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シナリオ詳細

<フイユモールの終>破滅すらも肚に入れ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 『冠位暴食』ベルゼーは、その権能の暴走を制御することが難しくなっていた。『飽くなき暴食』と呼ばれるそれは、ベルゼー自身の意思を問わず、底なしの欲求によって周囲を喰らいつくそうとする『天災以上』の事象である。ベルゼーは優しい。ゆえに竜種達は彼が悲しまぬよう、イレギュラーズを退けようとした。或いはイレギュラーズから注目を逸らし、ベルゼーが他の国へと権能を向けるよう仕向けようとした。
 だが、イレギュラーズは竜種達が思っているよりもずっと感情的で、且つわからずやだったのだ。
 ベルゼーの権能を止める。できなければ、打ち倒す。竜種ですらも理解が至らぬと首をひねるような大業を、彼等は「やる」と言い張るのだ。
 果たして、イレギュラーズ・竜種・魔種・そしてベルゼーの権能が入り乱れる混沌の戦場が顕現する。いずれの希望が芽吹くのか、すべて食い尽くされるのかは、今は分かるべくもなく。


 崩壊しつつある花園、ヘスペリデス――空は荒れ、大地はうねり、周囲を瓦礫が飛び交い、その危険度は到達時の比ではない。その中を突き進むイレギュラーズの前に、それは現れた。
 亜竜と魔種、ふたつの頭を両端に持つ胴長の存在。魔種コルミロと呼ばれたそれは、もはや正気の多くを喪失し、自我境界も曖昧になっていた。故に、彼は因縁と呼べるものが認識できず、なれば彼を引き付けたのは、魔力の性質と感情の波の一致からくる存在感だったのかもしれない。
「探したわよ、コルミロ。アンタには散々な目に遭わされたんだから……ここで殺してあげるわよ!」
『誰かな? 物覚えが悪くて、匂いや声は覚えがあるけど、さっぱりわからないや』
 オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)の怒りの声に、しかしコルミロは心からの疑念を吐き出した。それが猶更に挑発に聞こえ、オデットの額に青筋が浮かぶ。理由はどうあれ、認識すらされていない、というのは激しい挑発に等しかった。
『この場所も、もう終わるみたいだね。「僕の根源」が世界の終わりを感じ取ってる。……でも、だから何だい? 僕は食べることができればそれでいい。食べ続けていれば、それがいい。逃げきれそうにないからね、最後まで勝手にやらせてもらう。そのうえで、君達も平らげておこうと思う』
「出来ると思ってんの? そのナリで」
『この体だから、だよ。それに、敵は君達だけじゃない。僕だけじゃない』
 何を言っているのか――怪訝な顔をしたオデットの頭上を、ひとつふたつと影が下りる。それらは黒い体躯を以て、一同の周囲を飛び回る。
 女神の破片から生まれし防衛機構、レムレース・ドラゴン。それが大挙して押し寄せようとしていた。

GMコメント

 前回のシナリオを踏まえ、優先を絞ったりなんやかんや調整しています。

●成功条件
 コルミロの撃破。また、撃破時点で残存するレムレース・ドラゴンの殲滅。

●アンフィスバエナ(コルミロ)
 本来は胴の両端に蛇の頭をもつ伝承上の怪物ですが、コルミロを捕食した際に残った因子が片方の頭を侵食し、上半身だけ露出したいびつな形となったようです。
 非常に正気が感じられない外見ですが、本来の性質は「どちらも」保有しています。
 頭が2つあるため確定2回行動+EXAやや高め、HPが減少した場合、亜竜とコルミロとに分裂する可能性があります。また、【凍結系列】を持つスキルに強い耐性があります。
・毒牙(物近単:【石化】【毒系列】)
・魔力喰らい(神遠扇:【Mアタック(大)】【AP回復(中)】【万能】)
・薙ぎ払い(物超列:【万能】【乱れ系列】【呪殺】)
☆絶叫(物至域:【虚無(大)】【麻痺系列】【追撃(中)】、コルミロ・アンフィスバエナ双方の同時攻撃対象の場合、+【無策】)
☆BS数が一定以上になった場合、中確率で攻撃に【攻勢BS回復(中)】が追加
(☆マークは前回戦闘にて発覚した追加能力です)

