シナリオ詳細
交易路をフリアノンへ!!
オープニング
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『覇竜領域デザストル』。
かつては人跡未踏の地として知られたこの地には、亜竜種達が住まう。
依然として、凶悪なる魔物や亜竜達が存在している上、冠位魔種ベルゼーの件で覇竜の奥には多数の竜種の存在があることも知られるようになった。
上記の一件は覇竜だけでなく周辺国家まで危機にさらされていたが、ローレットイレギュラーズの活躍もあって事なきを得た。
事件の解決後、行商人は再び完成済みの交易路を辿り、名もなき第一中継地点、昇降路を上がって第二中継地点シャウデへと至り、亜竜種達と少しずつ交易を再開し始めている。
ただ、現状、交易路は完成しておらず、まだ本格的な物流が始まったとは言い難い。
いち早いラサ南部からフリアノンまでの交易路の完成が求められている。
「首をながーーーーくしてこの日を待ってたっすよ!」
『パサジールルメスの少女』リヴィエール・ルメス(p3n000038)が両手をぎゅっと握り、イレギュラーズへと訴えかけてきたのも無理もない。
折角、フリアノンが遠く見えてきたというのに、覇竜の情勢もあって長いこと足止めどころか、しばらく覇竜にすら立ち入りできなかったというリヴィエールだ。
仕方ないとはいえ、もう一息というものをお預けを食らえば、皆同じようになるっすとリヴィエールの主張もわからないではない。
さて、第二中継地点シャウデから先だが、先日交戦した岩場を通り抜けると、渓谷上部の道を進むことになる。
崖を沿うようにできた道を進みつつ、3つほど吊り橋を渡り、さらに進む。
安定した岩場が見えてくれば、フリアノン近郊へと至る。
そうなれば、イレギュラーズも多く活動している場所。
この辺りになれば、フリアノン側からの舗装がかなり容易となる。
また、強敵となる亜竜や魔物もかなり少なくなる上、何かあればフリアノン在住の亜竜種達も出動できる。
「つまり、渓谷上部が最後の危険地帯というわけっすね」
吊り橋を一つ進んだ先は多少開けた空間となっているが、その辺りは亜竜の棲息地。
ミネライドンと呼ばれる鉱石を纏うこの亜竜は、亜竜の中でもかなりの力を持つことで知られる。
食料のおこぼれを狙うストーンスキンク数体がついてくるのが面倒だが、ミネライドンからすれば、そちらも餌という認識。
うまく利用すれば、難敵であるミネライドンを相手どることが可能かもしれない。
「あんまり派手に暴れると、渓谷が崩れる可能性があって怖いっすね」
下手に戦場端で交戦するのは避けたいところ。
相手にとっては岩石すらも食料。崩れることなど意にも介していないはずだ。
「キミ達にとってはここまでも大変だと思うっすけど、あたし達は亜竜がいなくなってからが本番っす」
この先、大量の荷物を運搬するためには、吊り橋の補強は必須。
なんなら、別の橋に架け替えてもいいだろう。
また、崖沿いの道も場所によっては幅が狭く危ない為、何らかの対策を講じたい。
日暮れまで考えれば、ある程度時間は限られるが、極めて危険な場所から手を付けていけばいいだろう。
後はそのままフリアノンへ。
その近くに交易用の荷受け場がすでに作られており、そちらで休むことが可能だ。
「でも、折角なら、フリアノンの人達とも交流したいっす!」
リヴィエールも未知の出会いがとても楽しみなようで、体がうずうずとさせていた。
同伴しているパサジール・ルメスの民も、覇竜という未知の場所に今なお恐怖を少なからず恐怖はあったようだが、交易路を真っ先に開通した立役者の一員となれると前向きに参加していたようである。
「それでは、今回はよろしくお願いするっす!」
一連の依頼において、リヴィエールからお願いする最後の依頼となる可能性が高い。
彼女の笑顔を見たイレギュラーズは大きく頷き、一路フリアノンを目指す。
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シャウデを出たイレギュラーズとパサジール・ルメスの民。
馬車を引きつつ、メンバーは岩場を越え、渓谷上部へ。
崖沿いの細い道から下は渓流が見える。ここを下れば、第一中継地点で渡ってきた辺りへと辿り着くこともできるが、いかんせん高すぎてその気にもならない。
崖沿いの道は全く整備されておらず、非常に危険だ。
幅は馬車でもかなりギリギリといった具合。整備するなら、崖を削る必要がありそうだ。
進むうち、吊り橋の一つ目に差し掛かる。
それは、ロープに木の板を使った簡素な物。
亜竜や魔物が破壊せぬよう、多少は補強されているものの、重量のあるものを大量に積む馬車を幾度も往復させるとなると、かなり不安がある。
この先の吊り橋も同じような造りだというから、同じような補強が必要となるだろう。
さて、一つ目の吊り橋をなんとか渡り切った後、開けた場所に出れば、そこには悠然と横たわる亜竜達の姿が。
鉱亜竜とも称されるミネライドンが3体。
硬い体躯を持ちながら、俊敏性も兼ね備える亜竜とあって、危険度は高い。
周囲の魔物、ストーンスキンクはミネライドンの食事時を待っているようで、岩陰に隠れる姿が見て取れる。
魔物にとっては、イレギュラーズらも捕食対象とみられるので、それらも油断せず対処する必要があるが……。
グルルルル……。
「こっちに気づいたっす……!」
馬車の中から、リヴィエールがイレギュラーズへと告げる。
やはり、この先に進むには、ミネライドンの討伐は必須。
交易路完成の為、一行はその排除に乗り出すのである。
- 交易路をフリアノンへ!!完了
- ついに、交易路はフリアノンに至る……。
- GM名なちゅい
- 種別EX
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年08月19日 22時30分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
(サポートPC1人)参加者一覧(10人)
リプレイ
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覇竜の交易路、第二中継地点シャウデを出たイレギュラーズはパサジール・ルメスの民と共に執着予定地点を目指す。
「もう少しで開通するんじゃけ」
『鋼鉄の冒険者』アルティアーロ(p3p011108)の一言に、皆これまでの依頼を思い返す。
「覇竜への交易路もあと少しで開通なのね。なんだか感慨深いわ」
