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シナリオ詳細

<黄泉桎梏>首無しが為す忌み

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●儀式×儀式×聖遺物=?
 月が綺麗な夜だった。
 ――なんて。
 そんなありきたりな語り出しすらも凡庸になるほどに、その月夜、白砂をまぶした庭には瘴気が蔓延していた。
 漏れ出る唸り声は犬のものだ。だが、弱々しいそれは飢え乾いているように思える。それが、複数……。
 そう、複数だ。白砂に突き出た不格好なオブジェは都合、六。六つもの犬の頭が、飢えと乾きを訴えている。それぞれの口先に餌を並べる男を見て、白衣の怪しい男は笑みをそのまま、不愉快そうに問う。
「いや、これはこれは、またなんとも……貴方がたヨモツの人々というのは、こうも野蛮な真似を? ただの怨恨のために?」
「海向こうの、誰とも知れぬ神を盲信する蛮族殿が我らの崇高な呪いを理解できぬのも無理からぬ事。貴殿らが臨んだのであろう? 嘗ての呪いの再来を」
 白衣の男、遂行者ヘンデルは刀をすらりと抜いた雅な優男の言葉にぴくりと眉を跳ね上げた。互いが互いを、言葉を尽くして罵り合う様子は彼らが必ずしも信頼しあっている訳ではないと感じさせる。男は必死に首を伸ばす犬の首を順番に切り落とすと、刀の脂を拭って鞘に収め、湧き上がる呪いに目を細めた。そのうえで、媒介となった犬の首、その額に釘でもって札を打ち付けていく。瘴気が凝集して生まれた妖、犬神はその行為に大いに痛めつけられたか、霊体に薄っすらと切断面が浮かび、遠吠えに似た唸りを上げた。見れば、その札にはどれも首吊り死体を模した意匠が刻まれている。それがヘンデルの聖痕であることは、同胞と、一部の目敏いイレギュラーズしか知るまい。
「ここまで原始的で、恨み辛みを強くおもわせる形態の呪いを活用するのは意外でしたが、仕込みはこれで十分でしょう。イヌガミ? というのですか、これらが『忌』として対象に向かえば、新たな神の国が生まれます。それも、貴方が呪う相手ごと、周辺一帯を巻き込んでね。……どうです、楽しみでしょう?」
「貴殿は本当に悪趣味だな」
「ですが、嬉しいのでしょう? 長らく友と嘯いた相手を、己の手で呪うことが」
「……やはり、貴殿は悪趣味だよ」
 心に無遠慮に踏み込み、逆なでしてくる男の声。それが、豊穣の男――織部黒(おりべぐろ)にはたまらなく癪に障った。なにしろ。
「最高に決まっているではないか。アレは私と、ずっと仲を繋いでいけると馬鹿正直に思っているのだから」

●忌毎の神の国
 豊穣に、再び『呪詛』と『忌』による呪いあいが横行しつつある。そしてその原因は、誰あろう遂行者たちである……これが、現在ローレットにて判明している豊穣の異常、その一部だ。
 そして、その調査と解決に奔走するローレットに舞い込んだ依頼は、まさにその『忌』に関するものだった。
 依頼人は豊穣の八扇・治部省に籍を置く下級官吏。彼の旧友は式部省に籍を置くというが、近頃様子がおかしくなり、そして式部省に保管されていたいくつかの呪術書とともに姿を眩ませたのだという。本来はそんなことをする男ではないが、なにものかに恨みを持つとするならば、即ち自分であるだろう、と彼は踏んだそうだ。
「あの男は、自分では隠しているつもりなのだろうが……私を友と認めながら、私に対し激しい嫌悪というか羨望のようなものを抱えている。奴のほうが上等な人間であろうに、無いものを強請って私を見ていたのだ。私はそれが我慢ならない。自分を信じてやれぬ者が、誰のために『教え』を司る式部省を預かれようか。だから、己の優秀さを顧みる様八方手を尽くしたはずだったが」
「……無駄に終わった、と」
 依頼に同行していた『ポテサラハーモニア』パパス・デ・エンサルーダ (p3n000172)が言葉を引き継ぐ。苦虫を噛み潰した顔で、治部省の男、読谷山(ゆんたんざん)は頷いた。あの調子では恐らく、近々呪詛を放つのではないかと彼は考えていたのだ。そんな疑いをかけてしまう自分が心苦しいとも。
「おそらくは一両日中。奴なら呪詛の手順を独自に弄って手練手管を加えるかもしれない……あとは、君達のいう『遂行者』なる者による介入だ。それが一番面倒な」
 読谷山はそこまで告げたところで、空を見上げた。ぞくりとする気配を感じ取った彼とイレギュラーズ達は、既に四方が神の国に塗り替えられつつあることを視認する。
 全体を四方から囲むように現れた都合六体の忌は、明らかに頭だけの犬のそれだ。さらに奇怪なのは、頭部に妙な意匠を加えられた札が貼り付けられていること。
 そして、神の国は読谷山の屋敷より遠くまでを覆い、その中にあった人々を狂気に陥れ、屋敷へと殺到させていく。
 神の国に変質したからか、屋敷の壁は存在しないかのように人々が集まり、忌は飢えからくる獰猛さで人々を見た。
 イレギュラーズの背に、氷が流し込まれたかのような悪寒が襲う。彼らは数打ちの敵だとか、肉壁だとか、そんな単純な目的で狂わされたのではなく……。

