＜熱砂の闇影＞月より放たれし金緑石

オープニング

●
　夏の陽射しが砂の大地を灼熱に変えている。
　じりじりと熱される夏の砂漠、イレギュラーズはそこから遠巻きにあるものを観察していた。
　視線の先、砂に覆われた丘陵にソレはいる。
　ソレは影であった。大地を黒に塗り潰す影がどこかへ向けて進んでいく。
　望遠より覗き見れば、それらは影のように黒きモノであるのがよく分かる。
　姿形はどちらかというと狼にも近そうか。
　距離も考慮して推察するに、そのサイズ感は到底『狼』程度では済まされまい。
「ザラ、あれか？」
　ラダ・ジグリ（p3p000271）はスコープ越しにソレらを見やり、隣に立つ女性へと声をかける。
「うん、あれだよ」
　双眼鏡を覗く視線をラダへと向けた女性は、左右色の違う瞳をやや険しくして頷いた。
「……見る限りアレは終焉獣だろうな」
　ただ大きな狼型の魔物、ぐらいであればラダはすぐさまそう結論付けない。
　砂漠を焼く夏の陽射しに反射もせず、逆に陽射しすら呑むかのような黒。
　それは『ただ大きな狼型の魔物』程度の話で済まされない証拠である。
「このまま進めばザラたちの故郷にぶつかるね」
　そう答えたのは天之空・ミーナ（p3p005003）である。
「うん、このままだと町がアレに呑まれてしまう。その前に、なんとかしてアレを止めないと」
「あぁ、任せろ、此処で止める」
　頷いたその時だった――影がいきなりこちらに向かって身体を向け、咆哮を上げた。
　そう、それは明らかな『こちらに気付いた』反応で。同時にソレの周囲、影が大きく広がり始めた。
　凄まじい速度でイレギュラーズへと迫ってきたそれは、思っていた通りの巨大さだった。
　影で出来た身体を震わせた巨大な獣は、犬が水を振るい落とすように身体を震わせ、ぼとぼとと新たな影を落とす。
　新たに落ちた影は、小さなそれと似た影を形成していく。

●
　記憶に新しきは紅血晶事件、或いは吸血鬼事件ともいおうか。
　ラサの裏側に生じていた月の王国、『吸血鬼（ヴァンピーア）』と呼ばれる仮想反転現象。
　イレギュラーズがそれらを解決したのは随分と最近の事だ。
「後遺症は大丈夫か？」
　勝手知ったるラサにあるローレットにて、ラダは見知った顔を見た。
「やっぱり、ラダだったね。後遺症の方は、今のところは何ともないよ」
　話しかけてきた左右異なる色の瞳をした幻想種。
　それは件の吸血鬼事件において救い出された幻想種の１人だ。
「それに、ありがとう。ポーラと一緒に故郷に帰ることができたのは君のとこのおかげだよ」
「後遺症も心配だったからな。それで、どうしてここに？」
「実は……ローレットに手を貸してほしいことがあってね」
「……ザラ！」
　そこへミーナも声をかける。
「ちょうどよかった。様子を見に行こうと思っていたんだ」
「ミーナも……２人とも、少しだけ時間はある？　２人に確かめてほしいんだ。
　少なくとも、僕は知らないんだけど……たしか、終焉獣だっけ？　そういう奴らかもしれないのが、故郷に向かってきてる」
「それなら、念のために他にも募ってからいこう。終焉獣だろうがなかろうが、危険なら排除すれば解決だから」
「……ありがとう」
　ミーナの言葉に、ザラがホッと胸を撫でおろす。
　そうして訪れた砂漠の丘陵――それこそがその影を捕捉し、捕捉されたその場所だった。