●レムレース・ドラゴン(弱)×20~
 『女神の欠片』が出現させた個体で、周辺の生物をヘスペリデスへの攻撃者とみなし、無差別に襲いかかります。
 個体としての性能は『HARD相応の雑魚』なので、制限レベル以上でそこそこ攻撃力に振った人の範囲攻撃がいい感じに通ってやっと一撃必殺、といったところ。個体サイズも小型ワイバーンクラスなので、範囲怒りでの引付には限界があります(でも1ターンで複数撃破は割と出来る範囲)。
 また、コルミロとイレギュラーズの戦闘が終了するまでは数ターンに一回の割合で少しずつ増援が出現するため、ある程度は人を割いた方がいいかもしれません。当然コルミロも攻撃対象となります。

●戦場:崩壊の花園
 崩壊中のヘスペリデスでの戦闘となります。
 絶えず「何かに引き付けられるように」小石や構造物が宙を舞い、空も荒れ狂っています。飛来物が無差別にぶつかり(ランダム判定、ダメージ微量、回避減衰対象)、低空飛行以上で飛行した場合のペナルティが大きくなります。
 これらの事象は当然ですが、敵味方問わずに適用となります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <フイユモールの終>破滅すらも肚に入れLv:40以上完了
  • 亜竜をも取り込んだ魔種・コルミロ。その命に決着を。
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2023年07月24日 22時06分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
アルヴィ=ド=ラフス(p3p007360)
航空指揮
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
ユーフォニー(p3p010323)
竜域の娘

リプレイ


「こいつは……以前仕留めそこねたやつか。知性も維持できてないと見える」
「コルミロ、お前……随分惨めになったな。俺達が討伐するまでもなく滅びそうじゃないか」
『君達とどんな縁があるか知らないけど、「僕が仕留め損ねた」の間違いじゃないかな。あまり自分本位に考えない方がいいよ、その方が惨めだし』
 『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)と『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は、いずれもこの魔種に縁がある。そして、彼等はコルミロの言葉通り「逃がされた」身だ。仲間は最後まで敗北を認めなかったし、両者ともにこの魔種に対し強烈な敵意や復讐心までは持ちえない。ただ、魔種を前に踵を返すイレギュラーズはいない、というだけの話だ。
「暴食の魔種というのは亜竜も喰うものなのか。……タチが悪いな」
「コルミロは、ヘスペリデスと……世界と心中する積りなのか」
『食べられるなら、なんでも食べるさ。美食家なんて斜に構えて死ぬよりは余程マシ。飢えて死ぬのは御免だけど、食べられて死ぬなら、そうだね。冠位とくれば逃げられない。心中というより、捧げると言ってほしいね』
「命を諦めるのに、本能には逆らえないなんて……衝動なんでしょうか」
 『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)、そして『ウィザード』マルク・シリング(p3p001309)が魔種とも亜竜とも呼び得ない異形に驚くが、コルミロ自身は微塵も気に留めた様子がなかった。心中、などという美しいものではない。底知れぬ暴食の衝動に身を窶しているうちに、より大きな暴食に呑み込まれる。自然の摂理としては正しく揺るぎないのもだ。彼が異形に変じたきっかけだって、単純に彼がヘスペリデスでは弱い部類だっただけのこと。最後の最後までそうだった、という皮肉だ。その余りにも「正直」な姿を見た『相賀の弟子』ユーフォニー(p3p010323)には、それほどの衝動は理解できない。身を亡ぼすほどの衝動、死してなお遂げたいという本懐。そういうものを持つ相手を理解するのは、身の丈に合った欲求で生きる彼女や大多数の人間には度し難い。
「捧げるなんて上等な話じゃねえだろ。世界の終わりより先に、お前を終わらせてやるよ」
「せめて自分のやったことを自覚してから死んでいきなさいよね! こっちははらわた煮えくりかえってるんだから!」
 『航空指揮』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)と『木漏れ日の優しさ』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)が敵意を露わにするのも、道理だ。経緯はどうあれ魔種として、人の形すら捨てたモノが高尚な思想を持つはずがない。すべては言い訳。罪の自覚もない相手に好き放題させるつもりは、この場の誰もが無いのである。
 こと、オデットに関しては数度に亘り挑発を受けたうえに、忘れられたというのだから手におえない。今までの恨みを叩きつける場で、世界と心中するなどという満足感混じりの話を聞かされて、はいそうですかと通す訳がないのだ。
「私も長くは持たないだろう、速戦即決で頼む。弾は出来るだけ用意しよう」
「跡形もなく消す気で戦う。喰うことだけにすべてを賭けた奴相手に、気を抜くことはできない」
「こちらも可能な限り支援はするけど、捨て鉢な戦いにならないよう、気を付けてほしい」
 『威風戦柱』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)にとってこの相手は相性最悪。されど、長期戦が無理なら速攻を狙えばいい。強敵であることと、勝てないことはイコールではないのだ。イズマはその点で長期戦向きではあるが、さりとて様子を見ながら慎重に戦うなどという気はない。コルミロを確実に灰にして倒す、その意思ははっきりしたものだった。因縁、もしくはスタンス上前のめりな仲間達を、マルクは制御するつもりはない。無理にブレーキをかけるくらいなら、より速く走れるよう背中を押すだけ。
 闇から生まれ落ち、低空を飛翔するレムレース・ドラゴンを一瞥し、ユーフォニーはドラネコを喚び、空に向かわせようとした。だがドラネコは吹きすさぶ風、飛来する瓦礫の猛然たる勢いを前に首を振るばかり。地上索敵が精いっぱいか……己の不慮を振り払い、彼女は術式を展開する。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。――お前たちの主の望みを、叶えに来た」
 エーレンが剣を抜く。
 傍ら、イズマもまた細剣の先に魔力を込める。
 飛来するドラゴン達を振り払う。襲い来るコルミロを撃破する。
 課題ばかりが脳を過り、不安と死の匂いが鼻を衝く。
「食いたきゃ食えばいい。ただし、できるものなら」
 アルヴァの声が、コルミロの本能を刺激した。


