あなたに似た繋ぎ姿の子に案内されたんだけれど」
「あー、紫の猫耳ならLächeln(レッヘン)カナ?」
「ふぅん。それじゃあ、あなたの名前は?」
おや、と少年は考える。確かに積極的に名乗ることはしていなかった。
「Wächter(ヴェヒター)だよ、真サン。改めてヨロシク?」
所詮、偽名だけれど。わざわざ言わずとも恐らく彼は理解しただろう。この数分で少年・Wächterの中にはそんな不思議な信頼が生まれていた。これなら有意義なサボタージュになりそうだ、と。
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◇イメージ
BU:https://rev1.reversion.jp/illust/illust/16385
◇同行
境界案内人・Wächter
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【本の海で巡り会う】
「……おっと、こんなトコまでお客さんとは珍しいネ☆」
境界図書館の何処かの端。正確には端など無いのかもしれないが、奥まっていて行き止まりなら端は端。そんな本棚の隙間の邂逅だった。
「そういうあなたは休憩かい、境界案内人さん? どうもお仕事中には見えないよ」
大きなライオンに深く埋もれて笑う少年は、気にしないどころか側の椅子の座面を叩きすらした。
「話し相手なら他を当たってと言いたいところだけれど、偶然の再会も旅の醍醐味だしね」
「覚えててくれたとは光栄だねぇ。一度会ったっきりだからサ、辻岡 真サン?」
そこはお互い様だよ、と荷を下ろした青年・真の表情は陰になって窺えない。
「してやられた相手の顔は、忘れやしないさ……ふふ、冗談だよ。随分と楽しませてもらったからね」
黒い瞳に揺らいだ焔は瞬きの合間に消え、椅子に腰掛け、背凭れに頬杖をつく頃には言葉通り愉快そうに細められているだけだった。
「そうそう、この間、あなたに似た繋ぎ姿の子に案内されたんだけれど」
「あー、紫の猫耳ならLächeln(レッヘン)カナ?」
「ふぅん。それじゃあ、あなたの名前は?」
おや、と少年は考える。確かに積極的に名乗ることはしていなかった。
「Wächter(ヴェヒター)だよ、真サン。改めてヨロシク?」
所詮、偽名だけれど。わざわざ言わずとも恐らく彼は理解しただろう。この数分で少年・Wächterの中にはそんな不思議な信頼が生まれていた。これなら有意義なサボタージュになりそうだ、と。
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◆ルーキス・ファウン(p3p008870)様
◇イメージ
水着2021:https://rev1.reversion.jp/illust/illust/49382
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【掴んだ得難き幸を】
ざざん、ざざん、と幾度と無く砕ける白波の狭間、陽光にも負けぬ金色が姿を現す。続いて伸びた力強い片腕が焼けた岩場を物ともせずに全身を引っ張り上げた。その反対の手は、と言えば。
「蛸に雲丹、昼食には豪勢過ぎるくらいに大漁だな」
得物と獲物を確認するとゴーグルを外し、濡れた頭を振るう青年。日頃の鍛錬が窺える、眩しく雫の滴っていく筋肉に纏うのはシンプルな——
「……ねぇ。おにいさんは水着、着ないの?」
「これじゃなくて水に入る専用の服があるんですか?」
——太陽と少女からの熱い視線を一身に集める黒い褌だ。
ここから少し行った所にある海水浴場の客であろう通りすがりの彼女からの問いに、晴天を映す凪のような穏やかな瞳が幼さを滲ませる。豊穣の地で育ち、素潜りを得手とする彼にとっての『水着』は生まれてこの方これだったものだから。
特別に物知らずという訳でも無い。それでもまだ18歳と年若い彼の、普段はバンダナの下に隠されている年相応な少年の一面が垣間見えた瞬間だった。
「あっ! もしかして、わすれてきちゃった? むこうの海の家にも売ってるよ!」
自分の目的地を指差す少女の無邪気な親切に、丁寧に礼を述べて送り出す。フリルたっぷりの水着姿とお揃いの花のような笑みで手を振る彼女が遠ざかり、ふむ、と彼は考える。
場に相応しい衣装を見繕うのも先々のためになるだろうか——そう、いつか想い人と訪れる日のために。
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◇イメージ
水着2021:https://rev1.reversion.jp/illust/illust/49382
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【掴んだ得難き幸を】
ざざん、ざざん、と幾度と無く砕ける白波の狭間、陽光にも負けぬ金色が姿を現す。続いて伸びた力強い片腕が焼けた岩場を物ともせずに全身を引っ張り上げた。その反対の手は、と言えば。
「蛸に雲丹、昼食には豪勢過ぎるくらいに大漁だな」
得物と獲物を確認するとゴーグルを外し、濡れた頭を振るう青年。日頃の鍛錬が窺える、眩しく雫の滴っていく筋肉に纏うのはシンプルな——
「……ねぇ。おにいさんは水着、着ないの?」
「これじゃなくて水に入る専用の服があるんですか?」
——太陽と少女からの熱い視線を一身に集める黒い褌だ。
ここから少し行った所にある海水浴場の客であろう通りすがりの彼女からの問いに、晴天を映す凪のような穏やかな瞳が幼さを滲ませる。豊穣の地で育ち、素潜りを得手とする彼にとっての『水着』は生まれてこの方これだったものだから。
特別に物知らずという訳でも無い。それでもまだ18歳と年若い彼の、普段はバンダナの下に隠されている年相応な少年の一面が垣間見えた瞬間だった。
「あっ! もしかして、わすれてきちゃった? むこうの海の家にも売ってるよ!」
自分の目的地を指差す少女の無邪気な親切に、丁寧に礼を述べて送り出す。フリルたっぷりの水着姿とお揃いの花のような笑みで手を振る彼女が遠ざかり、ふむ、と彼は考える。
場に相応しい衣装を見繕うのも先々のためになるだろうか——そう、いつか想い人と訪れる日のために。
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キャラクターを選択してください。
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概要等はこちら↓
https://twitter.com/hijack_nm/status/1416724516902899716?s=21
希望者があれば8月いっぱいまで随時追加していきます。
まだまだ盛り上がるPPPに1PLとしても、NMとしても、楽しんで関わっていけたらなと思います!
4周年、おめでとうございます!