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シナリオ詳細

ア、ラッセーラッセーラッセーラッセー、ハイハイハイハイハイハイハイハイ!

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ぐあふたぬーんえびばでぃ!
「行人殿ー」
「行人ちゃーん」
 黒影 鬼灯 (p3p007949)とアーリア・スピリッツ (p3p004400)が伏見 行人 (p3p000858)を探している。ここはシレンツィオ、自由の島。海洋の潤沢な資金と鉄帝の軍事力、そして新興国豊穣、さらにはラサの資本、はては海底に眠っていた竜宮、様々な文化とカネが流れ込む常夏のリゾート地だ。
「なんかおもしろいのがある」と、ふらっと出ていった行人を探して、一同は五番街(リトル・ゼシュテル)のゼシュテル・ビーチにまでやってきた。そこここに海の家があり、海岸は芋の子を洗うように観光客でにぎわっている。
「これだけ人が多いのでは、探すのも一苦労です。武器商人殿、お力添えを願えませんか」
 流星 (p3p008041)からそう頼まれた武器商人 (p3p001107)はものすごく珍しく、渋い顔をしていた。
「どうした武器商人殿、触手に絡まれる行人殿でも視えたか?」
 アーマデル・アル・アマル (p3p008599)の言葉に、武器商人は静かに首を振った。
「だとよかったんだけどねえ……」
「えっ、それはどういうこと?」
 アーリアがそのモノを振り向いた、とたん。
 ざっぱあん!
「たすけてくれー!」
 海を突き破り、行人の悲鳴とともに、なにかが現れた。
「あれは……知っているぞ、神輿というやつだな。いわば御神体のタクシーだ」
 アーマデルが冷静に指摘し、流星があんぐり口をあけている。

「どうして行人殿が手足の生えたカジキマグロが担ぐ神輿のてっぺんでサイドチェストポーズ取ってるんですか!?」

 俺にはわかりません、何もかもがわかりません。流星はめだぱにをくらっている。
 ア、ラッセーラッセーラッセーラッセー、ハイハイハイハイハイハイハイハイ!
 体長三メートルはある屈強なカジキマグロたちは、そのまま観光客を蹴飛ばし、海岸を暴走し始めた。
「ああっ! 観光客が!」
「どうやらここの観光客はそろって非戦ギャグキャラを活性化させているようだねぇ」
 真っ青になったアーリアのとなり、武器商人は発泡スチロールの人形みたいにふっとんでいく人々を、ちょっと困ったねぇといった雰囲気で眺めている。
「第四の壁の向こうで、だれかさんが水着といえば触手だろうけど、そんなのつまんないだろうからと気を利かせたみたいだよ」
「余計な気を気を利かせなくていいわよっ! 行人くん!? 行人くん、おねーさんの声、聞こえてる!?」
「聞こえている! 体が動かせないんだっ! そのうえっ!」
「そのうえ?」
 カシャ。小さな音がアーリアの耳朶を打った。
「シャッター音!?」
 気がつくと一同は水着だった。行人はダブルバイセップスポーズに変化している。
「そいつだ! このカジキ神輿はおとりでしかない! シャッター音をさせているのが、諸悪の根源だ! 気をつけろ、カメラの標的にされると、これ以上ない決めポーズでかっこいいセリフを吐くはめになり、パンドラが削れるほどの大ダメージを食らう! 各自考えてプレに書いておけ! さもなくば即興でトンチキなセリフを吐くはめになる!」
「浅はかだな。トンチキで俺にかなうとでも?」
「ああ、蛇巫女殿はねぇ……」
 武器商人は既にレモンのかきごおり(レモン果汁とシロップを凍らせてかき氷にしたもの、うまい)をシャクシャクやり始めていた。
「武器商人殿、観戦モードに入ってないで行人殿をお助けせねば」
「それに、おとりとはいえあのカジキ神輿にこれ以上ビーチを荒らさせるわけには」
 鬼灯と流星ががんばってしかめっつらをして、シリアスな雰囲気を醸し出そうとしている。その後ろを筋骨隆々なカジキマグロが駆け抜けていく。
「そうだねぇ」
 しゃくしゃくレモンかき氷を味わいながら、武器商人は行人へ視線をやると、皆を振り返った。
「カジキ神輿など、しょせん養殖の速成トンチキ、真のトンチキを見せてやろうじゃないか」
 えっ、そっち?
 みんなしてそう思った。

