シナリオ詳細
<孤樹の微睡み>インコラプティブル・セブンス・ホール
オープニング
●
――どいつもこいつも煩わしい。
幻想も、練達も、海洋も、豊穣も。
ラサも、深緑も、鉄帝も――どこもかしこも間違っているものだらけだ。
遂行者マスティマは自らこそが正しいと信ずる。故に苛立つ。
現状の世界に。現状の歪なる世界に。
だから塗りつぶさねばならぬ。
清らかにして正しき世の為に――あぁ己の成す事は全て正しいのだから、と。
「審判の時は近い。サマエルの率いている影の艦隊(マリグナント・フリート)も動き出したか――いよいよもってして、預言者ツロの零した言の葉が現を帯びてきた訳だ。聖女かぶれの小娘が余計な事をしてもいるようだが……」
「あら、マスティマ。またブツブツと何か思い悩んでいるのかしら?」
と、その時だ。斯様なマスティマを嘲笑うように現れたのは、同胞たる遂行者……メイ・ミディアなる者。先日、幻想での事件でも暗躍していた一人である――が。
「――メイか。丁度いい所に来たな、貴様深緑に行け」
「いきなり何言ってんの?」
「先日、冠位暴食めに手を出さんとした黒聖女の件を知っているか――?
アレの余波が訪れんとしている。『終焉獣』だ。
終焉から零れ落ちてきた異物共……深緑やラサに出没しているようでな。
ソレがなんぞや我々に影響を齎さんとも限らん。様子を見てこい」
「……終焉獣、ねぇ」
そのメイを一瞥すらせずに、マスティマはほぼ一方的に語り掛けるものだ。
彼が語るは……深緑方面へと足を延ばしている、新たなる滅びの影。
――終焉獣(ラグナヴァイス)である。
ソレは混沌の果てとも称される『終焉』の地にいる魔物の事。
外世界へは中々出てこないが、しかし。その終焉獣の動きに変化が見られていたのだ。
外へ……近隣である深緑やラサへの出没が確認されている。覇竜へ動きが見られないのは過酷な環境や竜、そして何より冠位暴食の気配を察しての事なのだろうか――まぁその辺りはとにかく。終焉獣の活動は遂行者達にとって良い、とは言えぬ事柄であった。
奴らは混乱と醜悪を撒き散らす。なにより遂行者直轄の配下ではない。
『神の国』に影響がないとも限らない訳だ――ただ。
「たしかルスト様は『存分に利用しろ』などとお告げになられたのでは?」
「その話、私は聞いてない。誰だ。またツロ辺りが広めたのか? 嘘か真か……
――まぁ利用できるならしてもいい。イレギュラーズ共の粉砕に役立つなら、なんでもな」
「はいはい。じゃあちょっと遊んでくるわ。神の国の為の準備もあるし、ね」
彼らは『傲慢』だ。
故にこそ、困った事態とは思えども我々を脅かす存在とまでは思っていない。
終焉獣を尖兵に出来るならしてやろう。共同戦線を張ってやってもいい。
故。メイは適度に連中をコントロールしてやろうと考え……た、その時。
「待て。もう一つ……折角だ、私の実験に付き合え」
「何よ」
「――『我が主の恩寵』を受け取るがいい」
マスティマはメイへと齎す。厳密には、彼女の宿す聖遺物へと。
力を。神秘を。分け与えるのだ。
彼が拳を握りしめれば、ソレより血らしきモノが滴りて。
メイの持つ指輪の聖遺物へと零れ落ちれば――微かな光が宿ろうか。
「これは?」
「聖遺物の可能性を微かに引き出しただけだ。気にするな」
「ふぅ~ん。まぁ、いいけれどね。でもやるのが血だなんて、悪趣味」
「血を舐めるな。血には神秘が宿る」
それは。他者に分け与えるのは実験的な試みではあるが、恐らく成せると彼は信じていた。
彼はかつて見たのだから。正しき者の血には――万物を凌駕する奇跡が宿ると。
見えぬ目が見えるようになったりと。
そんな奇跡の恩寵は確かにあったのだ。故に……
彼はソレを『偽・不朽たる恩寵』
『インコラプティブル・セブンス・ホール』と名付けたか。
●
深緑。その外周部に存在する迷宮森林――
その一角に巨大なる魔が迫っていた。
それは終焉獣『ディ・ラント』。巨大な馬のような存在であり……しかし意志の疎通などとんと出来ぬ完全なる魔。ソレは迷宮森林の木々を押し潰しながら深緑を闊歩せんとしていた。
狙いが何かは分からぬ。だが、その身の内からは……強大なる滅びの因子を感じる。
――世界を滅ぼせと謳っているかの如くだ。
「まさか……あんな存在が襲来するとは、な。すまないイレギュラーズ、力を貸してくれ――この先には幻想種が住まう集落があるのだが避難が間に合っていない。ここでなんとしても押し留める必要がある」
斯様な獣を見据えながら言葉を紡ぐはルドラ・ヘスである。
迷宮森林警備隊にも属する彼女は異常事態と聞いてやってきた――が。終焉獣の気配と被害は想像以上であった。奴は毒を撒き散らしながら突き進んでいるのである……幻想種の友である自然を苦しませるようにしながら、だ。
見過ごせぬし、何よりこのままでは幻想種らにも被害が出るかもしれぬ。
――ここで倒す。被害を収める為にも、一刻も早く。
だが……
「隊長! 終焉獣の周辺で、妙な存在が……!!」
「どうも敵は奴だけではないようです……! 他にも敵性存在が、います!」
「なに……!?」
ルドラに付き従ってきていた警備隊の面々から報告が上がってきていた。
防衛の動きを邪魔せんとする影が――暗躍しているのだ。
それはまるで騎士の様な姿をもった者達だという。
だが人ではない。物言わぬ鎧であり、まるで誰かに使役されているかのような……
「ふふ――さぁ、躍ってくれるかしら。私と一緒に」
刹那。木々の狭間より女の声が聞こえてきた。
「愚かなる木々の国。怠惰なる茨に呑み込まれるべきだった国。
今一度正しい世に戻しましょう。貴方達の生の謳歌に、意味などないのだから」
「……遂行者、だな。この物言いは」
「遂行者? 名は噂だけ聞いたことがあったが――随分と、無礼な奴の様だな」
いる。どこか、近くに。恐らくは先の騎士のようなものを使役している者が。
然らば彼女の言の葉から……イレギュラーズの中には敵の正体を勘付く者もいるだろうか。
――だが何でもいい。ルドラもまた、弓を構えながら紡ぐものだ。
「この地は私達の故郷。誰にも侵させなどしない――!
