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シナリオ詳細

<フイユモールの終>イレギュラーズを模したモノ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 『冠位暴食』ベルゼー・グラトニオス。
 その出会いは、イレギュラーズとしても複雑なものとなっている。
 覇竜領域と深い関係にあり、フリアノンでは里おじさまと親しまれていた彼は、里長らの相談役にすらなっていた。
 ベルゼーは覇竜を守る為、練達や深緑を身代わりにしようと動いていた。
 無論、その行いをイレギュラーズが見過ごすはずもなく、ベルゼーを力尽くで制止する。
 その後、ベルゼーは覇竜の果てへと退避した。
 例え、覇竜にとって功労者であろうとも、世界を滅ぼす可能性の高い存在を放置するわけにはいかない。
 フリアノンの里長『珱・琉珂』はベルゼー撃破を決定し、彼を追ってピュニシオンの森を調査する。
 ベルゼーがいるのは森の先、竜種の里ヘスペリデス。
 黄昏の似合うこの地へとイレギュラーズが向かう。
 ベルゼーの権能の規模をわずかに抑えられるという巨竜フリアノンの力の残滓……女神の欠片を集める最中、立ち塞がるのは多数の竜種達。
 ――この地を立ち去れ。
 竜種達がベルゼーに対する思いはそれぞれ異なる。
 だが、竜種達の思惑にかかわらず、ヘスペリデスの崩壊は確実に始まっていた。
 ベルゼーの『飽くなき暴食』は確実に、覇竜に在る何もかもを呑み込もうとする。
 続けて、他国にもその権能が及ぶのは間違いない。
 その前に、ベルゼーを止めねばならない。


 ヘスペリデスに滞在するベルゼーの元へと向かうイレギュラーズ。
 その手前には、3名の竜種が待ち構えていた。
「……やっぱり、行くのか」
 最初に声をかけてきたのは、麗しい女性の姿をした竜種・将星種『レグルス』アルディだ。
 彼女はベルゼーの身を案じており、先に向かうイレギュラーズを止めたい様子。
 だが、美男子風の竜種、将星種『レグルス』ティフォンがアルディを制する。
 後方の蛭の姿をした竜種、明星種『アリオス』ラードンは格上の2人の言うことを黙って聞いているのみ。
「この光景を守れるなら、我はそれでいいのだがな」
 ベルゼーはおそらく、イレギュラーズは負け、ベルゼーの権能は他国に向くだろうから、それでいいと考えていたのだろう。
 イレギュラーズはそれぞれ、自分達の信念を改めて語る。
「やれるならやってみるがいい」
 鼻で笑うティフォン。
 アルディは不満そうにイレギュラーズを睨みつけるのみ。
 多少力を示したところで、どうなるものでもないというのが彼らの見方なのだろう。
「ごめんなさい」
「でも、こうするしか……」
 亜竜種少女ペア、カレル・タルヴィティエ(p3n000306)、シェイン・ラーティカイネン(p3n000307)の2人は謝罪しつつ、自分達が里おじさまを止めるしかないと主張する。
 他メンバー達もまた、銘々に自分達の主張を行う。
 ベルゼーを何とかしなければならないというのは共通認識。
 それらを全て聞き、ティフォンはイレギュラーズから背を向ける。
「行け」
 もう竜種達は制止もしない。
 己の信念に従い、メンバー達は先へと進む。


