PandoraPartyProject

シナリオ詳細

おまえがメイドになるんだよ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●お前がメイドになるんだよ
「メイド服を着てメイドになりすますんだ。一週間」
 そう言われた『佐藤』はしばしの沈黙の後、自分が既に依頼料を受け取ってしまったこと、そして契約書にサインしてしまったことに気がついた。なかば強引な、言いようによっては詐欺とすらいえる契約だったが、もはや退くことは許されぬ。
 かくして――。
 佐藤 美咲 (p3p009818)と佐藤・非正規雇用 (p3p009377)はメイド服姿で貴族のお屋敷前に立っていた。
「「なんで??????」」

 時は現代嵐の時代。情報は命より重く時に国家を揺るがすとか揺るがさないとか。むっつかしい話はさておいて、本日お邪魔する幻想貴族メイドス・キスギール氏の豪邸は突然はやった謎の風邪により八人近いメイドが長期の休暇をとることに。その変わりにと仲介業者から送り込まれた八人のメイドがそう――あなたである!
 既にお気づきかもしれないが、メイドが風邪で休んだのも仲介業者にベテランメイドとして偽装登録したのも佐藤美咲のクソ上司こと鈴木の仕業。あなたは暫くメイドとして名ドス卿の豪邸に仕えることとなったのだ。
 無論、ただメイドをやってくれというワケではない。この数日の間に謎の怪盗キャットテイルが屋敷に忍び込み秘宝のひとつ『緋の滴』を盗み出すと予告したのがコトの始まり。
「『緋の滴』は一見すると大きな宝石をはめ込んだティアラだが、この宝石には重要な魔術媒体が仕込まれている。ガラスケースに収まっているうちは無害だが、盗み出されればあまり嬉しくない被害が及ぶことになる。どこにどう及ぶかは、話せないがな」
 鈴木はそのように説明し、転写式になったひでえ依頼書をぺらりとめくる。
 そこには、『メイドとして暫く務めつつ怪盗を見つけ出して捕まえろ』というなんとも無茶な依頼内容が書かれていたのであった。

●そしてメイドは動き出す
「メイドス卿、本当に無類のメイド好きなのね。私でも大丈夫だなんて……」
 小さな子供程度の背丈しかないオデット・ソレーユ・クリスタリア (p3p000282)はスカート丈の長いメイド服をふわりと揺らしながら苦笑した。
「そのくせ特別手を出してこようという下心がないのが逆にこう……こう、でありますね」
 エッダ・フロールリジ (p3p006270)がろくろを回すようにジェスチャーする。彼女の言うとおり、メイドス・キスギール氏は豪邸に住まうほどの優れた貴族でありながら無類のメイド好き。しかし好色ではないという謎の純粋さを持ち合わせた男であった。
 それゆえ、メイド服を着込んだ佐藤・非正規雇用を喜んで受け入れるという有様ができあがった次第である。
 エーレン・キリエ (p3p009844)、カイト (p3p007128)、イスナーン (p3p008498)、サンディ・カルタ (p3p000438)……そんな四人にもスッと黙ってメイド服が出されるあたり、どうかしているとしか言えない。
 一応クローゼットには執事服もあったので、メイド服を着ないと死ぬというわけではないらしいが……。
「ま、やれるだけのことはやろうか」
「マジかよ。まあ、契約書にサインしちまった以上努力義務は果たすけどよ」
「やりよう自体はあるのですから、そう焦ることもないのでは」
「ま、それもそうだな……」
 男達四人はクローゼットに手を伸ばす。
 かくして、八人のメイド生活が幕を開けるのであった。

GMコメント

 このシナリオはメイドシナリオです。メイドになると判定が有利になります。
 こう書いておくと皆がメイドになってくれるってメイドの神様が啓示を下さいました。

●メイドパート
 幻想王国の貴族メイドス・キスギール氏の豪邸にメイドとして務めます。
 メイドの仕事は家事全般の分業制。どんな仕事を受け持つかを相談して偽りのメイド生活を送りましょう。
 ちなみにメイドス卿には妻と三人の子供がおり一番上の子供は高等な学校へ通い、二番目の子供も学校へ、三番目の子供はまだ二歳程度の幼い子供だそうです。