イレギュラーズ、共に戦ってくれ。奴を――打ちのめす!!」
投じる。矢の一線が木々を避けて遂行者を、終焉獣を狙おうか。
私達の故郷に意味がないなどとは言わせない。
この国は冠位の事件からも立ち直りつつあるのだ――悪意ありし者よ、去るが良いッ!
- <孤樹の微睡み>インコラプティブル・セブンス・ホール完了
- ――我が主の恩寵を知れ
- GM名茶零四
- 種別EX
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年07月30日 22時40分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(10人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
●
木々を蝕む毒が――迸る。
終焉獣より零れるソレらが深緑を侵している証左。
「終焉地帯の獣、か……見た感じ通り、生命自体を拒絶している様に……
全部あんな感じなのか? だとするならば……危険極まる存在だな」
死を紡ぐ存在だと『食わず嫌いはおしまい』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)は悟ろうか。噂に聞く所によれば『終焉』の地はアレの類がいるのが常だという――正気か? アレが蔓延ってる地域の生態系なんて……理解できる気がせんね?
「何はともあれ、一刻も早く解決しなければ、な。この辺りが毒に沈むなど、笑い話にもならない」
「あぁ――なんとしても被害はここで食い止めないとねッ!」
然らばマニエラは連中の性質を少しでも解析できないかと視線巡らせようか。
同時に『白銀の祈り』アルム・カンフローレル(p3p007874)も動く――巨大な獣、終焉獣を見上げるようにしながら。されどまずもって彼が狙うのは、地上を跋扈するナイト共だ。終焉獣たちを止める為にも……連中から、引いては連中を率いている遂行者を止めねばならぬが故に。
放つは光。邪悪のみを祓うソレは、木々の狭間に潜む連中を的確に狙いすまそうか――
直後には共に戦う迷宮森林警備隊の援護たる弓も続こう。的確にナイトらの鎧の隙間を穿ちて。
「しかし……あの遂行者が持っている指輪、気になるな。
余裕があればじっくりと調べたい所だが……残念だけどそれ所じゃない、か」
同時。『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は遂行者――特に、彼女の指に備わりし神秘の代物について思考を巡らせるものだ。アレが噂の聖遺物だろうかと。一体何が原料として出来ているのか実に興味深い所だ、が。
見上げればいる。馬型の終焉獣が。
気が抜けない状況ならまずは事態を留めるのが最優先かと――サイズは往こう。
狙いは遂行者。まずは厄介な奴へ圧を掛けんと行動するッ!