GMコメント

みどりです! ご指名、ありがとうございました。
これはちょっと急いでだしたほうがいいぞ、というわけで、夏祭りの季節ですね。ソイヤソイヤ。
行人さんは特殊な状態にありますので、後述のハンドアウトを御覧ください。

やること
1)行人を救う。水着で。
2)海の家で打ち上げ。
暴走するカジキ神輿から行人さんを救出しつつ、謎の影をとっ捕まえましょう。

●エネミー
謎の影
 シャッター音を響かせる隠密と逃走のエキスパート。闇の帳やアノニマスも持ってるっぽい。カメラの標的にされると、強制的に水着になり、かっこいいポーズでかっこいいセリフを吐かなくてはいけない。そのたびにパンドラがゴリっと削れる。正体は捕まえてのお楽しみ。

カジキ神輿オンザ行人
 行人さんを頂点にあしらった芸術的な神輿を担ぐ、屈強なカジキマグロたち。浜辺や浅瀬を暴走しており、観光客をボーリングのピンくらいのきやすさで跳ね飛ばしている。

カジキザマッチョ
 神輿を担ぐ手足の生えたカジキマグロ。おいしい。体長は3メートルほど。HPと防技と抵抗が高い、つまり身がつまっていておいしい。

●戦場 ゼシュテル・ビーチ
鉄帝からの観光客がひしめきあっている海岸。全員非戦ギャグキャラを持っているので、節度を持って殴れば問題ない。

●行人さんのハンドアウト
 あなたはカジキ神輿のてっぺんからスタートします。なぜかボディビルダー顔負けのキレッキレポーズを取っています。この状態は味方からの攻撃を受け、ある程度のダメージを受けるまで解除できません。パンドラが削れることでしょう。
 状態異常が解除されたら、あとはカジキをぶん殴るなり、謎の影をぶん殴るなり、お好きにどうぞ!

●味方NPC
睦月
 暦随一の常識人。
 奥方こと章姫を預かってくれる。なお、黒マスクと黒のサーフパンツを着用している。打ち上げで海の家での飲食費も出してくれる。なお、みどりの暦イチオシは彼です。苦労人はかわいい。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • ア、ラッセーラッセーラッセーラッセー、ハイハイハイハイハイハイハイハイ!完了
  • GM名赤白みどり
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2023年07月23日 22時05分
  • 参加人数6/6人
  • 相談7日
  • 参加費---RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

伏見 行人(p3p000858)
北辰の道標
武器商人(p3p001107)
闇之雲
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家
流星(p3p008041)
水無月の名代
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切

