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シナリオ詳細

<孤樹の微睡み>黒き霧のLycanthropus

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●深き森よりの救援要請
「ねえ、ちょっと助けてくれないかしら。おかしなやつが出てきてるのよ」
 ルメヴィリアはその形の良い眉尻を下げて、ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)へと問いかけた。
 それが多分、この大冒険の始まりなのだと思う。

 深緑(アルティオ=エルム)の森林迷宮に住まうハーモニア、ルメヴィリアはこのくり返される毎日を楽しんでいた。
 そんな彼女を突如襲ったのが、ラスト・ラストから出現したという『終焉獣』である。
 名は、『ライカンスローパス』。
 想像して欲しい。森の中を黒い霧となって駆け抜けるおぞましい群衆を。
 それらが森を抜けた途端にそれぞれが集合し、闇を纏った人狼の如き姿へと変わるのだ。
 彼らは鋭い牙と爪を駆使し、目につく人間へ片っ端から襲いかかる。
 まるで獰猛な獣そのもののように。
 このようにして現れたライカンスローパスの群れは、外から来た人間に森林迷宮ガイドなどをして稼いでいたルメヴィリアの霊樹集落を襲撃した。
「幸い、集落の自衛戦力があったから観光客に怪我人を出すことはなかったけれど……兵がだいぶやられてしまったわ。このままじゃ観光業が続けられないわ」
 深緑のハーモニアにしてはだいぶ族っぽい考え方だ。が、それも無理からぬことである。
 なにせこのルメヴィリアは、ヴェルミリオが運営するファントムランドなるテーマパークのヘビーユーザーなのだ。深緑幻想間というだいぶ無理のある距離を何度も旅しながら通うという生活はかなりのお金を必要とし、結果として毎日を忙しく働く女性へと変化していったのである。
 遊ぶために働く、などというと、もしかしたら深緑っぽいのかもしれない。
 そんな彼女からの、つまりこれは討伐依頼なのである。

●ライカンローパス
「それにしてもあの終焉獣ってなんなのかしら。知ってる?」
「ふうむ、確か……」
 ヴェルミリオは手帳をぱらぱらとめくってみた。
 ローレットの関わる事件やなにかに記録があったはずだ。どこかで目にしたことがあったようななかったような。
 そんな中で見つけたのは、『終焉獣(ラグナヴァイス)』という存在のメモであった。
「ふむふむなるほど。終焉(ラスト・ラスト)から這い出てきた怪物らしいですぞ。
 奴らはいわば滅びのアークの化身。存在そのものが人類の敵なのだそうですな」
「そんなものがどうやって?」
 もっともな疑問を口にするルメヴィリア。
 言われて見ればというところだが……もし現在の世情に詳しいなら知っているかもしれない。
 これが「黒き聖女の影響である」ということを。つまりは覇竜領域でつい最近問題になった黒聖女マリアベルの介入を受け、弱い終焉獣がラスト・ラストから解き放たれたという事実を示しているということだ。
 ならば、このライカンスローパスという怪物も弱い部類に入るのだろうか……。
「ともかく、見過ごすことはできませんぞ!」
 ヴェルミリオは胸(あばら骨)をどんと叩いて勇ましく胸を張った。
 そうだ。見過ごすことはできない。
「で、お代のほうは――」
 くるりと向き直って金勘定を始めるヴェルミリオ。肩をすくめたルメヴィリアは『ちゃっかりしてるわね』と言って依頼料が入った布袋を翳してみせるのだった。

GMコメント

●シチュエーション
 深緑へと襲撃をしかけた終焉獣。それを撃退する依頼をうけたあなたは、終焉獣ライカンスローパスの群れへと戦いを挑むことになりました。

●フィールド
 ルメヴィリアの霊樹集落。
 現在は外から来た人に森林迷宮をちょっぴり案内するなどの観光業を営んでいる。
 外の人間たちにも寛容で、割と俗っぽい面もある模様。
 そんな平和な霊樹集落に、森を抜けたライカンスローパスの群れが襲撃を仕掛けています。
 民間人は避難を終えており、兵も皆さんが来た時点で撤収する予定となっています。そのため避難誘導などは必要ありません。

