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シナリオ詳細

<黄泉桎梏>呪われた鼠と四尾の妖狐

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――仔羊よ、偽の預言者よ。我らは真なる遂行者である。
 ――主が定めし歴史を歪めた悪魔達に天罰を。我らは歴史を修復し、主の意志を遂行する者だ。

 天義に降りた新たな神託は、国内に激震をもたらす。
 騎士団員はその真意を解明すべく動き出すが、影の侵攻は国外へと向いていて。
 隣の幻想に始まり、海洋、練達。
 そして、遠く豊穣の地にまで、その魔の手は伸びてきていた。

 豊穣郷カムイグラ。
 それは絶望の青を越えてから存在が混沌に認知され、空中神殿から転移が可能となった海向こうの地。
 つまり、『イレギュラーズが絶望の青を越えていなければ』、存在し得なかった場所。
 八百万は獄人を虐げ、其の儘、閉じた世界はひっそりと終えるはず……だった。
 故に、遂行者は豊穣郷が存在することすら許してはいない。
 ――カムイグラの存在する『黄泉津』島も発見されてはならぬものであった。
 遂行者達は黄泉津を消滅させるため、帳を下ろす。
 何故、双子巫女が産まれたのか。汚れを祓いきれず土地の神霊を暴走させるため。
 神霊に蓄積された穢れを払えず、蔓延したそれが国を滅ぼすが為に――帳の内部では溢れ出す穢獣達が活動を始める……。


 遂行者の次なる矛先は豊穣の地へ。
 なんでも、彼らは『黄泉津』島の発見を許さず、その滅びすら画策しているという。
 通常通り、核となるものを使い、帳を下ろす遂行者。
 その内部には、終焉獣らが蠢くのはいつものことだが……。
「遂行者は神の国で呪詛を発動させたことがわかっています」
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が天義のテセラ・ニバスに集まったイレギュラーズへと話す。
 遂行者の名前はナーワル。かつては独立都市アドラステイアでティーチャーとして子供達の指導に当たっていた女性だ。
 以前の戦いで倒したはずの彼女は遂行者となって世界中を飛び回り、帳を下ろして神の国を拡大しているのだという。
 しかも、ナーワルはこの地で一時期流行っていた呪い……呪詛を使ったのだという。
「狙われたのは、神の国へと迷い込んだ楓さんという妖狐女性です」
「楓さんが!?」
 カイン・レジスト(p3p008357)が驚きの声を上げる。
 以前、呪詛について調べていたのは知っていたが、まさか彼女が狙われることになるとは……。
 ナーワルは元は試しと、この地で知った呪詛について実践してみたようだ。
 つまり、楓はとばっちりを受けたということになる。
 先に迷い込んで『異言を話すもの(ゼノグロシアン)』となり果てた鬼人種達に、ナーワルが連れ込んだ終焉獣。
 そして、呪詛によって生み出された忌鼠と呪鼠が楓を追い込まんとしている。
「楓さんの救出はもちろんですが、どこかにある核の破壊も必須です」
 現状は小規模だが、放置すれば、豊穣を滅びに導こうとするのは明らか。
 取り急ぎ、この事態を収拾したい。
「それでは、よろしくお願いいたします」
 それぞれ、決起の声を上げるメンバー達は帳内部、『アリスティーデ大聖堂』より『神の国』へと赴くのである。


