PandoraPartyProject

シナリオ詳細

エンジェルいわしの里親さがし

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●エンジェルいわし
「わー、にゃんこかわいいですー」
 一般的な女子がペットショップで小さなにゃんこを眺めていた。
 店員さんに抱っこしてみますかって聞かれてぜひぜひゆーて、うわーあったかーいとか言いながら両手に乗せていた。
「わー、エンジェルいわしかわいいのですー」
 隣のボックスでは天使みたいな小さい羽根がついたイワシがつぶらな瞳をぱちぱちしながら浮いていた。
 店員さんが抱っこしてみますかとかゆーからぜひぜひゆーてうわーあったかーいとかいいながら両手に握っていた。
「エンジェルいわしは幻想貴族御用達のナウいペットとして有名なのです。聞いたことありますよね?」
 ありますよねって言われて迷う者。もちろんだよと頷く者。むしろ飼ってるっていう者。
 三パターンのリアクションを返すイレギュラーズたちに、ペットショップのオーナー……もとい幻想貴族ペッティ氏が深く頷いた。
「そうなんです。今幻想貴族の間ではエンジェルいわしが大ブームなんですよ」
 本当にブームなのかは知らない。こういうのをオーバーに言っておくのはペット業界のたしなみみたいなもんである。
 さておき。
「けれどブームの影響で捨てエンジェルいわしも多くって……よくないですよね。軽い気持ちで命を預かっては」
 本当に困った様子のペッティ氏。
「けれど捨てられてしまったものは仕方ありませんから、なんとか保護しているんです。けれどすべて保護し続けるというわけにもいかなくて……この子たちの里親を探すのを手伝ってくださいませんか。
 ――というのが、今回の依頼内容なのです」
 なるほどそれなら今日の依頼は簡単だなと頷いていると……。
「「強盗ダァー!」」
 天井に向かってサブマシンガンを乱射する強盗が現われた。
 自分で強盗だって叫ぶくらいだから本当に強盗なんだと思う。
「ここにエンジェルいわしが大量にいるって聞いたぜ! タダで配ってるってなァ!」
「それなら俺たち魚鍋大好きブラザーズがいただくぜ!」
「土鍋で煮込んで食ってやらぁ!」
「やめてください!」
 いきなり始まった強盗騒ぎ。
 ペッティ氏がエンジェルいわしのボックス前に立ち塞がり、両手を広げた。
「エンジェルいわしちゃんたちは食べたって美味しくありません! この子たちは可愛がってくれる里親さんのもとへ送り出すんです!」
「うるせぃ、どけぃどけぃ!」
「俺らは魚と聞けばマズかろうがとにかく鍋にしてぇんだよ!」
 さっきから親切に自己紹介をする強盗もとい魚鍋大好きブラザーズ。
 突き飛ばされたペッティ氏はピッと二本指を立ててイレギュラーズたちを見た。
「依頼追加! 報酬増量! この人たちを追い払って――そのあとゆっくり里親捜しを手伝ってください!」

GMコメント

【これまでのあらすじ】
 とてもポピュラーでナウいペット『エンジェルいわし』の里親捜しを依頼されたイレギュラーズ。
 さあコネクションと使うか捜索するかダチコーを呼び出すかと考えているところに突如現われるペット強盗魚鍋大好きブラザーズ。
 なんと彼らはエンジェルいわしを奪って鍋にして喰うという。見た目の割に食べても美味しくないという忠告にも耳を貸さぬ不届き者だ。
 ついさっきまでイージーシナリオの空気だったのに突如ノーマル難易度にふくれたこの事件。
 イレギュラーズたちはどう切り抜けるのか……!

