シナリオ詳細
戦火よ過去へ帰れ
オープニング
●忘れ得ぬ戦争
戦争を忘れ得ぬ人々がいる。
戦いの傷に今も苦しむ者。恐怖に苛まれ続ける者。攻撃性にとらわれた者。
それはなにも、生者だけのものではない。
ここ幻想鉄帝間にひろがる古戦場跡地にて。
過ぎ去りし者たちの戦争が、今もなお続いている。
鳴り響く角笛。
雄叫びを上げて叫ぶ槍兵の列。
重装歩兵が剣をもち突き進み、弓を掲げる兵の波。
騎馬が大地を踏みならし、双方の兵が入り交じる。
衝突と交差。破壊と衝撃。広がる畏怖と、打ち消す鼓舞。
旧幻想側および旧鉄帝側の兵力は互角の100対100。
前線歩兵のつぶし合いでラインを確保した弓兵たちが天に矢を降らせ、盾を翳す騎馬兵が歩兵たちを蹴散らして進む。
次々と残虐に殺す強兵の姿に畏怖する敵。その背を押すべく鼓舞する音楽兵。
支援部隊を潰すべく放物線を描くように魔法部隊が長射程魔法を次々と唱え、指揮官の号令に銃士が列を組む。
戦争は互いの兵をつぶし合い、やがて両者撤退の声を上げ。
……そして、全ての兵がかすみのごとく消え去った。
「こんな光景が、もう何十年も続いている。最近は頻度もましてきている。奴らがなにか分かるかね」
皺の多い老人が、戦場を見下ろす高台で振り返った。
「戦場の記憶。闘争の亡霊。呼び名は様々あるが……わしらはこう呼んでいる。『忘れ得ぬ戦争』と」
●戦火よ過去へ帰れ
『忘れ得ぬ戦争』。
それは戦場に縛られた亡霊たちによる終わらない戦争劇である。
内容はその時々によって細かい違いはあるものの、両者100の兵力がぶつかり合い、激しく消耗しあったところで撤退をする。
次の時にはリセットされ、編成も変化し、また同じように消耗し合って撤退する戦いを繰り返すのだという。
「これは過去の感傷だ」
所変わって戦場を見下ろせる高台より。
依頼人である幻想貴族フェニーチェ氏は語った。
「もう終わった戦争を、いつまでも繰り返しているなど、悲しいことではないか」
安全に止める方法はただひとつ。
「100対100の均衡を崩し、両者撤退の結末を変えるのだ。
諸君らには、これを渡しておこう」
立派なエンブレムのついた腕章。それが8つ。
「これを装着すれば、亡霊たちは諸君らを幻想側の指揮官と認め指揮に従うだろう。
亡霊たちを指揮し、共に戦い、この戦争を終わらせてやってくれ。
もう、互いに誰も憎んでなどいないのだ。少なくとも、この戦場にいた者たちはな」
- 戦火よ過去へ帰れ完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年10月16日 21時35分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●戦争を忘れ得ぬ人々がいる
望む望まざるに関わらず、争いは傷跡を残す。
幻想鉄帝間でずっとずっと前に行なわれた戦争が、今も尚傷跡を残し、亡霊たちは絶えず徴兵され続けていた。
「戦いがね、好きならいいのよ。永遠に好きな事が出来るなんて素敵よね」
『芋掘りマスター』六車・焔珠(p3p002320)が既に荒野となりはてた戦場を見つめていた。
「でも、望んでいないのにいつまでも戦い続けているのなら……こんなに悲しい事は無いわ。自分達で終わられないなら、終わらせてあげる。これが最期よ。気合入れていきましょう!」
剣をとり、鬼の姫が行く。
悪魔の女、『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)はをの様子を見て、後へ続いて歩き始めた。
「たしかに、終わらない戦争は何とも素敵なものに見えるけど……惰性で続けるのはよろしくない。ここらで盛大な幕引きと行こう」
最後の舞台を皆で目一杯楽しめるようにね。
