PandoraPartyProject

シナリオ詳細

お宝回収大作戦! 或いは、機密文書に体を張れ…。

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●作戦司令
 練達。
 とある窓の無い部屋。
 暗がりの中、2人の女性が対峙している。
 1人は眼鏡をかけた理知的な美人。名を鈴木 智子。
 もう1人は、眼鏡をかけたどこか垢抜けない女性、佐藤 美咲 (p3p009818)だ。
「さる銀行の貸金庫に過去盗難にあった技術情報の文書が持ち込まれた」
 そう言って智子は、美咲の前に数枚の資料を差し出した。
 1枚目には黒いファイルの写真。
 2枚目以降には、練達のとある銀行についての情報が記載されている。
 資料をパラパラと捲りながら、美咲は眉間に皺を寄せる。
 “アルファポリス第一銀行”。
 練達でも名の知れた、鉄壁の大銀行である。
「やっかいなのが、この銀行は正規の銀行ということだ。その上、この文書は機密指定。内容が露呈する正規ルートでの引出しは避けたい」
 おまけに条件付きと来た。
 美咲の経験上、こういったケースの仕事は得てして割に合わない。果てしなく面倒で、危険で、そして見返りが少ない。
 見返りが少なくとも、仕事となれば達成しなければならないのだが。
「あー、つまりは正規じゃないルートで引き出せって事でスね?」
 ぼさぼさの髪を掻きむしり、美咲は大きなため息を零す。

●白昼の犯罪計画
「はぁ、つまり……銀行強盗のお誘いっすか?」
 スパゲッティを頬張りながら、ウルズ・ウィムフォクシー (p3p009291)はそう言った。
 大きなミートボールがたっぷりと盛られたスパゲッティだ。
 2人はそれを奪い合うように、自分の皿へと取り分けながら視線を通りの先へと向ける。
 黒い鋼の、まるで要塞みたいな大きな建物があった。
「あそこに忍び込むんっすか? 正面入り口はもちろん、周りにも大勢の警備員。おまけに、一たび警報器が鳴れば、ものの数分で警官隊が駆け付けますよ?」
「……でスね」
「でスね……って。いやまぁ、全員ぶちのめしちゃえば不可能じゃないとは思うっすけど」
 ぶちのめす……と、ウルズは言ったが、つまりそれは場合によっては“殺人”も選択肢に入るということだ。
 だが、美咲は苦い顔をした。
 苦い顔をしながら、スパゲッティを咀嚼している。
「取り過ぎじゃないっすか?」
「私の奢りなんだから、別にいいじゃないでスか。じゃ、なくて……」
 口の周りにスパゲッティのソースをべったりと付けたまま、美咲は首を横に振る。
「殺人は駄目っスよ。私の人事査定に影響が出まス」
「ふぅん? 人事査定とか、大変っすね。あ! 赤ワインをボトルで!」
 美咲の言葉を話し半分に聞き流しながら、ウルズはワインを追加注文。
 今日は美咲の奢りであるため、ここぞとばかりにボトルで頼んだ。
「経費で落ちるから、いいっスけど」
「落ちなかったら大損っすね」
 呵々と笑うウルズをじっとりとした目で見やり、美咲はスパゲッティの皿を横へとずらした。
 空いたスペースに1枚の写真。
 写っているのは、1人の男だ。
「これは?」
「依頼人から貰った要注意人物のリストっスよ」
 常時、銀行を護衛している警備員。
 営業時間終了後に起動される赤外線センサー。
 地下にある巨大金庫には、厳重なロックがかけられており、誤った操作をすれば催涙ガスが噴き出すという。
 さらに、噂によれば散弾をばら撒く罠が仕掛けられているらしい。
「それに加えて、要注意人物まで……面倒な仕事っすね」
「本当に。さて、まず1人目でスけど……警官隊のリーダー“ドル”さんっす」
 ドルさんとは、茶色いコートに身を包んだ40絡みの中年男性だ。
 一見すると冴えない風貌に見えるが、その実力は本物で、これまでに多くの犯罪者を刑務所送りにしている実績を持つ。
 蛇のような執念で犯罪者を追い立て、牢にぶち込むことで有名だ。
「銃の扱い、格闘技、手錠を使った捕縛術……おまけにタフな男だそうで。殺さずに無力化するのは難しいかもしれないっスね」
「銀行強盗っすか。大仕事っすね。2人だけでやるんっすか?」
 ワインをぐいっと喉に流し込み、ウルズは問うた。
 酒は好きだが強くないのだ。
 既に頬が赤らんでいる。
「2人じゃ手に余りまスね。何人か、口が堅いのを呼びましょう」