『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)は交易路を開拓開始や昇降機の建造と、それなりに関わってきたと語る。
「偶に手伝っていたくらいだが、こうして開通の場に立ち会えるのは嬉しい話」
『灼けつく太陽』ラダ・ジグリ(p3p000271)もまた、昇降機の建造他、玉髄の路関連の依頼に参加していた。
「交易路の開通まであと少し……僕も関われて本当に嬉しい」
これほど多くの人々が携わった公共事業に携わることを、『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)も喜んでいた。
「商人ギルド・サヨナキドリとしては覇竜の交易路事業は最優先! 協力しない理由がないわ」
『紲の魔女』紲 冥穣(p3p010472)はギルドの支部長としても、紲家の1人としてもこの事業は成功させたいと考え、サポーターとして参じている。
「長い年月を掛けた大掛かりな一大事業が完成間近と聞いて光より速く飛んで来たぜ」
『狂言回し』回言 世界(p3p007315)は自分達が歴史に名前を残す日も近いと考えていたらしく。
「動機が不純? まあいいじゃないか」
この事業に携わる理由も様々ということだろう。
「覇竜との交易とな。それはいい。覇竜の珍しいものが国の外へ出たらきっと飛ぶように売れるだろう」
よい品物の交易は売り買いどちらにもよいものだと、『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)は語る。
「安心して行き交うことができる道を頑張って作らねばならん」
「そうっす」
エーレンの言葉に、リヴィエールが力強く同意する。
何せ、彼女達パサジール・ルメスの民ですら、危険極まりないと忌避していた覇竜という地。
だが、イレギュラーズがこの地の亜竜種と交流、道を切り開いたことで、今、まさに交流の為の道もまた開拓されようとしている。
「交易路の開通により生まれる交流、物資のやり取りはとても意義があると思う。全力で成し遂げたいね」
『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)も交易路の完成が色々な場所に多くの恩恵をもたらすと確信し、完成のため尽力したい構えだ。
「それに、ずっと入れ込んできてたあの子の事も……」
セレナが皆に、『相賀の弟子』ユーフォニー(p3p010323)を見るよう促すと。
「あと少し、最後までよろしくお願いします……!」
この事業の多くに携わってきたユーフォニーだけに、完成にかける気概は人一倍強い。
それを知っていたこそ、セレナも彼女を気にかけているのだろう。
「交易路もいよいよ完成か。最後のひと踏ん張り、張り切っていこうか」
「完遂まで、頑張りましょうね」
「しっかり最後の仕上げを済ませよう」
『Star[K]night』ファニー(p3p010255)、セレナ、ラダがそれぞれ口にした意気込みに皆同意しつつ、一路フリアノンを目指すのである。
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第二中継地点シャウデ近郊の岩場を抜けると、イレギュラーズ&パサジール・ルメス混成隊は渓谷上部の道へと出る。
「絶景かな絶景かな~♪」
『狐です』長月・イナリ(p3p008096)は高台からの覇竜の景色に気を良くしていた。
地表部からそれなりに高さがあり、遠くまで見渡すことができる。
イナリの視界にうっすらと荒野らしきものが見えるが、あれはラサだろうか。
心地の良い空気を胸いっぱいに詰め、メンバー達はやや狭い足場を歩くことに。
メンバーによってはこの後の工事の為、馬車を連れてきている。
例えば、ラダはドレイク・チャリオットを、エーレンは妖精の木馬を引く。
エーレンは色々な場所に運ばなければならない物をメインで積み、素早く運べるようにと配慮していたようだ。
勿論、覇竜内である為、外敵への警戒は欠かせない。
一列縦隊で進むしかない現状もあり、一旦広い場所に出てから工事を始めることにした一行はしばらく先に進むことにしていたが、ヨゾラは仲間の馬車の背後について周囲を見回していたし、馬車を引くラダ自身も感覚を研ぎ澄まして警戒を強める。
ファニーも視野を広く持って索敵し、アルティアーロもまた感覚強化で別方向をカバーする。
自ら飛行するユーフォニーはドラネコのリーちゃんを先行させつつ索敵し、空飛ぶ箒『箒星』へと跨って空を飛ぶセレナもまたファミリアーも併用して周囲の状況をチェックしていたが。
(前方、吊り橋を渡った先に亜竜がいるわ)
(黒褐色の亜竜が3体……なんか魔物っぽいのが周囲にいるな)
セレナはユーフォニーと敵の存在を確認してからテレパスで皆に状況を伝え、ファニーが情報を補足する。
「折角、絶景を楽しんでいたのに……」
イナリは外敵の出現にややテンションを落としながら、仲間の情報に耳を傾ける。
まず、吊り橋の間にある開けた足場に鎮座する亜竜。
鉱亜竜とも称されるミネライドンは岩石を食するのが知られるが、それだけでなく魔物など他の生物も食べてしまうのだとか。
そして、そのミネライドンの周囲についているのが岩亜竜とも称されることがあるトカゲを思わせる魔物ストーンスキンクだ。
ミネライドンの食べ残しなど、おこぼれに預かろうとするなんとも卑しい魔物だが、ミネライドンに食われる餌となることもある。
それだけ、覇竜というこの地で生きるのに、ストーンスキンクらも必死なのだろう。
さて、立地上迂回する道もなく、荷馬車を引いて進むのならこの足場を通らねばフリアノンには至れない。
先んじて、亜竜を発見できたのは僥倖。
しかも、満足な広さのない道を進んできたメンバー達には、これ以上ない足場であり、前後の道を舗装工事する上では確保したい場所だ。
まず、吊り橋を渡り切った一行は、そこにパサジール・ルメスの面々を待機させる。
「終わるまで待っててくれ、すぐ済ませる!」
「あとで回復は頼らせてください……!」
「任せたっすよ!」
ラダに続いてユーフォニーも馬車内で待機するよう願って駆けだすと、リヴィエールが仲間と共に送り出す。
メンバーが相手の様子を窺いつつ少しずつ近づいていくと。
グルルルル……。
牙を剥く口から涎を垂らす3体の亜竜ミネライドン。
その後方には、ストーンスキンクの群れが目を光らせ、ミネライドンがこちらを襲撃したお零れを狙っている。
グガアアアアアアッ!