そう言って、マルベートは巨大なナイフとフォークを地面から抜いた。
岩の上に座ってゆっくりと足をばたつかせる『緋焔纏う幼狐』焔宮 鳴(p3p000246)。
「過去に囚われたまま戦い続ける亡霊達……いつまでも過去の戦争を繰り返すのは悲しい事なの」
ぴょんと地面に下りたって、魔力を渦巻くように集め始める。
「その魂に安らぎを……この輪廻を今日、鳴達が止めてみせるの!」
「同意した。行こう」
繭にでもくるまるようにして自らの髪に包まれていた『神話殺しの御伽噺』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)、包装を開放して鳴と共に歩き始める。
向かうは戦場。
亡霊たちのとらわれた戦場。
戦争を忘れるための、戦争をするのだ。
『自称、あくまで本の虫』赤羽・大地(p3p004151)は腕を組み、亡霊の列を見ていた。
(死して尚、戦場に身を置くのか。……俺としては死んでまで戦うのは、ごめんだけど。……まあ、俺も一度殺されてるようなもんか)
首の傷を撫でて、大地は死者の列へと加わっていく。
「マ、何にせヨ、死者を率いる能力なラ、俺もそれなり以上に持ち合わせてるからナ」
同じく死者の列へと加わった『高貴なる紅』アミュレッタ・ズィルバー(p3p006652)が、武器を装着して先頭に立つ。
「さて、終わらぬ戦いに終止符を打つとするかの!」
振り返ってみれば、漆黒の駿馬に跨がった『黒耀の鴉』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)がこっくりと頷いた。
「死しても尚戦い続けるとはなんと天晴な武士達でござろう……されど夢はそろそろ覚めた方が宜しかろう。最後の戦、勝手ながら助太刀させて頂くでござる!」
駆けてゆく仲間たちを見送り、『特異運命座標』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)もまた自らの率いるべき亡霊たちへを振り返る。
「終わらない夢……か。どうせ見るなら楽しい夢にすればいいのにね。それだけ心に強く残っているって事なのかな……何とか、良い終わりが出来るように頑張るとしよう」
彼らが最後に見る夢が、少しでも幸せでありますように。
ウィリアムは祈るように呟いて、騎馬兵の馬へと相乗りした。
蹄がやがて形を成し、足跡が増えてゆく。
数えるほどの足跡はやがて軍靴の群れとなり、けたたましい足音とともに百の兵団が現われた。
亡霊兵団。とらわれし戦火の記憶。
戦う理由も、自分の名前も、疲弊したことすらも忘れ、ただただ渦巻く風のように戦い続ける亡霊たちである。
●戦の笛は今日も鳴る
雄々しい角笛の音。同じく戦場にとらわれた鉄帝の亡霊たちが騎馬を走らせ砲兵たちを率いはるか先より突撃を仕掛けてくる。
攻撃可能距離はまだ先だ。
鳴は自らの周囲に緋色の炎を無数に浮かべると、全軍の誰よりも先頭をきって走り出した。
「戦場に集いし勇士達! 今ここでその覚悟を見せるのっ!」
翼の如く広げた両腕。
将に続けとばかりに弓矢を持って走る幻想魔弾部隊。
ねじりのばすように生み出した鳴の炎は槍となり、大胆な遠投フォームによって敵軍へと投擲される。
続いて空に放たれる魔術火矢の群れ。
これは憎しみによる戦争ではない。
もはや理由すら忘れた、過去に捕らわれ死魂たちの戦争だ。鉄帝の亡霊兵たちもまたとらわれた魂。その連鎖を断ち切るための、第一投であった。
「これを最後の戦争にする。全力で、私に続け!」
翼を大きく広げ、巨大なナイフとフォークを天に掲げてみせるマルベート。
ごちゃまぜに武器を装備した兵士たちを引き連れて、屈強な鉄帝兵の中へと飛び込んでいく。