 神の国。そこは豊穣の街並みを再現していた。
 どこかに用意された核によって展開されたその空間は一見すれば、和風建築が並ぶ異国情緒を感じさせる街……なのだが。
 聞き取れないような言語を呟く黒い人影が蠢き、巨大な頭蓋が浮遊するという異様な光景だった。
 そして、それらはやがて集まって。
「ようこそ、神の国へ」
 黒い鎧を解き放ったはちきれんばかりの体を申し訳程度の修道服で包む女性遂行者ナーワル。
 彼女は微笑みながら、四尾の妖狐女性、楓に詰め寄る。
「ずいぶん手厚い歓迎じゃないか」
 楓も負けじと返すが、劣勢なのは明らか。
 研究者である彼女は自衛できる程度の妖術を使うことができる。
 それでも、多勢に無勢。楓は相手の様子を窺うことに。
「呪詛って知ってますか?」
「ああ、きみよりも詳しいと思うよ」
 呪詛の研究に余念のない楓だ。どこから来たのか分からぬ相手よりも詳しいという自負がある。
 それならとナーワルは笑い、後ろから半透明の大きな鼠を呼び出して。
「実はもう呪詛を使った後なんですよ。あなた様に、ね」
「…………」
 それがどういうことか、楓は十分すぎる程に知っている。
 目の前の鼠……忌鼠と呼称しよう。それは楓を呪い殺すまで執拗に攻撃を仕掛けてくるのだ。
「それでは。結果を楽しみにしています」
 ウインクしたナーワルは何か光るものを地面に投げつけてから、その場を離れていく。
 代わりに、巨大な頭蓋骨の容姿をした終焉獣に、数名の『異言を話すもの(ゼノグロシアン)』が楓を取り囲む。
「さあ、どうしようか」
 孤立無援の状況に、楓の額に汗がにじむ。
 だが、そこに駆けつけるイレギュラーズ達の声に、キツネの耳がぴくぴくと動く。
「本当、彼らはいい時にやってきてくれる……」
 口元をつり上げた楓はやれるだけやってみようと、妖術を行使して襲い来る敵集団に対し始めるのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 <黄泉桎梏>のシナリオをお届けします。こちらは、カイン・レジスト(p3p008357)さんの関係者依頼です。
 影の一団の活動は遠く豊穣の地にまで及んでいるようです……。

●目的
 妖狐女性、楓の救出。
 神の国に存在する核の破壊。

●敵
〇忌……忌鼠(いみそ)×1体
 全長2mもある巨大なネズミ。
 半透明化しているのは、忌となった影響です。ただ、通常の妖同様に倒すことは可能です。
 鋭い牙、毒爪、掴みかかり、尻尾での締め付けを行うなど、近距離主体で素早く距離を詰めて攻撃してきます。

○終焉獣……憤怒の頭蓋×2体
 終焉獣は全身が黒い獣で、『世界を構成するデータを食べる』ことができます。
 全長4mほど。人の頭蓋骨を模したような姿をしています。
 直接噛みついてくるだけでなく、歯ぎしりや怨嗟の声、跳躍してからの叩き潰し、奇怪な笑いと多様な攻撃を仕掛けてきます。
 呪いの言葉を浴びせかけ、周囲を浸食するのが確認されています。

〇異言を話すもの(ゼノグロシアン)×5体(+α)
 高天京在住の鬼人種達。いずれも、和服を着用した成人男女のようです。
 狂気に陥って『異言(ゼノグロシア)』を話すようになっています。
 武器は持たず、素手で襲い掛かってきますが、その力は異質なるモノの影響によって増大されています。
 総数は不明。戦況によってその数は増加しますが、生かしたまま倒すことで全員が正気に戻せることがわかっています。

〇遂行者:ティーチャー・ナーワル
 修道服を纏った旅人女性。目立つ容姿を隠すべく鋼鉄の鎧を纏うことも。
 アドラステイアにて、下層の子供達にファルマコンの教えを説く一方で、潜水部隊を率いてスパイ活動を行わせていました。
 この場にナーワルの姿はありませんが、彼女の画策により妖狐女性は窮地に陥っています。

●NPC
○楓
 豊穣に住まうモノクルをつけた四尾の妖狐女性。様々な分野に通じている博識な女性。カイン・レジスト(p3p008357)さんの関係者です。
 今回も呪具を生み出した魔種との戦いの顛末を見届けるべく、協力を願い出てくれます。
 戦いは好みませんが、4本の狐尾に異なる神秘の力、『識』『見』『変』『軽』の力を宿し、行使できます。
 自衛する力は充分持っており、援護攻撃や支援回復など戦いの援護もしてくれます。

●状況
 豊穣、高天原の街中の一通りを基に神の国が形成されています。
 和風の建物が立ち並んでおり、巻き込まれた一部の大人が共に神の国へと迷い込み、「異言を話すもの」となり果てています。
 その中には、妖狐女性、楓さんの姿があり、遂行者が用意した忌や終焉獣らに囲まれています。
 また、通りのどこかに神の国を維持するための核があるはずです。
 事後、これを破壊すれば神の国は消え、楓さんや救出できた人々を元の世界へと戻すことができます。
 
●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします!