 全力で踏み込み、前進したエーレンの斬撃が一瞬のうちにレムレース・ドラゴンの密集地帯に打ち込まれ、次々とその動きを鈍らせていく。飛来する礫に気を取られていたそれらが、米粒ほどの大きさから飛び来った彼の手を避けることは到底適わず、次々と動きを鈍らせていく……結果として戦場への飛来が大きく遅れた。
『追えというなら追ってやる……!』
 コルミロはアルヴァの挑発に乗り、その身を揺らし地面を叩いた。刹那、亜竜の口が大きく開かれ、しかし口惜し気に引きずられていく。今、明らかにコルミロの意思を無視して自立攻撃を仕掛けようとしてきた。下手を打てば、先手を取られていただろう――二人の心胆を寒からしめるに足る一幕は、しかしアルヴァへの猛攻という形で発揮された。挑発の為に間合いに入った彼の周囲から瓦礫が飛び交い、掠めていく。加えてコルミロの猛攻だ。直撃こそ避けども、アルヴァの尾を掴む如きギリギリの攻防。
「今のうちにあいつの尾、いや頭を切ってしまえば!」
「狙いを引き付けているアルヴァの努力が無駄になるわよ! 先に雑魚を潰すの!」
 狙いを絞ったコルミロは前後不覚に等しい。なれば今がチャンスではないか……好機と考えたサイズはしかし、オデットに首根を捕まれ後ろに引き倒された。何か告げようとしたサイズだが、胸元を深く裂かれているのを遅れて自覚した。オデットがその下手人を含め、行動阻害の術式を放った事実も。
 あと一歩前に出ていれば。マニエラの治癒を受けながら、サイズは強張った頬を自覚する。
「エーレンさんのお陰でレムレース・ドラゴンの足取りが乱れて集中攻撃にさらされる危険は薄くなってる、今のうちに先行した個体を全力で減らそう!」
「今井さん行きましょう、私たちらしいやり方で!」
 敵味方の位置関係を把握し、マルクはレムレース・ドラゴンの編隊、その足並みが乱れたのを察知。先行した編隊へとコルミロごと術式を叩き込む。殺到していれば、狙いが定まりきらなかった。少数だったことで、一同の魔術の射程に収まった。つまり……ユーフォニーの魔術の連続が、それらを瞬時に削ったのだ。総数に比せば安堵には早いが、再思考、そして仕切り直しの暇が出来たことは大きい。
「あいつらが来るまでに、お前の自由を奪ってやる」
『……ふうん、自由、自由ね』
 イズマはこの隙をつき、コルミロから更なる自由を奪うべく術式を放つ。度重なる攻勢で己の行動をコントロールされていた彼は、その関心をイズマに向けることはなかった。狙っていたのは、アルヴァだけだ。
 前後ふたつの頭から、激しい絶叫が響き渡る。幸いにして殆どのイレギュラーズはその絶叫の影響下を避け、アルヴァもあわや直撃といったところを避けはした。が、コルミロにはそれで充分だったのだ。
 音が収まるか否かのタイミングで、それはイレギュラーズの密集地帯へと針路をとる。それはレムレース・ドラゴンを喰らう意図もあったが、何よりの狙いは彼等だ。
「アルヴァ、怪我は!?」
「俺は大したことない! コルミロを自由にさせるな!」
 喉が開く限りに叫んだマニエラに、アルヴァは叫び返す。今から即座にヤツを追い、再度引き付ける。その思考と針路はしかし、エーレンによって動きを鈍らされた集団に纏わりつかれ、足止めされた。
 ほんの一瞬、殲滅までの足止めができればよかった。
 アルヴァが一度引き剥がされても、追い討つ自信は十分にあった。
 なら、しかし、でも、もし――この状況はどうして起きた?
「順番が前後しただけよ! コルミロを先に倒せば私達の勝ちよ!」
「あ……ああ、オデットさんを傷つけさせはしないぞ!」
 オデットは来るならば、と身構えた。サイズはそれに引っ張られるように構え、オデットの前に立つ。術師達の距離は十分、一瞬の後に集中砲火が降り注ぐ。
『じゃあ、君達の魔力からいただくよ』
 大きく開かれたコルミロの口が閉じ、尾が薙ぎ払われた。