【対強盗パート】
 前半は強盗の『魚鍋大好きブラザーズ』との戦闘パートです。
 皆で協力して彼らを倒しましょう。保護結界とかあるとあとあと地味に便利です。
 強盗たちの武装は共通してサブマシンガン。
 射撃と格闘を使用し、ちょっとした戦闘レベルがあります。
 頭数は約5人。けれど力を合わせて戦えば勝てない敵ではありません。

【里親捜しパート】
 こっちがメイン。
 沢山いる保護エンジェルいわしちゃんたちの里親を見つけてあげましょう。
 期間としては一週間くらいを想定していますが、日刻みでプレイングを書くと脳とか文字数とかが破裂すると思うので、ざっくり長い目でみながら活動内容を決めてください。
 人数はいるので、ひとつかふたつに絞って活動するのがお勧めです。
 最悪全員でビラ配って終わってもいいっちゃいいですが、できる限りのことはしてあげると後味がとってもよくなります。

 里親条件がないわけじゃないですが、エンジェルいわしを途中で捨てたり食べたりしない人なら大体誰でもOKのようです。
 自分が里親になるよというPCさんがいらっしゃいましたらお持ち帰りいただけます(食べないでね)。
 アイテム化するとちょっとキリがないので、フレーバーとして非アイテム配布とします。どうしても他シナリオで持ち歩きたかったらネコあたりを特殊化してください。

【エンジェルいわし】
 『イワシに天使の羽根が生えたナウいペット。ネコ程度の大きさで地面から30センチ高度を浮遊する』(特殊化用フレーバーテキスト)
 一般動物のカテゴリーで、動物疎通が通じるタイプ。
 卵期と稚魚期は海中で過ごすが成長すると飛行能力を得ますが、地面から30センチくらいの高さをずっとぶんわか浮かんでいることしかできません。その状態でひれを使って泳ぐように移動します。
 餌はツナやキャットフードなど。なにげに雑食性。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • エンジェルいわしの里親さがし完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年10月18日 21時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
エスラ・イリエ(p3p002722)
牙付きの魔女
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
リジア(p3p002864)
祈り
剣崎・結依(p3p005061)
探し求める
イーフォ・ローデヴェイク(p3p006165)
水葬の誘い手
Melting・Emma・Love(p3p006309)
溶融する普遍的な愛
パーシャ・トラフキン(p3p006384)
召剣士