 ベルゼーの承認を得て、メンバー達はその権能の内部へと乗り込む。
 腹の中は様々な物がいくつもごちゃごちゃになっていた。
 その全てを対処するのは困難な為、一行は一区画を攻略対象と見定めて突入する。
 そこはピュニシオンの森。
 日の光がかすかにしか入らぬ薄暗い視界で、木々が多数立ち並ぶ。
 見た目は現実の森とさほど変わらぬが、これはベルゼーの思い出なのか、あるいは……。
「「…………」」
 この場を掌握しているのは、『飽くなき暴食』にて顕現するウィンクルム。
 ベルゼーが食べた存在を模倣した存在なわけだが、それは竜種、亜竜、魔物、そして、人間らも対象となる。
 今この時、飛び込んだイレギュラーズとて例外ではない。
 この依頼に参加したチームメンバーが模倣された存在がウィンクルムとして、ベルゼーの権能によって一区画を掌握した存在とさせられているようだ。
「うそ……」
「私たちの姿が……」
 カレルやシェインが唖然としていたが、ウィンクルムはお構いなしに襲い来る。
 メンバー達もまた己の模倣と対し、その殲滅を目指す。
 この区画の権能を削り取り、『飽くなき暴食』を攻略する為に。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 <フイユモールの終>のシナリオをお届けいたします。

●概要
 ベルゼーの承認を得て、彼の権能内部へと入りこみます。
 主にベルゼーの思い出がメインとなっており、今回はピュニシオンの森が舞台となります。
 鬱蒼と茂る森の名に現れるのは、ベルゼーが食べた存在を模倣したウィンクルムの集団。
 竜種、人間、モンスターを問わず出現しますが、今回は皆様を模倣した存在が現れます亜竜種少女ペア含む)敵対対象として現れます。
 全て撃破することでベルゼーの権能を削り、放棄させることで脱出できます。

●敵……ウィンクルム×10体
 その姿、能力は参加メンバーと同じ姿をとっています。亜竜種少女ペアも含みます。
 能力は突入時のものをベースとするようですが、ベルゼーの人間に対する認識がさほど深くないこともあり、強さはざっくりとした形で模しています。
 それもあって、総じてやや強めな印象を受けます。
 ただ、ベルゼーはこちらの関係性なども一切把握しておらず、付け入る隙は大いにあるはずです。

●NPC
○亜竜種少女ペア
 参戦します。フリアノン出身、互いを友情以上の感情を抱くペア。

・カレル・タルヴィティエ(p3n000306)
 18歳、赤いショートヘアの長剣使い女性。
 軽装鎧を纏い、剣舞で周りを魅了しながら相手を殲滅します。

・シェイン・ラーティカイネン(p3n000307)
 17歳、緑のロングヘアを揺らす術士の少女。
 樹でできた長い杖の先端にはめ込んだ魔力晶から炎や雷、治癒術を使います。

○竜種
 これまで、拙作依頼にて行く手を阻んできた竜種達です。
 思惑はそれぞれ異なりますが、イレギュラーズがベルゼーとどう対するのかを見守ることにしたようです。

・竜種・将星種『レグルス』:アルディ
 人型は麗しい女性。元の姿は複数の頭を持ち、毒を操る竜種。
・将星種『レグルス』:ティフォン
 人型は美男子。蛇の尾を下半身とし、嵐を操る竜種。
・明星種『アリオス』:ラードン
 ヒルの姿をした竜種。黄金のリンゴの守護者。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <フイユモールの終>イレギュラーズを模したモノ完了
  • 模倣は突入した物全てに
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年07月24日 22時06分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
Lily Aileen Lane(p3p002187)
100点満点
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
蒼穹の魔女
エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)
流星と並び立つ赤き備
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
ラムダ・アイリス(p3p008609)
血風旋華
ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)
母になった狼
ジュート=ラッキーバレット(p3p010359)
ラッキージュート

サポートNPC一覧(2人)