GMコメント

●ミッション
機密文書を回収する

●エネミー
・ドルさん
練達を拠点に活動するやり手の警官隊隊長。
ぱっと見は冴えない中年の男性だが、その実、数々の犯罪者を牢屋へ叩き込んで来たベテラン。
基本的には20人前後の警官隊を率いて行動する。

狙撃:物超遠単に中ダメージ、流血、ブレイク
格闘術:物近単に大ダメージ、封印、無策
手錠捕縛術:物中単に中ダメージ、退化、呪縛

・警官隊×20
ドルさん率いる警官隊。
警棒や拳銃などを装備している。
また、警官隊は追跡用の“車”を保有している。

・警備員×?
“アルファポリス第一銀行”の警備員。
見張りについている者以外にも、警備員詰め所や近隣の建物で待機している人員がいる。
警備員たちは近接格闘術に長けており、非常にタフである。
警備員の中には巨大金庫の開錠番号を知っている者がいる。

●フィールド
練達。“アルファポリス第一銀行”。
警備が厳重なことで有名。人は当銀行のことを難攻不落の要塞と呼ぶ。
地下金庫にある機密文書を回収することが目的となる。
主なセキュリティシステムは以下の通り。
・赤外線センサー(【不運】付与)。
・巨大金庫の催涙ガスが噴霧装置(【呪い】【混乱】付与)。
・銀行内各所に仕掛けられた、散弾をばら撒く罠(小ダメージと【出血】付与)。

●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●注意事項
この依頼は『悪属性依頼』です。
成功した場合、『練達』における名声がマイナスされます。
又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。
また、成功した場合は多少Goldが多く貰えます。

  • お宝回収大作戦! 或いは、機密文書に体を張れ…。完了
  • GM名病み月
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2023年08月13日 22時05分
  • 参加人数6/6人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

志屍 志(p3p000416)
遺言代行業
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)
母になった狼
※参加確定済み※
佐藤 美咲(p3p009818)
無職
※参加確定済み※

リプレイ

●金の匂いがしやがるぜ
「銀行強盗! イイ響きだ。なんせ金の匂いしかしねェ!」
 銀行強盗。
 要塞みたいな銀行を見ながら『悪しき魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)は喜色ばんだ笑みを浮かべる。
「銀行強盗は、これで二度目だ、な……まさか二度もこのような経験をするとは、夢にも思わなかった、が」
『金の軌跡』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)の言うように、ことほぎとエクスマリアは過去にも銀行強盗を経験していた。
 慣れたもの、とは言わないが気負いは少ない。
「集めた立場で言うのもなんでスが……『銀号強盗やる』って言ってメンバー集まるものなんスね……」
今回の作戦指揮官にして、ことほぎやエクスマリアを集めた張本人……『今年も水着ガチャ爆死した』佐藤 美咲(p3p009818)は少し呆れ気味である。
 身内に前科者がいたのだ。それはそうなる。美咲自身も、経歴を洗えば黒いところは1つや2つじゃ利かないが。洗えるような経歴でも無いので問題はない。
 明るみに出なければ、罪は罪に問われないのだ。
「長引くと面倒だ。スマートに片づけるとしよう」
 影の中から声が聞こえる。
 声の主は『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)だ。
 かと思えば、すぐに汰磨羈の気配が消える。
 作戦は既に始まっているのだ。