参加者 : 8 人

冒険が終了しました！　リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧（8人）

リプレイ

●
「あれからどうだとか、故郷での暮らしはとか、家族とはとか積もる話はあるけれど。
　そういうのは色々済ませて町に帰ってからだな」
「そうだね、そのためにも急いで倒さないと」
　愛銃を手に『灼けつく太陽』ラダ・ジグリ（p3p000271）が言えば、ザラがその手に魔力を抱く。
「せっかくお互い烙印からも解放されて、こうして今いられるんです。やれることはやらなくちゃ……ですね」
　そう声をかけたのは『華奢なる原石』フローラ・フローライト（p3p009875）である。
「そうだね……お互い、ひとまず元に戻れたみたいだから」
　こくりと頷くザラの瞳が左右違うのは、烙印の痕跡。
　フローラのそれは、照り付けるラサの太陽への忌避感だ。
　今感じているのも、日差しのせいなのか或いは、終焉の獣が感じさせる微弱なる呼び声のせいなのか。
「本当に元気そうで何よりだよ。妹さんともうまくやれてるみたいだし」
「おかげさまでね。それもこれも貴方のおかげだよ」
　その様子を見る『紅風』天之空・ミーナ（p3p005003）が言えばザラがそう答え、何か違和感でも覚えたように見えた。
「貴方は……何かあった？」
「……私？　私の事は良いじゃない……ほら、前を向いて」
「そう……そうだね」
　ミーナの言葉に頷き再びザラが前を向いた。
「故郷を護りたい、大変素敵な想いですね」
　ザラへとそう声をかけたのは『君の盾』水月・鏡禍（p3p008354）である。
「ありがとう……そんなに立派なものではありませんよ。ただ、降りかかる火の粉を払わないと」
「それでもですよ。砂漠のオアシスは大事なところと聞きます。なおさら壊させるわけにはいかないですよね」
「そう言ってくれるだけでも、うれしいよ」
　鏡禍の言葉にもう一度ザラがそう言って、笑みを浮かべた。
「何か知らんけどえぐい獣がぎょうさん沸いちょるのう。
　疲れるけえあんまりたいぎぃ思いさせんなや、頼むでほんま」
　ワイバーンの背中から見下ろす戦場、『解衣推食』カズラ（p3p009847）はそう息を吐くもの。
　姿形こそ獣であれ、獣と呼ぶのかさえ怪しい終焉の獣は少々数が多いとみえる。
　生きていさえいれば何とでもなる――とはいうものの、出来れば疲れるような思いはしたくない。
「そうだね、破壊なんてさせないよ……！」
　口の中に満ちるい甘やかないちご味。
　応じるままに『星月を掬うひと』フラーゴラ・トラモント（p3p008825）は鼓動を高鳴らせ脈打つ音が終焉獣の意識を絡め取る。
　聞こえざる開戦を告げる太鼓の音に誘われるようにイレギュラーズの攻勢が幕を開ける。
　それらが終わる頃、連鎖する遠吠え、掻き立てられた感情に支配されて小さな終焉の獣がフラーゴラへと走り出す。
　あまりにも遅い動きに対するフラーゴラはただ落ち着いて盾を構えれば良かった。
「普通に生活しているオアシスに終焉獣を突っ込ませるわけにはいかないね」
　真っすぐに敵を見る『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア（p3p009512）は愛杖を握り締めた。
「自由に動きたいなら私を倒してからにしてもらうよ！！　そう簡単に倒されてあげないけどね！！」
　ヴェルーリアは敵めがけて堂々と宣言を告げる。
　巨大なる黒き炎の塊、ヴォーグルの咆哮はその宣言へと応じるが如き雄叫び。
　戦場を吹く温かで柔らかな風はその宣言を後押しするように、仲間達に広がっていく。
「ザラ、あっちは頼む」
　動き出した先手、群れの動きを阻害しつつある中をラダは駆けだしていた。
　相対する刹那、背中に隠していたナイフを獣へと振り下ろす。
　脳天へと振り下ろされたナイフの軌跡が鮮烈に黒い靄をあげ、その個体がぱたりと倒れた。
　ちらりと横目にザラを見やれば、閃光を放ち足止めしているのが見えた。
「その意気だ！　後は全てこちらでやる！」
「なるべく速いと助かるよ！」
「あぁ、何の気兼ねもなくバカンス過ごしたいしな！」
　２人の会話を聞きながら、鏡禍は妖力を高めていく。
「――僕も、叶えられるように手を尽くすだけです」
　手鏡を敵の方へ向ければ、向こうからの誘いのように、ゆらゆらと薄紫色の妖気が漂っていく。
　それらは警戒を強めるマーリィヴォーグルを絡め取り、引きずるように鏡禍の方へとするすると引っ張り始めた。
「最近ちょくちょく聞くようになったな。……終焉獣とか言ったか。
　もしかして流行ってたりするのか？　なら俺も『終焉獣』回言 世界とか名乗った方がいいだろうか」
　『狂言回し』回言 世界（p3p007315）はらしく冗談を交えつつもその視線をザラへと向けた。
「俺がサポートする。暴れてくれればいい」
　そう告げた世界が創造するは魔術師の周囲を囲む強靭なる盾。
　幻術にほかならぬそれが混沌を侵蝕してザラの周囲を取り囲む盾として現実化する。
「これは……魔術、とも違う？　すごい。ありがとう、こちらもこれに恥じぬ力を見せないとだね！」
　そう答えたザラの閃光が瞬き、マーリィヴォーグルへと炸裂する。
　戦いの流れからやや離れ、ミーナは死神の鎌をくるりと振るう。
「取りこぼすわけにはいかない」
　物理的な距離からは考えられる位置取りから振るう鎌の斬撃は確かに数多の終焉獣達へと知己立っていく。
　指揮者の如きミーナの腕の動きに合わせた憐れな獣たちの恐怖の踊りは終焉獣たちに多数の傷を生みだしていく。
「直接戦うんは苦手やけど、こういうんは得意やけんね」
　葛の木で出来た木製の旗を掲げ、カズラは進みゆく仲間達の背を押すように告げる。
　それは雷の如く、風の如く翔けるための道標。
　柔らかなれど猛き加護が降りていく。