身を起こしたミネライドンは地面を蹴り、突撃のタイミングをはかっている。
「大人しくしてほしかったんじゃがのう。上手いこといかんもんじゃね」
首を振るアルティアーロ。もはや、衝突は避けられない。
「……とりあえず、お仕事をちゃっちゃと済ませてから楽しみましょうか♪」
「亜竜も魔物もぶちのめして、交易路を切り開くよ!」
気を取り直すイナリ、前向きにこの場の突破を試みるヨゾラと合わせ、イレギュラーズは目の前の障害排除に当たるのである。
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討伐すべきは鉱亜竜ミネライドン、岩亜竜ストーンスキンク合わせて11体とやや多い。
そこで、イレギュラーズの立案した作戦は……。
「ミネライドンから見たら私達もストーンスキンクも餌のはず」
保護結界を載せたオルド・クロニクルを展開するヴェルーリアが口にした通り、事前情報を元に皆で岩亜竜を優先して狙う。
真っ先に敵陣へと飛び込むユーフォニーは上空にリーちゃんを待機させたまま、連鎖行動を発動させる。
一番槍となる彼女は低空飛行して鉱亜竜を飛び越える。
後は、戦いのお零れを狙おうとする岩亜竜の群れ目掛け、ユーフォニーは勇気を灯す色を光らせてから、彩波揺籃の万華鏡で敵陣を照らす。
シャアアアアアアアアアアアッ!!!
思わぬ攻撃を受け、仰け反る岩亜竜達。
だが、イレギュラーズの攻撃はここからが本番だ。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。この道は民の希望。安全に通れるようにさせてもらうぞ」
エーレンも名乗りを上げてから一気に敵陣奥まで踏み込み、すれ違いざまに岩亜竜の体を次々に切り裂いていく。
続き、ファニーもミネライドンは外し、降りしきる二番星を浴びせかける。
「ミネライドンにとって、ストーンスキンクは餌らしいからな」
グルルルルル……。
自らに害のない鉱亜竜はファニーが攻撃した後方の岩亜竜らに気づいたらしいが、メンバーの攻めはなおも続く。
「みんな餌に見えてるなら、食べやすそうな方を狙ったらどう? ちょうど私の方しか見えてない食べ頃の餌もあることだし!」
ヴェルーリアもそう呼びかけ、絶対守護宣言を発することで岩亜竜の引き付けに当たる。
ハイセンスで感覚を研ぎ澄ますラダはしばし戦況を見つつも、やはり先手をとれる絶好の機会は逃せないと、大型ライフルでファニングショット。
纏めて撃ち抜くことで、ラダは岩亜竜を弱らせていく。
「最後の晩餐を提供だ。味わえよ!」
岩亜竜に注意を向けている鉱亜竜達はどれから食べようかと舌なめずりする。
岩石を食する亜竜どもだが、新鮮な肉もいいものだと考えているのかもしれない。
回復役となる世界だが、初手だけは攻撃へと打って出る。
ただ、神秘の強力な一撃を見舞おうとしてもやや距離が遠く、魔光を発して味方を援護する形だ。
さらに続くイレギュラーズの攻撃。
予め奇跡の力を己に宿したイナリが音もなく岩亜竜数体を奇襲し、鉱亜竜側へと弾き飛ばす。
「わたしが相手になるわ」
やや出遅れた形となったセレナも敵陣へと飛び込み、ヴェルーリアと合わせて名乗りを上げる。
今は岩亜竜のみが相手だが、鉱亜竜が馬車の方へと向かわないかと彼女も注意は怠らない。
その間にアルティアーロも岩亜竜の群れにロケット弾を撃ち込む。
向かってこようとする岩亜竜を鉱亜竜にぶつけ、アルティアーロは仲間と足並みを揃えて乱戦状態へと持ち込んでいく。
戦場が大きく動き始める中、ヨゾラはぬいぐるみのファゴットと共に馬車を守るような位置取りから動こうとはしない。
それでも、仲間と岩亜竜討伐の為、星空の泥を呼び起こして。
「呑み込め、泥よ……この先の道を拓く為に!」
岩亜竜のみを捉えたヨゾラはその泥を一気に浴びせかける。
グルルルルル……。
小腹もすいていたらしく鉱亜竜は泥を調味料替わりにして、個別に岩亜竜へと食らいついていた。