リプレイ

●皆の心は一つだった。

『北辰の道標』伏見 行人(p3p000858)になにがあった。

『灰想繰切』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は棒読みで状況確認をしたあと、カジキ神輿をガン見した。
『やさしき愛妻家』黒影 鬼灯(p3p007949)は、腕の中の章姫からくいくいと襟元を引っ張られてようやく正気に返った。
『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)はもう飲むしかない、背後もな、と覚悟を完了した。
『水無月の名代』流星(p3p008041)はいつもの真面目なポーカーフェイスへ戻り、キリッとした顔で与太殺しを宣言した。
『闇之雲』武器商人(p3p001107)はレモンを食べ尽くし、メロンのかき氷へ手を出しながら言った。
「凄いねぇ。人間が高熱でうなされてる時に見ている悪夢みたい」
 えっ!?
 まってまって、まってくださいよ。このシナリオは、なつはおまつりだよね、おまつりといえばおみこしだよね、てっぺんに行人さんがのってたらかっこいいよね、アーマデルさんが参加してくださってるから担ぎ手はカジキマグロってことにして、という、論理的思考の結果導き出されたロジカルなOPであり、ひと夏の思い出なのにこんな地味でありきたりなシナリオしかお出しできなくて申し訳ないと考えていたのですが、えっ、みんな熱出したらこんな夢見てるってこと? こわ。
 そんなつぶやきはさておき、神輿の上で行人は苦悩していた。どうも口だけは自由に動かせるらしい。体はキレッキレだが。
「俺、固いんだよな。普通に。あのハンドアウト、ほんと意地悪だよな……」
 この状況は、まずい。
 行人の頬を一筋、まぶしい汗が流れ落ちる。夏の日差しを受けて宝石のように輝いた。
「エモい感じの詩的な表現してる場合か! くそあ! 神輿に祭り上げられるなんて! いったい俺がなにをした!」
 安心して欲しい。なにも悪いことはしていない。中の人だって、誓って悪意をもってシナリオを用意したわけじゃない。これはそう、不幸な事故。「事故で片付けんな! 俺だってもっと、別のシチュでこのセリフを言いたかったさ!」
 フロントリラックスからのサイドリラックス。足位置をさり気なく変える行人。そして彼は、万感の思いを込めて味方へ叫んだ。
「俺ごとやれ……!」