●
　圧倒的な速さで始まった開幕からの攻勢はイレギュラーズ陣営へのアドバンテーとなる。
　遠吠えが戦場に響き、弾かれたように生き残りの一部マーリィヴォーグルが駆けだした。
　その遠吠えは失ったアドバンデージを取り戻さんとする獣の咆哮である。
　動き出した獣たちはイレギュラーズを無視するように走り出す。
「こっちは私たちに任せてくれ」
　それを確かめたミーナは迂回を始めた終焉獣を無視して、武器を構えるまま敵陣を走る。
　その手に握る死神の鎌は数多の命を乱獲するが如く戦場で縦横無尽に走り回る。
　夥しい量の漆黒の炎が四散すれば、それらはきっと終焉の獣たちが血肉であろうか。
「えぇ、取りこぼさないようにしておきます」
　鏡禍が応じながら妖力に絡め取られた１体へと手鏡を向けた。
　強まる妖力に連れて、周囲に漂い始めた薄紫の霧がやがて剣の形を取り、鏡禍の声と同時に射出。
　そのままマーリィヴォーグルを貫いて黒い炎に爆散させる。
「どう動こうと、ウチの仕事は変わらんけえ……」
　カズラは戦旗を振るい続けた。
　自らの化身とでも呼ぶべき葛の木の旗が翻り、仲間達を支えんとするその意志を魔力に変えて加護を降ろす。
　それは黄昏の時を駆け抜けた英雄の物語であり、悲劇を繰り返さぬための哀歌である。
　多数の術式が戦場に煌き、至高の軍勢を作り上げる。
「逃がさない……！　行こう、フォルトゥナリアさん……！」
「ええ、フラーゴラさん！」
　刹那、フラーゴラはヴェルーリアへと手を伸ばす。
　彼女を連れて駆けだしたドレイクチャリオッツが砂塵をあげて追っていく。
　噛み締めた飴はラムネの味がした。
　冴えわたる思考、フラーゴラはそのままドレイクごと移動しつつある終焉獣へと突っ込んだ。
　そのまま盾を構え、無数に召喚した小さなハイペリオンで終焉獣を追い散らしていく。
　続くままに動いたのは当然の如くヴェルーリアである。
　流れるままに愛杖に魔力を籠めれば、その輝きをマーリィヴォーグルへと向ける。
「言ったでしょう、私を倒してからにしてもらうよって！！」
　再びその身を示して告げる守護の誓い。
　暖かな光が周囲を照らし、張り巡らされた魔力が無理矢理に意識を絡め取る。
「目移りとは感心しない奴だな」
　ラダはドレイクチャリオッツを操作しながら銃口を逃亡を図る敵へと向けた。
　放たれた弾丸が爆ぜてマーリィヴォーグルの動きをけん制する。
「ザラ嬢、大丈夫だな？」
　世界の言葉にザラが応じる声を聞けば。
「ならいい。合わせてくれ」
　世界はそのまま魔眼に魔力を注ぎこむ。
　生み出されるは幻影の剣。
　それらは一斉にマーリィヴォーグルへと降り注ぐ。
　それはザラを取り囲む幻影とは異なり、現実には非ざる幻影にすぎぬ。
　直接的な傷を与えること無き魔術はそれに嫉妬するように敵を絡め取る呪いとなる。
（いつか仮想世界でも見た終焉獣……活動的になってきたのは嫌な兆候、ですね）
　改めて終焉獣を見て、フローラはROOでのことを思い起こしていた。
　思えば、あちらでも初めに終焉獣の存在が確認されたのは天義（正義）であったか。
　ROOでの最終決戦で見た終焉の獣たちに比べれば、まだまだ雑魚の類のようだが。
「負けて、いられない……！」
　周囲を取り囲むようなタロットカードが魔力を帯びて術式を展開し、鎖状の雷が戦場へと迸る。
　それらは多数のマーリィヴォーグルを絡め取り、閃光が放たれた。