・メイドメイク術
 今回は謎のメイドメイク術によって、メイド服を着ても違和感がないメイクをしてもらえます。勿論そのままの格好でいきなりメイド服を着る暴挙に出て頂いてもかまいません。
 また、メイドになったら死ぬ病気にかかっているかたは執事服でもかまいません。

●怪盗パート
 忍び込んだ怪盗を発見すると怪盗をとっつかまえるパートになります。
 屋敷中を走り回ったりして怪盗をとっつかまえましょう。
(※『メイドパート中に怪盗を警戒するプレイング』は空振りしやすいのでどうしてもかけたい場合は1~2名程度に抑えておくことをお勧めします)
 走り回ったり戦闘したり時に窓から飛んだりとにかくバッタバタします。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • おまえがメイドになるんだよ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2023年06月26日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
※参加確定済み※
サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
※参加確定済み※
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
※参加確定済み※
カイト(p3p007128)
雨夜の映し身
※参加確定済み※
イスナーン(p3p008498)
不可視の
※参加確定済み※
佐藤・非正規雇用(p3p009377)
異世界転生非正規雇用
※参加確定済み※
佐藤 美咲(p3p009818)
無職
※参加確定済み※
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
※参加確定済み※

リプレイ


 メイド服姿の『金庫破り』サンディ・カルタ(p3p000438)が両手で顔を覆っていた。
「このサンディ・カルタ、なんでもっと早く逃げださなかったのかが全然思い出せねぇ!
 こんな依頼にイレギュラーズの他のレディを1人巻き込まずに済んだと思うしかねえか……」
 つくづく誰かの身代わりになりがちな男、サンディである。ヒロイン気質も極まってきたところだ。
 彼のメイド服はオーソドックスから若干外れた白と赤によるカラーで整えられ所々にフリルをあしらった可愛らしいスタイルのもの。甘ロリメイド服とかいうジャンルのものだ。
「くっ……!」
 編に露出するより100倍恥ずかしいきがするサンディである。
 一方の『不可視の』イスナーン(p3p008498)は黒地の多いメイド服だ。闇に紛れたら見えなくなりそうなくらいには黒い。スカートも足首までと長く、マスクで鼻の辺りまで覆っているせいで、スッと立ってるだけだと彼の性別もわからなくなりそうだ。
「私は傭兵で報酬を貰う以上仕事は……」
 などと言いながら遠くの方をずーっと見つめている。現実逃避なのか、それとも自分を納得させる時間が必要なのか。あるいはその両方か。
 一方の『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)はそれはもうガッツリとしたミニスカメイド服だった。前に『ギャルよりマシだ』とか言ったせいでハードルが上がったに違いない。
 フリルがついたせいで膨らんだスカートは膝が出るほどに短く、胸元にフリルが集まったせいで随分と女性的である。
 あとなんだろう、カイトは妙に足が細くて綺麗でいらっしゃるのであった。
 筋肉はガッツリついてるのだががに股にならないし、骨格のせいなのかスッとまっすぐ伸びるのである。
 このまま片手で目元を隠したらなんかこう、なに、何かに対して行けるんじゃないかと思えるくらいには仕上がっていた。
「動揺するのは奉仕者としては問題だ。仕事をきっちりこなしてこそがプロだ。手抜きなく、な……」
 そう呟いたカイトは一瞬にして無表情となった。恥じらいを消すとは、更にハードルを上げてくる男である。が、カイトはわりかし安心していた。