「んとんと。この場を何とかしないと、先にある集落に被害が出るですね。
むむ……わざわざ遠い所からやってきて、バッーと毒を撒き散らすなんて……
遂行者であれ何であれ、ここを通すわけにはいかないのですよ」
「あちらに如何なる目的があろうとも……恣意的な願いによる歪みなど、不要ですね」
自らに物理守護の力を齎す『ひだまりのまもりびと』メイ(p3p010703)も続けて光を。深緑は『ねーさま』が生まれた地――そして亡骸が眠る地なのだからと、無粋な連中に穢させるを良しとせぬ。
そう。遂行者や終焉獣が如何なる心算をもって此処に来たのだろうが、関係ないのだ。『ラトラナジュの思い』グリーフ・ロス(p3p008615)にも――想いがある。
グリーフは元々深緑の民ではない。けれど。
アルベド。
呪物となった過去の住人たち。
還れなかったエーニュの方たち。
――刻まれたたくさんの”誰か”が眠る場所、いつか還る場所。
そして、共に彼らを見守る彼(マナの大樹)がいる場所が――『此処』なのだ。
「それが過ちであったなどと」
歪められては、困るのだから。
故に、往く。グリーフはナイトらへの攻勢……ではなく終焉獣を抑える側に回るのだ。
巨大なる彼らを抑えるのは簡単にはいかぬ。が、強引に押さえつけるのではなく注意を引くぐらいならばやり様はあると。秘宝の放つ魅惑の輝きをあえて彼らに見せつけてやる――そしてソレは。
「まぁ。遂行者の物言いは一々取り合うとキリがありませんので、獣の鳴き声程度の扱いで良いと思います。お似合いのデカブツとご一緒のようですし、ね? 或いは季節も夏ですから――光が羨ましくて仕方がない羽虫と申し上げた方が『らしい』ものでしょうか」
『比翼連理・攻』桜咲 珠緒(p3p004426)の跳躍の動きに連動したものであった。
彼女の卓越たる動きが皆の動きを導くように。
連鎖しうる動作が流れを作りて昇華する。敵よりも早く動き機先を制さんとするのだ。
「あらあら。言ってくれるわね、過ちの歴史を紡ぐ愚か者ばかりのくせに……
歴史に集る羽虫は、それこそイレギュラーズでしょうに」
「言いたい事はそれだけ? なら――言いたいこと言ったら、さっさと帰ってくれないかしら? 貴女達の帰るべき国。正しく居るべき場所」
「神の国へ?」
「ううん。あの世って所へ」
されば遂行者メイの姿がナイトらの奥に見えようか。
イレギュラーズ達の迅速なる行動が、彼女に隠れる暇を許さぬのだ――放たれる氷結の魔術がイレギュラーズ達を振り払わんと注がれる、が。『比翼連理・護』藤野 蛍(p3p003861)は遂行者を逃さぬ。
自らの心を鼓舞し、闘志を宿そう。アルムやメイ、警備隊による攻勢でナイトの陣形はやや乱れているが故に、その一瞬を突いて接近せんとするのだ。使い魔共を指揮させぬ為にも遂行者を煽り立てるように言の葉を紡ぐ――!
「誰も彼も分からないのかしら――私達は救ってあげているのよ。
間違った歴史から。過ちの存在で罪を背負い続けるよりも……
美しき滅びを迎える事こそが煌びやかだと、何故気付かないのかしら」
「――勝手な言い分ね。後から出てきて気に入らないからって正しい世がどうとかちゃんちゃら可笑しいのよ。その在り方、傲慢でもあるのでしょうけど、怠惰って言った方が良いんじゃないかしら?」
まっ、どっちでもいいけどね――と『煉獄の剣』朱華(p3p010458)は言の葉を零しながら跳躍するものだ。彼女もまた珠緒の動きに合わせる様に流れに乗りつつ、遂行者へと一撃一閃。ナイト共の操作をかき乱さんとする。
「私は深緑の一員って訳ではないし。ただ、悪意ある余所者なんかが好き勝手に振舞うのを見過ごす理由もないわ――さっさと帰ってもらうわよ。帰りたくないなら手でも引いてあげようかしら?」
「山脈に住まう田舎者が調子に乗らない事ね。私達の崇高なる『救い』を教えてあげるわ」
遂行者が指先を振るえば、一部のナイトが朱華や蛍の歩みを邪魔せんとしようか。
マトモにイレギュラーズを相手取ってやる必要などない。
自身は安全圏から術を放つだけで良いのだと――しかし。
「また会ったね、遂行者メイ! 幻想に深緑と、忙しそうだね……ここで楽にしてあげようか!」
「――貴方こそ忙しいものね。流石、自らは正義だと謳う天義の騎士様だわ!」
未だ追撃の手は止まぬ。『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)が斬り込もう。
遂行者が周囲にナイトを揃え迎撃の体制を整える前に。
一気に流れを呼び込まんとするのだ。
「天義の聖騎士、サクラ・ロウライト。推して参る!」
戦の加護を身に纏う彼女の攻勢たるや壮絶。
遂行者の放つ魔術すら切り裂かんとする程で――更に背後を取らんと回り込もうか。
斬る。全て斬る。遂行者の狙いと野心が折れるまで!
更に其処へ――ルドラの弓が放たれる。
剛弓一閃。遂行者を護らんとしたナイトの鎧を貫通して、芯を穿ち貫こうか。
「深緑に土足で踏み込んだ報いを受けてもらおう! この程度の使い魔で止められると思うな!」
「行きましょ、時間をかけて良い事は無いわ――それに自然破壊なんてクェイスは絶対怒るものね!」
更に『約束の果てへ』セチア・リリー・スノードロップ(p3p009573)は周囲の自然環境を保護する為に、結界を張り巡らせようか。深緑は『アイツ』が大切にしてて――なにより眠っている場所なのだ。
これ以上悪意で侵させたりなどしない。
ここで止める。滅びの意志なんて。正しい歴史とか間違った歴史とか――知った事か!
刑務所五訓、復唱。強き意志を胸に秘め、彼女は立ち向かおう。
この地を護る為に。冠位魔種との戦いから復興している――深緑を穢させぬ為に!