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渓谷上部にある開けた場所でこの近辺に生息する亜竜、魔物と交戦することになるイレギュラーズ。
多少広い空間で交戦はできるが、それでも高くそそり立つ岩場が作り出した自然の場。
戦いによって崩れる危険もあるとみるヴェルーリアは保護結界を乗せたオルド・クロニクルで自身の周囲を保護し、戦域の崩壊を防いでいた。
さて、イレギュラーズの思惑通り、鉱亜竜ミネライドンは弱ってきていた岩亜竜ストーンスキンクを捕食しようとしていた。
岩亜竜はイレギュラーズからの強襲に加え、仲間が食われて焦ってしまう。
それに抵抗しようにも、怒涛の攻撃ラッシュがイレギュラーズから繰り出される。
すでに岩亜竜へと接近していたメンバーもいることもあって、ユーフォニーは交易路開通の為にという想いを力に変え、岩亜竜数体を撃ち抜くと、手前の1体がついに白目を剥いて倒れていく。
状況はイレギュラーズに有利ではあったが、一瞬の油断が命取りになることもある為、皆気を緩めずに交戦する。
「一気に行こう!」
その仲間達を、号令を発するヴェルーリアが支える。
他にも世界が合わせて号令を発し、飛び掛かってくる岩亜竜から受けた飛び蹴りやタックルによって態勢を崩した仲間を支援してすぐに立て直させる。
「回復は任せてちょうだい」
加えて、サポーターの冥穣もまた、天使の歌を響かせて戦線を支える。
そうした支援もあり、メンバーは一気に残る岩亜竜を攻め立てて。
再度星空の泥を浴びせかけていたヨゾラがその泥の中に1体を沈めた直後、イナリが次なる岩亜竜に術式を撃ち込んで崖下へと弾き飛ばそうとする。
しかしながら、そこは岩亜竜もしぶとく踏みとどまり、餌になるものかと再び向かってきた。
「さすがですね」
魔物のしぶとさに、イナリも舌を巻く。
その岩亜竜が向かった相手はセレナ。
怒りによって自身に向かってきた相手を、彼女は黒紫の光で強く照らす。
突如狂気にかられて苦しむ岩亜竜は泡を吹いて伏してしまう。
その間にも、鉱亜竜は岩亜竜を美味しくいただいており、がりごりと生々しい音が聞こえてくる。
岩亜竜達にとっては気の毒にも感じられるが、あちらも鉱亜竜に敗れたイレギュラーズを食べる気でいたのだから、お互い様というべきだろう。
元よりイレギュラーズは全員、鉱亜竜にすら敗れる気もないが、それはそれ。
イレギュラーズは残る岩亜竜の討伐を加速させて。
エーレンが見定めた1体を一閃の元に仕留めてしまえば、回復が過剰となった状態をあって世界が今度こそ神秘の力を一点に集中させて別の1体に零距離から叩き込む。
それには耐えたその岩亜竜だが、ファニーが遠距離から指先を向け、焼けた星を降り注がせて絶命に追い込む。
その間に3体鉱亜竜はそれぞれ岩亜竜を1体ずつ、ほとんど捕食し終えていた。
ただ、いずれも腹は満たされておらず、倒れた他の岩亜竜へと近づく。
その隙を、イレギュラーズは逃さず、次なるターゲットとして攻撃を再開させる。
「しっかりダメージが通るようにしていかないとな」
そう言うファニーが1体ずつ均等に叩いていく傍ら、距離を保っていたイナリが目標傍へと転移し、直接術式を撃ち込む。
硬い外角を持つ鉱亜竜だが、腐食性を伴うイナリの一撃によって、その外郭が脆くなっていた。
真正面へと回ったイナリは続けざまに、相手の顔面目掛けて三光梅舟を刻み込む。
セレナもまた凝縮した結界を刃とし、その硬い体を素早く切り裂く。
グルルルルルル……!
食事の邪魔をされた亜竜が明らかに苛立ち、こちらを睨みつけてくる。
「僕等がここを通れるようになる為に! ぶちのめしてでも押し通る!」
馬車の守りに注力するヨゾラも呪鎖を操って縛り付ける。
簡単に倒せる相手ではないが、イレギュラーズもユーフォニーを一番槍として一気に攻勢を強め、その体に傷を増やす。
グルアアアアアアアアアアアァァ!!