 隣にハードルを上げすぎてもう門みたいになってる男がいたからだ。
 佐藤・非正規雇用(p3p009377)である。
「っきゃ、今スカートの中見た!?」
 スカートの前部分を押さえて前屈みになる非正規雇用。
 カイトは無表情のまま非正規雇用の尻をパァンと叩いた。
「アアッ急に何を!」
「叩いただけで済まされたことに感謝しろ!」
 非正規雇用の格好は超オーソドックスなメイド服だった。いや、メイド服にオーソドックスもなにもねえのだが、ググったら最初に出てくるくらいコレって感じのメイド服である。
 それをライオン顔の大男が着ているので何周か回って斬新なのであった。
「くっ、契約は契約だからな……。今日はこの格好で、ご奉仕するぜ」
 しかもなんかノリノリだった。キリッとしている。
「あ、佐藤(正規雇用)さんも似合ってるよ」
 ニコォっと笑って振り返ると、『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)は片手で隠しながら何かの指をたてていた。
「そのたてがみ、明日の朝まで残っているといいですね?」
「怖いこと言わないで」
 とうの美咲の格好はなにかっつーと、がっつがつのメイド水着であった。
 当然ビキニスタイルだし、ほんのちょっぴりキツめのサイズである。
「よりに……よって……」
 自分の腹回りを手で隠すようにする美咲。
 そう、彼女はカロリーハーフを四倍食う女。糖質の貯蓄が充分過ぎて老後が安泰(健康的には心配)な女である。
「ただのメイド服だったらごまかせたものを!」
 スーツをぱっと見スリムっぽく着こなすことに定評のある美咲。そんな彼女でもがっつりおなかが出る服には手も足も出ない。いや全部出てるけど。
「いやあマニアックでありますなあ……この腹ァ……」
 ぺちーんぺちーんと平手で横から叩いてみる『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)。クウッと今にも殺して欲しそうな声をあげる美咲にエッダはご満悦であった。
 当のエッダはどうしてんのかっていうと、ちゃんとメイド水着だった。
 ちゃんとメイド水着ってなんだよ。
「騎士(メイド)と言えば自分、自分と言えば騎士(メイド)。
 騎士(メイド)たるもの真っ向勝負上等でありますよ。
 ……はっ。これ言えるの久しぶりであります。いくぜ。皆さんご一緒に」
 両手の指を上下に振るインターネットが最高な振り付けを暫しやったあと、エッダはキリッとした顔をした。
「『メイドじゃねえよ!』」
 いったった感をかみしめる。
 かみしめる彼女をよそに、『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)はヴィクトリアンスタイルのメイド服の裾をぽんぽんと叩いていた。
「足がスースーする以外は、案外まともに着れるものなんだな。背筋もなんだかぴんとするし、作業着として悪くない」
 クラシックなスタイルにこだわりがあるのか、ホワイトブリムをきっちり装着し、黒いタイツと白手袋で露出をゼロにした姿はなんだか妙にサマになっている。
「しかし……混沌世界にはだいぶこう、特殊な趣味をしている人間が多いな」
「今さら?」
 ちょっとロリータ風の、言い方を変えるとアリス風のテイストが入った可愛らしいメイド服に身を包んだ『木漏れ日の優しさ』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)が小首をかしげる。
「まぁいいわ、接客の経験もあるしメイド服だって着たことあるし。……私のサイズのメイド服があるのがすごいなぁとは思うのだけど」
 非正規雇用のメイド服がある時点でもうどんなんがあっても驚かない。
「ていうか、外野で笑ってるつもりだったのに、きっちり参加することになってるのね」
 なんだかんだで服持ちな彼女。大抵の服は着てみたし全身図にしてみたので、メイド服も時間の問題だったのかもしれない。
 身体をぽんぽんと叩いて具合を確かめると、うんと頷いてから回りを見た。
「さ、鑑賞会も終わったことだし、お仕事しましょっか」