「……っ、エーレンさんは遠くの個体殲滅優先! 他の皆は増援の殲滅とコルミロに攻撃集中! 早急にアンフィスバエナと分離させる! 僕とマニエラさんで全力で治療にあたる!」
 マルクは一連の攻撃を受けた仲間達とコルミロの状態を俯瞰し、思わず安堵の息が漏れかけた。一瞬でひっくり返してくる化け物ではない。竜種に比すれば圧倒的に劣る。だが、腐っても魔種。策が崩れた今、再構築に手間取れば崩れた積み木は積み上げる前に崩れ去ろう。
「なかなか厳しい戦いだな?」
「大丈夫です、簡単に倒せるなんて思ってません……! だけど、コルミロさんが『あんな』ままで死なせるのだけは御免です!」
 マニエラは魔力残量を確認し、まだ十分に戦いを立て直せると判断した。仲間の傷は浅くない。だが耐えられる。それが「勝てる」とはイコールではないとしても、戦い続けるに足るものだ。ユーフォニーは、そもそも根が善良なだけあってコルミロに一片の道理や善性があろうと感じている。考えている。語りかける暇がほしい。分かり合えるタイミングがあれば。因縁も過去もなにもかもがないけれど、互いに力をぶつけあう今がある。
「俺の全力を叩き込むなら仲間から離れるのが最善……だったが、孤立するのは考えものだな……?」
 斬って、斬って、鞘に収め、狙いを定める。
 エーレンの視界内を埋めていた敵は全滅せしめたが、それは次に出現する個体群を抑えきれぬリスクを背負っていた。雑魚といえども、紛い物でも、竜である。
 ここから仲間を守れるか? 新たな群れを止め得るか? 錯綜する思考に、柄を握る手が一瞬緩んだ。
「惚けるな! フリーになったんだろ、エーレン! てめぇの出来る事を考えろ!」
 その体たらくに、喝を入れたのは誰あろうアルヴァだった。群がってくる偽竜達を一体ずつ刻みながら、吼える。アルヴァは不得手だが、エーレンにできることがある。
 自らを指差したアルヴァを見て、彼は瞬時に――彼がいる場所ごと、偽竜を切り裂いた。