●
遂行者、終焉獣とイレギュラーズ達の激突。
その激しさは苛烈を増すばかりであった――が。
イレギュラーズ達の主たる狙いは、とにかく遂行者メイにあった。
「やれやれ。随分と私にご執心のようね?」
「ただ単に『邪魔』というだけですよ。構う価値も、本来なら無いもので。というよりも……貴女方はどうせ似た様な事しか言わないのですし。首から上は不要ですよね。正しい、間違った連中は死ぬべきだのなんだの……支配欲に塗れたモノばかり」
語りながら撃を紡ぐのは珠緒だ。彼女が放つ斬撃がナイトに至れば――連中を根こそぎ薙ぎ払っていく。それは重力を操る権能を併用した一撃であり、左右に……まるで聖者の海割りが如く道を切り拓こうか。
さすれば射線が開かれるモノだ。遂行者メイまでの道を邪魔するものはなく。
「貴女達の正義とかいう戯言に、意味などないって――教えてあげるわよ」
「……私達の理想を感じ得られない者が、大言壮語を吐くものね」
「理想? 妄想の間違いだと自覚したら?」
直後には蛍の光輝く剣撃が放たれよう。珠緒の紡いだ刹那を見逃しはしない。
ナイト共が戻ってくる前に遂行者の思考を乱すのだ。
蛍は遂行者の全てを否定し続けよう――
怒れ。その魂も、信念も。なにもかもの背筋を撫でるように。
勿論それでも使い魔であるナイト達が再びイレギュラーズを阻まんと行動してくる、が。そこはルドラを中心とした警備隊の援護が即座に至る。ナイトらを狙いて打ち倒さんと幾度も弓を射かけるのだ――特にルドラの一撃は強烈であり、次々とその鎧を打ちのめしていこう。
「使い魔なんかの影に隠れさせたりなんかしないわ。此処にいるのなら、命を懸けなさい!」
「その指輪が悪さをしてるのかしらね。なら『落として』あげるわ……!」
更に朱華とセチアも続こうか。引き続き珠緒の動きに連動した朱華は、そのまま遂行者メイへと斬撃一閃。ナイト達が慌ててカバーに入らんとしても、無駄だ。炎の力を解放した横薙ぎがその動き諸共切り伏せんとする――
連中の足を封じている間にセチアも攻勢の一翼を担おうか。
特に遂行者の武器と見える……指輪を狙わんとする。
強い魔力を感じればこそ、アレを封じれば召喚も止められる筈だと。
「舐めないでもらえるかしら。近付けばなんとかなると思ってるなら、大間違いよ」
「くっ! でも、この程度で止まると思わない事ねッ……!
そっちがどれだけ強かったとしても――負けられない理由があるのよ!」
しかしセチアの一撃に抗しようか。指輪の魔力を操作から攻撃へと転じさせ風を吹かす。
暴風の刃だ。セチアに襲い掛かりて彼女の一撃を止めんとする。
が。セチアとて確かなる意思と共に此処に来たのだ。
――多少の負傷程度で臆すものか。『彼』の為にも、負けられぬのだ!
紡ぐ一撃は遂行者へと確かに届く。指輪の破壊には至らぬも、しかしまだこれからだと。
「回復ならお任せあれなのですよ。癒し手のみなさんと、どんな怪我も治すですから!
なにも心配しなくてだいじょーぶなのです! メイ、頑張るのですよ!」
「さて、終焉獣を引き付けてくれているグリーフ君の方も……気を付けておかないとね」
「弾はこちらで用意しよう。なるべく速戦即決で頼むよ。それが環境にも一番だろうし、な」
同時に攻勢のみならず治癒も忘れぬ。
メイやアルムが中心となって戦闘による負傷を癒していくのだ。更にはマニエラによる的確なる号令も響き渡れば皆の活力を満たそう。次なる一手を紡ぐ力となるのだ――イレギュラーズ側における治癒態勢はかなり手厚く、故に数に勝る遂行者と言えどイレギュラーズを押しのける事は容易ではなかった。
ただ、だからと言って盤石とは限らない。
毒を撒き散らしている終焉獣は健在にして、抑えるはグリーフのみなのだから。
『――――!!』
「どれだけ吼えたとしても、通しませんよ。今少し此処で戯れて頂きます。
なに……私も、こういう事にはそれなりに慣れている身でして。
存分に付き合いますよ。ええ――どこまでも」
終焉獣は巨大だ。純粋に、物理的な意味でだ。
本来であればとても一人では抑えきれぬ――が。元々その歩みを止める事が出来ぬのならばと、注意を引き付ける事に全力を注いでいた。あらゆる撃を遮断しうる術を紡ぎ、ダメージを極限まで抑え込みながらディ・ラントらの視線を引き付け続ける。
毒の蝕みがグリーフの身を削るが……先述のメイやアルムの治癒も至ればすぐには倒れぬか。
いやそもそも――グリーフにとっては言の通り慣れたものだ。
引き付ける事。防に徹する事。
苦行でもない。お任せ下さいと――むしろ胸を張って彼らを留めよう。
同時にグリーフは空に飛ばしているファミリアーからの視界も確認。
終焉獣が抜けださんとしないか常に監視を続けるものだ。
――しかし。終焉獣とは一体、どういう存在なのか。
(そもそもラスト・ラストとはどういった場で、そこに生きる存在とは)
見据えれば『滅び』の意志が……なんとなし滲んで伝わってこようか。
彼らに在るのは破壊衝動。或いは殺戮衝動とも言い変えようか。
正に文字通り『終焉』を齎す為の獣なのかもしれぬ。
……魂はしかと其処にある。されど魂に刻まれた宿命が世界を滅ぼさんとしているのだ。
(まるで生まれながらの魔種ですね――)
生きとし生ける者を憎み恨み殺さんとする存在。
