PandoraPartyProject

シナリオ詳細

雪解けの光

完了

参加者 : 12 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 大陸の北東に広がる深き大森林ヴィーザルには雪解けの光が差し込んでいた。
 あたたかな陽光を全身で浴びようと新しい芽吹きの葉が広がる。
 雪のない短い期間を惜しむように一斉に色取り取りの花が咲き乱れるのだ。

 朝露の雫が薄紫色の花弁からとろりと零れる。
 雫がぴんと跳ねて土の上の小さな水溜まりに落ちた。
 波紋を広げた水溜まりにはアジュール・ブルーの空が映り込んでいる。
 そよ風に揺れる木々の葉の間から小鳥の囀りが聞こえた。
「ふふ、おはようございます小鳥さん」
 ふわりと微笑んだエル・エ・ルーエ (p3p008216)は指先を木の枝へと向ける。
 その指先に小鳥が飛んで来て「チチチ」と挨拶をした。
 エルの足下には猫のモリアーティが寄り添い尻尾を絡ませている。
 モリアーティを抱え上げたエルは柔らかい毛並みに顔を埋めた。

「少し、どきどきします」
 この日のために少しずつ用意してきたのだ。
 臆病なエルにとってはそれを伝えることすら難しく長く躊躇いがあった。
 けれど、大切なことだから。
「サメエナガさん、ミルクさん、モリアーティさん……」
 少女は一緒に住んでいる小さな友達に視線を向ける。
 不安げなエルの顔を伺うように彼らも少し困ったように首を傾げた。

 エルにとってこの冬は悲しい出来事が多くあった。
 鉄帝全土が戦場になってしまい、沢山の人の命が失われた。
 残された人たちの傷も癒えてはいないだろう。
 身近に起きた惨劇にエルは酷く心を痛めているのだ。
 ――次の冬が楽しくなるように、このヴィーザルでエルが出来ることをしたい。
 それは友人達と会う機会が少なくなるということでもあった。

「エルは……いえ、楽しいお茶会にしたいですね」
 自分の中の不安よりも、せっかく『大切な友人』たちが自分の家に来てくれるのだ。
 そのことを何よりも大事にしたい。
「エルは、皆さんが、大好きですから」
 少女はモリアーティを抱きしめて「準備を始めましょうか」と大きな家の中へと戻った。


「こっちは、肌寒いな……」
 腕を擦った澄原 龍成(p3n000215)がキャラバンの船から降り立つ。
 練達国の管理された天候の中で育った龍成にとって、実際の自然が織りなす空気は何時でも新鮮だった。
「龍成これをどうぞ」
 大きなリュックサックの中から龍成へカーディガンを取り出すのはボディ・ダクレ(p3p008384)だ。
「え、お前持って来たの?」
「はい。龍成が薄着だったので寒いだろうと思いまして」
 ヴィーザルはこの時期でもカーディガンが必要だとボディは知っていた。
「ありがとな……」
 微笑む龍成の顔を見上げボディは僅かに目を細める。

「あれが、エル氏のお家かな?」
 星影 昼顔(p3p009259)が指差した方向へ恋屍・愛無(p3p007296)が視線を上げた。
「確かに一人で住むには大きすぎる」
 愛無は洋館の中で少女が静かに佇む姿を想像して「大変そうだ」と首を振る。
 洋館へと続く道は綺麗に整えられ、左右に花が植えられていた。
「これもエルが植えたンかな?」
 首を傾げたレイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)は少女が小さなスコップを持って楽しそうに土を掘っているのを思い浮かべる。
「こんなにも歓迎してくれるなんてな」
 ジェイク・夜乃(p3p001103)は口角を上げて家の前に広がる庭に視線を流した。
 大きな家の前には色取り取りの花が咲き乱れる庭園がある。
 その真ん中には木製のテーブルがおかれていた。フリークライ(p3p008595)はその庭園から続く洋館のテラスが開放されている事に気付く。
「ガーデンパーティもできそうだね」
「これだけ広いと、大人数でお邪魔しても大丈夫そうだねェ」
 ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)の言葉に隣に寄り添った武器商人(p3p001107)が頷いた。