GMコメント

 呪いをアレするくらいなら現地調達の地産地消っすよ。

●成功条件
 読谷山の生存(必須)
 『犬神・忌』の全滅(努力目標:不殺フィニッシュ)
 ゼノグロシアンを半数以上、生きた状態で上記目標の達成(努力目標)


●犬神・忌×6
 織部黒なる官吏によって作られた犬神に、更にヘンデルの持ち込んだ聖遺物(札)を使用して生み出された『忌』です。
 忌を神の国の起動因子として扱っているのは、極論、織部黒が呪詛返しの餌食になったとしても神の国が成立し得るからです。
・HP、防技、神秘攻撃力がちょっと高め。NORMALのボスクラスの半分程度、【復讐(小)】持ち。(なのでNORMAL平均よりちょい弱ボスが3体もいる計算)
・初期配置はイレギュラーズと読谷山を囲むように分散配置。ゼノグロシアンの移動に伴い配置を変える。
・神秘系統の近扇スキルや、超域【万能】みたいな広範囲攻撃までバリエーション豊か。【飛】を交えて陣形を乱したり、【足止系列】で合流を邪魔したりする。
 また、一定以下のHPになった場合、ならびに仲間が半減したあたりからゼノグロシアンを喰いにくる。
 食った場合、大幅な性能UpやHPの大回復が待っている。注意。

●ゼノグロシアン×20
 今回の神の国の発現に合わせて正気を狂わされた人々。今回は明確に実体があるタイプなので、殺さない方がよいです。
 尤も、殺さなくてもショックで倒れたり寝込むかもしれないし、その間犬神にもぐもぐされないとは言い切れませんが……。
 彼らを助けるにしても多大な労力とか色々と準備含め必要ではあります。ある程度割り切った方がいいかも知れません。

●パパス
 友軍。治療やスリングショットによる遠隔攻撃を全体的にそつなくこなします。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <黄泉桎梏>首無しが為す忌み完了
  • 呪いの地産地消、その極致。
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年07月19日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
岩倉・鈴音(p3p006119)
バアルぺオルの魔人
鹿ノ子(p3p007279)
琥珀のとなり
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)
神殺し
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

サポートNPC一覧(1人)