「営業時間終了まで、あと30分ほど。陽が完全に落ちるまでは1時間前後……警備員の入れ替えも営業時間終了と同時に行われるっスから、ことほぎさんたちはその頃に潜入予定っスね」
 額を指で叩きながら、美咲は語る。
 事前に調べた、銀行についての情報だ。“アルファポリス第一銀行”の警備は、24時間体制で厳重だ。蟻1匹通さないとまで言われているが、だからといって仕事を放棄するわけにはいかない。
 そのための策は練っている。
 人数が少ないこともあり、少々強引な手も使うが……。
「厳重な警備の目を分散させればいいんっすよね? だったら、予定通りあたしは口車をぶん回して職員の注意を引いたり、言いくるめと嘘八百で遅延して時間稼ぎに徹するっす」
『持ち帰る狼』ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)の役割は、要するに迷惑客だ。
 迷惑客が迷惑とされる理由の1つに、貴重なスタッフの時間を奪うというものがある。客である以上、スタッフはそれを無視することも出来ないし、強引に追い返すことも出来ない。必ず何らかの対応が必要になり、それには人手と時間を使う。
「損な役回りっスけど、いいんですか? それに、けっこう危険だと思うっス」
 今更、と言うよりも念押しの意味が強いだろう。
 美咲は問うた。
 美咲の質問を受けた『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)はくすりと笑みを零す。
「ほのぼの系も正義の味方もいいですが、たまにこういうお仕事をしないと自分の立ち位置を忘れてしまいそうで」
 厳重警戒の銀行から機密文書を回収する。
 なんとも“自分向き”な仕事だと、瑠璃は銀行に目を向けた。

●機密文書奪還作戦
 ラピス・ラズリは年若い起業家だ。
 銀行の営業終了間際にやって来て「相談がある」と会議室へ上がって行った。通常であれば事前のアポも何もないまま融資の相談は受け付けない。
 だが、今回に限ってはどうも銀行の落ち度による“対応漏れ”の気配があり、銀行員もラピスの話を無碍には出来ない。
 とりあえず話だけでも……ということで、30分ほど前に会議室へと入り、今は化粧直しのために席を外しているようだ。
 そろそろ銀行の営業時間も終了する。
 ラピスとの話し合いは、営業時間後にまでもつれ込むだろう。
 もっとも、営業時間後は別の警備員へ持ち場を譲ることになっている。
「あぁ、来たか」
 営業終了の1分前になって、交代の警備員がやって来た。
 背の高い女性だ。女性警備員は珍しい。同僚となれば、顔ぐらい覚えているだろうが、どうにも見慣れぬ風貌だ。
 美しい、と言えば美しい。
 だが、同時に獣のような威圧感を感じる。その目は顔つきから、どうにも不穏な感が滲む。
「失礼だが……君みたいな奴、うちにいたか?」
「あ? あぁ、まぁあれだ。臨時なんだ。当直の奴が急に体調を崩してな」
 帽子を深くかぶり直して、女性警備員……ことほぎは、呆れたようにそう言った。
 嘘である。
 本物の警備員は、先ほど汰磨羈が気絶させて、ロッカーの中で眠っている。
「初めての現場で少し不安なんですが……警備員も多いですねぇ。こんな大きな銀行ですから、さぞかし貴重なものが入っているんでしょうねぇ」
 そう言ってことほぎは、金庫へ通じる扉の方へ目を向けた。

「首尾はいかがです?」
 天井裏から廊下を見下ろし、瑠璃は問う。
 若手起業家ラピス・ラズリの正体が彼女だ。化粧直しに席を外して、そのまま天井裏へ潜り込んだというわけだ。
 瑠璃の視線の先には、人の影など1つも無い。
 あるのは、ゴミを運びだすための大きな台車だけだ。
 だが、台車の影から返事があった。
「全員、配置に付いた。警備員も何人か減らしてある」
 声の主は汰磨羈だろう。
 台車の位置から、コツンと小さな音がする。おそらく、減らした警備員はその中に放り込まれているのだろう。
「殺めてはいませんよね?」
「殺めると後が面倒だ。なに、この手の無力化は得意分野だ。殺してしまいそうな時は私に任せろ」
「それもそうですね。何事もなく、スムーズに事は運べばいいんですが」
「それは……どうだろうな」
 なんて。
 2人がそんな会話を交わした、その直後。
 廊下の向こう、窓口の方から女性の怒鳴る声が聞こえた。

