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シナリオ詳細

絶対に見つかってはいけないイレギュラーズ大作戦第一話「おい、お前らそこで何してる」

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――依頼の説明をしよう、これは潜入任務だ。
 幻想貴族ナハッター卿は近頃、怪しげな邪教団体と接触しており、その為に領民が犠牲になっている……という『噂』があるのだ。あくまで噂であり確証はない。もしかするとナハッター卿は一切関わっていないという可能性もゼロではない――
 しかし事実であるならば捨て置けぬ。誰かがリスクを冒してでも調査せねば……
 故にこそイレギュラーズ達に依頼が舞い込んだ。
 ナハッター卿の屋敷に潜入し、邪教との繋がりの証拠を掴んできてほしいと。
 幸いにして当のナハッター卿は、暫く屋敷を留守にして王都に行くらしい……この期間内に何か証拠品となる様な物証を盗んでもバレないだろう、との情報だ。だからこそ――
「重要なのは発見されない事だ。警戒させちまったら元も子もないからな。警備兵に見つかってナハッター卿に連絡――なんてのは最悪だ。逃亡される可能性もある」
「分かってるさ。その為に夜になるまで待ったんだ」
「ああ準備も万端だぜ――見つかる訳がねぇ」
 近くの廃屋で身を隠すイレギュラーズ達。窓の外を見れば大分暗くなってきたか。
 潜入するには絶好の時間帯だ。ふふ、それだけではない……事前に可能な限りの調査も済ませておいた。屋敷の見取り図、侵入ルート、全て計画済み。万全だ。依頼に不測の事態はつきものだが、しかし此処に集っている皆であれば如何なる事態にも対応できると信ずる。
 歩む。闇夜に紛れ、屋敷へと近付くのだ。
 大きい屋敷が見えてきた――息を殺し、気配を隠し。
 タイミングを整え……行こう。
 疑惑の貴族の屋敷へと、いざや潜入するのだ――ッ!!
 と、正に一歩踏み込んだその時。

「おい、お前らそこで何してる」

 警備兵がなんかいた。


 そこからのイレギュラーズ達の行動は、正に神速だった。
 飛び蹴りを敵の顎にぶちこんで意識を刈り取る。
 なんでこんな所に警備兵が――偶然、偶々、不運でこっちの死角にいたというのか!?
 疑問よりも先に行動した。そのおかげか、声をあげさせるよりも早く鎮圧出来た、が。
「どうすんだよこれ、見つかっちまったぞ!!」
「い、いや即気絶させたからOKの筈……」
「そんな訳ないだろ、バレたらダメなんだって!!」
 終わった――始まると同時に終わった――
 繰り返すがこの依頼は潜入任務だった。
 人知れず内部に侵入し、人知れず外へと帰還する……その筈だったのに、開始と同時に終わってしまったではないか! 警備兵を生き残らせていてもダメ。始末してもダメだ! 何故かって、いなくなった警備兵がいたと分かれば、異変があったと気付かれるのは確実――そしてそうなれば当然、王都にいるナハッター卿にも連絡がいくに決まってる!
 そうなれば弾劾する前にナハッター卿は逃亡するだろう。あぁだから……
「でもさぁ」
「ん?」
「『バレなかった』らいいんだよな?」
「……ん?」
 じゃあさぁ。

「――ナハッター卿に誰も報告できないように、全員全滅させちまえばいいんじゃないの?」

 …………んっ???
 刹那。一人のイレギュラーズが提案したソレは――
 悪くない。悪くない作戦ではないだろうか?
 元々バレないように行動する必要があったのは、先述の通りだ。ナハッター卿に異変の連絡が行く事……ならばどう足掻いても連絡が行かないようにすればいいのでは……???
 具体的には今から屋敷内にいる私兵を 全 滅 さ せ る !
 そのついでに邪教団との繋がりも入手して帰還すれば問題ない。なんか本末転倒というか本来の目的がオマケになってしまっている気がするが、えぇいこの際細かい事はいいのだ。潜入がバレてしまったという事実を打ち消してしまえれば!