カレル・タルヴィティエ(p3n000306)
シェインの相方
シェイン・ラーティカイネン(p3n000307)
カレルの相方

リプレイ


 ベルゼーの腹の中へと突入したイレギュラーズ。
 たどり着いたのは、ピュニシオンの森を思わせる場所だった。
 『祝福(グリュック)』エルス・ティーネ(p3p007325)が闇の帳を下ろして、暗視を活かして周囲を見回して敵の接近を警戒する。
「思い返せば、随分と危険な場所までカレルちゃんやシェインちゃんと一緒に来たもんだ」
 『ラッキージュート』ジュート=ラッキーバレット(p3p010359)は亜竜種少女ペア、カレルとシェインと共にまさかこんな場所にまで来てしまうなんてと感嘆する。
 ただ、ベルゼーの権能……一部だろうが、それはすぐに侵入者であるメンバーらを感知したようだ。
「うそ……」.
「私たちの姿が……」
 亜竜種少女ペアが驚くのも無理はない。
 この場の権能を守るべく配備されたウィンクルムは、突入したイレギュラーズ10名と同じ姿をしているのだ。
「やれやれ、アタシ達のそっくりさんまで出てくるたぁね」
「ふぇ……自分自身との戦いとか、悪趣味なのです……」
 『揺蕩う黒の禍つ鳥』エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)に『volley』Lily Aileen Lane(p3p002187)が権能によって作り出されるウィンクルムという存在に些か嫌気すら差してしまう。
「えぇ!? 機動力があって苦労して捕まえても防御能力がそこそこ高くて中々ダメージが通らない面倒な敵がいるってほんとっすか!?」
 奇遇だと叫んだ『救急搬送班』ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)はまるであたしみたいだと笑うが、冗談は程々に。
 何せ、ウィンクルムはメンバーの能力もある程度反映しているはずなのだ。
「ボク達の模倣体とはね……イレギュラーズは百人百様だしね……これはちょーっと面倒かも?」
 『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)はこうした模倣体をポコポコ生み出すベルゼーの権能に舌を巻く。
「困ったもんだね……はてさて、どうしたものか……」
 仲間達の言葉を聞いていた『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)も、自分達をコピーした存在に複雑な気持ちを抱くが。
「ベルゼーの権能を削る為にも、倒すしかないね……!」
「自分を相手取るなんて変な感じ」
「自分たちのコピーか……」
 エルスの言葉に、『蒼穹の魔女』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)はやり辛い相手と評するも、ある程度手の内は把握できてるわけだと語る。
「でも相手はあんまり連帯性は無さそうかしら、ね?」
「なら、きっちり連携できるこちらが負ける道理はないね!」
 エルスは本物は手を繋いだままなのに対し、コピーは離れた位置にいる亜竜種少女ペアの姿に注目すると、アレクシアがチームで連携して撃破するよう皆に促す。
 イレギュラーズとして活動する中で、自分達を模す敵はこれまでもいなかったわけではないと思い返すエルスは、いつも通り連携をとれば勝てない相手じゃないと確信する。
「だからと言って油断材料にはならないけれど……どんな敵であろうといつも通り倒してみせますとも!」
 意気込むエルスに、皆同意する。
 それに、ウィンクルムが模倣したのはイレギュラーズ10人。サポーターまで反映してはいないようだ。
「こんにちはー、ファゴットだよ! よろしくね!」
 クマのぬいぐるみの見た目をしたファゴットはヨゾラのコピーに目を見開くが、自分のコピーが不在なことに少し残念さも感じていたようだ。
「こんな危険な場所までついて来てくれてありがとな、女神サマ」
「まさか竜の腹の中なんてね」
 微笑を浮かべる女神アンネマリー。
 相手の裏をかく為には敵にとってのイレギュラーズは必要。
 いくら自分のコピーがいても、女神サマがついてるって所までは真似できないだろうと考えていたジュートだが、想定通りだったようだ。
 彼らの協力もあって数では勝るが、ベルゼーの権能がどのように作用しているか……。
「この戦い……負けられない!」
「私たちがベルゼーさんに勝てるんだってことを示すためにも、ここはバッチリ決めなきゃね!」
「自分のケツは自分でもつしかないっすね……自分の模倣体に追いつけるのがあたしだけならあたしがケリつけないとっすね」
 新たに決意を語るLilyに、アレクシア、ウルズと次々に戦いへの意気込むを口にする。
 ウィンクルム達は今にも攻撃を仕掛けてきそうな雰囲気だ。
 作戦を再確認していたイレギュラーズも応戦の構えをとって。
「まあ鍛錬になると思えばいいか。これを全部倒してベルゼーの権能とやらをちょっとでも削ってやるか!」
 ここへ入る直前に出会った竜種達にも大見得切った手前、何が何でもやり遂げるとエレンシアは豪語する。
 ベルゼーのことを考え、ジュートもまた複雑な心境を語るが、それ以上にワクワクしているとのこと。
「俺達もっと成長できるよ!」
 だから、竜種の奴らに示すとジュートは断言する。
 ――俺達が奇跡を起こせる存在だって事を。