パパス・デ・エンサルーダ(p3n000172)
ポテサラハーモニア

リプレイ


「呪詛に忌……? ここまで過激な手段で人を呪うとは、怖ろしいものだな」
「なるほど。豊穣が解放されなければ、こうなっていたわけだ。すっかり過去の遺物と思ってたけど……」
 『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)と『若木』寒櫻院・史之(p3p002233)は周囲から機を窺う犬神達の姿を見据え、その呪いの深さに思わず顔をしかめた。かつて豊穣を覆うべく放たれた呪いの手順を再現する。対峙した経験を持つ者にとって、不愉快以外のなにものでもない。
「変なとこに神経使わせてくれるぜ、まったく。いちいち傍迷惑なんだよなぁ、神の国ってやつは……」
「少なくとも、自分の感情を制御出来ず外患を呼び込むような者は決して優秀とは言えないだろうな。そういう意味では見る目が無かったんじゃないか」
「……返す言葉も無い」
 『喰鋭の拳』郷田 貴道(p3p000401)の基本スタンスは強者と「殴り合い」、勝つことにある。弱者を蹴散らすのも手加減も得意な方ではない。『手遅れではない人間』を多数用いる神の国の遂行者達は、彼とはとりわけ相性が悪いタイプだ。『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)が呆れたように放った言葉は、読谷山を絶句させる程度には的を射ていたのは確か。治部省にあって、友との諍いで一般人を巻き込んだ彼には反論の余地はなさそうだ。パパス・デ・エンサルーダ (p3n000172)はそんな錬の言葉になにか含むところはある顔だったが、直ぐにゼノグロシアンに目を向けた。
「犬神が6匹か。犬神の呪詛が伝承通りの手順で行われたとすれば犬が6匹は殺害されたわね」
「なんでそんなひどいことするの??」
「頭に札をつけてるだけあって、『札付きのワル』の仕業なのかもね」
 『狐です』長月・イナリ(p3p008096)の無感動な感想を聞き、その生成工程を知った『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)の顔はこの世の終わりを見たかのようなものだった。イヌ科の性質を持ったリュコスにとって、想像するだにおぞましい。小刻みに震えながら左右に視線を振った彼女に、『タコ助の母』岩倉・鈴音(p3p006119)はおどけ半分、不快なものを無視する気持ち半分で話を返して見せたが、リュコスはその言葉でより『敵』とは分かり合えないと認識した様子だった。鈴音はそもそも、ゼノグロシアンを敢えて助ける気は更々無いのだが、仲間達の意思の強さを鑑み、やってみせよう、と己に言い聞かせた。
「手加減してやるから、おねんねしたい奴からかかってきな? 幾ら脆くても、睨んだだけでくたばっちまう程じゃないだろう?」
「喰われる為だけの一般人を希望通りにさせる、なんて気に食わなくてね」
 貴道も鈴音も、ゼノグロシアンを積極的に攻め落とす気は薄い。彼らが動けない状態で犬神が食らいつけば、まず助からないからだ。邪魔なら凌ぐ、無視できるなら確実に犬神を潰す。多くを助けるなら、適材適所が確実なのだ。
「遮那さんのおわすこの豊穣に乱あるを許さず――鹿ノ子、抜刀!」
 『豊穣の守り人』鹿ノ子(p3p007279)が得物を抜き、犬神を見据える。遂行者達の目的通りなら、倒しても倒されても神の国は成立する。この土地でそれは許し難い。一瞬だけ視線を交わしたパパスは頷き、読谷山を背に立つ。錬の生み出した式神も、戦闘の邪魔にならぬ位置に控えることで彼の命を死守する構えだ。
「あの札が聖痕、触媒……追う為の導か」
 イズマの低い声が誰に聞かせるでもなく響いた時、犬神の遠吠えがそれを上書きした。あたかも、その事実を悟らせぬ為にわざとらしく叫んだような……。