苦悶の声を上げる鉱亜竜は激しくこちらに噛みつき、広域に鉱石を飛ばして抵抗する。
その一つ一つの鉱石は大きく、波の生物であれば潰されて命すら失いかねない。
それらを全てリーちゃんで見定めたユーフォニーは、下手に食事中の2体を刺激せぬよう、傷つく1体にのみ燐光を輝かせる。
グアァ、アアァァ……。
目から光を失った鉱亜竜が激しい音を立てて崩れ落ちると、残る2体も捕食を止めてこちらへと警戒心を強める。
1体目も激しく暴れ、イレギュラーズの体力を削いでいた。
ほとんど気を休める暇もないが、世界が手早く己の調和の力を賦活の力へと転じて傷つく仲間に……とりわけ最前線に立ってタンク役となるヴェルーリアやセレナを優先し、癒していく。
1体を全力で抑えるヴェルーリアは、しっかりとマークしてそいつを押さえつける。
その間、仲間達が果敢に鉱亜竜を攻め立てるが、思った以上に攻撃力も高く手強い。
2体を相手にせねばならぬ状況で回復役が分散し、ジリ損になってしまったヴェルーリアは見た目以上の素早さで体当たりからの食らいつきと、連撃を見舞ってくる。
高い防御技術のあるヴェルーリアだ。
亜竜の猛攻にも耐え、すぐさま深く傷ついた自身に慈愛の息吹を吹かせて態勢を立て直す。
交戦中、鉱亜竜はまだ満足に食事ができていない、邪魔すんなと言わんばかりに激昂して前のめりに突っ込んでくる。
ただ、イレギュラーズの攻撃もあって、堅いはずの外殻はかなりもろくなっている。
「さっきの飯は美味かったか? 代金を置いてけよ」
そんな敵に、ラダは岩亜竜という餌を用意したお代を請求するべく、3連撃を見舞ってその命を奪い去る。
もう1体はセレナと合わせてアルティアーロが抑えていた。
多くはアルティアーロが引き付ける。
3連装スーパーメーサーキャノンを発して敵を足止めしていたアルティアーロだが、すぐに態勢を立て直す鉱亜竜の攻撃はやはり激しい。
一時、セレナと手分けし、さらに絶気昂で持たせていたアルティアーロ。
残る鉱亜竜がこの1体のみとなれば仲間達も駆けつけて。
「皆で通るんだ。誰も倒れさせないよ……!」
ここまで皆、戦線を持たせていることもあり、ヨゾラも天より降るその光輪によって傷つく仲間を支える。
立て直したセレナがここでも断月の魔剣を振るい、アルティアーロもまたG・L・B……ギガント・ライフ・ブラスターで鉱亜竜を撃ち据える。
亜竜を闊歩するだけの力量を持つだけあり、しぶとい相手。
あと一息と皆武器を握る手を、術式を発する神秘の力を気持ち強く籠める。
機動力を高めたエーレンが慣性を伴った一閃で残り1体になった鉱亜竜を切り裂き、ファニーが仲間の負わせた傷口へとそっと撫で、確実な死を与える。
グアオ、アオオオ……。
目から光を失った鉱亜竜は突っ伏すように倒れて動かなくなる。
その傷口の奥に、アルティアーロは光る何かを見つけて腹を切り裂く。
事前情報通り、その体内に煌めく鉱石を手にし、アルティアーロは戦利品として持ち帰ることにしたのだった。
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戦いを終えて一息つくイレギュラーズだが、亜竜を倒して終わりという訳ではない。
ここまで、先ほどまで相手してきた亜竜や魔物は確かに恐ろしい存在だが、行く手を阻む自然もまた外部に住む者にとっては危険極まりない。
「それでは、今回は私とリヴィエールさんが指揮を執りますね」
この大所帯、かつ危険な道、さらに魔物や覇竜の襲撃も考えれば、夜に進むのは危険だ。
まだ日が高いとはいえ、活動限界が日暮れまでと考えれば時間の制限は大きい。
限られた時間の中で、できる限り作業を進めたいとユーフォニーは上空へと飛ばしたドラネコ、リーちゃんによる視点を確保する。
まずは、戦闘被害が交易路にないかどうかをチェック。
そこはうまく皆立ち回っていたこともあり、直接の影響は少ない。
続いて、ユーフォニーは交易路をして利用する当たり、手を加えねばならぬ箇所の確認を進める。
少しでも行商を行う者達が行き来しやすくするべく、イレギュラーズやリヴィエールらが考えた交易路の舗装は主に3種。
崖削り、地均し、そして、吊り橋補強だ。
それら作業内容と仲間のスキルを鑑み、ユーフォニーは効率よい人員配置や作業分担を指示提案と共有を行う。
「それでは、皆さんよろしくお願いします!」
「お願いするっす!」
ユーフォニーとリヴィエールの呼びかけを受け、この場の面々は担当箇所へと散っていく。
崖を削っての道幅確保と地均しはほぼ同時進行で行う。
その理由は簡単に、専門性の高い仕事と、力仕事要因が多数いる仕事であり、分担がしやすい箇所だったからである。
まず、崖削りについてだが、現状でもある程度は移動できるが、車輪が道を外れればそれまで。谷底へと真っ逆さまだ。
その為、道幅確保の為、内側の崖を削ることになるのだが。
「……攻撃して削る、のはまずいかな」
開通する為の作業が手伝えることを嬉しく感じていたヨゾラだが、崩れる危険なども考えてよい対処法がないかと問う。
「確かに、崖崩れは洒落にならんな」
ここは世界が自然知識を活かし、合わせてヴェルーリアやファニーが広域俯瞰によって頭上から崩れる心配がないかを逐一確認しながら作業する。
「ここでいいのだな?」
仲間に場所を指定してもらい、エーレンがその個所のみを切り崩していく。
ラダも銃弾を撃ち込み、崖を削り取る。
連れてきたリトルワイバーン、がんもの助力も得て、彼女は高所の切り出し作業も難なくこなす。
手を傷めぬよう切り出したその岩石は橋の補強などに利用すべくラダ自身がギフトによって運ぶ。