分かり合う事など出来ないかもしれない。彼らは生まれた時よりそういう存在なのだから。
しかし、それでも。
(私は)
知りたいと願う。
例え敵対の道しかないとしても――理の『納得』を果たしておきたいのだから。
「遂行者が動くぞ……! 逃がすとまずい、距離を詰めるんだ!」
と、その時だ。終焉獣が派手に暴れ回れば衝撃が周囲に衝き走る――
その一瞬を利用して遂行者メイはイレギュラーズの圧から逃れんとするのだ。魔力を用いて召喚しうるナイトが壁にならんとする。故に、サイズは魔砲たる一撃を放ちて遂行者を捉え続けるように立ち回ろうか。同時に――サイズは遂行者の指輪を解析せんとも試みる。
「せめて……どんなモノかだけでも!」
「あら無粋ね。女の秘密を探ろうとするのは」
強力な神秘が詰まった聖遺物。何か『他』にも纏わりついている気がするが――それはそれとしても遂行者メイの力のほとんどは聖遺物に注ぎ込まれているのが感じられる。聖遺物という武器があるからとは言え使い魔を次々と召喚出来るのは彼女自身、その操作に主眼を置いているが故なのだろう。
逆に言えば指輪さえどうにかできれば彼女の力は大幅に削ぎ落とせる。
「遂行者メイ、貴方もこちらの世界の人間じゃなくて、帳の世界の人間なの?」
だからこそサクラは狙うものだ。その剣先で、メイの指輪を破壊せんと。
だが流石に魔種でもある遂行者メイの隙を突いて武器を破壊するのは容易い事ではない――寸での所で庇われ、魔術をもってして振り払われようか。
「帳の世界の人間だからこそ、帳を――生きる世界を広げようとしているのかな」
「クス。さぁ……でも私が『どっち』であろうと同じ事だわ。
我々は、我々の主……ルスト様の為に動くのみ。そして貴方達を排除するのみ」
「んにゃ? アナタ『メイ』っていうですか? メイもメイっていうですよ!
ねーさまがつけてくれたのです! アナタも誰かに名前をもらったのですか?」
と、その時だ。サクラの身に治癒の力が降り注ぐ――メイの治癒術だ。
「あら偶然ね。こんな所でもなければお茶でもしてみたい所だけど。
――イレギュラーズなら容赦はしないわ。死になさい」
「むむ。そうはいかないのです……! 親近感は湧いちゃいますが、メイだって戦う理由があるのですから……! それにしてもなんでこんなことしてるですか? アナタのいう、正しい国ってなんですか!」
「それはもう、過ちの正された世界よ。『そうなるべきであった』世界。
生きるべき者が生きて、死ぬべき者は死んでいる世界。
――貴方の『ねーさま』とやらは、どっち側かしらね。
まぁ死んだのなら、それまでなのでしょうけれど」
彼女は言の葉を紡ぎ続ける。名前が似ているという、奇妙な親和性もあればこそ。
そして何より……遂行者達の事を知りたいのだ。
知らなきゃ始まらない。あちらが何者で、何を軸として戦っているのか。
――だから戦いながらも問う事は止めないのだ。
「ねーさまは……ねーさまが本来の歴史とやらでどうなっていたかはわかりません。
でも、メイは思うですよ。
正しさなんて人の数ほどあるし、正しくないことも同じだけある」
世界は間違いに溢れている。或いは、間違っていなくても相容れない複数の正しさもある。
――だから人は心を、言葉を交わして妥協点を見出していくのだ。
「一方的に蹂躙するのは間違っていると。『メイ』さんは、そうは思わないのですか?」
「思わないわね。だって私達こそが唯一にして絶対なのだから」
されど遂行者の『メイ』は、そんな理論を拒絶する。
傲慢。正に傲慢。自らのみが正しく、他は一顧だに値しないなど。
遂行者に在るのは『支配するのが当然』という理だけだ。
戦うだけが解決策ではなくと信ずるイレギュラーズのメイとは――真逆。
――直後。天より降り注ぐは雷撃の魔術。
遂行者メイによる一撃だ。使い魔の操作に加えて、ある程度の威力も秘められた魔術も花てるのは流石魔種というべきか、しかし。
「マニエラ君、カバーに入れるかい!」
「ああ。数頼みだけであればなんとか持ち堪えさせることはできるだろう――
この程度で戦線を崩させたりなどせんよ。今少し奴にこちらの力を見せてやろうではないか」
此処で治癒層が厚い事の意が特に役立ったか。
アルムやマニエラの支援が、メイの雷撃を上書きするが如く皆に降り注ぐ――
されば迷宮森林警備隊やルドラも併せて未だ体力には余裕があろうか。
崩れぬ。どころか、崩れぬ儘に攻勢を仕掛けていればナイトの数が減り始めよう。
状況は徐々にイレギュラーズ側に傾き始めていて……
「まだまだ! 一方的な正義とやらの御高説ばかり聞かされて……
幾ら温厚なボクだって辟易してるんだから、遠慮しないわよ!」
「抉じ開けます――その傲慢を抱きながら、死んで頂きましょう」
「チッ……どいつもこいつも、なんてしつこい」
直後には蛍と珠緒が再び遂行者に圧を仕掛けようか。
常に遂行者の注意を引かんとすれば、舌打ちもやがてするものだ――
ナイトを再度召喚し壁にせんとする、が。珠緒の一撃が再び道を開く。
どれだけ召喚しても無駄だとばかりに押し飛ばすのだ――故に。
「此処で私達と本気でやり合う気がないのならさっさと帰りなさい。
遊び半分でいられるのは邪魔なのよ。構ってあげてる暇もない。
もし、やる気になったっていうのなら付き合ってあげるけど……」
さぁ、アンタはどうするの?