●エネミ-
・ライカンスローパス
 人狼のような見た目をした怪物の群れです。
 常時黒い霧のようなものを纏っており、これによってこちらの攻撃の狙いをブレさせたり、霧そのものになって攻撃を回避するといった動きをします。
 また、鋭い爪と牙を武器にして戦う様子が見られています。

 群れの中にはリーダーとなる個体がおり、これは特別に強い力を持っているようです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <孤樹の微睡み>黒き霧のLycanthropus完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年07月24日 22時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
ラムダ・アイリス(p3p008609)
血風旋華
ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)
陽気な骸骨兵
ファニー(p3p010255)

リプレイ


 広い森の中をすり抜けるように移動するカボチャ型の馬車がある。ひいているのも馬ではなく、足のない馬めいた精霊だ。
 これはルメヴィリアの集落にて運用されている森の中専用の馬車であるらしい。驚くべきことにこのサイズに八人が乗れる魔法の馬車だ。
 御者台には兵士が乗り、真剣な表情で馬精霊を操っている。
「厄介なことだ……」
 世界の危機、あるいは人類の敵ともいうべき終焉獣の出現を受けて独りごちる『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)。
 『真意の証明』クロバ・フユツキ(p3p000145)はその通りだと頷いた。
「終焉獣といえばラスト・ラスト……今の俺たちですら立ち入ることの出来ない禁断の地にすまうという怪物たちだ。それが出てきたと言うことは……」
 彼らは馬車の中で顔をつきあわせ、依頼書を開いてその内容を確認している。
「ライカンスローパス。要は狼型の終焉獣か」
 『食わず嫌いはおしまい』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)が急に目先の話に切り替えたので、クロバたちも同じように話をあわせる。
「どうやら霧散して攻撃を避けるらしいな。確かに厄介だ。しかし群れの主を落とせば全体の脅威度も落ちよう」
「それにしても、シンプルでよくまとまった資料だわ。秘書たるもの、こういう仕事も意識したほうがいいかもしれないのだわ」
 『蒼剣の秘書』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)がそんなことを呟いた。
 組織の縦割り構造ということも別にないのだろうが、観光業を営む人々と集落の防衛を任されている兵たちが協力し、避難誘導や迎撃、足止め、あるいはその伝達を細やかに行った結果、『行って倒してこい』という実にシンプルな状況に依頼が纏まったのだろう。
「僥倖だね? アレを相手にしながら住民警護とかだったらちょいと面倒なことになっていただろうしねぇ」
 『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)が馬車の窓縁に肘をかけ、片眉を上げて見せる。
 確かに? と同じように片眉を上げて見せる『猛き者の意志』ゼファー(p3p007625)。
「それにしても……七罪の数は減っているってのに、おかしなことは増えるんですから不思議なもんよねぇ」
「そうか?」
 クロバたちがふと、七罪が倒されていない世界を想像してみた。
 最近神の国がどうたらと、そういうことを考える機会が増えたせいかもしれない。
 もし七罪が倒されていなかったら、きっと『おかしなこと』ではなく『終わっていること』になっていただろう。世界は既に滅茶苦茶で、国によっては滅んでいて、まるでゾンビアポカリプスのごとく日々を生きることになったのやも。
「ぞっとしない話なのだわ」
 華蓮が首を振る。
 そんな中で、『Star[K]night』ファニー(p3p010255)は『ライカンスローパス、ねぇ……』とひとり別のことを考えている様子だった。
「何か引っかかることでも?」
 骨仲間の『陽気な骸骨兵』ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)が尋ねてみると、いやなにとファニーが肩をすくめる。
「兄弟の末っ子に人狼がいるもんだからさ、ちょっと思うところがあってな。
 何処へ行っても、狼っていうのは悪役を背負わされる運命なのかね」
「いやいや、悪い骨と良い骨がいるように、悪い狼がいるだけですぞ」
「悪い骨って」
 笑うファニー。カタカタと顎を鳴らしてみせるヴェルミリオ。
「おっと、そろそろ到着するようですな」
 窓から見える風景は、戦う兵士たちの姿。
 とまる馬車の扉を開き、ヴェルミリオたちは素早く外へと飛び出していくのだった。