(イヌガミのノロイを止める、人死にを出さないようにする……ぼくは両方やりとげたい)
「動物の呪いも面倒だけど、こいつらも大概ね……殺すな、死なせるな、なんて注文が多い……」
「仕方ないよ、それが遂行者のやり方ならね」
 リュコス、イナリ、史之の三者はにじり寄るゼノグロシアンを迎撃すべく布陣を組む。犬神から引き剥がし、尚且つ殺さない程度に倒す。犬神も、殺しきれば呪詛返しになるため慎重に……なるほど、格下なりに頭を使わされる敵なことは確かだ。こと戦闘力の高さを主軸にするイナリとは、ゼノグロシアンは相性がとても悪い。
「死んでもらっちゃ困るんでな。付き添わせてもらうぜ!」
「……恩に着る」
 他方、鈴音は読谷山の前に立ち、周囲の仲間に向けて立て続けに術式を組み上げる。補助や戦線維持を主体とし、自らは危険が及ばねば攻めに出ない。護衛対象を守るために、仲間に託す。やり方としてはこの上なく、正しい行為。
 同じく読谷山の護衛に回ったパパスが目を細める程度には、初動が早かったといえるだろう。
「おう、犬どもよ? チラッと殴り飛ばすが……死んでくれるなよ?」
 貴道は一瞬のうちに犬神の一体、その間合いに踏み込んで拳を突き出す。狙えるなら一網打尽にしたかったが、確実に一体ずつ仕留めるのも重要な役割だ。事実、その拳を受けた犬神が明らかに悶えているのを見れば、十分だ。それでも倒れぬ頑丈さこそを褒めるべきですらある。
「呪詛返しもさせないぞ。読谷山さんもきっと望まないだろうし……だから、こっちに来い。俺が相手してやる」
「適材適所、集まったら倒さなきゃいけないよな」
 イズマは数体の犬神を挑発すべく駆け回り、それに伴い寄り付こうとするゼノグロシアンを振り払う。数の不利は、手分けして引き剥がしても寄ってくる。包囲陣形からの敵誘引は、それだけ移動距離を要する。そういう意味では、彼の行動は適切ではあるが狙われやすい戦い方だ。ともすれば迂闊に見える行動は、しかし守りを主眼に置き、状況判断が最低限できるがゆえに成立していると言えた。
「俺の符術とその操り人形、どちらが上かはっきりさせてやろうか」
 錬は式神の動きを視界の端に収め、ゼノグロシアンを巻き込まない場所へと陣取っていく。犬神の憎悪に塗りたくられた一撃を浴び、通常なら疲弊もするだろうが露ほどにも感情を見せていない。
 自らの操る符術に自信を滲ませる彼が、この程度の相手に手抜かりなどあってはならない、負けるわけがない――そんな意識すら。
「……斬ります」
 一瞬の膠着はしかし、間合いに踏み込んだ鹿ノ子の連続した斬撃により断ち切られる。身を翻し一撃を叩き込み、流れるように次へと進める。
 やがて刻まれた斬撃の痕は、軽々に癒やされる場面を許さないという意思にすら思えようか。
「コロさない……いかして……たおす」
 リュコスは遠巻きに犬神達の、憎悪と飢えに支配された面構えを見た。何も分からず狂ったままに襲いかかってくる人々の顔を見た。
 歓喜でも不平でもなく、理解の外にある道理で狂わされた彼ら。豊穣の民は、失わせるわけにはいかない。
 ……が、彼我の数値差ばかりはどうしようもない。
 包囲を抜けるようにするりと間合いに入ってきた犬神に、鈴音達は一瞬反応が遅れた。咄嗟に突き出された砂嵐に揉まれた犬神だったが、直前に確かに見た……読谷山の絶望混じりの表情に興奮したかのように吠えた。
 それを阻止に回ったのは史之。ゼノグロシアンを生贄にさせぬため、そして仲間と護衛対象のため。自らが惹きつける僅かな暇に、これらを倒してもらえなければやや、状況が厄介になろう。……不殺を貫きつつ護衛、というそのハードルの高さは、一同の心胆を寒からしめるものだった。
 それと同じくらい、彼らは個々の仲間を信じている、それは間違いない事実だった。