 せんにゅうが バレたのならば しかたない つぶしてしまえ やしきごと。

 イレギュラーズ達の瞳に狩人の意志が宿る。
 警備兵もまた邪教団と関わりのある、民衆を攫い生贄にした冷酷非道なる者達だと聞いている。故に容赦する必要はない……全部ぶっ潰すのだ。どうせ遅かれ早かれの事態なのだ、連中が悪逆たる者達ならば、いずれは叩き潰す! ならばソレが今となって何の問題があろう!
 さぁ往こう。なんか色々当初の予定とは違うけれど。
 見つかった事実を消してしまえば――見つかっていなかったという事と同義なのだから!

GMコメント

●依頼達成条件
 屋敷内の敵戦力を全滅させる事!

●フィールド
 幻想南部に存在する、貴族ナハッター卿の屋敷です。
 最近ナハッター卿は邪教に傾倒しているとされ、この屋敷に連れ去られた民は生贄にされている……という噂があります。皆さんはその証拠を探るべく潜入――せんとしていたのですが、なんの偶然か警備兵に見つかってしまいました!

 仕方ないので内部戦力を全滅させて、見つかった事実を隠蔽してください!!

 屋敷はそれなりに大きい建物です。
 その中で、ナハッター卿の私室の金庫には邪教団との繋がりを示す書類がありますので、ソレも回収してください。一応この依頼の本当の主軸は、邪教団との繋がりを手に入れてナハッター卿を弾劾する事だったので……!!

 時刻は夜。かなり薄暗いので、気配を消すには絶好の時間でしょう。

●ナハッター卿
 幻想貴族の一人です。最近邪教に傾倒し、民を生贄に捧げているようです。
 用事があって暫く王都に行っているようです。
 今の内に奴を弾劾する為の証拠品を入手してください――!

●警備兵×30名
 ナハッター卿の屋敷を警備している者達です。
 あちこちにまばらに存在しています。警備兵、とはされていますが実は全員邪教団の者であり今まで幾人もの命を冷酷に奪って来た一員達です。容赦する必要はありません、ぶっ潰してください。

 剣や銃などで武装しています。戦闘力はまちまちですが、数は多いみたいです。
 今の所は皆さんの侵入には気付いていないと思いますが……流石に屋敷の警備数が段々と減っていけば、異変に気付き始める事でしょう。なんとか全員逃さずぶちのめしてください!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。まぁ想定外の警備がいたから想定外の事態にはなったんですが。HAHAHA!

  • 絶対に見つかってはいけないイレギュラーズ大作戦第一話「おい、お前らそこで何してる」完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年07月31日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)
紅炎の勇者
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
黒鎖の傭兵
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
レイン・レイン(p3p010586)
玉響
大和型戦艦 二番艦 武蔵(p3p010829)
アリカ(p3p011038)
お菓子の魔法使い

リプレイ


「――『通りすがりの戦艦である』は通らなかったか……
 馬鹿な。どうしてだ……通りすがってもいいだろう、戦艦くらい……
 護衛艦や巡行艦だったら良かったのと言うのか?
 ハッ、なら空母ならどうだったのだ!? 場合によっては戦艦差別だぞ!!」
 出る所出るぞー! と、どう考えてもそういう問題ではないが大和型戦艦 二番艦 武蔵(p3p010829)にとっては死活問題であった。だって考えたくない。まさかとは思うが、武蔵は潜入には向いていないのではないか、などとは……! 故に世に蔓延ってる気がしないでもない戦艦差別問題に切り替えて――えっ。とにかく依頼を進めろって? はい。
「要は……隠密依頼がキルゼムオールに切り替わっただけの事か。
 随分と懐かしい気もするな。かつての生物兵器時代は基本だったが……
 『元』がついてからはしていない。久しぶりの狩り――か」
「見つかっちゃったからには……もう仕方ないよね……
 皆倒して……証拠品も見つけて……依頼を成功させるしかないね……」
 戦艦差別に嘆く武蔵に続いて『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)や『玉響』レイン・レイン(p3p010586)も屋敷の中をこっそり進んでいこうか。どうせこの屋敷内にいるのは全て気の狂っている邪教団体――容赦する必要はないのだからと。
 ともあれ、と。まずはまた見つかったりしないように偵察の手を伸ばす。
 ウェールにレインはファミリアーによる使い魔を使役。
 各所に先行させて警備兵の配置を確認しようか――更に。
「……仮にも貴族の館の警備、正式な警備計画に基づいていれば有り得ない筈の事でしたが……『有り得ない』事が起きているのならば、むしろ好機とも言えるでしょう。正式な警備兵でないのなら、必ずや隙が歪に生じますから」
 『紅炎の勇者』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)は周囲に人の気配がないか耳を凝らしつつ……同時に精霊らへと偵察のお願いをするものだ。悪意をもった人間を退治しにきたのですから――と。
 さすれば屋敷各所に散っている警備兵の位置が少しずつ分かり始める。
 ……やはりというべきか数は多い様だ。ならばイレギュラーズ達は二手に別れよう。
 先述の武蔵、ウェール、レイン、リースリットを一つのグループとし、そして。