  • <黄泉桎梏>呪われた鼠と四尾の妖狐完了
  • 妖狐女性を呪詛が襲う……!
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年07月17日 21時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

志屍 志(p3p000416)
天下無双のくノ一
サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花
ロレイン(p3p006293)
カイン・レジスト(p3p008357)
数多異世界の冒険者
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
ファニー(p3p010255)

リプレイ


 神の国へと至ったイレギュラーズは、豊穣の一部をベースとした区画へと突入する。
「神の国、カムイグラまで来たのね」
 ロレイン(p3p006293)は海洋を……絶望の青を越えていなければ観測されていない国だと再確認し、神の国にとっては修正案件だったのだろうと推察する。
「だったら、神の国もかつての手段で入国してほしいものだけど」
 影の軍勢も何らかの手段で……、影の天使か、あるいは終焉獣か、それとも遂行者自らかがこの地に触媒をばら撒いているのは間違いない。
「僕らイレギュラーズの冒険の結果を否定するだけでも許せないけど、まさか楓さんも巻き込まれていたなんてね……!」
 『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)は良き友人である妖狐女性が巻き込まれたのが絶対に見過ごせず、相手の思惑を覆してやりたいと語る。
「その為にも、まずは急がないとね!」
 感覚を働かせるカインに皆同意し、銘々が対策をとる。
「さぁて、まずは妖狐の姐さんの位置を特定しないとな」
 周囲は夜とあって、『Star[K]night』ファニー(p3p010255)は暗視を働かせ、視界を広く持ってそれらしき姿を捜すのと合わせて建物の並びを確認する。
「ファミリアーが救出対象や核を見つけられたら良いのですが」
 『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)もファミリアーでネズミを召喚して捜索させつつ、仲間と双方合わせて捜索する。
 主に捜索をメインとする仲間とは別に、奇襲を警戒して索敵を軸に動いていたのだ。
「妖も狙うとは思わなかったが……」
 練達上位式で飛行種の式神を作製させていた『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)は敵の目的について考察する。
「呪詛の実験のためか、果てさて核を見つけられないようにするためか」
「この国の対立でも煽っているのかしら。精霊種と鬼人種の対立はもう古いでしょう?」
 最後に起きた神逐、アドラステイアにもいた肉腫達……ザントマンの跳梁……。
 ロレインが思いつく限りの理由を口に出すが、皆、確信を持った答えがあるわけでもなく、互いの考えを聞かせ合う形に。
 だが、それもいくつもの影が動く現場を発見と共に中断される。
『こっちからの方が近いな』
 周囲に一般人がいないか見回していたファニーがハイテレパスを使って呼びかけると、『金庫破り』サンディ・カルタ(p3p000438)が装甲蒸気車両『グラードⅢ』を最短距離で走らせる。
「人が襲われてたら、助けなければいけませんね」
 フルールの言葉に応じ、サンディが車から顔を出して素早く現場へとカードを投げつけた。
「これは……」
 救出対象の妖狐女性、楓は飛んでくるカードに目を見張る。
『東に助けを呼ぶレディあれば、颯爽と駆けつけてたちまち救い出し、西に囚われの……』
 そんなフレーズも考えていたサンディだったが、続くいい言葉が思い浮かばず、締まらないと判断して簡潔に記していて。
『サンディ・カルタ、参上!』
 終焉獣や異言を話すものと化した豊穣民数名が楓を囲む中、地面に突き刺さったカードにはそう記されていた。
「本当、彼らはいい時にやってきてくれる……」
 小さく笑う楓のところへ、新たな乱入者が。
「やあ、初めましてだね、楓さん。俺は史之、冬宮の物だよ。よろしくしてね」
 さらに空から舞い降りた『若木』寒櫻院・史之(p3p002233)が名乗り口上を上げ、異言を話すものを中心に引き付けようとする。
「お初にお目にかかります。今回は災難でしたね」
 瑠璃が立て続けに挨拶するが、さすがの楓も少なからず混乱していたようだ。
 忌鼠を含め、敵対勢力が2人に注目する間に、残るメンバー達も一気にそこへと飛び込む。
「まぁ、今回は奪いに来たってわけではねーんだけど!」
「楓さん、無事かな!?」
 やや遅れたが、到着したサンディが颯爽と登場し、カードの主だとアピール。
 そして、カインの顔を認めた楓の表情が緩む。
「ああ、大丈夫だよ」
「無事そうなら良かった……」
 安堵するカインだが、事態はまだ緊迫したままだ。
「だいじょうぶ、必ずここから助け出すよ。心強い仲間もいるし」
 史之はできるだけ落ち着かせようと、楓に優しい言葉でこう続ける。
「それに俺はね、言ったことは守るようにしてるんだ」
 その史之の言葉を裏付けるように、皆身構え、臨戦態勢をとっていた。
「神逐以来だな! 前衛は俺たちに任せて今回も援護任せたぜ!」
 カイン同様、錬も面識があるようで、楓に助力を請うと。
「巻き込まれついでで恐縮ですが、可能な範囲で結構ですので支援をお願いできますか?」
「ああ、後で説明頼むよ」
 届く範囲だけでも十分という瑠璃の要請に、楓は快く了承する。
「何にせよ、手早く敵を蹴散らさないとな!」
 錬は強く意気込むが、ロレインが言うように中には狂気に陥った一般人もいる。
「今回のゼノクロシアンは現地の住民、殺すわけにはいかないわ」
 討伐すべきは頭蓋の見た目をした終焉獣。そして。
「忌鼠、確かこちらでも呪いの魔獣のようなものでしたか」
 そんなものが現れるなんてと、フルールは呆れる。
 豊穣でのことを間違った歴史であり、かつて、ザントマンがやっていたことが成功することこそ、豊穣での正しい歴史……などと遂行者などは語っているのだろうかと。
「イレギュラーズの存在がなくたって、対立だけが続くとは思えないのよね……」
「ギギギギギ……!!」
 ロレインの呟きに、忌獣が唸る。
 呪詛を使った遂行者の狙いは間違いなく楓。
 忌鼠は彼女を狙い、ギラギラと目を光らせる。
「それじゃ、一緒にもう一頑張りして、相手の計画を台無しにしようか!」
 カインの掛け声と共に、メンバー達は目の前の相手と直接対し始めるのである。


