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シナリオ詳細

アルカディマの物語迷宮

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「私はナディラ・アミラ。アルカナ・アルマエラファ・アルカディマの研究を行っている。そこの二人は、もう知っているね?」
 どこか妖艶な声音をした黒いローブの女性が、ギルドローレットのイレギュラーズがよく集まるという酒場に現れたのは、これが二度目のことであった。
「やあ、ナディラ。久しぶりだね。魔導書の研究は進んでる?」
 そう声をかけたのは椅子にもたれて本を読んでいたアルム・カンフローレル(p3p007874)だ。
 その一方で、カウンター席でバーボンを注文したまま黙って煙草を吸っていたハインツ=S=ヴォルコット(p3p002577)もちらりとナディラに振り返る。
「分かってるさ。ここへ来たってことは……何か手が必要になったんだろう?」
「そういうことさ。例の個室にまた来てくれるかな? それに、仲間があと数人はほしいな」

 ナディラ・アミラはこのあたりでは有名な古代魔術の研究者である。
 古代遺跡マアブドゥ・エッサハル・エルアスワッドよりアルカナ・アルマエラファ・アルカディマを持ち帰る――という記憶するだけでも若干苦労する名前の長い依頼をしてきた人物である。
 要約すれば、古代遺跡から古代の魔導書をゲットしてきた、わけなのだが。
 勿論ナディラはそのアルカディマを日夜研究し続けてきたが、そこでわかったことが一つ。
「この魔導書は対象を本の中の世界に取り込み、登場人物の一人にしてしまうということだ」
 アルカディマには物語が一つ綴られていた。
 曰く――お城に捕らわれたお姫様と、それを救う騎士たちの物語。
 お城には邪悪な魔法使いが住まい、邪悪な傭兵を雇い姫を奪い返されんと守っているというのだ。
 なんだかお決まりのようであり、どこか違和感もあるお話だ。
「このお話に……取り込まれる? 配役のひとつになるってことかな?」
「配役が増えるケースもあれば、そのまま当てはまるケースもあった。きっと君なら悪い魔法使いにでもなるだろうさ」
 アルムに笑いかけるナディラ。『まさか俺が?』と苦笑するアルム。
 気分はまるで子供の演劇会である。
「役にそって演じるか、はたまた役柄を無視して自分勝手に振る舞うかは自由だ。物語は何かしらの強制力を発揮して、物語をなにかしらの終わりに導こうとするだろう。
 が、問題はここからだ」
 最後のページには恐ろしいドラゴンめいた怪物、ここでは『アルカディマの怪物』と称しておこう。それが描かれていたのだ。
「これまで実験に協力してもらった人間はこのアルカディマの怪物にやられ、本から放り出されてしまった。
 おそらく君たちならば……とね」
「おいおい。結局は腕っ節頼りってことか」
 こちらもまた苦笑し、ハインツは腰の銃をトンと叩いた。
「ま、そういうことならわるかねえ。演劇を楽しんだあとに怪物退治。倒せば『なにかしら』が起こる……と」
「そういうことだ。依頼、できるかな?」
 またもコイン袋をちゃらりと鳴らしたナディラにハインツたちは親指を立てるのだった。

GMコメント

※こちらはライトシナリオです。短いプレイングと選択肢のみで進むアドリブいっぱいのライトな冒険をお楽しみください。


●シチュエーション
 古代の魔導書アルカディマには物語が描かれていました。
 城に捕らわれたお姫様と捕らえた魔法使い。それを救い出す騎士たち。
 あなたは本にあえて取り込まれ、そんな役者のひとつとなって行動します。
 物語は(それが傑作たりえるかはわかりませんが)何かしらの結末へと導かれるでしょう。

 物語の結末が訪れると『アルカディマの怪物』が現れ、戦闘になります。
 ここでは、これまれの役柄に関係なく全員で協力して怪物と戦いましょう。
 怪物に勝利しても敗北しても本から出ることができるので、安心して戦って下さい。

●一口プレイング
 あなたはどんな役を演じてみたいですか?