「っく、ひょっとして昼間に俺の目の前を黒猫が5匹も横切ったのが関係してるのか? いやもしかして、靴を履いた時に靴紐が全部弾け飛んだアレの方か……? いやいや、ひょっとすると朝飯食べようとした時に茶碗が全部欠けてたヤツかもしれない……なんという不幸。頭の頭痛が痛いったらありゃしない」

 ハハハもう、こ奴が元凶だったのではなかろうかと思う程の不運オーラを携えている『狂言回し』回言 世界(p3p007315)は、リースリットらとは別方向へと歩みを進めていた。まぁ何にせよ起こってしまった事は仕方ない――
 やや目的は変わったが結局やる事に大きな変更はないのだ。
「ナハッター卿が悪い人である……ていう証拠品を見つければいいんですよね……!」
「あぁ。随分と裏で悪事を重ねてきていたようだし、年貢の納め時だね」
 『お菓子の魔法使い』アリカ(p3p011038)は『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)と共に行動する。物音を立てないようにし足音も気配も殺しつつ……通路を見据えよう。警備兵がどこぞにいないか、と。
 モカはローレットダンボールも用意してきていれば、より盤石だ。
 こっそり、こっそりと移動すれば早々簡単には気付かれぬ――そして。
「最初こそコケちまったが……まぁ、何も焦ることはなかったな。
 むしろ依頼内容が単純になったと思えば、楽なもんかもしれない」
 『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)も暗闇を見通す目をもってして警戒しつつ、進もう。目撃者が全員居なくなれば見つかっていない事になり依頼達成も楽になる。完璧ではないか……
「まぁこんな力押しが出来そうな依頼が最近殆どないのがアレだがな」
「こんな力押しばっかりの依頼がローレットに来たら、それはそれで世紀末じゃないか?」
「……ま、罪の無い庶民を生贄にした者たちを地獄に送りましょうかね。因果応報ってやつだ」
「警備兵さんたちをひとり残らず倒してしまいましょう……! えいえいおー、ですね!」
 マカライト、世界、モカ、アリカ。一塊となって、目的達成の為に歩んでいこうか。
 ナハッター卿の私室を目指しつつ、警備兵を先に見つけたらまずは警備兵を打ちのめす。
 色々と予定外の展開ではあるが――悪事をなす連中に容赦など元から必要ないのだから!


「ん?」
「おい、どうした?」
「いや今何か人がいたような……気のせいか――ぐあ!!?」
 微かな気配。感じえた警備兵がランプの灯りを其方へと照らしてみる、が。
 同時に感じたのは体中を張り巡る衝撃。