リプレイ

●今時珍しいタイプの強盗
「うるせぃ、どけぃどけぃ!」
「俺らは魚と聞けばマズかろうがとにかく鍋にしてぇんだよ!」
 肩で風きりサブマシンガンを天井めがけて乱射する魚鍋大好きブラザーズ(自称)。
「目に付く魚は食い尽くしたんだぃ! こちとら珍味にも飢えてんだぃ!」
「エンジェルいわしを出しなァ!」
「うーむ……」
 話を聞いていた『五行絶影』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は世にも複雑そうな顔で上向いた。
 とりあえず魚っぽければ喰っちゃうのは、なにも魚鍋大好きブラザーズに限った話では無い。ローレットの人たちだってほら、カニと聞いたらモンスターだってとりま喰ってみたりするじゃん? 世には食えないカニもあまたあるのに食える希望になぜか賭けてみるじゃん?
「お前達の気持ちは良く分かる。激しく分かる。――だが」
 しゃらーんと霊光器・槍棍型特種『乾坤炯圏』を握り込むと、汰磨羈は大見得をきった。
私達は、信用第一のローレット。受けた仕事は完璧にこなす。……つまり、貴様らがエンジェルいわし鍋にありつける事は決して無いという事だ」
「うるせぃうるせぃ!」
「こちとら強盗だぜ!」
「「欲しい者は奪い取るのが本分よ!」」
 練習でもしたのかなってくらい息を合わせる魚鍋大好きブラザーズ。
 かかってまいられい! みたいなポーズの汰磨羈に何でか知らんけど普通にジャンプでとびかかっていく。
 話を聞いていた『水葬の誘い手』イーフォ・ローデヴェイク(p3p006165)がくにゃっとした前髪を指で直した。
「……魚の海種として、食えない魚まで食おうっていう料簡がわからないなァ」
「あー、お魚が生理的に食べられないっていうディープシーさんいらっしゃいますねー」
 海の魚は同じ魚を食べてたりするので、別に共食いだから食えないってわけじゃあないのだが、なんかそういうのイヤっていう人はいる。
「まあ世には唐揚げが好物の鶏とかチャーシュー麺をすする豚とかいるんで、何事も一概には言えないですけど……」
 普通に会話に混ざってくる貴族ペッティ氏。
 『牙付きの魔女』エスラ・イリエ(p3p002722)がまあまあと手を翳した。
「とかく、今は目の前の問題をかたづけましょ。聞く耳持たない人みたいだし……」
 エスラは空中に上下の線を複数引くと、升目式魔方陣を描き出した。
「ちょっと痛いかもしれないけど、我慢してもらうしかないわ」
 ロベリアの花の魔術を完成させ、ばしばし投げつけていくエスラ。
 魚鍋大好きブラザーズもそれぞれ離れてりゃいいのになんでかお手々つなげるくらいの距離で戦うもんだからぼこぼこ当たっていた。多分戦うのとか慣れてない人なんだと思われる。
 仕方ないなという具合にエスラの手伝いに入る『太陽の勇者様』アラン・アークライト(p3p000365)。
 『生誕の刻天使』リジア(p3p002864)は戦闘風景を一通り確認してから、周囲に保護結界をはっていく。これが積極的に役立つタイミングがようやく来た具合である。
「この店は、破壊するに忍びない」
 結界を張り終えてから、破壊の翼を四枚それぞれ展開していく。
「先にこの変な生き物共を片付けねばなるまいか。もっとも、私の手が必要がなさそうなほどに血気盛んな味方だ。今回くらい特に私が破壊する必要もないか」
 そう言って素早く店内を飛行すると、仲間に降りかかるマシンガンの弾を破壊のエネルギーで粉砕していく。散り散りになった衝撃の一部が自分の身にふりかかるが、両手を翳して振り払った。
 破壊力を破壊する。リジアのあんまり見せないバトルスタイルである。
 ひゃあと言ってかがんでいた『召剣士』パーシャ・トラフキン(p3p006384)が、帽子をおさえたまま顔を上げる。
「このままじゃ危ない。罪の無いお魚さんたちを守って、ウルサ・マヨル!」
 パーシャが呼び出した剣が空中を回転し、魚鍋大好きブラザーズへと襲いかかっていく。
 どう頑張っても武器と武器。怪我もすれば血も出るもの。
 気の進む光景ではあるまい。
「まずは食いしん坊たちに諦めて貰わんとな」
 『探し求める』剣崎・結依(p3p005061)が前に出て、非殺傷魔術を手に纏わせた。
「俺も魚好きだし、気持ちもわからんでもない」
 味覚は人それぞれ。ネコやイヌを食べるひとだってきっといるし、主食が人間ってひともいるかもしれない。それをダメとまではいわないが……。
「だがすまん、こればかりは譲れん」
 手のひらから魔術を放ちながらずんずんと突き進んでいく結依。
 しばらくぽこぽこと変形していた『溶融する普遍的な愛』Melting・Emma・Love(p3p006309)が人っぽい形を取り始める。
『どんな理由でも強盗はダメなの。しっかりと懲らしめてやらないとなの。無理に生命を奪う事は良くないの』
 式符・白鴉を発生させ、攻撃していくLove。
 汰磨羈たちが傷つくそばからヒールオーダーをかけて回復をしかけた。あとごめん、こういうライトなタイミングじゃないと言えないんだけど、ヒールオーダーは治癒符とかと一緒で普通の回復スキルなんだ、おねがい、今のうちに気づいて!
「めずらしいおサカナを経験したくなる気持ちはわかるけどネ……」
 イーフォは手刀に非殺傷魔術を纏わせると、魚鍋大好きブラザーズ弟の背後にまわってこう首筋をガッてやった。
「ぐええ!?」
「どうせ食べるならおいしいおサカナがいいでショ? まずいものは舌をバカにさせるからネ。イイものを喰って、舌はイイものの味をわかって上等になル。うまいものだけを追求してこそ、食通ってものサ」
「弟ー!」
 駆け寄る魚鍋大好きブラザーズ兄。
 パーシャが手をグーにして上下に振った。
「あのっ、退いて貰うことってできませんか! フライングフィッシュとかお勧めだと思うんです、狩りをするならお金とか払わないですみますしっ」
「……確かに」
 一理ある、みたいな顔で手をぽんと叩く魚鍋大好きブラザーズ兄と弟。
 エスラがハッとした顔で振り返った。
 不殺スキルなしで殺さずに勝つ方法ってそういやそれがあったな、みたいな顔である。
 銃も剣も普通に人を殺しちゃう破壊兵器だが、突き合わせて拮抗しつつ話し合いをするっていうのもひとつの手である。というか普通の手である。
「オシオキのつもりでうっかり殺すところだったわね。危なかったわ」
「そんな物騒な物を向けたんだ。腕の一二本は取られる覚悟が出来ていると見な――えっ?」
 汰磨羈が二度見で振り返った。
「別に死ぬとは限らないけど、ハンマーで頭を殴り続けたら割と死ぬことあるでしょ」
 うむ……という顔で頷くリジア。
「この生物は破壊しすぎると、二度と動かなくなることがある」
「こっちも追い払うのが目的だし、場所が場所だから……な?」
 結依が同意を求めるようにLoveを見た。
 Loveは呼び出したカラスさんで魚鍋大好きブラザーズ兄の頭をひたっすらつんつんさせていた。
 腕組みをする汰磨羈。
「うーむ、仕方ない。もう強盗などするんじゃないぞ」
「「はい!」」
 すげーいい返事をして帰って行く魚鍋大好きブラザーズ。貴族主義社会の幻想国家で、貴族のペッティ氏のところに押し入ったとなれば死刑とかザラにあるので、割と良い着地点におちついたのかもしれない。世の中死ぬより恐いことってあんまないし。
「さて、『今回の本題』といくか!」