 空に錬が飛ばした式神が周囲を偵察する中、イレギュラーズは楓を襲う敵集団の対処に当たる。
 飛行する史之が太刀「衛府」を抜き、秋宮流の秘技「秋霖」で敵を切り裂く。
 さらに、カインが楓に向かって飛び掛かる忌鼠目掛け、自らに降ろした魔人の力の片鱗を魔力として放出した。
 空中で仰け反った忌鼠だが、すぐに着地して態勢を立て直す。
「肝が冷えたけど、大事は無いみたいで何よりだよ」
 ただ、その間にカインは改めて、楓の無事を再確認して。
「……でも、無理はしない様にね。僕が言えた事でもないけどね!」
「お互い程々に、だね」
 笑みを浮かべ、言葉を交わし合う2人はすぐ敵に向き直る。
 しつこく牙を剥く忌獣がカインへと食らいついてきた傍で、フルールが敵陣へと目を光らせる。
「とりあえず、目下の敵は忌鼠とワールドイーターですね」
 呟くフルールは敵を捕捉したまま、ギフトによって精霊と融合して半精霊化した。
 悠炎、清炎という2種の炎をフルールが纏い、戦闘準備を整える傍らで、瑠璃が前線に出て戦いの鼓動を高め、終焉獣……巨大な憤怒の頭蓋を2体纏めて煽るように注意を引きつける。
 ギリギリギリギリ……。
 耳障りな歯ぎしりを立てる終焉獣達は空虚な瞳を瑠璃へと向け、その身で叩き潰そうとしてきた。
 さらりと瑠璃が避けたところで、ファニーが頭蓋の片割れに焼き焦がす三番星を落とし、さらにもう一体に指先より発した一番星を叩き込む。
 終焉獣は空間を浸食し、新たな異言を話すものを生み出す恐ろしい存在。
 その動きを止めておくに越したことないと、ファニーは終焉獣らに星を叩き込む。
 さらに、式符より絡繰兵士を鍛造した錬が戦場を支配せんとする。
 同時に、錬は魔鏡も鍛造し、終焉獣を黒い閃光で包み込み、強い呪いを浴びせていく。
「忌鼠を倒していけば、やがて辿り着けるかしら……?」
 呪詛が鼠を媒体としているのならば、鼠が侵入しやすい場所に神の国を展開する上での核があるのではないか。
 ロレインはそう考えながら、異言を話すもの達へと神気閃光を浴びせかけた。
 ――かつての対立のように、妙なことを喚きながら追い詰めるのは正しいとは思わない。
「「boaiweyp98yaweiut@a09ug……」」
 まず、彼女は異言を紡ぐ彼らを無力化しようとする。
 その戦いを、サンディはグラードⅢに乗ったまま、オルド・クロニクルを展開して戦場を保護しつつ見守る。
 意図せぬ飛び火を防ぎ、サンディは楓を含め、異言を話すもの達が倒れた際はすぐさま回収できるようにと備えていたのだった。