兵士の圧力を自身に集めたマルベートは悪魔の呼び声を放ち、周囲の兵から本能を呼び覚ます。
前線の兵は衝突を始め、無数の武器がぶつかりあう音と鎧の兵が打ち払われる音があちこちに響いた。戦場のどこか不規則でどこか秩序だった音楽である。
10単位100規模の集団戦闘において自らに注意を引きつけることは直接死につながるが、それができるマルベートの器にこそ兵たちは付き従い、彼女を襲う弾丸や兵の波を押しのけていった。
マルベートを中心とした巨人の如く鉄帝の兵たちをかき分けていく。
惰性で続く戦争のなか統率のなんたるかすら忘れた相手の亡霊兵たちは、マルベートや鳴たちの生命力あふれる突撃に戸惑った。
「さあ、行きましょう。血華咲き乱れる大舞台よ!」
焔珠は柄だけの日本刀をふたつ握り込むと、青い鬼火を放射。炎を固めて野太刀のごとく得物とすると、敵陣めがけて突撃を仕掛けた。
飛び込んで前線最中央をおさえていたマルベート及び鳴の部隊が焔珠の気配を察して兵を左右に切り分ける。
焔珠を先頭にした鬼のごとき全身鎧。六車重装歩兵団が海を割るが如く敵陣へと斬りかかる。
「見なさいっ――」
跳躍し大上段から叩き付けた二本の炎刀は巨大な炎の波となり、鉄帝の兵たちを貫くように伸びていく。
マルベートが集め鳴が追い込んだがために兵は密度を増し、炎に巻き込まれる鉄帝兵もまた多量。
「マリアたちも続くぞ」
「騎馬隊、前へ」
エクスマリアとウィリアムが馬を揃えた騎兵隊を引き連れ、敵前衛中央部へ集中するように飛び込んでいく。
エクスマリアは馬上で髪を結い上げ、戦車の大砲がごとく整形すると、中央に業の力を集中させた。
戦車は突き進み、退くも進むも迷っていた鉄帝兵の斜め右方向より激突。撃鉄で雷管をうつがごとく、至近距離からエネルギーを放射した。
一方で霊樹の軽鎧に身を包んだ魔術騎兵をしたがえたウィリアムは魔導書をめくりライトニングのページを検索。天に打ち上げた雷の塊を、前線中央の鉄帝兵へ左斜め側から叩き付け放射した。
そう。三本の矢が三方向から貫くように、前線の兵たちを薙ぎ払っていったのだ。
大きく隙間を空けた形となった前線の兵に、大量の爆弾と魔術矢が放り込まれる。
「一撃離脱だ。即時退け!」
「この編成が矢面に立ったら危険だからね……!」
エクスマリアたちは馬を返し、マルベートや焔珠たちの兵と前後を入れ替える。
本来ならその隙を逃さず食らいつくところだが、惰性の戦争を続けていた亡霊たちにその余裕は生まれなかった。
いや、戸惑っているのかもしれない。
終わらせることにすら飽いた彼らの諦観を、美しくも衝撃的な大砲の音が打ち砕いたのだ。
どこか呆然とする鉄帝兵たちに、漆黒の馬が飛び込んでいく。
馬上にて忍者刀を握るはしのび装束の咲耶。
それに続くは武者鎧の紅牙騎馬兵団である。
攻撃防御整った、団単独での戦闘を想定したバランスのよい編成の中心にあるのは巧みに愛馬を操る咲耶の姿である。
咲耶は変形刀を素早く組み替え槍とすると、呆然とする右翼側の鉄帝兵を殴り飛ばした。
回転しながら飛んでいく鉄帝の前線歩兵。
その姿を見てようやくにして危機感を得たのか、鉄帝の亡霊たちは声を上げてぶつかっていく。
「貴殿等にとっては最後の戦。悔いの無き様、必ず勝利するでござるよ!」
全てを諦めロボットのように戦闘を繰り返していた幻想の亡霊兵たちの顔にも、どこか生気が宿ったように見える。
戦いに意味を見いだし、終わりを見たとき、それを希望ととらえたのやもしれぬ。
アミュレッタが大きな旗を振り回し、大声で唱える。
「総員突撃! 声に出してさけぶのじゃ、ヒャッハー!」
「「ヒャッハー!」」
トゲだらけのプレートメイル。ジャギジャギしたヘルメットから威嚇のごとくモヒカンを露出させた屈強な幻想スラム兵たちが左翼側から突撃していく。