「ガイドさんに従わず迷惑行為を行うなど……まったく遺憾ですぞ!」
 真っ先に飛び出したヴェルミリオがそう叫ぶと、無骨な剣を革の鞘から引き抜いた。
「迷惑な“お客様”はご退場いただかねばなりませんな。ルメヴィリア殿の“夢”の果て、この素晴らしき日常を脅かした償いはしていただきますぞ」
「あんたは――ヴェルミリオさんか!」
 兵士の一人が振り返る。
「助かった、そろそろキツくなってきた頃なんだ。交代を頼めるかい」
「勿論!」
 堂々と胸(あばら骨)を張って見せると、兵士の男は『退却!』と叫んで仲間たちと共に撤退していく。
 対するライカンスローパスたちはというと、新たな存在がどういうものかと警戒の様子を見せている。
 ヴェルミリオはびしりと剣を突きつけた。
「いかなる場所でも、ガイドさんの指示に従いルールと礼節を守ってお楽しみいただくのがお客様の流儀。スケさんとのお約束を骨身に染みるほど覚えてお還りくださいませ!」
 ……などと、単に見栄を切っているわけではない。
 ヴェルミリオたちはライカンスローパスの集団の中で群れのボスにあたる個体を探そうとしているのだ。
 見た目の違いは……今のところない。優先して狙われることを避けて群れに紛れているというところだろうか。
「なら、あぶり出すまでだ」
「滅びを齎す存在が無断で踏み入れたこと、その身を以て贖ってもらおう!」
 ラムダとクロバがそれぞれ前に出る。
 初撃を放ったのはクロバだった。
 『死炎銃刀・黒刃』。つまりは漆黒の大型ガンブレードを二刀流フォームに分離させ、敵集団へと飛び込んだ。
 ライカンスローパスは霧の人狼だ。クロバの狙いをブレさせるべく姿を僅かにかすませ、爪によるカウンターを狙って構える。
 が、その程度のごまかしでクロバを出し抜けるはずはない。何せ歴戦の戦士なのだ。
「そこだ」
 集団の間を稲妻のように駆け抜けるクロバ。それによってライカンスローパスは次々に切り裂かれ、黒いしぶきのようなものをあげる。血の代わりに霧が廻っているとでもいうのか、その姿は霧が溢れたようにも見える。
「手応えは……同じか、今の中にはいないな」
「次はこっちだ」
 ラムダは魔導機刀『八葉蓮華』。魔力収斂圧縮加速機構が組み込まれた鞘と機械刀の魔導兵器をつかみ取ると、服の下に隠された軽装甲外骨格にエネルギーを流し込んだ。
 キィンという僅かな音と共に弾丸のごとく飛び出したラムダがライカンスローパスの一体を切り裂く。防御にと翳されていた腕が切り落とされ、ライカンスローパスは飛び退きながらグルルと唸った。その身体を霧に変える。
「早速、か」
 マニエラは霧になったライカンスローパスが自らの背後に現れるのを直感し、鋭い後ろ回し蹴りを繰り出した。
 片腕で防御し、またも飛び退くライカンスローパス。
「綺麗な顔した肉食獣ならこちらにもいるが、世界を殺す獣は流石にな」
 などと呟きながら治癒の魔法を使えるように構えるマニエラ。
 今の攻撃の鋭さからして、これもボス個体ではないだろう。
「だったら!」
 サイズが『氷棺人形』の魔術を発動させ、氷の棺を体に纏う。更に砲口のついたユニットを鎌に接続。『用途不明のユニットが接続されました、直ちに使用を中止してください』という警告音声が流れるがそれを無視してライカンスローパスへとぶっ放した。
 砲撃――が、切り裂かれる。それ以外のライカンスローパスは直撃を受けていたにもかかわらず、一体だけが。
「かくれんぼは終わり?」
 ここぞとばかりにゼファーがそのライカンスローパスへと飛び込んでいった。
 槍の突撃を身体を霧にかえることで回避したライカンスローパス。すぐに身体を元に戻してゼファーの槍を掴もうとするが、あっさりと槍を手放したゼファーはライカンスローパスめがけてパンチのラッシュを浴びせた。
 武器をすぐに手放すと思っていなかったのだろう。ライカンスローパスはゼファーから飛びのき、爪を構える。落ちた槍を足で器用に蹴り上げてキャッチすると、ゼファーは仲間とそのライカンスローパスの間を割るように立ち塞がった。
「ボスは見つかったみたいよ。そっちは頼める?」
「勿論なのだわ」
 華蓮はクロバを狙ったライカンスローパスの爪撃を魔法の弓で払いのけるように庇うと、至近距離から弓をひいた。
 遠距離武器だからと舐めてかかればどうなるか。発射された矢が至近距離で突き刺さり、機械のように次の矢を抜いた華蓮が直接ライカンスローパスに二発目の矢を突き立てるのだ。
「あなたの爪や牙なんて、そう当たりはしないものなのだわよ」
 ちらりと見ると、ヴェルミリオとファニーがライカンスローパスを相手に二人がかりで格闘している。
 ヴェルミリオの繰り出す剣と爪が幾度もぶつかり、火花をあげているようだ。
 その隙を突く形でファニーの拳に青白い光が纏う。
「オレは接近戦が得意じゃないんでな。その位置取りで頼むぜ」
 拳を振り抜くファニー。すると流れ星のごとく青い光りが走り、ライカンスローパスへと直撃。もえあがる炎がライカンスローパスを爆散させた。