 始まってしまうと意外となんてことのないお仕事なのである。服も着てれば慣れるというか、一日目こそソワソワしていた彼らも数日すごすうちにルーティーンのごとく自然とメイド服が着れるようになってきた。
「自分のコレクションのうち特に高価な逸品水着メイド服に目を付けるとはただものではないでありますね……他の連中の分も用意するであります。なんとか着せたい。
 男どものもあるでありますよ。震えて待て」
 などと言いながらエッダが更衣室の服を入れ替えようとするたび、男たちが取り押さえにかかる。
「水着にされるわけにはいかないんでな。悪く思うな」
 エーレンはエッダを羽交い締めにしたまま瞑目する。
 エーレン的にはメイド服になった時点で最大限の譲歩なのである。
「うおーはなせー! ここは更衣室だぞー!」
「男子用のな!」

 とかやってる様子を直感的に察しつつ、美咲はちゃぷちゃぷと洗濯板で洗濯物を洗っていた。
「え? 私の家庭的なシーンが珍しいって? 食ってるか探ってるか戦ってるかしか見たことがないって?」
 虚空に向けて勝手に反論を始めた。
「いや、正直言って家事はそれなりにできる方スよ? 私。ただ、常日頃から自分の労力の省力化に取り組んでいるだけでス」
「おー、おつかれー」
 そこへサンディが男子感丸出しでてっくてっく歩いてきた。服装が可愛らしいだけにギャップがすごいのだが、それも見慣れるとなんか可愛く見えてくるのが不思議である。ヒロイン属性のせいだろうか。
「あれ、そっちのお仕事なんでしたっけ」
「ガキのおもりだよ。二歳ってすげーのな。どこにでも行きたがるんだぜ」
 そういって子供服やまえかけの洗濯物をカゴにいれて出してくる。
「というか、よくそんなことできましたね」
「まあ、家事全般をちょっとな」
 できるしな、とサンディが頬をかく。
 するとオデットがオディールと一緒に庭を走っているのが見えた。二番目の子供と一緒にフリスビー遊びをしているらしい。
 ひとしきり遊んでから、こちらに気付いて手を振ってくる。
「あ、美咲。写真とらせて。あ、動画でも!」
「イヤでスけどォ!?」
「これがあれでしょ? 人間の英知ってやつでしょ?」
「違いまスけどォ!?」
 オデットの担当はお掃除。ぱたぱた飛んで窓とか天井まわりとかをお掃除するのが仕事である。
 飛行種を初め飛べるメイドはちょいちょいこういうときにお掃除係に任命されがちである。
「そういえばなんだけど……この辺、ちょっとだけ精霊いたのよね。話が通じるレベルの」
「へえ、珍しですね」
 いつのまにかいたイスナーンが急に話題に加わってきた。
 びくっとするが、イスナーンがどこからともなく現れるのはもう慣れたことなのである。
 宝物の警備だとか罠の設置だとかで屋敷のあちこちを動き回っているらしい。
 大体気配を消しながら移動するので、注意してみていないとこうして突然現れるのだ。
 さておき。
「知性のある精霊というのは高位なのでは。もっと自然豊かな場所にいそうなものですが」
「ね。こういう所の子はタンポポか虫さんレベルの知性しかなかったりするけど、一言二言は会話できたのよ。それだけ雰囲気が良い場所ってことなのかも?」
「評価基準がわかりませんが……そういうことかもしれませんね」
 イスナーンが見て回った限りでも、この屋敷に不穏な雰囲気はない。善良な領主が穏やかに回しているという雰囲気が伝わってくるのだ。趣味はどうかしているが、趣味以外に欠点らしい欠点がないというのも見事である。
「こういう職場なら、働きがいもあるというものです」

 一方。
 カイトが料理の入ったワゴンを運んでいると非正規雇用が壁際に飾られた鎧飾りを掃除していた。
「まぁ! こんなに大きな槍、磨くのに一晩かかってしまいます!!」
 と大胆に言い放ってから、キリッとした顔で振り返る非正規雇用。
「……え?」
「あ、いやだから槍が」
「え?」
「その、槍が」
「槍?」
 カイトにアルゴニアンメイドはマニアックすぎたようだ。
 コホンと咳払いし、別の人にふるかと気持ちを改める非正規雇用……の背に、カイトがぽつりと呟いた。
「ところで、おやつ用のシュークリームが忽然と消えたんだが知らないか?」
「しゅーくりーむ? 知らないな……」
 神妙な顔でゆっくりを首を振る非正規雇用。
 その鬣にめっちゃクリームがついていることを、カイトはとりあえず黙っておいた。
 あとでむしろう、と思いながら。