「ばり重い鎧でばり重い武器を振り回せば大体の奴は吹き飛ばせるはずじゃ! おそれずゆけー! じゃろ! ゴールドモヒカン!」
「ヴォウ!」
ジャギジャギした黄金ヘルメットの副隊長(?)が黄金のハルバートを振り回し、アミュレッタに襲いかかろうとする兵をなぎ倒していく。
「死霊術師の本懐、見せてやろうカ」
その後に続いたのは大地の率いる魔法部隊だ。
正確な二列の陣形を組み、マジックライフルを構える兵隊たち。
『放て』という大地の号令に伴って、前列の魔術砲兵が一斉発砲。
再びの号令によって屈み手早くリロード。その間に後列が立ち上がり『放て』の号令で一斉砲撃を仕掛けた。
押し返そうとする鉄帝兵の軍勢を水で流すように払ってゆく。
「ほう……」
兵たちの表情をみて、大地は唇の片端だけを釣り上げた。
何かを思い出すように。生きていたことを知るように。
亡霊たちは歓喜の中で、戦っていた。
怠惰と忘却の戦争はいま、歓喜と希望の戦争へと変わりつつあるのだ。
●ヴァルハラに杯をもて
「撃てっ――!」
大群を前に立ち上がるエクスマリア。
ただ立ち上がっただけではない。自らの髪を長く太くバネのように伸ばすと、六つ足の蜘蛛のごとく軍勢を見下ろす位置へと立ち上がる。
両腕に纏わせるように作った魔術レーザーガンを乱射し、敵後衛を攻撃していく。
魔術弾を撃ち尽くしたエクスマリアは髪の脚をといて自軍後衛へ移ると、今度は遊撃部隊に一斉攻撃を命じた。
「征くぞ。マリアの兵、マリアの手足達。マリアの為に撃鉄を落とし、マリアの為に引鉄を引け。一糸乱れず、マリアの意志のまま、喰らい尽くせ。報酬に、数十年越しの勝利の美酒を味あわせよう」
「「応!!」」
生気に充ち満ちた兵たちはマリア様の名の下にと叫びながら大砲を放ち、敵兵を次々と吹き飛ばしていく。
だが生気に満ちたるは幻想の兵ばかりではない。
鉄帝側の亡霊たちもまた、自らの闘争に終止符が打たれることを想って獣のごとき咆哮をあげていた。
古代兵器で武装した軍事国家。それが鉄帝。闘争によって政治が決まり決闘によって王を決めるその姿勢は、長き惰性の戦争の中で喪われていた。だが今――、今にして――。
「ヒーラー隊、援護を頼むよ」
ウィリアムがありったけのエーテルガトリングを乱射すると、将軍首を取ろうと猛烈に飛びかかってくる鉄帝兵を一時薙ぎ払い。それでも食らいついてくる兵たちをヒーラー部隊のカウンターヒール弾幕で押し返した。
「ここからは指揮に集中するね。忙しいと思うけど、頑張ろう……!」
こちらの兵もだいぶ減ってきた。鉄帝の兵がその本分を思い出したかのように猛り、幻想の整った兵隊たちを打ち砕いてくるようになったのだ。
しかし初撃にて得た有利は未だ覆らず。
ウィリアムはエクスマリア隊と合流して兵力を整えると、さらなる攻撃のために前進していく。
洗練された格闘技が肉体のシステムとシステムの勝負になるように、大規模集団戦は無形の魔物と魔物による戦いだ。
魔物がもつシステムを上手に使いこなし、相手の魔物を食い破ったほうが勝つ。
「なんてラブリーな日だ!」
「「ヒャッハー!」」
「「ヒャーッハー!」」
「うわうるっさい!」
アミュレッタは耳を塞いで大声をあげた。
鉄を纏った肉の団は暴れ牛のごとく突撃し、同じく屈強なゴリラめいた鉄帝兵をぼこぼこ殴り合っている。
「ええい、とにかく突っ込むのじゃ! こういうときは考えずに突っ込んだ方が勝つ! あとは頭のいい奴に任せろ!」
「「ヒャッハー!」」
巨大な猛牛どうしが正面衝突するような状況。
ここでいう頭のいい奴とは、後衛から援護する大地の軍勢であった。
「楽しそうに戦って……もう暫く付き合ってやろうカ」
大地は残留した霊魂のかけらを寄り集めて爆弾とすると、鉄帝兵士たちめがけて解き放つ。