 しばらく、メンバーは目の前の敵と対する。
 やはり、忌鼠や終焉獣が厄介な相手。前者はフルールがメインとなって抑えており、纏う炎で毒爪や尻尾の締め付けを食い止めていた。
 もちろん、やられてばかりではなく、フルールは無数の鋭い棘を生やした紅の蕀を巻き付け、さらに真なる焔をもって焼き尽くそうとする。
 終焉獣はというと、錬、瑠璃、ファニーが相手していて。
 その全長が4mもある化け物だ。
 開いた口は、こちらを丸のみできそうな大きさだ。
「神の国だからって、なんでもかんでも食われると困るんだがね!」
 瑠璃が素早く食らいつきから逃れる。
 基本、食らわない前提で立ち回る瑠璃だ。
 終焉獣の攻撃にどのような悪影響があろうと食らわなければ問題ないし、多少食らったところで多少の異常ならば踏ん張ることができる。
「そもそも、生半可に抵抗を抜かせるつもりはないがね!」
 錬は自身ありげに立ち回り、すぐさま号令を発していた。
 その間に、ファニーが先程とは逆の終焉獣に一番星と三番星を撃ち込む。
 ファニーが指先を向けていた方へと錬も接敵し、式符から鍛造した相克斧に込めた魔力を零距離から叩き込む。
 今のところ、仲間が抑えてくれているが、回避防御には自信がある錬は恐れず近づき、更なる攻撃を仕掛けていた。
 瑠璃がそれらの侵攻を食い止めつつ、異言を話すものと対するメンバーの方を横目で見て。
「お手数ですが、ゼノグロシアンの方はお願いします」
 瑠璃の呼びかけを耳にして、異言を話すものとなった豊穣民の救出には史之とロレイン、カバ―に入ったカインと楓が救出に当たって。
「「oiweahl9yszpghraop9ew8……」」
 異言を話すものとなった人々は豊穣の一般民のはずだが、多少の身体強化もあり、イレギュラーズの攻撃にも耐えつつ、殴り掛かってくる。
 それを冷静に受け止め、史之は空から異言を話すものだけを狙って乱撃を刻み込む。
 職業、殺人鬼である史之だが、状況と相手もあって不殺で対処せんと太刀を振るう。
「時と場合は心得るともさ? アハハ?」
 仲間の視線を受けながらも、彼は異言を話すものたちへと峰打ちを叩き込む。
「「uiyr……ejbz……」」
 少しずつ動きが鈍りだした人々にロレインが光を瞬かせると、3人が一気に地に伏す。
 すかさず、サンディが回収に当たる中、残る2人もカインが纏めて捉えて。
「……楓さんと同じ様に此処に巻き込まれ、変えられてしまった彼らを無視するわけにはいかない」
 異言の話すものがどれだけいるかが掴めぬ状況もあるが、可能な限り活かして帰してやりたいとカインは願う。
 知識を活かして、ある程度生命力を把握しながら立ち回るカインは術式を詠唱して発動させる。
「すまないけど、少し寝てて貰うね」
 眩い光が刹那戦場を包む。
 それが止むと、残る異言を話すものが膝から崩れ落ちる。
 搬送するサンディはグラードⅢへと乗せていくが、さながら「かぼちゃの馬車」だと本人は語る。さすがに時期は少し早いが。
(気絶してる方を乗せていけるものがあるのは便利ですね)
 忌鼠を相手していたフルールはそれを戦いの合間に確認し、ありがたく感じていたようだ。
「乗り心地は……まぁごめん、だが、安全に護衛するぜ」
 ガタガタと揺れる車内に、倒れたままの人々の体が揺れ、目覚める者も出始める。
 地上の道はファニーも誘導してくれている。
 サンディはそれに従い、戦場から人々を離れた場所へと搬送する。
 そうして、豊穣民を助け出す合間にも、楓は軽の力を使い、戦闘の余波が及ばぬ場所へと移動させていた。
「…………!」
 不気味な頭蓋は怨嗟の声を聴かせようとしている。
 それらを瑠璃が引き付けつつ1体に攻撃を集中し、圧倒的な速力でその体を刃で切り裂いていく。
 獲物は忍者刀で、仕込んだワイヤーを使って操る。
 巨体な上、頭蓋という身体である終焉獣はどうしても瞬発力に劣り、イレギュラーズの攻撃も甘んじて受けてしまっている。
 その分、存在感を示す頭蓋が跳躍してからプレス攻撃を仕掛けてくるのは面倒だ。
 しかし、錬はそれを好機と捉え、隙を逃さない。
 素早く高位術式を組み立てて五行の力を顕現させた鍛造式符を投げつけ、様々な異常で終焉獣を苛む。
 思うように動けぬ上、全身を炎で包む頭蓋。
 ファニーが手数を存分に使って両方の終焉獣へと指先の一番星を飛ばせば、傷んだ頭蓋の全身が溶けるように崩れて消えていく。
 程なく、メンバーの攻撃が集中したもう1体も、瑠璃が速力で圧倒して切り崩していた。