朱華はナイトの一体を、全霊をもってして切り伏せながら、そのまま遂行者メイへと更に跳躍する。対する遂行者は火炎の魔術をもってして朱華に抗するが……流石に接近戦では分が悪い、か。
このままでは思わぬ負傷を得てしまうかもしれない。ならば。
「そうね。こんな虫と木だらけの場所で泥臭くなるまで戦うなんて御免だわ。
退かせてもらうわよ。でも……やられっぱなしは性に合わないから、ね」
「ッ――なんだ。皆、気を付けろ! 指輪の魔力が……!」
「伏せろ! 何か来るぞ!」
瞬間。真っ先に気付いたのは、指輪から情報を得んとしていたサイズか。続いては弓を引き絞り放ったルドラも周囲へと警告の声を飛ばす――と同時。指輪に纏わりついていた『何』かが、まるで破裂するかのように膨張する。
ソレは。
――偽・不朽たる恩寵(インコラプティブル・セブンス・ホール)――
それは刹那的に遂行者の力となる。
指輪に纏っている神秘が煌めきて、まるで奇跡の如く顕現しよう。
――放つは特大の炎の魔術。深緑の禁忌をわざわざ選んだのは嫌がらせ、か。
炸裂する。セチアやグリーフが張り巡らせていた保護なる結界の力があれば、意図的な攻撃ではない余剰なる波に関しては封じられるが――遂行者め。
「くっ。なんと言う事を……結界をもう一度繋ぎ直します。これ以上の被害は留めねば」
「どこまでもその土地の尊厳を踏みにじるんだね……!」
「あったまきた。今度出会ったら、首を必ず落としてやる……!」
警告の声に伴って躱す動作に移っていたグリーフにサクラ。更に蛍が言を紡ぐものだ。幸いと言うべきか――或いは遂行者メイは木々を焼く事を目的としたが故か――イレギュラーズ側の損耗は大きくない。ただ、やはり生じえた被害に奥歯に力を込めようか。
遂行者の姿はない。ナイトらは放置した上で、撤退したか。
……然らば、木々が燃える光景を見てセチアは。
「ねぇ、メイ」
想いを胸の内に零すものだ。
『彼』を生かしたくて、起こった奇跡。彼が作った希望が、此処に在るというのに。
それが間違った歴史? 即ち……
「アイツは死ぬべきだったって?」
或いは救われず狂気のまま居るべきって?
アイツに安寧の眠りは要らないって? それが正しい歴史だなんて――!
「私は絶対に認めない!」
それは確かなる決意。確かなる咆哮。
遂行者共の狙いなど何一つ成就させてやるものかという――想いであった。
●
遂行者メイの撤退により状況は著しくイレギュラーズ有利となった。
ナイトの追加が無い事もそうだが、彼女を早急に打ち倒す為の戦力が全て終焉獣に回せる事になったのが大きい。依然として凶悪なる毒を撒き散らして周囲に害をなす終焉獣だ、が。其処にも遂行者がいなくなった事による影響が出ていた。
支配の力が薄れたが為か、ナイトらも敵とみなして踏みつぶし始めたのだ。
「暴走し始めていますね。或いは……これこそが本来の姿、と言うべきなのでしょうか」
自らの身体の修復を怠らぬグリーフは、周囲の状況も見据えながら終焉獣を抑えよう。
幸いと言うべきか連中は押し通って奥の方に進む意志は見られない。
――近場の生命をまずは皆殺しにせんとしているからだろうか。ならばと。
「まったく! 面倒なモノをそのまま残していったわね……!!
存在するだけで近くを汚染していくなんて、終焉ではどれだけ蝕んでたのかしら!」
「クソ。とにかく一刻も早く倒さないとな……後はこいつらさえ片付ければ終わりだ!」
動くだけで激しき振動が周囲へと伝わる――そして当然として毒も、だ。
天より降り注いでくる悪しき塊。嫌悪の表情を朱華は紡ぎつつも、だからこそ終焉獣共を滅さんと跳躍しようか。警備隊の弓矢の援護も降り注ぎながら、攻勢を合わせて剣撃放つ――さすればサイズも直死の一撃を放とう。
深緑は自らの得意戦場でもあるのだからと。
これ以上、終焉からやってきた訳の分からない獣の好きにはさせぬ――!