また、連れてきたリトルワイバーン、がんもの助力もあり、高所作業や運搬なども比較的スムーズに進めていた。
それでも、かなりの岩石が切り崩されることもあり、運搬要因は多く必要になる。
それもあり、リヴィエールらの指示もあり、アルティアーロやファニーが力仕事を担って移動させる。
広場へと移動して休憩所に出来るよう周囲を補強したり、使いづらい岩は砕いて谷底へと落としたり。そこはパサジール・ルメスの面々の指示に従い、メンバー達は動く。
その際、セレナは箒に岩を括り付けて運搬していたのだが、世界はそれを見上げつつ、皆似たり寄ったりのフィジカルだと思っていた世界は岩を運びながら涙をほろりと流していた。
また、ここでサポーターの冥穣もここぞと力を発揮する。
「みんな〜、力を貸してちょうだい!」
ニワトコ茶と灰薔薇の蕾で強化した精霊疎通を使って岩や土の精霊に呼び掛け、危険な箇所が崩れぬよう補強してもらったり、実際舗装を進めたりしてくれていたのだ。
折角人や物が行き交うのだから、ちゃんと「道」っぽく、綺麗に舗装したいとは冥穣の談。
彼女は崖削りと地均しを合わせて幅広くサポートしてくれていた。
その崖削りと同時並行して進めるのが地均しだ。
昇降機より先はほぼ自然の道を行かねばならない。
馬車で行くには道が凸凹しすぎており、場所によっては地面に車輪がとられることもある。
全ての道を均すのは厳しい為、比較的危険度の高い渓谷上部から先の道を重点的に整備する。
ここでもヨゾラが道の状態を確認し、舗装の準備を進める。
こちらはシンフォニーが主となって指揮を執り、パサジール・ルメスの面々も多くがこちらに加わる。
出っ張った岩を砕き、窪みには持ち込んだ土砂を埋め込む。
本格的な舗装ができればいいが、今回は時間もあまり長くとれない為、こうした手段をリヴィエールが提案したのだ。
ヨゾラもそれに従い、ファミリアーを通して舗装作業を進める、大きめの岩を移動し、岩を取り除いたり砕いたりしていく。
傍には、ぬいぐるみファゴットもそのお手伝いをしていた。
また冥穣はここでも精霊操作によって舗装作業をアシストし、それなりの距離がある渓谷上部の道を少しずつ均していく。
「手の多さが物を言うところもある」
中々に効率よく進めていたのは、ヴェルーリア。
自身の能力と合わせロバ・ロボット、ロバちゃん一号の力を借り、硬い岩盤に挑み、力で広範囲をカバーしていた。
それを、エーレンが妖精の木馬で素早く運ぶ。なお、資材はすでに戦闘跡となった広場へと下ろしている。
資材は舗装に使う他、この後の吊り橋補強にも使用することに。
「……っと、こんなところでしょうか」
一息つくユーフォニーの傍では、アルティアーロが索敵と合わせ、工事に危険がないかと感覚を働かせる。
イナリの補給部隊へとエーレンがお使いに出たり、あちらこちらへとヨゾラやセレナが飛び回る。
地上ではファニーやイナリが運搬にと往復する姿が見られ、皆が作業に汗を流す。
ここまではつつがなく作業は進んでいたおかげで、ユーフォニーも亜竜や魔物避けとなる匂い袋やトラップなども設置することができていた。
念押しに、ラダのチャリオッツが問題なく崖上の道を通行できることを確認して喜び合っていた。
●
少しずつ日は傾いてきていたが、先に進む前に一度休憩をとるメンバー達。
この後を考えて、ここは軽食をとる面々。
エーレンが皆へと食べやすいにぎりやお茶を配っており、それで活力を得ていた。
「すまないな」
礼を告げてラダはご飯を口にする。その味は何とも格別だ。
それに、ここから小さくではあるが、フリアノンの特徴的な外観が確認できる。
「力仕事の連続で草臥れるが、フリアノンが見えてきたら話は別だろう?」
これには、彼の言うように、体に喝を入れてもう一仕事と奮起する。
小休憩を挟み、作業を再開した一行は3つある吊り橋の補強に乗り出す。
ここまでも行き来するだけで危ない箇所はちらほらとあったが、3つある吊り橋は何れも馬車で渡るにはかなり心もとない。
その為、交易路の開拓に補強は必須だ。
「休憩所の前後、2つを先に進めるっすよ」
「3つ目の橋の耐久力が弱そうなので、そちらは皆で行いましょう」
休憩の間もこの後の工事予定について詰めていたリヴィエール、ユーフォニーの2人は自身、仲間達の情報を元に、戦場跡の広場をベースポイントとしたまま、比較的作業が軽度に済みそうな2本を優先して作業を進める。
メンバーが持ち寄った資材は多くをここに使うことになる。
かなりの量を積んできたとはいえ、それでも本格的に進めようと考えれば資材は心もとない。
先んじてそれを見越していたイナリは後続、舗装資材の輸送部隊と随時連絡を取る。
ここから先必要となる資材の量を概算で弾き出し、運ぶ量と回数を決めて運び込ませるイナリは過不足が無いよう調整まで行っていた。
それらを使って作業するが、さすがにこちらは紐の取り換えから始めねばならぬレベル。
3つ目の橋はフリアノン側から架けられたらしく、最も古い橋だったらしい。
それ故に、補強もまた一番必須であったのだが。
「……うん? いっそのこと新しいの作った方が早く無いかこれ?」
「間違いないっすね」
世界が橋の再建築を提案するが、さすがに他作業と合わせてでは厳しいとリヴィエールが語る。
「まあ将来的には石造り等のしっかりとした橋を架ける事をオススメするぜ」
そうリヴィエールらを諭す世界だが、この場で手伝えることはしっかりと行う。
事故を懸念する世界は自然知識を駆使し、そうした事態を未然に防ぐ。
「そろそろいいか」
そこで、ラダはコネを使ってだれかと連絡を取る。
彼女は伝手を使い、援軍として呼んだのは……フリアノンの大人達だ。