 残るは、忌鼠1体。
 巨体の割に素早い動きで攻めてくる呪われた獣だ。
「元は何の変哲もない動物だったでしょうに」
 呪詛に使われてしまったことを考えれば可哀想ではあるが、やらねば被害は広がるばかり。
 フルールはそう割り切り、鋭い棘で敵を包んだ上から炎で包む。
「この忌鼠は誰が使役してるんでしょうね?」
「こいつが忌だというのなら、呪詛返しが可能なはず。つまりナーワルへ呪詛が返るはずだ」
 フルールの疑問に答えた史之が忌鼠を傷つけ、どす黒い血を流す。
 そこにふらりと物陰から現れる異言を話すものの姿が。
 忌鼠へと一度絶対不可視の刃を飛ばすロレインがそちらの対処に当たり、カインや楓もそちらの対応に移る中、他メンバーは忌鼠の討伐に全力を尽くす。
 サンディが救出を待つ合間、とあるタロットカードを取り出す。
 燃え盛る呪符となったそれは再生の炎となり、仲間達の傷を癒す。
 活力を得たメンバーは忌鼠を自由には動かさせず、ファニーが指先を剥けて一番星を撃ち込んでいく。
 仲間達が現状、うまく抑えていることもあり、ファニーは回復をほとんど行わず徹底的に攻め立てる。
 錬が仲間の攻撃直後に魔力を込めた相克斧を振り下ろすと、忌鼠も全身から流した血がかなり多量となっていたことで、ぐったりとし始める。
 相手が動かぬタイミング、史之が近づく。
 この一瞬でも、忌鼠が何か企んでいることも考慮しつつ、油断はしない。
「俺にはみんなが大切だからさ」
 まるで血色の滝の如く、忌鼠の身体に終焉を刻む史之。
 手応えは十分と感じて、彼は納刀する。
 ギ、ギギギギィィィィ……!
 最後の最後までもがいていた忌鼠であったが、やがて完全に力尽き、黒い塊となって消え失せる。
 これなら、術者に……ナーワルへと呪詛が返っているはずだ。
「楽しい結果になるといいね。期待してるよ」
 史之はその痕に笑顔を向け、そこから背を向けたのだった。