「に”ゃ! 終焉獣の後ろ足には気を付けてくださいなのです! す、すごい蹴りがくるのです!」
「馬の脚力は凄まじいとは聞くが……その上でこの巨体だ。威力は想像を絶するな」
が。一斉に接近してくるイレギュラーズへ終焉獣は迎撃の一手を放つものだ。
それは治癒の力を振り絞り続けるメイが言った通りの――蹴り。
だが『蹴り』とは言っても超巨大であればソレはソレだけで脅威なのだ。マニエラもまた、状況を見据えながら号令と治癒の力を的確に使い分けながら警戒しているが……遂行者メイが片付くまでグリーフが抑える事が出来た理由には、物理的な衝撃を無効化しうる障壁が在った事が大きい。
ソレ抜きの場合、下手をすれば頭が吹っ飛びかねない威力が込められている。
更には息を吸い込んで鼻息を放てばイレギュラーズ達の陣形が乱れかけようか――
「その上で毒にも警戒しないといけないんでしょ――! ああ、もう!
いいわ、やってあげようじゃないの。看守の精神力――舐めないでよね!!」
されど。臆せばそれこそ終焉獣を止められる方法はない。
故にセチアは一瞬だけ深呼吸。直後に駆け抜け、終焉獣に全霊たる一撃を叩き込もう――
降り注いでくる毒は耐え忍ぶ。
灼けるような痛みはしかし、強靭な精神力で乗り越えるのだ……!
『――ブ、ォ、ォオオオ――!!』
「遂行者は消えたのよ。貴方達だけで何を成せる訳でもなし――さぁ早く還りなさい!」
「デカブツは、速くお陀仏になってもらう他ありませんね。害しか生み出さない様ですし」
続け様には蛍と珠緒の連撃も続こうか。遂行者がいなくなった以上、あと一歩なのだからと。光輝の剣を振るいて蛍は敵の注意を引き付けんとし、その間隙を突いて数多の負を宿す術を珠緒は叩き落すものだ――
されば終焉獣と言えど徐々に、徐々にその体力をすり減らしていく。
決して無敵の存在ではないのだ。奴らとて生きている――必ず倒せるのであれば。
「ルドラさん、終焉獣の目を狙えるかな――!」
「ああ任せろ! 此処からでも必ず届かせてみせる……!」
アルムはルドラや警備隊と連動し、彼らに号令の力を紡ごう。
であればナイトらを殲滅し終えたルドラの弓の一閃が、今度は終焉獣へと注がれる。連続たる弓の射撃が、比較的脆そうな終焉獣の瞳を捉えるのだ。流血が生じ、悲鳴のような断末魔が生じた――故に。
「これで……決める! 終わりの地に……還るがいい!!」
サクラが、その首筋を両断せんと抜刀した。
一気に切り裂く。これ以上生かしてはおけないのだから。
毒が飛び散れど、最早気にせぬ。力を、全ての膂力を込めて――振り切った。
『――――』
終焉獣ディ・ラントの身が倒れようか。もう一体の獣も、程なく討伐される。
もう力はない。もう立ち上がる事は無い。しかし……
ルドラは見る。終焉獣らが撒き散らした毒の惨事を。
「イレギュラーズ、助かった……しかし。くっ。毒をなんとかしなければな」
「……残念ですが一部の木々は土に返すより他ありませんね。
あともう少しだけ来るのが早ければ……申し訳ありません」
「いや。イレギュラーズがいなければより被害は広がっていただろう。
むしろこちらとしては感謝しかない――」
グリーフも、やや顔を歪めるものだ。どうしても駄目な自然に関しては、苦しめるよりもいっそ終わらせて、次代に繋げた方がよいと……
「毒、か……汚染を浄化できればいいが、これはまた別途対応が必要だろうな。
焼却滅菌が一番だが――」
ここは深緑。斯様な行いを許しはしないだろう、とマニエラは口を噤むものだ。
まずは汚染状況の確認から、だ。どんな毒を秘めているのか――
終焉の獣はどいつもこいつも、このように穢れているのだろうか。
……何はともあれと彼女は毒の解析を進めようか。
「本当にひどい状況ね。終焉、か……やっぱり見過ごせない地な気がしてくるわ」
「遂行者の動きもある。東も西も――不穏な影ばかり、だね」
続け様、生じえた被害に朱華やサクラは想いを紡ぐものだ。今回は『これだけ』で済んだとも言える。しかしもしも今後も終焉獣の活動が活発化したら……どうだろうか、と。
「ごめんね、クェイス。ちょっとだけ……木々が汚れちゃった」
そしてセチアは――聞いているかいないか分からないが『彼』に念じようか。
眠っている彼に。クェイスに。
……正しい歴史、か。
私だって『彼が起き続けてたら』を想像する事はある。もしも話せる未来があったなら。
でも遂行者の言う歴史は……きっと私が。ううん、皆が絶対に後悔するモノ。
だからこれでいいのだと――そう、信じるけれど。あぁ。
クェイスの眠りは回避出来ないもので、でも魔種を未来に繋げてくれた。
だから最善の現実なんだけど……それはそれとして、凄く寂しい。
(……せめて声ぐらい利かせなさいよ、ばーか)
――フンッ。まだ十年も経っていないというのに、これだから人間は。
刹那。風に乗って何かが聞こえたような――
周囲を眺めるも、しかし当たり前だがなんの姿もありはしない。
……気のせい。そう、気のせいだったのだろう。今の『何か』は。
今を生きるお前らでなんとかしろという――気のせいな声は。
「……遂行者。次はどこを狙うつもりなんだろうね」
そしてアルムは……この事態を引き起こしたと言える勢力に対し、奥歯を噛みしめよう。
『滅びていたはずだから今滅ぼす』だって? 『正しい世に戻す』?