 イレギュラーズの姿、能力を映したウィンクルム達。
 個別にバラバラで攻めてくる自分達のコピーに対し、イレギュラーズは……。
「此処はセオリー通りに攻めるとしようか……」
 ラムダが言うように、一行は回復役となる相手から落としていく作戦。
 互いの能力の話を参考にし、メンバー達は対処に当たる。
 真っ先に動くエルスが偽ヨゾラへと簡易封印を施し、さらに近場にいた夜明けを切り開く激情を偽シェインへと叩き込む。
 反撃を繰り出す素早いウィンクルムら。やはり、偽エルスや偽エレンシア、偽ラムダといった相手が仕掛けてくる。
「仲間と同じツラしてるから攻撃しにくいな。……なんて殊勝な事アタシが言うとでも思ったか?」
 それらの攻撃はウルズが引き付けていたが、一部は低空飛行していたエレンシアが受ける。
 そのエレンシアは、仲間と攻撃対象を重ねて。
「騎兵の先駆け、赤き備の力を見せてやる!」
 エレンシアは相手に神代の膂力をもって握った滅刀アポカリプスを振り下ろす。
 出し惜しみはなし。攻撃集中するエレンシアは初手から全力でぶっ飛ばしてウィンクルム討伐を目指す。
「あまり時間はかけられないからね。最初から飛ばして征く!」
 ラムダも思うことはあるが、まずは術式を展開し、敵陣に精神感応を伴う斬撃を浴びせていく。
 やはり、皆回復役へと攻撃を集中させている。
「僕のコピーが本当に厄介だよなぁ……責任取ってぶちのめすよ!」
 それが自分と同じ顔をした相手に集まれば、ヨゾラも気にかかるというもの。
「悪いけど……、偽の僕が皆に害を為すのは防ぎたいからね!」
 うまく、ウルズが偽物を食い止めてくれていたが、ヨゾラは本当に厄介と感じる自らのコピーへと迫り、神秘的破壊力を込めた魔力を至近距離から撃ち込む。
 反応は上々、僅かに怯んだヨゾラの偽物へ、森の中という地の利を生かすジュートも仕掛ける。
「危険な場所だから、ちゃんと俺より後ろに下がっててくれよ」
 ジュートは加護を与えてくれる女神サマへと下がるよう促す。
 木を遮蔽物としながらもジュートは目標目掛けて精密な動きで接敵し、素早く付け爪を薙ぎ払って相手を傷つける。
 その背後からはカレルも剣舞を披露し、シェインも雷を落として援護。息の合った掛け合いを見せつけた。
 一方、コピーはバラバラに攻撃してくるが、力量は本人と同等かそれ以上。
 赤き花の如き魔力塊を拡散させたアレクシアも、先に前へと出たメンバーに引き続いて後続の相手の攻撃を引き付ける。
(私のコピーはまともに相手すると面倒なので……)
 とりわけ、アレクシアは自らの偽物を一旦放置し、抵抗力が低い相手の気を引く。
 続くLilyは戦況を見定めつつ動いて。
(それにしても、皆さん綺麗だったり可愛いので、眼福なのです)
 自らの聖域と棘の鎧で包む間、女性メンバーの容姿を目にしていたLilyは張り切っていた。
 先に進む為にと彼女はパイルバンカーで牽制しつつ、毒撃を食らわしていく。
 攻撃しながらも、Lilyは自身のコピーも自分と同じ動きをしているのを見て、やはり地道にこちらを削る戦法で動いていたことに気づく。
(相手にしたら面倒くさいのですね私……)
 客観的に自身を見て、思わずしょげてしまうLilyなのだった。