「悪いが、今日と言う日は『生物兵器』に戻らせてもらうぞ」

 それはウェールによる強襲だ。彼は先述の通り先行させていたファミリアーによる偵察に加え、優れた三感も併用して周囲の状況を的確に把握しうる。更に壁を透視しうる術もあらば、一方的に相手を目視する事も十分可能だ――
 そこから繰り出される強襲があらば成す術もない。
 一撃で倒れなかった警備兵がいるとしても、だ。イレギュラーズは一人ではないが故に。
「うむ。気付かれようとも最終的に全員(ピー)せばよいのだ。このまま行くぞ!」
「うんうん……でも、もしかしたら何か警備システム……?
 みたいなのがあるかもしれないから、気を付けないとね……」
 強襲には武蔵やレインも続くものだ。武蔵もまた、音の反響を捉えし手段によって自ら達以外の――例えば接近しうる足音――を検知し警備兵らの位置を掴む。道中においてもハンドサインを用いて極力声すら断とうか。レインの念話術も併用すれば口を介しての音はほとんど無いと言っても過言に非ず。
 そして攻撃を仕掛ける際も同様に音には気を付けるものだ。
 武蔵は砲撃ではなく剣撃を用いて制圧。レインも一瞬で片を付ける為に全霊の魔術を一閃。可能な限り即座に倒せるようにするものだ――
「ふふ、なんだか……隠れて動くの……少し……楽しくなってきたかも……
 見つからない……ぱーふぇくとを目指す……さいれんと・いれぎゅらーず……」
「うむ。後は――可能であれば罠でも仕込んでおくか。
 この辺りにワイヤーでも……敵の逃走ルートを潰せれば、隙を突けるかもしれん」
「いずれにせよ一人でも逃がせば厄介な事になりますからね。慎重に行きましょう。
 ……しかし。幾人か見てきましたが、使用人の類が一切見えないのは気に掛かりますね」
 同時。リースリットは一閃した雷光の剣を仕舞いながら周囲を眺めよう。
 他に敵影はいないか、と……だがそうこうしていればなんとなく疑問も湧く。
 警備兵がいるのはいい。当たり前だろう。
 だが――使用人の類までいないのはどういう事だ?
 いくら何でも貴族の邸宅に一人もいないというのはあり得ない。
(使用人たちまで邪教の生贄にした――ありえなくはありませんが、しかし生活が困る事までするのは些か違和感がありますね。ナハッター卿の立ち位置は一体……)
 気になる。やはり私室を一度徹底的に調べてみるべきだろうか、と。
 故に再び動き出そう。
 癒しの風を吹かせながら、いつ戦闘になってもいいよう盤石にしながら……

 そしてもう一方の班も順調であった。
 モカも周囲で足音がないか聞き耳を立てながら警戒して前進。
 ナハッター卿の私室を目指してゆくのだ――
「よし、此処だね。まずは罠が無いかチェック……うん、大丈夫そうだ」
「なら次は私が……鍵はやっぱりかかっていますが、しかし……こうして……こう!」
 さすれば扉へと辿り着こう。念のためにまずモカが、不正侵入用の罠が無いかを調べてから――アリカが開錠の心得をもってして扉を即座に開く。そこまで複雑で高度な鍵ではないのが幸いだったか。さてどこだ? 後は金庫。金庫も探さねば……!
「おっと……? なんだ、ナハッター卿の部屋で物音がしたような……」
「――仕事熱心な所悪いが、ジ・エンドだ」
「バラすと血が出てバレるかぁ……? 始末するにも場所が必要かもなぁ、やぁれやれ。
 空き部屋に叩き込んでおくか。とりあえずそれだけでも大分違うだろ」
「血とかは任せてくれ。こんな事もあろうかと、工作する為の技術は磨いてある」
 されど微かな物音がしてしまったのだろうか、警備員が勘付いて……しまったのを始末に回ったのは世界にマカライトだ。こちらの班はモカの持ち込んだローレットダンボールにより気配を全員が均等に殺せる……その上で世界とマカライトは、事前に入手出来ていた屋敷の見取り図から戦略的に警備員が回りそうなルートを推察していた。
 故に巡回経路を読んで回り込んだのである。
 悲鳴を挙げさせないようにこちらでも即殺即応。命を奪う斬撃と、収束させた魔力による一撃が警備員を穿つ――そうして倒れ伏せば、体はマカライトは近場の別室――その家具の中に押し込んで隠蔽を行っておこうか。
 少しでも発覚を遅らせる事が、後々にも繋がるのだから。
 モカも隠蔽工作を手伝いて脅威を排除すれ、ば。
「うむーむむ……金庫、あったのですがこれは時間がかかりそうですね……
 いっそ破壊してしまいましょうか」
「どうしたもんかな。破壊すると流石に大勢の警備員に気付かれるだろうし――ん?」
 私室内で金庫を探していたアリカが見つけた。
 ただ、問題がある。流石に扉と違って金庫はそう一瞬で開けれそうにはないのだ。
 いっそもう気付かれる前提で破壊するのもアリか、と思うものだ。どうせここまでで既に警備員達を排除し続けている。当然向こうの班もそうだろう。そろそろどっちみっち気付かれる頃合いだとマカライトは思考していれば……
 何か。騒がしい気配が広がりつつある。
 あぁ――噂をすれば『バレ』始めたという事か?
「ふぅ……遅かれ早かれだったが、面倒くさい事態がやってきたな」
「まぁ仕方ない。後はゴリ押しで行くしかないだろう、ね」
 ならばもう遠慮する必要はなさそうだと、吐息零す世界とモカは紡ごうか。
 ナハッター卿の証拠は手に入れたなら――そう。
 後はキルゼムオール・タイムなのだから!