「打ち上げでいい酒出すからさ、頼むよ」
ヴォードリエ・ワインときけば、フリアノンの民もやる気が出るというもの。
多数の亜竜種が手伝いへと駆けつけてくれ、紐の交換など手を貸してくれる。
紐も複数張り直して補強するのと合わせ、板の張替えも行う。
こちらも飛行するメンバーが中心となり、がんもにまたがるヨゾラなどが新しい板を打ち付けていく。
板は資材集積所からファゴットが運び、ヨゾラへと渡していた。
崖部分との接地面を石材を使って補強し、精霊の力でより強固なものとする。
「交易による重量に耐えられるよう補強するというのが現実的な手か」
揺れにくく、壊れにくく、劣化しにくい構造に。
世界が言うように吊り橋もまた重量に耐えられるよう傷んだ紐を取り換えてから本数を増やし、さらに足場となる板も石材と合わせてしっかりと厚みのある物へと差し替える。
こちらは飛行手段を持たないメンバーが中心となり、ファニーが地形をしっかりとみてから仲間と共に紐を杭へと固定する。
アルティアーロはここでも危険でないかと逐一チェック。
パサジール・ルメスの面々の指導を受けつつ、メンバーは作業を進める。
エーレンは仲間達が作業に注力できるよう資材が足りなくなどすれば、全力ですかさずサポートに入る。
それは現場を監督するユーフォニーも同じく、人が少ないところをあちこち回り、セレナと共に資材を届けたり、と忙しなく移動していた。
それでも、人数がいれば、かなり作業は進み、とりあえずの補強工事も完了したのだった。
●
その後、一行は先の道の舗装を日暮れ近くまで行ってから作業を切り上げ、先へと進むことに。
危険と言われる覇竜でも、フリアノンが近くなれば、敵の気配は各段に感じされなくなる。
それも、フリアノン在住の亜竜種達の力と、この地を中心に活動してきたイレギュラーズの力によるところが大きいだろう。
もうフリアノンが見えてきており、踏破は間近。
「ここを過ぎれば、ついに開通なのね」
セレナはしみじみと呟く。
これで終わり……いや、ここからが始まりだ。
フリアノンの広場には、ここまで交易路に携わった者達が多く集まる。
中には第一、第二中継地点からやってきた亜竜種達の姿も。
とはいえ、今回はそこまで規模は大きくはない。
「沢山人を呼び込んで、改めて開通パーティーをしたいっすね!」
リヴィエールは嬉しそうに話す。
直接フリアノンの人々と対話できて、彼女は非常に嬉しそうだ。
フリアノンの民は郷土料理でもてなすが、やはり土地柄肉を使った料理が多い。
亜竜の肉に岩塩をまぶして丸焼きにしたり、燻製肉にハーブをまぶしたものや揚げ物。
豆を使った軽食や、近場の森でとれる植物を使ったサラダなども味わえるが、簡素なものが多いようだ。
水は地下水があるとはいえ、覇竜の地ではさほど潤沢とは言い難い。
飲み物は果実を使った醸造酒、近場の植物を使った蒸留酒などがほとんど。未成年はもちろんジュースだ。
「美味しいご飯と交易用に覇竜名物は欠かせません」
ユーフォニーはあらかじめ自分の領地の住民にも声をかけていた為、彼らもまた食材、料理を持ち寄ってくれていた。
やってきた亜竜種の中には、ユーフォニーの知人である行商人黎・颯懍の姿も。
「これはなんとも快適な道であるな」
覇竜を渡り歩く颯懍もこの一大事業に関心を寄せており、とりわけ昇降機には目を見張っていたそうだ。
おかげで、彼も覇竜の外の物品も見られるようになり、どんな品物が手に入るかと楽しみにしているらしい。
そして、覇竜轟雷拳の面々。その昇降機建造に力を貸してくれている。
「我々も協力した甲斐があったというものだ」
師範、徐・宇航も門下生と共に駆けつけ、完成を祝う。
見知った人達からのお祝いのコメントを受け、笑顔を見せるユーフォニーがリヴィエールに並ぶ功労者とのことで壇上に上がる。
1年弱にも及ぶ公共事業を簡単に振り返った2人。
ある程度人が集まってきたことを見計らい、彼女達は杯をかざして。
「交易路完成を祝して……乾杯!」
「「「乾杯!!!」」」
宴が始まり、この場の皆が語らい、食し、飲み、楽しく過ごす。
イレギュラーズもただ参加しているだけでなく、料理を提供する側になっている者も。
エーレンは持ち寄った食材と調理器具で調理していたし、ヨゾラなどはファゴットと一緒に料理を作る。
この場には亜竜種も多いことから、仲間の持ち寄った食材を使って他国の料理を作る。
「交易路、商人さん等が行き交って、覇竜に良い縁をもたらしますようにー!」
そう願いつつ、ヨゾラが料理を振る舞うと、亜竜種達にかなり絶賛されていたようだ。
「大したものは準備できないが……」
そう言いつつ、世界もこのお祝いの為にと、普段から依頼時に所持している甘味を取り出して。
「皆で食べてくれ。おかわりもいいぞ」
これまた、覇竜ではほとんどお目にかかれぬ味とあり、亜竜種の子供や女性達に大好評だった。
先程、補強作業に参加してくれた大人達には、ラダが宣言通りにワインを振る舞う。美味すぎると評判の酒に、大人達は気分良く酔いしれる。
セレナも仲間と、現地民と、外来の亜竜種と、そしてパサジール・ルメスの民らと交易路開通を盛大に祝う。
そんな中、彼女はユーフォニーを気にかけて呼びかける。
「ねえ、ユーフォニー。あなたはずっと、この交易路の開発に関わって来たけれど、ついに開通ってなって、どんな気持ち?」
「そうですね……」
ユーフォニーも最初は、大切な覇竜の地に何か役立てたらと考えていた。
試行錯誤で、思い通りにならないことも多々あったが、沢山の人に協力してもらい、ここまで来ることができた。
抑えられぬ嬉しさが顔に出るユーフォニーだ。