「終わるだけの世界じゃないんだ、好き勝手に食わせるかよ」
『いいや、終わるよ。君達が僕程度で足踏みするなら、「冠位」を倒すなんて夢のまた夢さ』
「なら、今ここで倒す」
 イズマはコルミロにありったけの魔力を叩き込み、コルミロはイズマごと周囲を暴力で押し込みにかかる。
 コルミロの言葉は、一部において道理だ。彼に煮え湯を飲まされた雪辱を果たせぬようで、何が冠位かと嘯かれても致し方あるまい。されど、多くにおいて誤りである。今まさに勝利と敗北のあわいを駆け、成長を続ける彼らが諦めるなどというつまらぬ感情にとらわれるわけがないからだ。
 アンフィスバエナの側が暴れ、コルミロの牙が閃き、魔力の雨が降り注ぐ。
 永遠にも思える拮抗を潰しにかかったのは、コルミロでもイレギュラーズでもなく、再び湧いてきた偽竜の群れ。
 対立した両者を諸共に押し潰す勢いで群がったそれは、サイズの肉体を瞬く間に戦闘不能に陥れ、彼の庇護を失ったオデットに牙を剥こうとした。
「……させません。私はまだ聞いてないことが沢山あります」
「僕が彼らの動きを鈍らせる。四十秒、その間に彼らを倒してコルミロを分離させる」
 だが、オデットに指向した数体は一瞬のうちにユーフォニーに蹴散らされ、残った個体はマルクの術式でまともな攻撃も、どころか防御もままならないときた。まとわりつく個体を蹴散らし合流したアルヴァとエーレンがそれらを斬り伏せると、いきおい、エーレンはコルミロの胴中央部に刃を突き立てた。
 堅牢な肉体と刃がせめぎ合う重い音が暫し響き、砕けたような音が返り、コルミロとアンフィスバエナが分離する。だが、次の瞬間に大きく吹き飛ばされたのはエーレンだった。
「――まずい」
 そこに響いたのは、マルクの絶望的な声だった。
 追い詰めるまでに至り、死力を尽くせばこの場を勝利で収められる。
 だが、その代価が高くつく可能性は否めない。
 間に合わない。治癒と、殲滅力と、その他数多の要素を組み合わせてなお、だ。
「なにが『まずい』のかな。僕の首を奪るんだろう?」
 2本の足を取り落としたコルミロが自らの首を叩く。命は残り僅かでありながら、先程の数倍に匹敵する殺意が噴出している……アンフィスバエナを掴み上げたその目には、敵意と欲求がないまぜになっている。
 全身を駆け巡った怖気に対し、足が止まったオデットに飛びかかる影……アルヴァが全力で避けた足元は、深く抉れている。
「食べることって本当はとても豊かなこと。命をいただくことで命を繋ぎ、日々に彩りを増すもののひとつ……コルミロさん、そういう『豊かさ』を感じたことは一度も無いですか……?」
「わすれたよ」
 最後に、倒れるまで戦うとしても、聞いておかねばと口を開いたユーフォニーは、コルミロの顎が異常に開いたのを察知して術式を紡いだ。彼女の上半身がバネのように弾かれたのとコルミロの腕が千切れたのは同時。
 一同は互いを庇いあい、倒れた二人を支えながら――勝利よりも生存を選択した。
 恥じるところなき、そして誇ることなき敗北の味が、鉄錆の匂いとともに口に広がるのを誰ともなく感じていた。

成否

失敗

MVP

マルク・シリング(p3p001309)
軍師

状態異常

ツリー・ロド(p3p000319)[重傷]
ロストプライド
イズマ・トーティス(p3p009471)[重傷]
青き鋼の音色
エーレン・キリエ(p3p009844)[重傷]
特異運命座標

あとがき

 お疲れ様でした。
 少しずつズレて行って、ゴール地点が遠くなった印象です。
 残念ですが、これも結末と思います。いずれコルミロもアンフィスバエナの残骸もこの世から消えることでしょう。

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