●許可が出たんでやります
「はいっ!」
「ゴフッ!」
 行人の脇腹へライダーキックが突き刺さった。流星だ。今日はホワイトボンテージ風豊穣ライクビキニだ。ひらたくいうと、サラシ巻いてミニスカ。装飾なのか、白い布が腕やふともも、そして首へもくるくると巻きつけられ、その上を赤い結紐が彩っていた。章姫とおそろである。当の本人は、ここぞとばかりに趣味をおしつけないでほしいのだわー、えっちなのだわーと言っている。白い肌へまっしろな包帯とかたまらんものがありますよね。あとボンテージは赤が好きなんでよろしくおねがいします。おいといて!
「いきなり最大火力ぶっこむやつがいるか、それも俺へピンポイントで! マグロごとやれって言ったんだ!」
 涙目の行人へ、相棒馬、勝の背へ降り立った流星は、いつものキリッとした真面目な顔で言い放った。
「ハンドアウトは俺も読んだし、本人から許可も出たので」
「だからって、もうすこし、こうなんというか……手心というか」
「痛くなければおぼえませぬ」
「なにをラーニングするんだ、この状況で!」
「ポージングとか?」
「いいからたすけぶへっ! いたい!」
「一刻も早く助けるためにも手心はくわえない」
 行人VS流星チキンレースが開催された。カチンコチンゆえに全力で殴られるのを我慢しなけりゃいけない行人と、ひとのハンドアウトまで読む生真面目流星による容赦のない攻撃だ。なお、流星に手加減をするという選択肢はない。救出が遅れるだけだからだ。そう、善意。純粋混じりっけなし純度100%の善意だ。
「捜索の心得はある。が、これは頭領の命。この流星、水無月殿の部下として、行人殿救出へ粉骨砕身七生報国! 必ずや、やり遂げてみせましょう!」
 流星の命令を受けた玄と柴犬の涅ちゃんがすさまじい勢いで移動を始めた。玄は波打ち際を行き、涅ちゃんはとっとこ走る。直射日光で焼けた砂が熱い。それでも主人のために、涅ちゃんはいっしょうけんめい走る。あ、影に入った! 水を飲みだした! ごろんして腹を見せている!
「……躾直さないといけないようだな」
「流星、コワイ」
 コレハ与太ヨ。フダンノ涅チャンハチガウカラネ。アーマデルは妙にかくかくしながらそう告げる。そして憤然と走り回っているカジキマグロをにらみつけた。
「なんなんだあれ、手足がついてるぞ。カジキマグロチェック、アウト。明らかにダメ。赤点。失格。不良品。せめて陸でも泳ぐマネくらいはしてほしかった。それでこそカジキマグロを名乗れるというものだろう」
 単語突っ込んだら予想外のが出てきたイラスト生成AIみたいだなっておもった。なお、バナナと打ち込むと、ほぼ確実に二本のバナナが描写されるそうだ。これにあるバナナ農家さんが激怒。あの手この手で一本だけのバナナを生み出すためのプロンプトを考え抜いたらしい。
「カジキマグロを称する偽物め。絶対に許さない、絶対にだ。というわけで円香殿、栄えある初撃はゆずろう」
「なんであたくしが呼ばれてるんですの? たしかにあたくしは天才ですけれど、べつにカジキマグロの専門家ではありませんわよ? さらにいうとあたくし、水着NGなのですけど?」
「そこは、うまいことやってくれ。頼んだ」
「ひらめきましたわ。あたくし天才ですから。アーマデルさまの影から攻撃すればいいのですわ。そうすれば謎のシャッターの餌食にならずにすみますし、アーマデルさまは体が♪」
「夏になっる♪」
「ノリがよろしいですわね、アーマデルさ……え、ガチのやつ? こわ」
 カシャカシャカシャ! 連続するシャッター音。アーマデルは勇敢にも円香をかばった。
「お前もカラフルに光らせてやるよ!」
 少年の姿にそぐわないほどのイケボが放たれる。
 例のあの格好で例のあのポーズを取りながら、アーマデルは色気たっぷりに流し目を送った。
「お前も炙りにしてやろうか? 刺し身は焼いて食うべき、兄貴刺すがコワイからな」
 でも最近は冷凍保存技術の向上により、兄咲洲はほとんど死滅してるらしいって聞いた。-35℃で15時間凍らせとくと死ぬらしいよ。でも昔はそうじゃなかったから、たいへんだったんだって。飛行機乗る前は生魚くうなってわたしもよくいわれた。お客様の中に都合よくお医者様がいらっしゃっても、耳鼻科とか脳神経外科だったりする可能性を考慮するべき。医者って一口に言っても色々居ますからね。
「攻撃がやんだ! いきますわよ、カジキマグロ召喚!」
「ないっすぅ~。さすが秋永一族」
 どうしてここで秋永一族が関係してくるかと言うと、じつはカジキマグロは恋人由来なのだ。アーマデルはその派生。すなわち世界で二番目のカジキマグロスレイヤーだ。
「様式美として、しめやかに爆発四散して欲しいところ」