 忘れてはいけないことだが、これは怪盗を捕まえるための任務である。
 皆が数日かけてメイドになれつつあったころ、その事件はおきた。
「キャットテイルだー!」
 誰かの叫びを受け、エーレンはパッと顔を上げた。
 屋敷の外にいたエーレンが見たのは二階の窓。そこを黒いボディスーツ姿の女性が走り抜けていく姿だ。
「逃がさない」
 エーレンは空を駆けるような機敏さで跳躍し、窓の縁や壁の凹凸を利用して駆け上がると二階の開いた窓から室内へと侵入。キャットテイルを追いかけ始める。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。鬼ごっこが終わりであれば、観念してもらおうか」
「フフ、終わりにするわけにはいかないのよ」
 手に持っているのは何かの小箱。逃げだそうとする彼女を追い詰めるように、天井からスタッと飛び降りたイスナーンが退路を塞ぐ。
「いいえ、終わりです」
 エーレンが手にしたモップとイスナーンの手刀が同時に繰り出され、キャットテイルはそれを凄まじい反射神経で回避した。壁を蹴って天井をも蹴り、反撃のキックを繰り出す。
 エーレンはそれを素早いバックステップで回避したが、相手の動きの洗練したさまに目をみはる。
「小物ではない、か。油断するなよイスナーン」
「当然」
 エーレンは今度こそはと鳴神抜刀流・閃鞘之救命『慈嵐』の構えをとった。
 対するイスナーンはワイヤーをひゅんと伸ばして相手を拘束しにかかる構えだ。
 窓から飛び出し逃げよう――としたキャットテイル――の足元から網が展開。イスナーンが仕掛けた罠が作動したのだ。
「何ッ!?」
 そこへエーレンのモップぶつけられ、意識をそぎ取っていく。
 がくりと膝を突くキャットテイル。
「くっ……私を捕まえても第二第三のキャットテイルが――」
「そんな都合良く何人も出るわけが」
「キャットテイルだー!」
 庭から声がした。
 ハッとして外を見ると、非正規雇用がどたどたとボディスーツの女を追いかけていた。
「あいつが宝物を盗んだんだ! きっと、壺を割ったり、シュークリームを食べたのもアイツだ!」
「それはお前だ!」
 台所の勝手口からバッと飛び出してきたカイトが両手をクロスする。その手には黒胡椒や小麦粉の瓶が握られていた。
「くらえっ!」
「はうわ目が!?」
 胡椒や小麦粉をくらったキャットテイルが顔を手で押さえる。そこに飛びかかったのはサンディだ。
 目が見えず片手の状態でもキャットテイルは抵抗した。魔方陣を足元から展開し、防御結界をはったのだ。
 直前で阻まれたサンディ――とみせかけて、そこはカイトの仕込み。カイトは既に仕込んでいた術式を発動させるとキャットテイルの魔方陣を上書きし破壊、呪術によってキャットテイルの足元を縛った。
「今だ!」
 サンディの手刀がキャットテイルの首筋に打ち込まれ、更に非正規雇用の持ったモップが相手の足をくじく。
 そうして転倒したところに、腕を押さえ拘束しにかかった。
「スカート滅茶苦茶動きづらい! 破こうかと何度も思ったぜ……」
「いや破くなよ?」
「けどこれで怪盗も捕まえたな。次はオデットの録画データをぶっ壊しにいくか」
「賛成」
 カイトが手を上げた、その時。
「キャットテイルだー!」
「「三人目!?」」
 全員が顔をあげると、屋敷の屋根を走るボディスーツの女の姿があった。
「オディール!」
 オデットが叫ぶと、飛びかかったオディールが足首へとかじりつく。
 足をとられたキャットテイル。どうやら翼をはやして飛び上がろうとしたところだったようで、必死にオディールを振り落とそうと足を振っている。
 そんな相手にオデットはプリズムビームを発射。
 必死に横に飛んで回避するキャットテイル――だが、そこへ屋根へとよじ登ってきたエッダと美咲が飛びかかった。
「『緋の滴』から最も近い脱出口。飛行手段さえあればこのルートを使わない手はない」
「ここを抑えておくのは基本でスよ」
 エッダはいつものあの構えをとって対峙。上に逃げても死ぬだけだと察したキャットテイルは対抗するように格闘の構えをとった……が、そんなキャットテイルの頭上にバケツが飛んできた。器用なことにバケツが頭にすっぽりとはまり、視界が奪われたキャットテイルが混乱する。その隙にエッダのメイドハラパンが炸裂した。
 更に美咲はその辺にあったロープで手早く相手を拘束すると、屋根の上でふんじばった。
「これにて、一件落着っスね……」

 後日談というか、今回のオチ。
 予告状まで出しといてしれっと三人でやってきていたキャットテイルは無事つかまり、『緋の滴』が盗み出されることも防がれた。
 八人のメイドはメイドス・キスギール氏からたいへん惜しまれながらもメイド服を脱ぎ、普段の姿へと戻って屋敷を後にしたのだった。
 あと非正規雇用は鬣をそられ屋敷の屋根から逆さに吊されたのだった。
 あとオデットは録画データを持って一足先に逃亡していたのだった。
 残る仲間たちはオデットを追いかけついにはふんじばったが、ローレットの依頼は全て録画保存される仕組みにいつからかなっていたことを思いだし、膝から崩れ落ちるのであった。
 めでたし、めでたし。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 めでたしめでたし!

PAGETOPPAGEBOTTOM