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。


演じ方
あなたは役柄通りに演じてもいいし、筋書きを無視してもいい

【1】筋書き通りに演じる
筋書き通りに演じてみます

【2】筋書きを無視する
あえて自由に振る舞ってみます


怪物との戦い
アルカディマの怪物が現れた際のポジショニングです

【1】アタッカー
 率先して攻撃スキルをどかどかと撃ち込みます。
 威力型やBS型など形は様々ですが、あなたは頼れるチームのアタッカーとなるでしょう。
 相手にバフをかけたりするジャマー枠もここに含まれます。

【2】ディフェンダー
 優れた防御ステータスを用いて敵の攻撃を引き受けます。かばったり引きつけたりは場合によりますが、あなたがいることで仲間のダメージ量は大きく減ることでしょう。
 味方や自分を治癒することで戦線を支えるヒーラー枠もここに含まれます。

  • アルカディマの物語迷宮完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別 通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年08月05日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談0日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
ハインツ=S=ヴォルコット(p3p002577)
あなたは差し出した
アルム・カンフローレル(p3p007874)
昴星
ジョーイ・ガ・ジョイ(p3p008783)
無銘クズ
ネリウム・オレアンダー(p3p009336)
硝子の檻を砕いて

リプレイ

●違和の物語
 筋書きとは何か。
 筋書きとは、何か?

 魔法使いの城に攫われた姫を救い出すため、楽団騎士である『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)は一人、魔術師の塔を目指していた。
 いや、訂正しよう。
 彼一人ではない。
「吾輩たち二人だけで魔術師たちを倒せと? そんな無茶な話はありませんぞ」
 ヘルメットディスプレイにくしゃっとした顔文字を浮かべた『夜善の協力者』ジョーイ・ガ・ジョイ(p3p008783)が言う。
 彼らが跨がっているのは馬だ。馬は魔術師の噂を追ってたどり着いたという街の通りをゆっくりと歩いている。
 アクセルはレイザータクトと呼ばれる短い細剣にそっと手を触れてから、魔法の剣の柄をコンコンとノックしているジョーイの顔(?)を見返した。
「きっとなんとかなるよ。というより……『たち』って言った? 魔法使いは一人だけじゃないの?」
「その情報を集めに行くのですぞ、今から!」

 レトワール王国から姫アルクルが攫われたのは、国王ジュールヴェル七世が八十歳の誕生日を迎える日のことであった。
 国では盛大に祝祭が催され、数々の著名人に招待状が送られた。
 しかしただ一人、招待状が送られなかった人物があった。それがかの魔術師『漂流者』アルム・カンフローレル(p3p007874)なのである。
「魔術師は逆恨みをして城から姫を攫い、魔術師の塔に今も閉じ込めているというのですぞ。いやぁ~ゆるせませんなぁ~」
 用意された台詞をそらんじるような口調で、最後に至ってはどこか投げ槍な調子でジョーイは言う。
「なんて可哀想な……早く助けてあげなくちゃ! 情報源はあるんだよね?」
「勿論。今から会いに行く人物が、そうですぞ」