 ウィンクルムであるメンバーのコピーは比較的力で攻めてくる嫌いがある。
 それはそれで脅威だが、やはり連携が取れていない点はメンバーにとって付け入る隙となる。
 前線のアレクシアは自らのコピーの動きを注視しつつ、攻めてくるコピーの攻撃を矢面に立って受け止める。
 ウルズもまた半数近くを受けており、そのアレクシアに向かう攻撃を肩代わりしていた形だったが。
(あたしが相手にいるって……)
 自分のコピーが近づいてくれば、ウルズも怪訝そうに視界に入れる。
 現状、どちらのウルズも大したアクションは取らず、安全マージンが取れた時だけ動くだろうと踏んでいた彼女はしばらく偽物を放置することにしていた。
 その間もメンバー達の攻めは続いており、ヨゾラが自身の偽物を追い込む。
「偽物ができるのは、ちょっと複雑だね……べあべあきーっく!」
 飛び上がったファゴットが偽物を足止めしたところで、ヨゾラ本人が仕掛ける。
 魔術紋を光り輝かせたヨゾラは、同じく魔術紋を光らせた相手に肉薄して。
「君達にどんな思いがあるかはわからないけど……姿そのままの偽物を作られるのは思う所があるから、ね!」
 零距離から叩き込むヨゾラの極撃。
 応戦しようと拳を輝かせていた偽物だったが、本物の一撃をもろに受けてその全身が爆ぜ飛んでしまう。
 すぐさま、次なる対象へと移る面々。
 偽物でも、シェインを攻撃するのに苦しい表情を見せていたカレル。
 そんな彼女へと後ろから寄り添う本物のシェインに、カレルは小さく口元を吊り上げ、偽物へと切りかかる。
 傍にいたジュートが追撃をかけ、致命傷を負った偽シェインに三連撃を刻み込むと、衝撃に耐えられずに消し飛んでしまう。
 偽カレルが微動だにしないことに、シェインが小さく。
「やっぱり、あれはわたくし達とは違うよ」
「そうだね」
 自分達の絆を確かめ合い、亜竜種少女ぺアは次なる敵を相手取る。

