PandoraPartyProject

SS詳細

季節は巡るから

登場人物一覧

シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)
天下無双の貴族騎士

「ぐわああああ!」
「畜生、逃げろ! こいつ無茶苦茶強いぞ!?」
「逃がさん! 無辜の人々の平和は、この貴族騎士が守って見せる!」
 鉄帝の小さな村を襲う盗賊団を返り討ちにするのは、シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)であった。
 幻想のとある騎士の家の息子であり、自らを貴族騎士と名乗るシューヴェルトは自分の矜持のままにこの仕事を遂行していた。
 今回も盗賊団は自分勝手な理由で村を襲いに来たのであり、それを撃退するのは当然の流れであった。
「騎士式剣舞……『此花咲夜』!」
「がああああ!」
 最後の盗賊を倒すと、シューヴェルトは白い息をはあ、と吐く。
 随分寒くなったものだ。そんなことを思うシューヴェルトは、戦いの最中にはささやかすぎて気付かなかったことに気付く。
 ちらほらと、舞い散る白いもの……雪だ。
 天から舞い散る雪はシューヴェルトの手に落ち、手袋の上でその形を留めていた。
「雪、か。白いな」
 鉄帝を襲ったあの事件からそれなりにたったが、冬の寒さと雪というものに対するイメージも回復してきたように思える。
 あるいは、本来の雪に対するイメージがそういうものだからだろうか?
 もしかすると、今年は雪が降るまでかなりかかったからであるかもしれない。
 ちらほらと舞い散る雪は、シューヴェルトの記憶の片隅を刺激する。
(そういえば、あの時も……)
 あれはいつのことだっただろうか?
 シューヴェルトは桜の花びらが舞い散る様を見たことを思い出す。
 この光景は……その時のものと、何処となく似ている。
 不思議なものだ。まさか、雪を見て桜を連想するなんて。
「おお、ありがとうございます! 盗賊を退治してくださったのですね!」
 走ってくる村長に、シューヴェルトは安心させるような笑みを浮かべる。
「ああ。もう心配ない」
「ありがとうございます……これで安心して春まで過ごせます!」
 春。その単語を聞いて「ああ、そうだ」と思い出した。
(そういえば……サクラの花びらの白さを見て雪を思ったんだったな)
 それが今は、雪を見て桜を連想している。しかし、おかしくはない話なのかもしれない。
 雪を見て春のぬくもりを思うように、桜を見ればいずれ来る冬の冷たさをも思うのだろう。
 それはある意味で貴族騎士の持つ雅であり……未来を見据える、そんな強さであるのかもしれなかった。


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