●里親捜し
 さて、今日の本題がエンジェルいわしちゃんの里親捜しだと覚えている方はいらっしゃるだろうか。
 勿論忘れてないエスラたちは、ゲージ(ネコとか入れてお出かけするための外鍵ついた籠みたいなやつ)に入れたエンジェルいわしをつれて水族館へ訪れていた。
 なんでもありが売りみたいな世の中ではあるが、やっぱり水族館的な場所もあったらしい。
 思ったほど沢山無かったのと、入場料が若干高めで貴族向きだったのは計算外だったが……。
「エンジェルいわしは貴族に人気(?)って言ってたし、好都合よね」
 エスラはゲージを水族館の係員に見せて飼ってくれる人を探したい旨を相談してみた。
 一応公共の場ということで、その辺に立っていきなり里親交渉を始めるのはマナーが悪いという配慮である。
 すると……。
「へー、エンジェルいわしですか。うちにもお迎えしようと思ったんですけど、どうも価格が高騰していて……よかったらうちで引き取っても?」
 予想外に水族館側が食いついてきた。
 水族館といえば飼育のプロ。陸上生物とはいえ魚っぽいという理由で別コーナーを設けたいと考えていたらしい。
「可愛がってくれるなら歓迎よ。すこしふれあってみてもらえるかしら」
 エスラは早速交渉を始めることにした。

 エスラが水族館に行ったように、汰磨羈は動物園へとやってきていた。
 こちらはエスラと違ってはじめから係員へ売り込むつもりだ。
「にしても。……確かに可愛いな、お前達」
 ゲージに入ったエンジェルいわしが羽根と尾びれをぴちぴちさせながら甘えるように揺れている。
 魚だから生臭いかなと思っていたが、以外とそんなことはなく、むしろほんのり潮の香りがした。
 鱗は陽光を照り返してきらきらと光り、翼はどこかふさふさとしている。
 よく見れば、貴族に人気なのも頷ける造形だ。
「食べられないと聞いていなかったらうっかり調理していたかもしれない見た目だが……なるほど、世の中色々なものがいる」
 などと感心しつつ、動物園の係員に見せて交渉してみる。
 係員はエンジェルいわしの展示の予定はないと話していたが、係員の一人が欲しがったことで引き取り手が見つかった。
 こちらもこちらで一件落着である。
 交渉と引き渡しが済んだ汰磨羈は、その足で近くの孤児院へと向かった。
 孤児院の前で待ち合わせていたLoveとパーシャ。