これはあくまで目印。大地の本領は周囲を囲む兵士たちにあった。
兵たちはまるで巨大な戦車のごとく隊列を組み、大砲のごとく集中砲火を続けていく。
一人の銃撃はたかがしれていても、それが統率された十の銃撃であれば兵を即死に至らしめることも可能。
大地は巨大な戦車の頭脳となり、兵をひとりまたひとりを破壊していく。
むろんこちらの兵とて無事ではないが……。
「恐れるなかれ! 死して尚戦うその魂、拙者が胸に刻んで持ち帰ろうぞ!」
忍者刀を鉄砲に変形させた咲耶が、鉄帝兵めがけ乱射しながら馬で突っ込んでいく。
左右を固める騎馬兵たちもまた同じように武器をとり突撃。馬をきられた兵が転げ落ちるも、とどめを刺そうと斧を振りかざす兵を仲間の刀が打ち払った。
統率された10人は、ただの10人とは決定的に違う。
良き腕良き足良き頭脳もバラバラに置かれては虫のように這いずることしかできない。だが互いが結束し補い合い、心と血を通わせながらひとつの目的に向かって動くとき、それは良き人となるのだ。
「ふふ、拙者も楽しくなってきたでござる!」
「その手に勝利の栄光を! 貴方達の『友を、愛する人を守るため戦う意志』こそ、最強の武器なの! 最後まで諦めず戦い続けるのっ!」
拳を振り上げ狐火を集める鳴。
「皆で一緒に勝つわよ! そして、ちゃんとあの世に送ってあげる!」
炎刀を突き上げ、鬼火を集める焔珠。
ギリギリで温存していた二人の炎が合わさり、ふくれあがり、巨大な炎の獣となって鉄帝の兵たちを食いちぎっていく。
それをまるで喜ぶかのように、次なる兵がすぐに押し寄せる。
きたる波とて恐れるなかれ。焔珠は剣を鳴は手刀をそれぞれ構え、大群へと飛びかかる。
同時に彼女たちに付き従った兵たちもまた、武器を手に飛びかかっていく。
兵たちの数はもはや半数をきり、指揮官である鳴たちをのぞけばそれぞれの部隊は数えるほどしか残っていない。
だがそれでも、燃え上がるようにぶつかっていく。
「これぞ――生命!」
マルベートは舌なめずりをして笑った。
巨大ナイフで兵を薙ぎ、巨大ナイフで兵を穿ち、山と積み上げた兵の上へと駆け上がるマルベート。
負傷した兵たちが笑いながら後を追い、軍旗を掲げて歌った。
「死して尚、本能と激情の全てを曝け出して獣の如く猛り狂い、想いの最後の一片まで消化しつくそうじゃないか! それでこそ、それでこそ、それでこそ
……!」
過去にけじめのつくものぞ。
戦士の咆哮が、天へとこだまする。
●かくして兵は天へ征き
戦争は、まるでパーティのように終わった。
最後の一兵となるまで戦い、食らいつくし、鉄帝の指揮官であったらしい亡霊は呵々大笑のうちに倒れた。
ほとんどの兵が消え去った戦場で、少なからぬ怪我をおったイレギュラーズたちは顔を見合わせる。
ふと、あちこちから蛍めいた光がわきあがった。
うっすらとすけた兵士たちが立ち上がり、鉄帝の兵も幻想の兵も分け隔て無く手を取り合い、笑って互いをたたえ合っていた。
兵士たちの笑顔が自分にもむいたことを知り、大地は瞑目する。
「死んだ後に笑えるなら、幸せサ」
エクスマリアが兵士たちに酒をふりまいてやる。
「良い、戦働きだったぞ。ゆっくり、休むと良い」
「おやすみなさい。とっても勇敢で素敵な戦友達」
焔珠は顔をぐしぐしとぬぐってから、兵士たちと抱き合った。
騎馬兵たちに手を振り、馬の顔を撫でてやるウィリアム。
「ありがとう、お疲れ様……」
マルベートも頷き、空へ登るように消えていく兵たちを見送った。
「最後の部隊、楽しめたかな?」
「これにて見納め。達者でな、兄弟」
アミュレッタは敬礼をして、咲耶もまた同じように礼をした。
「双方最後まで見事な戦いぶり感服いたした。これぞ真の武士道、本当にお疲れ様でござる」
鳴もまた手を合わせ、兵たちに祈りを捧げる。