「特異運命座標の模した敵だけあってなかなか厄介ね……」
 ここまでは順当に戦えているが、気を抜けば突破されかねないとエルスは考える。
「さて、次はどう出てくるかしら!」
 次なる標的は自分の偽物の番。
 そのエルスが出る前に、仲間達が彼女の偽物に飛び掛かる。
「皆の姿を殴るのは、内心心苦しくはあるけど……姿をコピーした敵、手加減はしないよ!」
 その最中、自らの偽物をすでに倒したヨゾラも星空の泥を振りまく。
 それでウィンクルムの足が止まれば、アレクシアが改めて誘争の赤花で複数の相手に自らへと敵愾心を抱かせる。
 近づいてくるなら、アレクシアは極大の魔法陣を展開して一気に前方へと光の矢を放つ。
 偽エルスは赤い闘気を振るっていたかと思いきや、ここにきて簡易封印をアレクシアへと放つ。
 高い抵抗力で跳ねのけたアレクシア。
 エルスは横目で仲間の様子を見つつ、魔力障壁を展開して赤い闘気を直接偽物へと叩きつけた。
 だが、偽エルスは僅かに堪える。
(やっぱり……)
 厄介極まりない相手。
 エルスは偽物がさらに簡易封印を使おうと腕を伸ばしてくる。
「模倣体とはいえ仲間の顔した相手と命の盗り合いとなると……ちょっとねぇ……」
 ラムダは時間稼ぎは徐々に厳しくなると踏んでおり、相手をする中からランダムに相手を……と考えたのがたまたま偽エルス。
 他のウィンクルムを相手にするのと並行し、ラムダは魔導機刀で鋭き剣閃を繰り出し、仲間の偽物を仕留めてみせた。
 そのラムダとエレンシアの偽物が次なるターゲットだが、メンバーはすかさず後者を選ぶ。
 数は減ってきていたが、それでも自分達と同等以上の力を持つ相手では、防ぐだけでも厳しい。
 ウルズも基本的に仲間へと飛んでくる刃や魔力を受け止めるだけで手いっぱい。
 自分の偽物は遠距離から攻撃を続けることが多い。
 発してくる雷撃が面倒だが、耐えられないほどではない。
「うぅ、でも敵だと解っていても、可愛い子を攻撃するのは……」
 自分自身と打ち合う覚悟で。
 Lilyは少し涙目になりながらも、偽エレンシアへと致命の剣を突き入れる。
「ごめんね。ごめんね……」
 その刃は深く、深く、偽物の体に食い込む。
 だが、相手はそれでもなお、切れ味無双の一閃を繰り出す。
 なんとか踏みとどまるLilyの傍で、エレンシア本人が前に出て。
「アタシ等に似せただけのただの作り物のまがい物風情が! アタシの刃、その程度で止められると思うな!」
 偽物が使った技で相手が追い込まれていることを確信したエレンシアは膂力をもって刃で己の偽物を断ち切ってみせた。


 ウィンクルムは数と力でごり押すような攻めを見せていたが、数が徐々に減ってきたことで勢いに陰りが見え始める。
 ここまで失速することなく飛ばし続けていたラムダは、次なる標的、偽ラムダにヘイトをとり続けて。
 邪剣でこちらの動きを止めようとしてくる偽ラムダの一撃に、痺れを覚えたラムダはすぐさま自己修復する。
(大丈夫、ここはボクが)
 後の先をとったラムダは偽物に邪剣を返す。
 加えて放った呪王の腕でつかんだ偽ラムダはその手の中で消えていく。
 気づけば、もう相手は半数。
「残りの中で、偽アレクシアは後回しにした方が良さそうだな」
 エレンシアの提案もあり、倒せそうな相手から攻めるメンバー。
 まずはエルスは必殺のクリムゾン・インパクトを偽カレルに叩き込んで霧散させる。
 勢いのままに、周囲の仲間を捉えつつ恐怖を打ち払うLilyが仲間の助けを絵ながらも、毒で蝕む己の偽物へと致命の一撃を与える。
 互いに棘が無数突き刺さっていたが、回復をあまり考えない偽物が早く散っていく。
 だが、息つく間もなく、飛んでくる光の矢。
 さらに三連撃が振るわれ、Lilyは運命の力に縋ることなく倒れていく。
 己の偽物を後回しにと考えていたアレクシア、そして、運命の女神がついているジュート。
 2人の偽物のターゲットが運悪く重なってしまった。
「ここでもまたアンラッキーが……」
 ジュートはヨゾラやシェインが手当てに動こうとするのを横目で見つつ、カレルと共に己の偽物に闘志を燃やす。
「偽物にもたらす幸運などないのよ」
 アンネマリーの力を得たジュートは空中を舞うカレルの連撃に続いて、猪、鹿。蝶と三度刃を振るうことで、偽ジュートを撃破する。
「さすがだな」
 女神がついている以上、負けはない。
 ジュートはそれを再確認していた。
 