「き、貴様ら一体どこから……ぐあッ!!?」
「私の名は武蔵――戦艦である。不届き者を討ちに来たッ!」
 もう黙ってる必要もなくなって来れば、武蔵が本領発揮する時間であった。
 今まで秘匿していた。流石に武蔵の主砲を使えば……まだ事態に気付いていない敵も勘付いてしまうのではないかと。故に『抑えていた』と言っても良い。今までの、武蔵は。
 しかし敵が気付いたのならば制限撤廃。
 ――撃ち貫く。一応、ナハッター卿の私室をフッ飛ばさない様に、角度は調整しながら!
「流れ弾で書類が燃えなければ……問題なかろうッ!」
「な、なんだあの侵入者は……この実力、まさかイレギュラーズだとでも……!」
「外へ事態を伝えろ! ナハッター卿に今すぐ――」
「そうはいかん。お前達の道は、此処で全て終わりだ」
 されば一部の敵は侵入者の発見たる異常事態を外部に伝えんと画策するが。
 そこはウェールが警戒していた。ファミリアーを上空から監視させ、外へ赴かんとする者がいないか見ていたのだ――彼はそういう手合いをまず優先して潰す。誰も外へは行かせない。誰もお前達は此処を超えられない。
 久しぶりの狩り、躊躇う余地のない獲物。
 身体は血に飢えながらも、頭は冷静、冷徹に。
 ああ――皮膚の下で魂が血沸き肉躍る。
「さぁ。逃げてみせろ。逃げられるものならな」
 それが彼に宿りし業なのか。
 イレギュラーズの侵入がバレはしたものの、彼は引き続き隠密行動を継続する。警備兵の意識の狭間を狙いて強襲するのだ――雷のようにただ速き一撃で、連中の心の臓を穿ってやろう。
 あぁ一撃で殺せないなら、まず狙うのは喉にしようか。
「う、うわああ、ぁ、あ――」
「怖いか? それがお前達が――無辜なる民に与えてきたモノだ」
 声を封じる為の一手。無論、喉を経由しているだけで死という結末に変わりはないが。
「逃げちゃう人……いるかもだしね……すぐに全部……倒さないと……」
「ええ――邪教の規模も気になる所ですし『些事』はさっさと片付けておきたい所です」
 続けてレインにリースリットも敵勢力の排除に務めようか。
 脱出せんとする敵を最優先に撃を飛ばす。リースリットは焔の魔術を展開し、刻印の呪いを刻み付けんとするのだ。ソレは魂を蝕み、言いようのしれない焦燥感と怒りを敵対者に齎そう……そうして動きを縛ればレインによる、無数に展開した小魔術の極大斉射が待っている。
 ――放つ。さすれば消し炭としても残るまい。
 が、このような行為は『些事』とリースリットは捉えよう。
 さっさと書斎の方を調べたいのだから――と思っていれば。
「くそ! 兵を集めろ! 散っていたら各個撃破されるだけ……!」
「――そうだね。もう遅いけれど」
 声を荒げていた警備兵の一人の首に、モカの指先が絡んだ。
 刹那に『曲がる』圧を掛ければ、あり得ぬ方向に首が向く。
 ――あぁ。私もウェールさんと同じで、混沌に来てから暗殺はしてなかったのだが。
「ま、仕方ない。生きてればこういう事もある」
 だから打ち倒していこう、存分に。
 速やかに排除していく。まるで黒豹の如く跳躍し、敵の喉笛を掻っ切るのだ。
 疾走する影が屋敷内に幾つも――そしてその度に警備兵たちが倒れていく。
「思えばちょっと規模の大きい押し入り強盗じゃねぇかなコレ。まぁ今更なんだけどさ」
「うう、でもこれも依頼ですからね……! ええぃ、シャーベットになっちゃえー!」
 更にマカライトやアリカも攻勢へ至ろうか。二人も最早遠慮なし、だ。
 マカライトは通路の先に見据えた複数人があらば突撃する。
 それはまるで伝承に聞くフェンリルの如く。魔力を推進力として敵陣に一直線。
 食い破るようにその陣形を穿てば、更にアリカの魔術も降り注ごう。紡ぎあげる破壊の魔術――不可避の雹が警備兵たちの頭上へと。あぁ続いては『こんがり強火で燃えちゃってくださーい! 焦げてくださいーい!』と熱波も送り出そうか。
 氷の炎の攻勢が至れば耐えきれる者がどれほどいよう。
 警備員の者達に恨みはないが――これも仕事が故。ごめんなさーい!
 追い詰められていく。逃げようとすればウェールやモカに詰められ。
 内部で抵抗しようとすればアリカやレインの魔術。マカライト、そして武蔵の砲撃が至る。
「こいつで終わりだな――ったく。結局屋敷もあちこちぶっ壊す事になっちまったなぁ」
 そして仕舞には世界の一撃が飛来しようか。
 幻術で創造した武器に力が宿る。それを投擲すれば呪いが振りまかれて。
 直後には収束する神秘的破壊力をも追撃させて――警備兵を打ちのめそう。
 ……だが。警備兵が全て動かなくなった後の光景を見てみれば凄いものだ。
 魔術や砲撃の跡によってあちこちボロボロ。コレ結局襲撃依頼だったのでは……!?