 ウェスタンドアを開くと、ちらほらと視線が飛んでくる。
 見覚えのない人物に対する奇異の目と、わずかな警戒とが入り交じったその中に、ひとつしっかりとこちらを見据える目があった。
 『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)。
 この土地の魔術師協会に所属している星の魔術師である。
「『蛇の道は蛇』。イイ言葉だよね。僕は好きだし、それを活用する人はもっと好きかな」
 まるでもとあった筋書きを無視したような台詞を呟いて、ヨゾラは自分のついていた席から立ち上がった。
「やあ、僕はヨゾラ。魔術師だよ。アルム。カンフローレルについて知りたいんだよね?」
「――」
 ジョーイが顔文字だけで『詳しそうでしょ?』と訴えかけてくる。
 アクセルは頷き、そしてヨゾラの向かいの席に座った。
 ――と、同時に。
「その話、混ぜて貰っていいかな?」
 同じテーブルの席に、突如として『硝子の檻を砕いて』ネリウム・オレアンダー(p3p009336)が腰を下ろした。
 あまりに自然に、そして筋書きを無視したかのような唐突さで現れたネリウムに全員が瞠目する。特に反応を示したのは『今まさにその席に座るはずだった』――『灼けつく太陽』ラダ・ジグリ(p3p000271)だ。
「話に混ざるのは構わないが、まずは自己紹介を始めるべきじゃないか?」
 そう言って新しい椅子を抱えてやってきたラダは、少しばかり手狭になったテーブル席へとつく。合計五人が、せいぜい4人で手一杯といった具合のテーブルに集まったことになる。
「私はラダ。この辺りで商人をやっている。移動商店を知っているか? アルムの塔にも食料品などを売っている。道案内は可能なつもりだ。それで?」
 そちらは? という視線を向けるラダに、ネリウムは肩をすくめてみせる。
「ただのしがない僧侶だよ。毒使いのね」
「しがない僧侶が毒を何に使う」
「色々さ。逆に、毒を一切使わない商売がどのくらいある?」
 まるで煙に巻くような質問だが、ラダはそれで追求をやめることにした。要するに『答える気が無いなら問い詰めない』というポーズである。
 かわりに、自分の話を進めることにした。
「私からは以上だが、質問は?」
「ならオイラから。『道案内は可能』と言ったけど、逆に『できないこと』があるのかな?」
 早速食いついたのはアクセルだった。ラダは待ってましたとばかりに椅子にそっと背をもたれさせる。
「これでも商人なんでな。商売相手を売るということはしない。まして、戦うということも避けたいところだ。そちらの事情は――」
 といってヨゾラの顔を一度見てからラダは続ける。
「事情は聞いているつもりだが、『逆恨みで姫を攫う』というのが眉唾だな。だとして、なぜ派遣されているのが騎士二人になる。もっと大部隊を寄越して当然の事件だ」
「それは……確かに……」
 ネリウムがぽつりとマスクの内側で呟く。
「物語に感じた違和感ってそれだったのかな? うーんでも、もっと深いところにありそうな気がするんだけどなあ」
「まあいいじゃない」
 ヨゾラがつとめて明るく言った。
「道案内を頼めるかな。おなじ魔術師の起こした不祥事だし、ここは僕も手伝うからさ」
 こうして、アクセル、ジョーイ、ヨゾラ、ネリウム、そしてラダというチームが結成され、彼らはラダの案内のもと魔術師の塔へと向かうのであった。

「その子犬は?」
 尋ねた声に、『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)は顔をあげる。
 それはそれは恐ろしい狼男であったが、彼が膝をつき骨付き肉を与えている子犬への視線や手の触れ方はやわらかなものだ。
 対して、『あなたは差し出した』ハインツ=S=ヴォルコット(p3p002577)は紙巻き煙草を指に挟んだまま水平に保ち、ウェールに質問をなげかけたまま黙っている。
「なんでもない。拾っただけだ」
「『拾っただけ』ね……」
「何か問題でもあるのか?」
 にらみ付けるようにするウェールに、ヴォルコットは手を上げて笑った。降参のポーズにも見えるが、おどけているようにも見える。
「まさか。『らしくないな』と思ってな。お前さんも筋書きを無視してるタイプかい?」
「…………」
 答えは沈黙。しかしヴォルコットは追求しない。
 そこへ現れたのはアルムだった。
「二人とも、仕事だよ。どうやらお姫様を取り返しにきた騎士たちみたいだ」
 無邪気な笑顔を浮かべるアルム。とても『悪い魔法使い』には見えないと、ウェールもハインツも同時に思った。

 魔術師の塔は石造りだ。下りの螺旋階段には等間隔に魔法の灯火があり、ヴォルコットの横顔を時折青白く照らし出す。
 その後ろを歩くウェールは無言なままだが……。
「なあウェール。お前さんはこの筋書き、変だと思わないか?」
 突然そんなことを言った。まるで話の流れを、あるいは物語そのものを無視するような物言いに、ウェールは流石に顔をしかめる。
「ヴォルコット。どういう意味だ」
 はぐらかすにももっと別の言い方があったかもしれないと、言葉にしてから思ったがウェールは訂正せずに相手の言葉を待つ。
 こつんこつんと、螺旋階段を降りる足音だけが暫く響いている。
「古代の遺跡。無限の図書館に収められていた異質なる魔導書アルカナ・アルマエラファ・アルカディマ。遺跡のトラップや仕掛けの時点で、この魔導書を何者かに奪われたくない意志と『手に入れて欲しい意志』がそれぞれ俺には見えた」
「…………」
 続けろ、とでも言わんばかりの沈黙にヴォルコットは肩をすくめる。
「だと思ったら、何だ? 悪い魔法使いと騎士の物語ときた。こいつを手に入れるのはどう考えても魔術師だ。想定する読者の感情移入をわざわざ邪魔するような物語があると思うか?」
「何が言いたい?」
 ウェールの焦れたような問いかけに、ヴォルコットはやっとといった具合で煙草を口にくわえた。
 それこそじらすように、煙をゆっくりと肺に吸い込んでいく。
「ナディラ・アミラは研究の段階で自ら捕らわれようとはしなかった。危険を察知していたんだ。これが罠だとな」
「物語そのものが罠だと?」
 やっと乗ってきた。そうヴォルコットは破顔する。
「考えてもみろ。俺たちはこうして物語に取り込まれてる。だというのに自由な意志が選択できた。アルムのように筋書き通りに演じることを選んだヤツもいるがな」
「筋書き通りに進んだら……どうなる」
「わかるだろ? お姫様を攫った魔法使いに騎士が現れれば……」