 サイズの砲撃やゼファーの打撃を加えても、ライカンスローパスはそれをことごとく回避していく。
 最後の一体となったにも関わらず、その一体が倒しきれないという歯がゆい状況が続いていた。
「こちらは片付きましたぞ!」
「加勢させてもらう。というより、もう全員で包囲してるような状況だがな」
 ヴェルミリオやファニーが西側から、東側からはクロバとラムダがそれぞれ包囲する。華蓮とマニエラはヒーラーとして彼らの後ろに陣取るという挟み撃ち陣形だ。
 が、対するライカンスローパスはというと焦った様子をまるで見せない。包囲されたという意識も、どうやら薄いようだ。
 なぜなら。
「あらあら……」
 ゼファーが目を細め、ライカンスローパスが素早く霧に変わるのを見た。霧は薄く広く展開し、仲間たち全員を覆ってしまうほどに範囲を広げている。
 このうちのどこから襲撃を仕掛けてくるかわからない以上。包囲されているのはむしろこちら側だということになるだろう。
 ゼファーはそっとマニエラの側に近寄り、華蓮はクロバのそばに、そしてヴェルミリオはファニーと背中合わせになって立つ。防御の薄い仲間を庇う位置取りだ。
 こちらからの攻撃がそれだけ薄くなるが、相手が『手を出してくれさえすれば』反撃ができるのだ。守りに徹するのは悪い判断ではないだろう。
 黒く薄い霧の中から、グルル――グルル――と狼のうなり声がうっすらと聞こえてくる。
 誰が狙われる? どこから来る? 最初は? そう誰もが考えた、そんな中――。
「――!」
 霧の中から爪をはやした腕が伸びヴェルミリオを襲う。
「最初にこのスケさんを狙うとはお目が高――おっと!?」
 否、である。
 霧の中から腕は数本のび、それぞれがサイズ、華蓮、ゼファー、ラムダを同時に狙って襲いかかったのだ。
 幸い防御の硬い彼女たちのこと、紙一重で回避し反撃に出る。
 サイズは自らを覆う氷の棺での防御をかけると、黒顎魔王を発動。
 ぶち抜いてやるさとばかりに力を解き放つ。
「大丈夫、大樹ファルカウの精に誓って俺は俺の責務を果たすよ。だから信じて守らせてくれ」
 クロバはここにはいないファルカウの民に向けて誓いのように言葉を紡ぐと、ガンブレードによる斬撃を放った。
 ライカンスローパスの腕が切り飛ばされ、空中で霧にかえる。
 どうやら霧を操作して腕を何本にも増やせるというワケらしいが、攻撃してしまえばこの通りだ。
 マニエラはかすったとは言えダメージを受けた仲間に治癒の力を飛ばすと、華蓮にバトンタッチ。
「逃がさないのだわっ」
 華蓮は屈んだような姿勢から弓を水平に構えると、中距離向けの射撃によってライカンスローパスの腕を貫いた。
 パッと霧にかえる二本目の腕。
 三本目はどうするのかと見ていれば、ゼファーがおもむろに槍を突き出して貫き、視線でラムダに合図を送る。
 ラムダは小声でオーケーと呟くと、ライカンスローパスの腕を黒刀によって切り落とした。
 そこでやっと、ギャッという悲鳴にもにた声がした。
「本体か――!」
 ラムダが振り向き、剣でそのさきを示す。
 ヴェルミリオは思い切りタックルを叩き込み、霧の中に『紛れて』いた半透明なライカンスローパスを押し倒した。