 ほのぼのとした様子で、ついでに里親募集のビラなど配っていたLove。
 それを手伝っていたパーシャの頭上を、リジアがビラを撒きながら飛んでいく。
 細かい所で規制の緩い幻想の町。割とノーコストで飛行できるためか飛行ビラ配りはそんなに珍しいものじゃない。パン屋の特売セールのチラシ配りと軽くぶつかりそうになったほどだ。
 そんなリジアを見送って、パーシャはてくてくとやってきた汰磨羈と合流した。
「孤児院には寂しい子たちもいるかも。このお魚さんたちが一緒に寂しさを埋めてくれるかもしれません」
『里親探しも頑張るの。Loveにできることならいっぱい手伝うの』
「うむ、では行こうか」
 細かい社会情勢はさておいて、幻想には割とあちこちに孤児院がある。良い孤児院も悪い孤児院も当然あるものだが、パーシャたちが向かったのは良いと噂の孤児院のほうだ。
 リストアップしたいくつかの孤児院のうち数件は余裕がないことや子供たちが飼育をうまくできないかもしれないという懸念から断わったが、大きなところでは一匹ずつ引き取ってくれた。エンジェルいわしがペット的に見てそんなに手のかからない動物だというのが分かったのだろう。
 あと触ってみて気づくが、エンジェルいわしには透明な産毛が生えてて若干さらさらしているし、身体はほこほこと温かいのだ。海の生物が暖かいってのは、触ってみないと分からないものだ。そりゃ生きているのだし当然といえば当然なのだが。
「なんだか愛着がわいちゃいましたね……もしよかったら後で一匹、うちにもお迎えしたいです。お父さんもお母さんも許してくれる……はず、です!」
 エンジェルいわしを手の上であやしつつ、パーシャは早くも魅力を理解しつつあった。

 暫く孤児院を回ったあとは広い場所に出ることになった。ビラ配りをしているリジアや公園で看板を立てて見せびらかしてみた結依などが居る場所である。
 パーシャたちの合流にきづいた結依が手を振った。
「随分色んな人が見に来てるみたいだな。はじめは魚を触るのは気持ち悪いと言い出すんだが、近づいてみたり触ってみたりすれば良さがわかるらしい」
 そう語る結依はエンジェルいわしを指で撫でたり、肩から腕に伝うように泳がせたりと妙に楽しそうだった。
 普段さばかれたやつか死んだやつしか見てないと気づきにくいが、いわしは実はとても神秘的で素直な生き物だ。
 海中のいわし同様、エンジェルいわしも群れをなして生活することが多く、運が良ければ晴れた草原の真ん中で巨大な球体を作ってくるくると飛んでいる光景を見ることが出来る。
 目もつぶらで人によく甘え、乾燥キャットフードとか与えるとかりかり囓ってつつくように食べる姿が愛らしい。
「まあ、飼ってみるのも悪くないかもな。俺も責任とって一匹引き取ろう」
 結依が懐かせているだけあって集まった人々の反応も割と良く、引き取り手も何件か見つかった。
「俺の方はこれで引き上げるが……イーフォの方を見ていくか?」

 リジアがビラ配りを終え、三階建ての木造校舎へと降り立つ。
 イーフォが売り込み(?)に行っている学校だ。
「どうやらここの生き物は大人しいらしいな……そういえば、パーシャは身分を気にしていたが……」
 リジアは小首を傾げた。幻想は貴族社会。身分の差を気にする人は少なくない。
「私には関係ないな」
 関係ないというかそもそも気にしないリジアは、再び飛行して校舎の中へと入っていった。
 丁度、イーフォが学校の教師に交渉を行なっている所のようだ。
「教育の一環として生命の大切さを学ぶっていう名目で、生き物を育てることもあるだろうシ、こういう生き物もいるんだと、子どもたちのイイ教育になル」
 学校でウサギを飼うノリでエンジェルいわしを飼ってみては、と勧めているらしい。
 ここの学校は割と中流階級を対象としているらしく、飼育をカリキュラムに組み込むつもりは特にないらしいが、情操教育のために一匹二匹飼っておくのも悪くない、と考えたようだ。
「お世話係とか、役割分担なんかもできるシ。子どもたちも共通の話題が増えて、交流が多くなるかもしれなイ」
「なるほど確かに」
 イーフォは受け渡しを終え、窓から入ってきたリジアにOKサインを出した。
「こっちはもう大丈夫だヨ。帰ろうカ」

 こうして、本来頼まれていたエンジェルいわしの里親捜しは無事に終了した。
 すっごく余談だが、あの魚鍋大好きブラザーズも『よくみたらこれ可愛いペットやん』と気づいて一匹飼い始めたらしい。親切は伝説するものだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 結依さんとパーシャさんにはエンジェルいわしをお送りします。
 こう、うちに帰ったら部屋を泳いでるんだなあと想像してお楽しみください。

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