 時刻は少し巻き戻る。
「あのおじさんにトイレに連れ込まれそうになった」
 すっかり客も疎らになった店内に、幼い声は良く響く。
 エクスマリアが指差す先には、壁際で書類を読んでいる1人の男性の姿があった。
 銀行員、客、警備員……無数の視線を一身に浴びて、男は口をポカンと開ける。
「……は?」
 それも当然。
 幼子をトイレに連れ込もうとした記憶など無いし、そもそもそんな不埒な真似に及ぶはずもない。何しろ彼は、近くの警察署から派遣されている私服警官なのだから。
「お、お嬢ちゃん? 何を言っているんだい? それは、別の人と間違えたんじゃないか? 良く思い出して。おじさんも、犯人を捕まえる手伝いをして……」
「この人……です」
 幼子……エクスマリアは断言した。
 無論、嘘だが。
 男の方も、警官だと身分を明かせれば話は楽なのだが、そうもいかない事情がある。警官とは己の役割に忠実で、そして彼の役割とは「一般客に扮して、銀行を訪れる重罪人を捕縛する」ことに他ならない。
 客の中に警官が紛れ潜んでいるなんてことを、一般客のいる前で公にするわけにはいかない。そう言う事情があるのだが、今回はそれが裏目に出ている。
「ちょっとちょっと! いい大人が何やってんすか! この変態!」
 対応に困っている間に、さらに面倒なことになった。
 男に詰め寄って来たのは、気の強そうな小柄な女性だ。狼か何かのような剣幕で男の前に近づくと、胸倉に向かって手を伸ばす。
 身のこなしが軽い。速い。
 思わず、男は女性……ウルズの手を払った。
「あ、そう言うことするんっすね!」
「いや……逃げようとか、暴力を振るおうとか、そう言う意図は決して……」
 その場にいる全員の視線が、ウルズの方に向いている。
 変態……もとい、警官を逃がさないようにと言う意図か、銀行員や客の一部も動き始めた。
「もう大丈夫っすからね! ……これで大丈夫っすよね?」
「……作戦通り、だ。これで警備や警官の動きが乱れれば儲けもの、だな」
 ウルズは恐怖と不安に振るえる幼子ことエクスマリアを抱きしめる。抱きしめながら、作戦に変更が無いかどうかを問うた。
 エクスマリアは問題無しと返しつつ、視線を壁際のことほぎへ向ける。
「よし来た。出番だな! おぃおぃ、そこのおっさんよ! 年貢の納め時ってやつだな? 人畜無害そうな顔して、どんだけ罪を重ねて来たんだぁ?」
 ここぞとばかりにことほぎは、持ち場を離れて男の方へと駆け寄っていく。
 その場の全員の視線が男に向いた。
 突如としてはじまった大捕物に興味津々といった様子だ。中にはことほぎやウルズを手伝おうと、鞄を降ろして腕まくりしている者もいる。
 幼い子供に悪戯した変態男。
 つまりは悪だ。
 そして、悪を捕えるために行動する自分は“正義”である。
 そんな勘違いが、思い込みが、優越感が人を酔わせる。陶酔させる。
 まったく“正義の味方”は操りやすい。
「警備員と警官の対応はこれで良し。後は、防犯装置対策をして、金庫を開けて……いや、強盗ほんとやること多いな……!」
 脳みそをフル回転させながら、美咲はこっそり金庫の方へと歩を向けた。

 勤続30年にもなれば、修羅場の10や20は超えた。殺人、放火、窃盗、障害……考え得る限り、ほとんどの犯罪は見て来たし、幾人もの悪党を捕まえた。
 当然、救えなかった命もある。逃がした悪党も多い。
 無力感に1人、涙を流したことも1度や2度ではない。
 だが、それでも……ドルは前に進み続けた。警官という仕事に就いた以上、1人でも多くの犯罪者を、悪党を捕えることが己の役目であるからだ。
 そんなドルの勘が……“正義の男”の現場で鍛えた直感が、今回の事件は“様子がおかしい”と告げている。
「……現場を維持しろ。それから、何人か俺の後についてこい!」
 持ち場を離れた警備員や、混乱を極める銀行内の様子を見るなりドルは言う。
 それから彼は、一目散に金庫の方へと駆け出した。