「四散したらおつまみがなくなるじゃない。ただでさえ頭が痛い状況なんだから、せめておいしいもので癒やされたいのよ私。ねえ、ミケくん?」
 アーリアの隣に立つのは、おお見よ、NPCだらけのなか果敢にTOPを飾った関係者、勘解由小路・ミケランジェロではないか。
「ミケくん?」
 くっちゃくっちゃくっちゃ、ぷー。
「なんでガム噛んでんの。ていうか、噛めたの、ミケくん」
「お、なんすか? TOPっすよ? 夏の象徴としてTOP飾った自分になんか用すか?」
「ミケくん……調子くれてんじゃないわよぉ? TOPなら私も立ったわよ! 今日(7/22)!」
 アーリアはおもむろにミケランジェロの襟首を掴むと、ごちんって頭突きをいれた。
「はっ! 私は一体!」
「良かった、もとに戻ったのねミケくん」
 それじゃまあ、とアーリアは気合を入れた。
「ワールドエンドルナティックステイシスケイオスタイド!」
 三連続攻撃が鮮やかに決まった。なお、アーリアのEXAは現時点で14なのは内緒にしておいてくれ。砂浜は一気に地獄とかした。近づいたらいかにギャグキャラでも危ない。
「ここまでしておけば流星のがんばりも無駄にはならないでしょ。――うふっ♡」
「領主殿? いきなりなんです? 前かがみになって谷間を強調して。ここはグラビア撮影所じゃありませんけど……もしや」
 アーリアは真っ赤になってがばっと体を起こした。
「ちょっと何なのよ! なんで私だけ格好いいポーズじゃなくグラビアっぽいの!? おかしいじゃない!」
 大声を出した直後に、アーリアは海にぷかぷか浮いてるイルカのフロートにまたがって手ブラしていた。
「私とアツい夏、すごしてみる?」
 ちょ、上、上! 上どこいったのよ!? 頭が真っ白になるアーリア。撮影会はまだまだ続いているらしい。次の瞬間、アーリアはつば広の麦わら帽子をかぶり、片腕で胸を隠しながら利き手を伸ばすというポーズを取っていた。
「きゃっ、もぉ! 捕まえてみてよね?」
 だから上! 上、どこいったの!? それ以前になにこのベッタベタなポージング! 別な意味で恥ずかしいわよ! いやな汗だらだら。アーリアはあたりを素早く見渡し、謎の影を見つけようとした。
 カシャッ!
「お酒よりも、私に酔ってよね……?」
 絶妙に見えない角度で、アーリアはカクテルグラスを手にしたまま、砂浜にコロンと寝転がっていた。角度的にまあるくてキュッと上がった小尻が強調されていることだろう。
「痛い! 勝手に口から出るセリフが寒い! 企画! 企画ー! 練り直して、いますぐ! アラーキー呼んできて! 私、もっといい女なんだから、この程度のモデルだと思われる訳にはいかない!」
「アーリア殿がまたなにかと戦い始めている」
「……神無月いないんで、私がツッコミしなきゃいけないんですかあ、頭領?」
「そうだな、頼んだ。睦月」
 睦月はがっくりと地へ崩れ落ちた。
「私はこう見えてツッコミ力低いんですよ! 特にここでボケて系は苦手なんですよ!」
「そうだな。睦月は真面目な分、こういう空気は苦手だな。だがそこがいい、と、いま第四の壁の向こうから聞こえた」
「こんなところでGM特権つかって、なにが楽しいんですかねえ!? いいかげん自重してほしいと思うんですよ! そもそもこのシナリオが出たのだって、あの腐れクソGMが暦たくさん書きたいてわがまま言い出したからでしょう!? EXで追加料金まで取って! お財布に優しくない!」
 マジさーせん。でも反省はしてない。字数については、孤児院のこどもたちをパージしてしまえば……いや、それでもやっぱり足りないな。暦もPCさんもかわいかっこいいからね。しかたないね。
「もっといい人選いたでしょ。皐月とか双子とか! どうして私の胃をいじめるんですか!」
 砂浜を拳でダンダンやりはじめた睦月。今日も愛くるしい章姫は、鬼灯の腕からぴょんと飛び出して着地すると、睦月の肩をやさしく包んだ。
「泣かないで睦月さん。睦月さんみたいな報われないがんばりやさんは、中の人の趣味嗜好にドンピシャなのよ」
「うれしくない」
「はーい、いいこいいこ。なでなでするのだわー」
「奥方あああ」
 あ、マジ泣きしだした。あの睦月が。相当ストレスだったんだな、この依頼。鬼灯はちょっとびっくりした。よしよしされている睦月にいとしの妻を任せ、鬼灯は振り返る。走り回るカジキTHEマッチョ。吹っ飛ぶ人々。あがる悲鳴。ワッセロイされてる神輿。その頂点でボコボコに殴られてる行人。
「たしかに、こんな、こんな……なんでこんなことなったん???」
 ナイトメア行人セルフ。
「と、ともかく、我が親友殿をお助けせねばな」