『やしきごと
 つぶしてみたり
 したものの
 ほんとにこれで 
 いいのだろうか』

 せかい、こころの一句。
 いいのだ。これで依頼主からのオーダーは達成された――後は証拠品をもって退くのみ。
 だ、が。
「ふむ……領地経営の跡も杜撰ですね……しかし記録を遡ると過去はまだマトモだった形跡もあります……途中から何か妙におかしくなっていますね。このタイミングでナハッター卿自身は死亡して、何者かに成り代わられているのでは……? それこそ邪教団の……」
 リースリットは書斎を漁りてこの領地の事を調べるものだ。
 さすれば記録上、明らかにおかしくなった辺りが見て取れる……
 もしやここから文字通りに人が変わったのではないかと――推察するものだ。
 それ以上の証拠は何もない、が……
「……とにかく後は警備兵の死体を片していきましょう。
 残していてはまた無関係な者にバレるかもしれませんし、ね」
「そうだなぁ、取りこぼしがないかだけ最終確認しておくか」
「大丈夫だろうが――万一の可能性も潰しておくべき、だな」
 ともあれと、脱出の準備も進めよう。
 最後に警備兵の死体も確認。マカライトやウェールも加わりて念入りに、だ。
 ウェールは一度、場をぐるりと見て回ろう。
 ――あぁなんとも、懐かしい光景だ、と。
 かつての世界の事が瞼の裏に映し出されて……
「さ……早く帰ろ……もうそろそろ出ないと、今度は一目につくかも……」
 そしてレインの一言を皮切りに、本格的に屋敷の外へ。
 その時、レインの脳裏に一つのシーンが映るものだ――
 お金持ちの屋敷から脱出する時、練達で見た怪盗のヤツはお決まりの脱出ムーヴがある。
 去り際にやりたいけど。
「……うう。我慢……」
 奥歯を噛みしめながら我慢我慢。
 屋敷を後にしよう。あぁ予定とは色々狂ったが……
「過ぎたことをいつまでも嘆いていても仕方ないしな……!」
 武蔵は想う。何事もポジティブに考えるのが、きっと一番いいのだから。

成否

成功

MVP

ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼

状態異常

なし

あとがき

 依頼お疲れさまでしたイレギュラーズ!
 不測の事態。ありはしたものの流石イレギュラーズ、見事壊滅させましたね……!!
 多くの非戦も活用されて素晴らしい行動でした。MVPは殲滅に捜索にと数多の活用をされていた貴方に。

 では、ありがとうございました!

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