「これで……良しっス」
 催涙ガス噴霧装置は解除した。
 次は赤外線センサーか、それとも銃火器の仕掛けか。どちらにせよ、時間が足りない。
「まったく、割に合わないっス。普通に働いたほうが楽なんじゃないスか? コレ」
「まぁ……でしょうね。よほど追い詰められてなければ、やりたくないですよね」
 美咲に同意を示したのは瑠璃だ。
 美咲と共に、既に金庫への道のりを半分以上進んでいる。
 ここまでは順調と言えるだろう。
 だが、順調はいつまでも続かない。
「少し騒がしくなって来たな」
 背後を見やり汰磨羈は呟く。
 迫る足音。3人~4人の男性の足音だ。

「まずいよな?」
「まずい、な」
「まずいっすかね?」
 顔を見合わせ、3人は短く言葉を交わした。
 銀行内の混乱は、警官の登場によりあっという間に収拾に向かい始めている。手際がいいのはもちろんのこと、ドルさんの人望の厚さも要因の1つだ。
 ドルさんが来てくれたなら、もう大丈夫だ。
 そんな信頼感が、銀行員や客たちの不安と恐怖を払拭したのである。
 そうなっては、せっかくの場作りも台無しだ。
「ウルズとマリアも重要参考人として連れていかれそう、だ」
「あん? オレを差し置いて2人が連れていかれるのか?」
「ことほぎ先輩は、バレたらムショ行きでしょ……じゃあ、プランBっすね」
 エクスマリアは読み取った警官の思考を、ウルズとことほぎに伝える。
 ウルズは即座にプランBへの作戦変更を決めると、エクスマリアの首にするりと手を絡ませた。
 次いで、空気の弾ける音がした。
 まるで銃声だ。
「うぁっ!?」
 悲鳴が上がる。警官の1人が、脚を押さえて床に倒れた。
 ことほぎが放った魔弾に脚を撃ち抜かれたのだ。呻き声を零す警官を一瞥しながら、ことほぎは煙管を取り出した。
 紫煙が燻る。
「何だ!? 貴様、何を……いや、その顔、どこかで?」
 警官たちは即座に警棒を引き抜くと、視線をことほぎやウルズへ向けた。
 だが、近づいては来ない。
 エクスマリアが人質にされているせいだ。
「うん? オレァ極楽院ことほぎっつーンだが、ご存じ?」
 積極的に攻めて来られない警官たちを嘲るように眺めながら、ことほぎは告げる。
「床に伏せろ! よーく聞け、これは強盗だ、殺すつもりはない!」
 これで誰も動けない。
 ウルズの声が響き渡った。
「あたし達の狙いはこの銀行の貴重品だ、あんたらの物じゃない、あんたらの金はお偉いさん方に保証されてる、何も失うものはない!」
 エクスマリアを引き摺るように、ウルズは位置を移動する。
 待合室の中心から、金庫とは逆方向の壁際へ。
 それに伴い、警官や客の視線もウルズを追っていく。
 と、その時だ。
「子供を離せ!」
 走り出した者がいた。
 最初にあらぬ疑いをかけられた私服警官の男だ。武器も何も持っていないが、身のこなしは素早い。一瞬の隙を突いてことほぎに接近。
 手から煙管を払い除け、腹部に肘を叩き込んだ。衝撃はことほぎの皮膚を貫き、内臓にダメージを与えただろう。その技を至近距離で見ていたエクスマリアは、思わず目を見開いた。
「っ……!?」
 ことほぎが短い悲鳴を零す。
 それを無視して、男はウルズへ手を伸ばす。ことほぎを仕留めることが目的じゃない。エクスマリアを解放することが目的なのだ。
 けれど、しかし……。
「警官としては経験豊富、プロの腕前なのだろう、が」
 エクスマリアが、警官の脚を引っ掻ける。
 警官は、驚いた顔で姿勢を崩した。
 次いで、殴打。
 カウンターで放たれたウルズの拳が、警官の顎を殴打した。脳を揺らされた警官が意識を手放し、床に倒れる。
「戦闘、闘争という点であれば、マリア達は世界有数のスペシャリスト、だ」
 気絶した男を見下ろして、エクスマリアはそう呟いた。
 それから、そっと……誰の目にも見えないように、ことほぎの傷を治療した。
「大切な人の事を考えろ、英雄になんてなろうとするな、黙って言うことを聞いていればすぐに終わる!」
 そう宣言するウルズは楽しそうだった。
 