「どうした……俺はまだ倒れていないぞ!」
 数体の犬神の前に立ち、細剣を持ち上げイズマは吼える。正面切って犬神達をかき集め、ゼノグロシアンの波状攻撃を切り抜け双方を引きはがす迄、かなりの手間を喰った。バラけた犬神を集めること自体が難儀なのだ。反撃が十分に行えない状況で進路を阻まれれば、彼の想定より状況はずっと芳しくないと言えるだろう。
 それでも犬神達がゼノグロシアンを食いあぐねているのは、リュコスが倒れたゼノグロシアンを片端から車両に投げ込み、纏めることで襲撃方向を固定化させているからだと言える。無論、それに寄与する錬の式神あっての成果ではある。それに、何より。
「いいね、この程度で死なれちゃ正直困るからな。溜まってんだよ、鬱憤ってやつが」
 貴道の拳が連続して犬神の一体を貫き、内部から衝撃を叩き込む。崩壊寸前となった個体は果敢に食らいつくが、奇跡的な見切りからのダッキングで避けた。範囲を覆う一撃を。
「ここまで刻めば、彼らを食べても回復などできないでしょう。当然、させる気は毛頭ありませんが!」
 別個体に斬り掛かった鹿ノ子は舞うように連続して切り裂き、犬神の魂を僅かずつ刻んで、そして回復を阻害する。ところどころにうっすらと斬撃痕が残っているのは、治癒を阻害されている証拠だろうか?
 イズマは引き付けた個体に二人が向かっていったのを見ると、残った一体の額へと細剣を向ける。
 見たぞ、その聖痕を。
 捉えたぞ、その悪意を。
 狙いは呪符、聖痕。それを破壊し、その上で呪いをとめる。それこそがこれ以上なき意趣返し。
「この状況、本当にギャグみたいだな……これが本当に不条理ギャグマンガだったら、あいつらに不条理を叩き込んでやれるんだけどな!」
「今、この真剣(シリアス)な状況を笑い話にするとしたら、犬神をすべて倒して連中の吠え面見た時でしょうね。戦闘終了までは叶わない願いです」
 鈴音が冗談交じりに強化術式を組み上げる傍ら、パパスは真面目な顔と声で釘を刺す。彼我の戦力を比すれば、そう間をおかずこの戦いは終わるだろう。犠牲がゼロとはいくまいが、十分誇れる勝利を手土産に、だ。
 だがそれは、手抜かりひとつなければという前提が付きまとう。
「私手加減って苦手なのよねー……三光梅舟で斬り捨てゴメン! する方が得意なのにー……」
「その割に、殺さぬように手加減できてるじゃないか。……こっちの死に損ないとは大違いだ」
 イナリは斬り伏せたゼノグロシアンに息があることを確認すると、式神にちらりと視線を向ける。彼らをの姿を背負う形で犬神と切り結ぶ錬は、命を燃やしつつもしぶとく捕食しようとする敵の姿に辟易とした様子であった。
 ……否、見えぬタイミング、悟らせぬ速度で食っていたか? だとすれば、より厄介なことになる。
「全員無事、と言えないのは申し訳ないけど。ゼノグロシアンはもう打ち止めだ。これ以上強化も、回復の目もないよ。残念だけどね」
「ザンコクな呪いはもうおしまい……もうイケニエはどこにもいないよ」
 だが、犬神に残されていた希望の芽は、すでに史之とリュコスが摘み取った後だった。これ以上、その呪いが力を取り戻すことはない。……迂闊に殺しきらぬ限りは。

「……貴方達をそんな目に合わせた連中の脳天に天罰叩き込んであげるわ、貴方達の復讐は私達が成して上げるからね。だからここで成仏してくれると嬉しい」
 イナリは消えつつある犬神達、厳密には犬神の素となった魂に語りかけ、少しでもその魂を鎮めんとした。彼らだってそもそもは愛玩動物として生まれ、生きていくはずだったのだから。
「倒す前に札は燃やした。殺しきらずに倒せた筈だ。多分、上手くやれた……はず」
 イズマは敵意を顕にした最後の瞬間を忘れようと、手を握りしめた。相手の尻尾を掴んだ。追う場合のヒントを得た。それはとても大きな前進だ。だから憎しみだけで戦うまいと、己に改めて言い聞かせる。
「呪術の実行者には然るべき法によって裁かれてもらわなければ。……そうですね、読谷山さん」
「ああ。残念だが、彼には裁かれるべき義務がある。……この国を蚕食する不届き者と接触して、失敗した後に生かされているかはわからないが、使いは向かわせている。遠からず明るみになろう」
 鹿ノ子は険しい表情のまま、読谷山に問う。水を向けられた彼も、苦い顔で応じた。数の多寡は関係なく、死者は確実に出た。
 あんな男でも友人だと思っていたが、誤魔化しは利かない。些細な権力で以て、織部黒を捕らえる指示を出すしか、彼にはできなかったのだ。
「あんなひどいコトをする……スイコウシャは、やっぱりゆるせない」
「面倒臭えことしやがって。眼の前に出てきたら土手っ腹に一発入れてやるか」
 リュコスは同族が穢されたことに、貴道は気持ちよく敵を倒すことに注力できなかった事実に、それぞれフラストレーションを溜めていたのは確かだ。
 世界を巡り悪意を撒き散らす彼らの真意が何処にあるのか……未だ底は、見えていない。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

岩倉・鈴音(p3p006119)[重傷]
バアルぺオルの魔人

あとがき

 流石にシリアスがギャグにはならないかな……。

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