「分かっているのかな、ソレは」
それは――滅びから救われた人々の思いを、今の生を。
「踏みにじる思想なんじゃないのかな……!」
それとも。『ソレ』すら些細なモノとするつもりか。
何が狙いなのかは知らないけど、どんな信念があったとしても。
人々を犠牲にするようなやり方は……
「俺は間違ってると思うよ。あぁそっちが何を唱えようが否定し続けてあげるよ……!」
アルムは彼方を見据える。遂行者がどこに撤退したかはしれぬが……しかし。
彼らの主たる活動地は天義だ。では、東でまた相まみえる事もあろう。
故にそちらへと視線を滑らせる。
――胸に抱く憤怒にも似た感情を、瞳に宿しながら。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ。
遂行者達の全国的な活動も順に巡って遂に深緑まで……
彼らとの決着は――またいずれ。
ありがとうございました。
GMコメント
●依頼達成条件
敵勢力の撃退
●フィールド
深緑、迷宮森林の一角です。
時刻は昼。周囲は森林に覆われています――が。
少し先には幻想種たちが住まう集落があるようです。
このまま終焉獣の到来を許せば見過ごせぬ被害が発生するでしょう。
後述する敵戦力を通さぬ様に――撃退してください!
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●敵戦力
●終焉獣『ディ・ラント』×2体
巨大な、馬の様な姿を持っている終焉獣です。
終焉獣とは『終焉』の地にいるとされる魔物――なのですが、近頃深緑やラサ方面で出没が確認されている様です。この個体達も『そう』なのでしょう。
ディ・ラントは全身から有害な『毒』を撒き散らしつつ深緑を闊歩しています。
この毒は自然物に対して大きなダメージを与え、更に周囲の人間達にも【毒系列】のBS付与を毎ターン行ってくるようです。更に稀に【不吉系列】のBSも付与してくる事があるとか。
攻撃手段としては強烈な足による打撃と、あらゆるモノを吹き飛ばす鼻息があります。
とても巨大でありブロックは不可能です。
●召喚獣『ナイト』×15体~
後述のメイによって召喚・使役されている存在です。
鎧を着込んだ騎士のような外見を持っています。やや防技・抵抗に優れており、剣技を用いて近接技も仕掛けてきます――が。ディ・ラントと比べると個体の性能はそこまで大したことはありません。数頼みの戦法でくる事でしょう。
●『遂行者』メイ・ミディア
傲慢勢力に属する遂行者の一人です。
呼び声の気配が感じられ、魔種である事が窺えます。彼女は聖遺物として『指輪』を身に纏っており、そこから幾つかの配下を召喚する事が出来る様です。大きな魔力も感じ取られており、配下召喚型の後衛型魔術師タイプです。
魔種な事もあり彼女の放つ魔術も中々強力……ではあるのですが、態度が些か本気ではないように感じられます。恐らく劣勢になれば余力がある内にどこかで撤退するでしょう。
また、今回彼女は後述する『偽・不朽たる恩寵』の効果もあるのか、終焉獣を完璧にコントロールしているようです。
●『偽・不朽たる恩寵』(インコラプティブル・セブンス・ホール)
遂行者マスティマにより開発されている技術です。
詳細は不明ですが……聖遺物が強化されているようであり、持ち主になんらかの加護を与えています。この場ではメイの使役・支配力を上昇させているようで、巨大な終焉獣もコントロール出来ています。
また『恩寵』全ての力を注ぎ込む事により、一度だけ非常に強力な攻撃か、治癒を行う事が出来る様です。(ただし全力を注ぎこむと上述の恩寵の効果は失われる様です)
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●味方戦力
●ルドラ・ヘス
迷宮森林警備隊隊長です。弓の名手で、優れた幻想種です。
皆さんと共に戦います。終焉獣や遂行者メイ、ナイトの数減らしなど臨機応変に戦いますが、何か指示があればその通り動いてくれる事でしょう。
●警備隊隊員×5人
ルドラ配下の警備隊隊員たちです。
弓を持ち、後衛を得意としますが近接戦闘も可能です。皆さんと共に戦います。基本的にはナイトの対応に当たっていますが、指示を出せばその通り動いてくれる事でしょう。
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●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
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