●
　炎の獣が咆哮を上げる。
　子供とも分体とも呼ぶべき小型の終焉獣は消え失せた。
　戦いは少しずつ、終息に向けた傾きを見せている。
　戦場に終焉の炎を巻かんと炎の獣が腕を振り上げた。
　それを返すように、戦場を美しき碧き閃光が駆け抜けた。
　炸裂するは意志の弾丸、眩いばかりの光が未来を照らすように、終焉の獣に風穴を開ける。
「あなたが狙うべきは私達です……！」
　フローラが放ったそれは、ヴォーグルへと齎された最初の痛撃であり、最期へ畳みかける第一歩である。
「ウチは戦闘じゃ足手まといかもしれんけど……やれることはあるんよ」
　それを為しえたのは、カズラの支援あってこそでもあった。
　多数の支援術式は仲間達の背を押し、形勢を確定するための戦術を築き上げるにはこれ以上に無い活躍があった。
　それは英雄譚において策を巡らせ続けた軍師たちのように。
　そうなることは決まっていたように、辿り着いた戦機であった。
「やっと無事に暮らせていけるようになるんだ、邪魔なんかさせないよ」
　咆哮上げるヴォーグル目掛け、ミーナが走る。
　死神の鎌が描いた軌跡はヴォーグルの首を下から削り落とすかのように鮮やかなる一閃を撃つ。
　鮮やかにして過酷なる閃光を受けた獣の身体から零れ落ちた黒い炎は夥しい量の血であろうか。
　落とした箇所を見据え、ミーナの追撃は続く。
　突き立てた希望の剣は渾身の魔力を帯びて内側より痛撃を刻む。
「……確実に弱ってはいるみたいだね……」
　フラーゴラは開戦時の様子と明確に異なるヴォーグルを見やりそう推察する。
　胸の鼓動は熱になり、戦場に極小の炎となって浮かび上がる。
　１つ１つは小さなそれは、吹雪の如くヴォーグルめがけて幾重も重なっていく。
　咲き乱れる炎は黒炎を纏う獣を呑みこむ美しき熱。
　その隙間を縫うようにして放たれた魔弾は、燃え盛るヴォーグルの身体へ呪いを撃ち込んだ。
　籠められた呪いが終焉の獣の動きを封じるのもそう難しい事ではない。
「後は貴方だけ……油断はしないよ！」
　ヴェルーリアはヴォーグルと真っすぐに向かい合う位置に立ち続けていた。
　齎される多くの攻撃、それらを巡らせた魔力障壁で受け止め、流し。
　屈しそうになった足を踏みしめて真っすぐに立ち続ける。
　いつかのあの時のように。
「邪魔は、させない！！」
　交わった気がした視線、返ってきた咆哮は、きっと激情のそれだった。
「想像以上に酷いな……」
　こちらに気付きもしていないヴォーグルの側面でラダは思わず額を拭うと、ナイフを手に駆けだした。
　目を開けるのも嫌になる熱を浴びながら払った一太刀、黒炎なのか靄なのかもわからぬ何かが飛び散った。
「――自分の肉が焼けようとも知るかよ！　ここで終わらせる！」
　踏み込んでもう一撃、繰り返した斬撃に滝のように汗が流れ出た。
「近づくと流石に暑いな……早めに終わりにさせてもらう」」
　ヴォーグルを見上げ、世界は視る。
　極限まで出力を上げれば、瞳に浮かび上がる茨の紋様。
　砕け散れと、そう告げる幻聴と破壊の景色を幻視して、獣が断末魔にも似た雄叫びをあげる。
　そこにある終焉の獣へと告げる呪い。
　極限にまで高められた呪いは集約され、激痛となって終焉の獣を削り落とす。