 ロレイン、カインも新手の異言を話すものを倒し、サンディが保護する。
 一旦その場の戦いが落ち着いたことで、皆武器を収める。
「楓さんは無事かな」
 史之が気に掛ける暇に、フルールが焔の四対の翼を持つ精霊プシュケーに癒しを願って楓の傷を癒す。
 楓の無事を確認し、史之はギフトで麦茶を出して労って。
「あなたの勇気に乾杯を。それから俺たちを信じてくれてありがとう」
「ああ、ありがとう」
 礼を告げてそれを手に取り、楓は喉を潤して一息ついていた。
 ただ、これで終わりでなく、メンバーはがもう一働き願うと、楓はこれも快く了承して4本ある狐尾の内、『識』と『見』を働かせて核の捜索を始めた。
 その最中、戦いの場には現れなかったが、神の国を彷徨っていた異言を話すものとなった豊穣民を数名保護する。
「核が聖遺物のようなものであるなら、巻物とか……置かれているなら蔵とかかしらね?」
 ロレインも同じく、側溝等に核が落ちていないかと合わせて、呪詛によって出現した敵がまだ残っていないかと調べていたようだ。
 カインもスキルを使って場所の特定を急ぎ、錬も様々な知識を駆使して陰陽術的観点で周囲を調べる。
「形も特定できないというから、片っ端から破壊するしかないな」
 ファニーは建物傍に積まれた箱や藁、あちらこちら張られた札や飾られた面など、目につく物品を壊していく。
 楓の神秘の力も頼りになるところ。
「何かわかりましたか、楓おねーさん」
 とにかく、核について知っていれば教えてほしいとフルールが改めて願うと、楓はそういえばと自分が最初に襲われた場所に近くへと向かう。
 彼女を当てにしつつも、フルールもファミリアーを使って捜索を進める。
 その前に、瑠璃が空高くに飛ばしたファミリアーの鴉で発見していたようだ。
「ナーワルさんの足跡をたどっていたのですが、途中にこれがありまして」
 瑠璃が広い視野を持って捜索してた中、地面から拾い上げていたのは光る小さな骨。
 おそらくは、遂行者らが神の国を作る為に媒体としている聖遺物だろう。
 早速、カインが破壊することで、助け出した人々共々、楓も全身が少しずつ透けていって。
「また、会えることを楽しみにしているよ」
 そう告げ、楓は軽く手を振ってこの空間からゆっくりと消えていく。
 それを見届け、一行もまたこの場から去っていくのだが。
「わざわざ結界に閉じ込めるのはこの人自体が目的だったのか、それとも罠に仕掛ける餌だったのでしょうか」
 今度会ったときに尋ねてみようと思いつつ、瑠璃は仲間を追って神の国を後にしたのだった。

成否

成功

MVP

寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは忌獣を討伐した貴方へお送りします。
 今回もよろしくお願いいたします。

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