 一瞬折れそうになった心を立て直したのは、見事と称えるべきだろう。いや、なんでこんなことになったんやろね??? 書いてる人は大真面目に考えたんやけどね。
「昔から中の人は、良かれと思ってやればやるほど、めっちゃ怒られてきたからな。今回もそれなんだろう。行人殿可哀想」
 などとのんびりしていたせいだろうか。
 カシャッ!
 シャッター音が鬼灯を襲った。鬼灯はとっさに九字印を結んだ。
「……さぁ、空繰舞台の幕をあげようか」
 平常運転だった。
「睦月さん! 鬼灯くんが、かっこいいのだわ! やっぱりあのセリフがでると、場がしまるのだわ! 決め台詞ってかっこいいのだわー!」
「そ、そお~~~~ですねえ~~~~~」
 睦月は胸に奥方と仰ぐ章姫を抱いたまま、テンション低い棒読みでこたえた。ちゃんと返事をするだけエライ。
 カシャッ!
「我等は暦。時めぐりし、月を冠する忍なり」
 カシャッ!
「では某が影の牢獄へとご案内いたしましょう」
 あ、これはROOアバターこと陽炎のセリフだったな。
「なあ睦月。俺はもしかして、普段からかっこつけなのか?」
「そ、そお……です……ね」
 睦月は視線をそらした。それは何よりも雄弁な肯定だった。当然だな、と鬼灯は胸を張った。
「かわいい奥さんの前では、かっこよくありたいのだ。男心というやつだ。……章殿はどうおもう?」
「……かわいいって言われて、うれしいし、同じくらい照れるのだわ。これからも、かっこいい鬼灯くんにふさわしい奥さんでいたいのだわ」
「章殿……」
「鬼灯くん……」
 エンダアアアアアアアアアアアアアってピアノ引いたほうがいいかなって睦月は思った。
「やれやれ、雁首揃えて、さっきから謎の影にやられっぱなしじゃないか」
「武器商人殿」
 しゃくしゃくメロンのかき氷を食べながら、武器商人はいまだボコられている行人を同情するかのようにみやった。あくまで、そう見えた、という程度だったけれども。
「こうしている間にも伏見の旦那は刻々とパンドラを削られ続けている」
 しゃくしゃく。武器商人は嘆かわしげに首を振り、ストローを加工したスプーンで、透明な氷を口元へはこんでいく。ところで、あの、ASMRに、咀嚼音っていうジャンルがあることを、わたし、つい先日知りました。怖くて聞いてないんですけど。いちおうようつべで検索もしました。もう出るわ出るわ。ソッコーで逃げ帰りました。武器商人さんがしゃくしゃくかき氷食べてるところはカワイイんですけど、トイレットペーパーの咀嚼音とかはさすがに、わたしには早すぎるかなって。
「伏見の旦那もかわいそうになってきたところだし、そろそろ本気だそうか?」
 武器商人は自分の目を指差す。そして、だしていいかい? って、武器商人はADさんのほうを向いた。カンペには、OK、ってでっかく書いてあった。
「なら、遠慮なく」
 すべてを見通す武器商人のまなざしから、逃れることなどできはしない。視線にとらえられた影は、最後のあがきとばかりにレンズを向け、シャッターを押した。
「ほう、この我(アタシ)にファンサを要求するのかい?」
 しかたないにゃあ。武器商人はどこからともなくインカムをとりだし、きらびやかなステージ衣装へ早着替えした。スポットライトが男とも女ともつかない姿を浮かび上がらせる。
「はい、二階席ー」
 きゃああああああああああああ!(黄色い声)
 うおおおおおおおおおおおおお!(野太い声)
 紫のサイリウムが箱いっぱいに輝いている。
「今日は声出しOKだからね。楽しんでいっておくれ?」
 ぶっきしょうにん! ぶっきしょうにん! パーンパパンヒュー! パーンパパンヒュー!
「突如空間がライブ会場に置き換わるとは、これが武器商人殿の与太力……!」
 鬼灯はいっそ感心した。
 武器商人は会場すべてのファンの視線を集めつくし、最高のタイミングでウインクした。
 ぎゃああああああああああああ!(黄色い悲鳴)
 おごおおおおおおおおおおおお!(野太い悲鳴)
 直撃したファンがあまりの尊みに、ばったんばったん卒倒する。
「いまあたしに! あたしにウインクくれた!」
「何いってんだ俺だよ! 俺俺! 俺俺俺!」
「仲良くしとくれ。みんな我(アタシ)のものじゃないかァ? それじゃ、新曲、『我(アタシ)の猫』、聞いていってね~」
 生バンドの演奏が始まる。花火が吹き上がり、レーザー光が会場を切り裂く。一糸乱れぬ動きをするバックダンサーとともに歌って踊りながら、武器商人は鬼灯へもウインクした。
「我(アタシ)がファンサしてる間に確保を頼むよ」
「了解した」
 それにしても、と、鬼灯は影をつかまえながら疑問を口に出した。
「こんなところでなにをしている? 長月」