「ふはは、姫を返してほしくば……」
 雷鳴轟く魔術師の塔。
 馬車を降りて展開するアクセルたちを前に、アルムは大胆にも杖を掲げてまえに出た。
「ほしくば……なんだろう?」
 小首をかしげるアルム。そしてふと思い出したように言った。
「ジュールヴェル七世は玉座を降りよ!」
「そんなことが許されるもんか!」
 レイザータクトを引き抜いたアクセル。
 アルムは不敵に笑うと、杖を掲げ真っ赤な魔方陣を展開させた。
 はじめは小さいサークル状のそれは幾重にも重なったように展開し、幾何学的に膨らんでいく。それはやがて球型をとり三次元魔方陣とでもいうべき存在へと変化していく。
「愚かな騎士め、焼き焦げてしまうがいい!」
 アルムは無邪気そうに杖を振り抜くと、魔方陣が一気に展開。魔術の光が空から降るいくつもの星々となって地上を焼いた。
「うわっ!?」
 アクセルはレイザータクトで美しい演奏を奏でると自らの周囲を魔法の結界で覆い、防御を固める。
 その一方でヨゾラは星の魔法を、ジョーイは剣を、ネリウムは毒を手に構え……ラダはそっと馬車の後ろへと身を隠す。
「どうやら俺たちの出番のようだな」
 爪を向きだしにしたウェールが身構え、その隣にヴォルコットがたち拳銃に手を……かけてから、『なあ』と突然声をかけた。
「ところで、その『お姫様』はどこにいる?」
「――は?」
 うっかり応えてしまったのはラダだ。
「塔に閉じ込められているんじゃないのか。それ以外なにがある」
 そうだ! とアクセルも賛同しレイザータクトを握り遅いかかろうとするも、しかしヴォルコットは未だに銃を抜きはしない。
「俺は見てないぜ。大体考えてみろ、姫一人攫ってくるのにどれだけ手間がかかる。置いておくにも必要な物資がどれだけかかる? そこの商人、あんたがそれを売りつけてないなら誰が用意した? 女物の下着や化粧品を売りに来た老婆でもいたか?」
「それは……」
「なるほど、そういうこと」
 ネリウムが呟く。
「この物語は『一人だけで閉じ込められたら死んでしまう罠』だ。そうでないにしても、物語の強制力によって閉じ込められ続けることになる。けど――」
「これだけの人数で押しかければ破綻する」
 ジョーイがぬいていた剣を既に収め、パッと両手をかざして降参のポーズを取ってみせる。
「『物語迷宮』とはよくいったものですな。迷宮は想定を超えるキャパシティを閉じ込めておくことはできないものですぞ。ほら――」
 空を指さすジョーイ。
「物語の怪物が、最後の強制力を働かせにやってくる」