 残るウィンクルムは2体。
 機動力の高い偽ウルズは捉えるのが骨だ。
 本物のウルズが食らいつき、何度もその動きを止めるべく仕掛ける。
「お互いしぶとさだけは折り紙つきっすからね?」
 ウルズは一気に距離を詰めて偽物の防御を崩そうとする。
 ここまで足を活かした戦い方で攻めていた偽物の足が止まれば、こちらのもの。
「敵である以上情け容赦なく遠慮なくぶっ飛ばすだけだぜ!」
 ウィンクルムに体力を削られていたエレンシアは先程、偽物が使っていた技と同じく、切れ味無双の一閃を繰り出し、偽ウルズを追い込む。
(あたしの防御技術はそこそこ高めだから)
 硬直すれば、動き続けるウルズは仲間と合わせて己の偽物に攻め入り、その慣性をもって断ち切る。
 残る偽アレクシア。
 タンク役となっていた本物のアレクシアに対し、コピーは他のウィンクルム同様、攻めを中心に動いていたことでこちらの怒りを買う機会は少なかった。
 一方で、自らの傷は癒すなど、ここまで残って抵抗を続けるのは、やはりベルゼーの権能故か。
 アレクシアはどれほどの精度でコピーされているのだろうと考えて戦いに臨んでいたが、確かに身体能力や技量などは自分達と同等以上だと認める。
 ただ、その戦法には一貫性がない。与えられた能力をランダムに使っているように感じる。
 それを踏まえ、アレクシアは再び誘争の赤花を使おうとする自らの偽物を見据える。
「あなたの弱点は私がいっちばんよくわかってるんだから!」
 幻朧の鐘花で偽物を押さえつけるアレクシア。
 目を見開く偽物は魔法陣を展開する。
 ウィンクルムに本物となり替わろうなどという意思など存在しない。
 あるのは、ベルゼーの権能を守るというその一点のみ。
 放出された光の矢に貫かれたアレクシアだが、彼女もまた魔法陣を展開して光の矢を撃ち返す。
 刹那、偽物が笑ったように見えたが、すぐに消し飛ぶ。
 ここまで戦ってきたウィンクルム達のベースはイレギュラーズだ。
 自分達がベルゼーの権能によって生み出された存在だと認めながらも、ベルゼーの為、自分達が消えることを望んでいたのではないか。
 メンバー達はそう考えてしまうのだった。


 全てのウィンクルムが消えて。
(自分と戦い機会って言うのはこれまで何度あったかしら。そこから私は強くなれているのかしら……)
 エルスは幾度の自身との戦いを皆と潜り抜けてきたが、同じイレギュラーズは強い者ばかりで直接実感はないようだが。
(でも、きっと強くなれていると信じるわ)
 少なくとも、召喚された当初よりは進歩してるよねとエルスは自問していた。
「これで権能が大分削れてると良いなぁ……」
「ああ、少しでも削れただろ」
 Lilyを手当てするヨゾラの呟きに、エレンシアが応える。
 この空間が少しずつ溶け始めたことで、皆そうであってほしいと改めて願わずにはいられない。
 それもあって、メンバー達はベルゼーの腹から脱出する。
「折角だから……」
 そこで、Lilyも戦いが終わって一息つく亜竜種少女ぺアへと近づいて交流する。
 微笑む2人は揃って手を差し伸べ、Lilyを交えて語らいを始めていた。
 別の権能削りへと突入するイレギュラーズ達の手前、一度距離をとるメンバー達に竜種らが視線を投げかける。
「僕は初めて見るなぁ、竜種。嬉しい!」
 ヨゾラの連れたファゴットは早速、交流しようと話しかけるが、相手は手を振り払うような所作をする。
 ベルゼーの一件が解決すれば、彼らも本当の意味で心を開いてくれるだろうか。
 ともあれ、今は冠位魔種を何とかすべく、イレギュラーズは全力を尽くすのである。

成否

成功

MVP

ラムダ・アイリス(p3p008609)
血風旋華

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPはウィンクルム2体を倒した貴方へ。もう一方、2体倒した方にも称号をお送りしております。
 今回はご参加ありがとうございました!

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