その気持ちを、彼女は心いっぱいの感謝という形で皆へと伝える。
「でも、ここからですから……!」
ここまではただレールを敷いただけ。
これからはそれを使って、閉鎖的だった覇竜と他地域との交流を密にしたいところだ。
「ええ、この交易路を使って、覇竜と他の国との交わりはきっと増えていく」
それは間違いないと確信するセレナ。
例えば、アルティアーロが先ほど倒したミネライドンの体内から得た鉱石を行商人へと見せつけると、リヴィエールを含めてそれが欲しいと集まった者達によるオークションが始まっていた。
酒を口にしながら出来上がった道を眺めていたラダは、改めて、ジュースを手にするリヴィエールらに向けて杯を突き出して。
「ルメス、良い競合相手となれる事を祈って乾杯!」
商会を有しているラダは残念ながら今回、商品を持ち込む余裕がなかったが、次こそは商会の馬車を出して持ち寄りたいと語る。
そうなれば、パサジール・ルメスとは競合相手となる。
「うっす、乾杯!」
リヴィエールも望むところとばかりに杯を突き合わせた。
「お互いにいいつながりになるように。そして、互いに幸福になれるように。わたしはそう願ってるわ」
そうした交流を目にしつつ、思うことを語るセレナはそういえばとユーフォニーに問う。
「そう言えば、この路の名前って何か付けるのかしら?」
「路の名前……リヴィエールさん、いい案あります?」
ユーフォニーに振られて、リヴィエールは笑顔で笑う。
「交旅(こうりょ)の路なんてどうっすか?」
『旅』はパサジールのこと。『交』はシンフォニー……交響曲の頭文字。
加えて、この路を使って旅する者達が人々と交わることにも掛けている。
「いいですね……!」
交旅の路。
それはきっといい交易路となる。いや、そうなるべく、シンフォニーは新たな決意を胸に秘めるのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは今回も含め、交易路開通に尽力した貴方へとお送りします。
多少、課題も残しつつにはなりましたが、ついに、ラサ南部~フリアノン間の交易路開通です!
近いうちに開通記念のイベントシナリオで、実際の交易、亜竜種との交流、警備、交易路整備などができるようにしたいなと考えております。
今回を含め、長らく関連シナリオにお付き合いいただき、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
覇竜の情勢が落ち着いたこともあり、ついに覇竜交易シナリオ再開、そして、完結予定です。
これまでのシナリオで多くお付き合いいただいたユーフォニー(p3p010323)さんにもお声がけさせていただいております。
第2中継地点より先の障害を排除さえすれば、フリアノン近辺。後はフリアノンまで道を伸ばすだけです!
●目的
敵の殲滅
フリアノンまでの道の舗装
●概要
第二中継地点の先、岩場を抜けてから狂暴な亜竜の生息地域のある渓谷上部を越え、フリアノンを目指します。
吊り橋がいくつかかかった岩場の上を渡り歩いていく形です。
行商隊が渡るには少し心もとなく、舗装、補強はまた後程の課題といったところです。
その岩場の中央で、3頭の亜竜(+魔物複数)がいます。
彼らの縄張りを侵さねばフリアノンにはたどり着けません。
事後は交易路を舗装、補強しつつフリアノンを目指します。
とはいえ、戦場となった渓谷上部の吊り橋が最大のネックで、それ以外は硬い岩盤を移動しやすいように地面を均すなどした工事ができればリヴィエールが喜んでくれます。
開通後、フリアノン近隣の荷物積み下ろし場へと到着できれば、晴れて交易路開通です。
●敵:亜竜&魔物
亜竜と魔物は別隊として行動しています。状況によっては共闘、あるいは敵対します。
〇亜竜:ミネライドン(略称:鉱亜竜)×3体
全長3mほど。見た目は黒褐色で、頭から背は堅い鉱石で覆われ、どっしりとした四足歩行の亜竜。
今回、遭遇する個体は3体ですが、活動範囲も広くあちらこちら移動して棲息することが分かっています。岩石や鉱石を食し、自らの体内で希少価値のある鉱石を大きく固めて己の力を高める生態を持つようです。
その見た目に対して動きは素早く、力で攻めてくるだけでなく、鉱石を利用して防御、抵抗も高いという化け物じみた能力を持ちます。
噛みつき、体当たり、鉱石飛ばし、エネルギー光線と遠近問わず汎用性のある戦いを仕掛けてきます。
〇魔物:ストーンスキンク×8体
通称岩亜竜。全長1~1.2mほどで二足歩行するトカゲ。
ミネライドンにとっては餌ですが、鉱石、生物問わずミネライドンの食事跡に群がることも多いようです。
ジャンピングキックに、岩石タックル、体の岩石を投げつけてくることも。
●NPC
◎リヴィエール・ルメス(&パサジール・ルメスの民)
パサジール・ルメス所属。情報屋。
交流用の交易品を積んだ馬車を率い、一隊(6名。リヴィエールと同世代の若い者達です)の一員として参加します。
戦闘には参加せず、危険な状況に陥ったイレギュラーズを回収、救護してくれます。
彼女達の馬車も攻撃対象となりますので、多少の指示だしは必要でしょう。
事後は舗装などに協力してくれます。指示だしすることで効率よく動いてくれます。
逆に、これまでの覇竜交易依頼に彼らも参加していた為、舗装の方法などはある程度把握しています。
分からないメンバーの方は逆に指示を受けて作業するのもありでしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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