「今ですぞ!」
 ファニーが手を突き出す。獣の頭蓋骨めいたものが召喚され、真っ白な光線を放射。直前で飛び退いたヴェルミリオの一方で、ライカンスローパスへ光線が直撃した。
 ぶくっと一瞬だけ膨らんだかと思うと、爆ぜるようにして消えるライカンスローパス。
「霧になって回避するというわりには攻撃方法が単純だと思ったけど……霧を出して中に紛れていた、幻術使いのモンスターだったんだね」
 ラムダが肩をすくめ、刀を鞘に収める。
「しかし、よくあそこでタックルできたな。外すとは思わなかったのか?」
 ファニーが尋ねると、ヴェルミリオは耳(頭蓋骨)をこんこんと叩いて見せた。
「草を踏む僅かな音がしたのですぞ。最初は仲間の足音かと思っておりましたが、ラムダ殿が示してくれたおかげでハッキリとわかったのですぞ!」
「全く……犬は好きだけど、可愛くないじゃれつきかただったわねえ」
 ゼファーがやれやれといった様子で首を振る。
 サイズはといえば、地面にかがみ込んでライカンスローパスの残骸でもないか確かめているようだ。全ての個体が爆散しているので血を採取するので精一杯だが、それでもなにかしら調べられるというのだろう。
「これで……ルメヴィリアの霊樹集落は安全になったのか」
 クロバが呟くと、それに答えるように女性の声がした。
「お疲れ様。期待通りにやっつけてくれたみたいね」
 振り返ると、ルメヴィリアだ。
 しゃれっ気のある日傘を差した金髪のハーモニア。旅慣れたような足取りで近づいてくると、戦闘が終わったことを空気で察した様子でまわりを見回している。
「こんなところまで来て大丈夫なのか?」
 マニエラが問いかけると、ルメヴィリアはくすりと笑う。
「もう安全なのでしょう? 貴方たちがそう判断したのなら、そういうことだわ」
「信頼されたものなのだわ……」
 そこまで頼られては悪い気はしないな、と華蓮も苦笑する。
「けど、さすがに今日はこのまま観光案内を続けるってわけにもいかないのよねえ……どうかしら、暇になってしまったし、観光気分を味わってみない?」
 ルメヴィリアがはファニーたちの顔ぶれを見てそんな提案をしてきた。
「おぉ~! テーマパークの案内はしておりましたが、案内をしてもらう側になれるとは!」
 ヴェルミリオが間隙したという様子で手をぱちぱち叩く。
「是非お願いしたいですな~! 皆様もどうです?」
「うーん、確かに、手ぶらで帰るより楽しそうかな」
 ラムダが肩をちょっとだけ上げ、そっちはどうするとばかりにゼファーに視線を向けた。
「そういえば森林迷宮をマトモに案内されることってあまりないのよねえ。観光客向けのサッパリしたものなら、むしろ大歓迎だわ」
「ディープなところばかり見てきたから、かえって新鮮なのだわ」
 華蓮も満足げだ。
 サイズやマニエラは少し考え中といった様子だが、クロバも小さく手を上げる。
「折角だ、お言葉に甘えることにしよう。たまには休息も必要だから、な」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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