「睦月が最近家計簿抱えて唸ってることが多いから、すこしでも稼ごうと思うたんや……」
「長月……」
 睦月はつかつか歩み寄って、長月の襟を掴んですごんだ。
「騙されると思うなよ!? イレギュラーズの水着姿を売りさばこうとは失礼千万! 土下座して謝れ!」
「そ、そない怒らんでええやん! 謝ってるやん!」
「どこが!」
「落ち着け睦月」
「ですが頭領! 行人殿も腹立つでしょう!?」
「うん?」
 やっと助け出された行人は、海の家の心地いい日陰で武器商人の作ったウォッカ・アップルジュースを飲みながら涼んでいた。
「キレてないよ。俺をキレさせたら大したもんだよ。カジキマグロも竜宮へ帰ったし、めでたしめでたしだ」
 あいつら竜宮からきたんだ。一同はちょっと気が遠くなった。
「行人殿。お加減はいかがか?」
「そんなしみったれた顔すんな流星。あの程度耐えてみせるのが、男ってものさあ」
 シンデレラへ口をつけた流星は、頭を深く下げて謝意をしめすと、鬼灯の隣へ近寄った。
「おくが……ぁ、いや、章姫殿、お隣よろしいでしょうか!」
「もちろんなのだわ流星」
「ありがたきしあわせっ!」
 流星は喜びのあまりびっと気をつけをした。はずみでカクテルがこぼれかける。そこへさりげなくミケランジェロが助けに入った。王子様はやることがなにもかもスマートだ。
「しかし、こんな依頼でパンドラ、たまるのねぇ……」
 アーリアは深くため息をついた。遠い目で焼き鳥をかじっている。
「ヒヒ、疲れたろう巡酔の魔女。これでもお飲み」
「ああ~! ありがとう~! やっぱりお酒よね! いやな思い出はぜんぶアルコールが消してくれるわ!」
 コスモポリタンを優雅に味わえば、アーリアの髪はきれいな赤に染まっていく。
「領主殿」
「なぁに、ミケくん」
「誠に恐縮ですが、現在依頼内容は映像となって記録に残ります」
 アーリアのパンドラが砕ける音がした。
「で、肝心の水着写真はどこへ?」
「あたくし知ってますのよ」
 シャーリーテンプルを飲んでいるアーマデルの問いに、円香がふふんと得意げに笑った。
「黒いローブの方が即決で買っていったのですわ。なんでもカメラはその方の魔導具だそうで……あらアーマデルさま、砂に突っ伏しても海の生き物にはなれませんことよ?」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

伏見 行人(p3p000858)[重傷]
北辰の道標
アーリア・スピリッツ(p3p004400)[重傷]
キールで乾杯

あとがき

おつかれさまでしたー!

最近飲んでないので、おさけのみたくなりました。
みどりはアードベックが好きです。

いい思い出になったでしょうか?
またのご利用をお待ちしております!

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