●お宝はいただいてくぜ!
 水銀のようにうねる“手”が、ドルを目掛けて襲い掛かった。
 供をしていた警官2人は、既に意識を失っている。やはり、と言うか当然と言うか、最後に残ったドルだけが汰磨羈の前に立っている。
「ちょこまかとすばしっこいな。どこの鼠だ?」
「私は猫だ!」
 ドルが投擲した手錠を、汰磨羈が刀で叩き落した。
 と、同時に姿勢を低くしてドルの方へと疾走を開始。対するドルは腰を低くし、柔道か何かの構えを取った。
 鋭い視線が汰磨羈の手元と足元を注視している。
「なかなかできるようだな」
「そっちこそ。だが、焦ってんな? さっき聞こえた銃声のせいか? 仲間の安否が心配か?」
 汰磨羈の刀を受け流しながらドルは言う。
 戦闘を続けながら汰磨羈の精神を揺さぶりに来る辺り、流石は警官隊のリーダーと言ったところか。
「なに、心配が必要な連中じゃない。それに……」
 刀を振り抜き、汰磨羈は後方へと跳んだ。
 直後、銀行内に大音量で警報が鳴る。
「仕事は終わり……さて、宝を頂いたらスタコラサッサだ!」
 数瞬の後、汰磨羈は低く姿勢を落とした。その口元は笑みの形に歪んでいる。
 ドルは警戒し、身を固くした。
 意識を汰磨羈に集中させた。
 それが悪手だ。
「逃げるッスよ!」
 汰磨羈の頭上を跳び越えて、現れたのは美咲である。
「速攻でしばいて、全速力で走る感じで!」
「なにっ!?」
 天井すれすれを滑るようにして跳び出して来た美咲の靴底が、ドルの顔面を蹴り飛ばす。
 不意打ちを喰らったドルは床に転がった。その真横を転がって、美咲は一路、出口へ向かう。
「待て! 盗人め!」
「待てと言われて待った奴、いたんっスか?」
 
 銀行の外に停まっていたのは1台のトラック。
 それに跳び乗り、美咲はアクセルを踏み込んだ。遠くの方から、サイレンの音が聴こえている。
「あぁぁぁ! 思ったより早いっス!」
「行ってください。車両は減らしておきますから」
 走り出したトラックの屋根から瑠璃が道路に飛び降りた。と、同時に影に紛れるようにして疾走。
 ドルたちが乗って来ていた車のタイヤを斬り付け、パンクさせる。

「あのオンボロ、けっこう走るんっすね」
 銀行の屋根の上から通りを眺め、ウルズはそう呟いた。
 “あのオンボロ”とは、美咲の駆る“美咲トラック”のことだ。黒い煙を噴き出しながら、大通りを疾走している。
 その後を警官隊の車両が追いかけているが、もう暫くは追いつかれる心配も無さそうだ。
「お疲れさんっすね。最悪向こうが捕まってもミッションはコンプリートできるっす」
 と、そう言って。
 懐に仕舞った機密文書を、服の上から撫でるのだった。

「あぁ? じゃあ何か? 今、追わてるのは無駄骨ってことか?」
 運転席の美咲に絡むことほぎが、眉間に深い皺を寄せて紫煙を吐いた。美咲は手で紫煙を払うと、苦い顔をしてバックミラーに視線を向ける。
「まぁ、そうなるっスね。いや、囮も重要な仕事って言うか」
 背後から警察車両が迫っている。
「っと、危ないっス」
 追いつかれる寸前、美咲はハンドルを切った。急旋回したトラックの隣を警察車両が追いこしていく。
 タイヤへ向けて、ことほぎが魔弾を撃ち込んだ。
「こんなことなら金目のモノでも持ち出しときゃよかったぜ」
 舌打ちを零す。
 タイヤが破裂し、警察車両が近くの建物に突っ込んで行く。車両は大破したが、警官の方は無事らしい。
 這い出して来る警官へ、エクスマリアが言葉を投げた。
「騒がせて悪かった、な。これからも、お仕事頑張ってくれ」
 誰の耳にも聞こえていないだろうけれど。

成否

成功

MVP

志屍 志(p3p000416)
遺言代行業

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様です。
見事、機密文書の回収には成功しました。
依頼は成功となります。

この度はシナリオのリクエストおよび、ご参加いただきありがとうございました。
縁があれば、また別の依頼でお会いしましょう。

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