●
　戦いが終わったイレギュラーズはオアシス都市に入っていた。
「ほらザラ、お勧めの店紹介してくれよ。奢れだなんて言わないから。
　詳しい話は打ち上げしながらといこう！」
「それはいいな。何を隠そうそのために色々手助けしたんだ。案内人が居た方が色々楽が出来るだろ？」
　軽くぱたぱたと胸元を仰いだラダが言えばそれには世界も応じるものだ。
「ゆったりたっぷりのんびり……したいねえ」
　同じようにカズラもまた呟くものだ。
　生き残ったことに安堵しながらもぼんやりと呟く言葉には隠しきれぬ疲労もあろう。
「ふふ、それでしたら、いい店がありますよ」
　ザラも微笑みながらそう答え、先導するように歩き出した。
　都市の中に入り、きょろきょろと何かを確かめた彼女が進む道についていく。
「この時間帯なら……ここでしょうね」
　そう言って立ち止まった店はラサ特有の調度品を基調に落ち着いた雰囲気を醸し出している。
　案内されるままに進んだ席はテラスのようになっていた。
　ふと視線を巡らせれば、やや高台になったテラスからは小さな湖が一望できる。
　陽光に煌く湖面と、その向こうに収まる白日の美しさ、微かに流れる風は湖に冷やされて少し優しい。
「素敵な場所ですね……これは今度、大切な人と一緒に来てもいいかもしれません」
「そうしてもらえるのなら、嬉しいです」
　ぽつりと鏡禍がそう声に漏らすと、少しだけ驚いた様子を見せたザラは、そう言って微笑んだ。
「オススメの場所とかありますか？」
「この町は小さいので……そう多くはありませんが、ここもオススメではありますよ」
　その様子を見ながら鏡禍はそっと目を閉じて、想像してみた。
　美しい赤毛の彼女は、ここを後ろに立つときっと映えるのだろうなと、何となく思いながら。
「ここがワタシ達が守った場所……綺麗だね……」
　キラキラと輝く湖面と穏やかな木々、フラーゴラはその光景に小さく言葉を残す。
　遠く砂漠に消えゆくまではもう少しかかろうか、まだ白日に彩られた陽射しに煌く湖面は立ち止まる理由には十分だった。
　彼にも見せたいなと、ほんの少しばかり思う自分がいる。
「この景色なら、飲んでも食べても楽しいそう！」
　そう目を輝かせるヴェルーリアにザラは「ここは料理も美味しいよ」と微笑んで言う。
　その言葉を聞いた時、少しだけお腹が鳴いたのはバレてないと信じたい。
　ザッとメニューを見渡して、おすすめも聞いて頼んでみる。
「ここは涼しいですね……私、暑いのはちょっと苦手、だったのですが」
　そう微かな笑みと共に少しだけ力を抜いたフローラは、そのまま湖の方を見やる。
「……こうしてしっかりと生き延びて、故郷も無事に守れたなら。ええ。良かった、ですよね。ふふ」
「そうだね……それも全部、君達のおかげだよ。もう一度故郷を見られるなんて思ってなかったから」
　柔らかく頷いたザラに答えながら、やって来たドリンクで乾杯をすれば、同じようにドリングが回った所で、一同はオアシスでの小休止に息を吐く。

成否

成功

ＭＶＰ

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでしたイレギュラーズ。
お待たせしてしまい申し訳ありません。