●アルカディマの怪物
 ナディラは言った。
 ――役にそって演じるか、はたまた役柄を無視して自分勝手に振る舞うかは自由だ。物語は何かしらの強制力を発揮して、物語をなにかしらの終わりに導こうとするだろう。
 それは、完全に物語が破綻してしまった時、物語は最後のページへと自動的に飛ばされてしまうということだ。
 つまり最後のページに描かれたドラゴンめいた存在。終焉の体言。アルカディマの怪物。
「――!!!!!」
 声なき声をあげ、空を割って現れる。
 それはまるで本のページを破って飛び出したかのような光景で、事実そうなのだろう。
 まるでドラゴンを象ったかのようなアルカディマの怪物は口から炎をはきながら大地へおりたつと、まずはアクセルたちへとその炎を吹き付けた。
「ここからはいつも通りに、だね!」
 衣装をチェンジし、『雲海鯨の歌』を手に取ったアクセル。
 指揮棒を振るように魔法を唱えると、アルカディマの怪物が吹き付ける炎と同等の治癒力を持つ虹を呼び出して見せた。
 虹に遮られ拡散していく炎。
「ほら、反撃だよ!」
「助かる。商人のロールプレイは楽しいものだったが、「これ」がないと落ち着かない」
 ラダはライフルを手にすると馬車の上へと飛び乗った。
 狙うはアルカディマの怪物の腕。
 その爪が仲間を斬り付けるその一瞬を狙って打ち込むことで、アルカディマの怪物の攻撃の軌道を無理矢理そらしたのだった。
 ライフル弾によって腕を弾かれたアルカディマの怪物は首を振り、再び炎をはきつける。
 が、今度はネリウムが前に出て自ら毒液を頭から被ってみせた。
 いや、厳密には毒ではないのだろう。なぜならアルカディマの怪物が放つ炎を、ネリウムは完全に無効化してしまったのだから。
「神秘の結界――なるほど、助かった」
「それほどでも」
 ネリウムがぱたぱたと手を振ってみせる。
 そんなネリウムに守られた形となったヴォルコットはぴたりと銃を構える。
 リボルバー式の古めかしいピストルだが、その威力は混沌世界では信頼できる兵器となる。
 その一方でウェールはカードを取り出し、その中からそれこそ古めかしいマスケット銃が二丁描かれたカードを手に取った。
 パッとその場で燃えたカード。いつの間にかウェールの手の中には二丁のマスケット銃が握られ、ぴったりとそれをアルカディマの怪物へと向ける。
「一斉射撃といくか?」
「なるほど面白い」
 ヴォルコットは手を撃鉄のあたりに添え、高速でピストルを撃ちまくる。
 ウェールも一発きりのマスケット銃を何丁もカードから召喚しては撃ちまくった。
 そんな彼らを払いのけようと大地を殴りつけるアルカディマの怪物。
 ひび割れた大地と隆起する岩で流石に彼らも吹き飛ばされ――たかに見えたが、それはアルムがかかげた杖ひとつによって阻まれた。
「大丈夫、俺が見てるからね!」
 掲げた杖からは古代文字の魔方陣がサークル状に展開し、それが幾重にも幾重にも、まるで電波を飛ばし続けるアンテナのように古代文字のサークルを広く展開していく。
 それは彼を中心としたエリアを治癒の力で包み込み、アルカディマの怪物がもたらす攻撃を完全に無力化してしまったのだった。
「反撃のチャンスですぞ!」
 ジョーイが魔法剣を手に走り出す。
「うん!」
 ヨゾラも拳に星の魔法を込めて走り出す。
 二人はアルカディマの怪物が腕をふるってはねのけようとするのを跳躍によって回避すると、全く同時にその攻撃をアルカディマの怪物の顔面めがけて叩き込んだのだった。
 グオオ――! と吠えるような声が上がる。
 いや、それは悲鳴だったのかもしれない。
 なぜならアルカディマの怪物は本のページが燃えるかのように消えていき、世界もまた消えていき――。

●そして魔法は
「おかえり、と言っておこうか」
 椅子に腰掛け、頬杖をついていたのはナディラ・アミラ。この依頼の依頼人で古代魔術の研究者だ。
 どこにも怪我のない状態で酒場の個室にぽんと放り出された形となったイレギュラーズたちを前に、ナディラは苦笑を浮かべた。
「騙すような形になってしまって悪かったね。君たちなら必ずこの仕掛けを突破すると思っていたんだ。これでやっと……」
 そう言いながらナディラはアルカディマのページをぱらぱらとめくり始める。
「この本にかけられていたセキュリティを突破することができた。本に書かれたコードを本格的に読み解くのは、これからになるがね」
 ナディラはそう言って、本をぱたんと閉じて立ち上がる。
「今回もいい仕事だったよ。ありがとう、イレギュラーズ」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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