「長い間お疲れ様なの。ゆっくり、その魂を休めてほしいの」
消えゆく兵たちは手を振っていた。
最後まで。
成否
大成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
【脳内会議】
「今回はアツかったのでMVPを決めようと思う」
「アイテム付与は?」
「称号もいいぞ」
「まて、誰のことを言っている」
「鳴様はどうでしょう。名言の数々、かっこいい戦闘」
「それならエクスマリアを推すね。名言もかっこよさも将軍っぷりもアツかった」
「みろよ咲耶さんの駿馬。将軍ぷりはこっちのほうが――」
「大地くんのクールな将軍ぶりが最高だと私思うの」
「アミュレッタさんがいい清涼剤になってた。プレイング密度(≠文字数)も悪くないし」
「ウィリアム様のクールさと優しさが分からないなんてお前らどうかしてる」
「焔珠ちゃんのかわいさとかっこよさをもっと見ろ!」
「死ぬならこのマルベート様に喰われたい」
――議長からお言葉があります
「大成功でよかろう」
「「賛成!」」
GMコメント
【ここでおきていること】
幻想鉄帝間の戦争が、亡霊たちによっていつまでも続いています。
これを終わらせるべく、幻想側の指揮官となり戦争を終わらせましょう。
【指揮官にできること】
依頼参加PCにはそれぞれ10~15人程度の兵隊が割り当てられます。
指揮官となったPCはこれを指揮します。
が、ただ指揮するとだけ書くとプレイングが大きくブレてしまう恐れがあるので、以下のうちからスタイルを選択し、細かい方針を固めてみてください。
・兵隊種別
亡霊兵はその時々で種別が異なりますが、厳密には指揮官に依存しています。
よって、PCが参戦した時点で兵はPCの方針にそった兵隊となります。
プレイングにはどんな兵隊がよいかを書いてみてください。細かく指示を書きすぎると戦術その他がおろそかになるので、100~200字くらいを目安にしてみましょう。
(例:『剣弓癒のバランス型』『全員ヒーラー縛り』『防御に特化したタンクチーム』『木場兵だけもってこい』『全員カレーを食え』『全員暴徒装備で火を放て』『機関銃のヒャッハー集団』)
特に極端すぎるオーダーでなければ大体応えられるはずです。
一応ですが無限にトラップを仕込んだり急に敵に混ざってスパイ活動をしたりという場外戦闘的なことはできないものとさせてください。
また、兵士から指揮官が大きく離れたりすると兵の能力が激減しますのでご注意ください。
・指揮官スタイル
亡霊兵たちは個人ごとに戦闘AIが設定されておりスキルその他の行動を細かく指示する必要はありません。以下のコマンドから選択し、指揮官のスタイルとしてください。
『統率集中』:指示を送ることに集中します。PCの各種ダイス目が大きく低下しますが、その分兵のダイス目に大きなボーナスがかかります。兵への指示を沢山書きたい人向け。
『率先戦闘』:PCが率先して戦い、兵たちはそのフォローに徹します。PCのダイス目にボーナスがかかります。自力で戦うの好きな人向け。
『臨機応変』:兵に指示を出しつつ要所要所で率先する、統率と率先の中間にあたるコマンド。ダイス目はそのまま。指示を沢山出したいが自分でも沢山動きたい人向け。
【アドリブ度(高)】
兵隊のデザインや戦術行動などアドリブを要する箇所が多数存在するため、このシナリオのアドリブ度は高く設定されています。
それでもアドリブされると困るなという方はプレイングに『アドリブなし』や『アドリブNG』とお書きくだされば直接的な描写をカットできます。
逆に『アドリブ歓迎』と書いていただけたなら色々腕をふるいます。
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