「皆さん、ようこそ、エルのお家へ!」
 手を振って駆けよって来たエルにレイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)は目を細める。
「お土産持って来たよ」
 フラーゴラ・トラモント(p3p008825)は紙袋に入ったゴラぐるみと苺ジャムを差し出した。
「何か手伝えることがあれば言って」
 イーリン・ジョーンズ(p3p000854)の言葉にエルは「はわわ」と頬を染める。
「えと、じゃあ……エルと一緒にお茶を淹れませんか?」
 本来であればお客様に手伝わせるのは気が引ける。けれど、エルは自分一人では出来ない事もあると知っているのだ。それに、その時間だって『思い出』の一欠片になる。
 ドアを開けた瞬間、リン――とベルが鳴った。

GMコメント

 もみじです。大きなお家でお茶会をしましょう。

●目的
・お茶会を楽しむ

●ロケーション
 鉄帝国ヴィーザル地方にあるエルさんのお家です。
 大きな洋館で様々な花が咲き乱れる庭園があります。
 庭園には木製のテーブルが並べられ、ガーデンパーティが出来ます。
 開け放たれたテラスもあります。
 少し肌寒いなと思ったら、家の中で温まることもできます。
 家の中ではゆったりとしたソファもあります。
 二階にはまだ整理しきれていない洋室もあります。
 地下はひんやりとしていて食料庫となっています。
 キッチンで紅茶を淹れたり、料理を作ったりも出来るでしょう。

●出来そうなこと
・紅茶を飲む
・思い出話に花を咲かせる
・洋館の二階の整理を手伝う
・キッチンで紅茶を淹れる
・キッチンで料理を作る
・庭園で花を愛でながら散歩する
・静かな部屋で内緒話
・猫のモリアーティや犬のミルク、陸鮫のサメエナガと戯れる

●紅茶の種類
・ダージリンはマスカットフレーバーが有名です。
・アッサムはミルクティに合うようです。
・アールグレイティはベルガモットの香りのフレーバーティです。
・フレーバーティのスパイス系だとジンジャーやシナモンが定番です。

 ヴィーザルはまだ肌寒いので温かい方がいいでしょう。
 もちろん、アイスティにしても美味しいです。

●お菓子やお料理
・クラッカーに苺のジャムを乗せたもの
・マフィンにパウンドケーキ、スコーンなど
・チョコやクッキー、ナッツ系もあります
・鉄帝名物の美味しいブルストやベーコン、ハムなど
・他にもキッチンで作った料理などが並びます
・シュクメルリもあります!

  • 雪解けの光完了
  • GM名もみじ
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2023年06月26日 22時05分
  • 参加人数12/12人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 12 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(12人)

レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)
騎兵隊一番翼
ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)
楔断ちし者
ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
武器商人(p3p001107)
闇之雲
恋屍・愛無(p3p007296)
愛を知らぬ者
エル・エ・ルーエ(p3p008216)
小さな願い
ボディ・ダクレ(p3p008384)
アイのカタチ
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
星月を掬うひと
星影 昼顔(p3p009259)
陽の宝物

サポートNPC一覧(1人)

澄原 龍成(p3n000215)
刃魔

リプレイ


 若葉が芽吹き色取り取りの花を咲かせる庭を爽やかな風が吹いていく。
 いつもは静かな洋館に大勢の人の声が反響した。
 それが新鮮で胸が弾ける思いをかみしめるのは『小さな願い』エル・エ・ルーエ(p3p008216)だ。
「わわわわっ。こんなにお家が、賑やかなのは、初めてだって、エルは思いました」
 普段は静まり帰った家が呼吸をするように軋むのが分かる。
 胸に広がるどきどきにエルは目を細めた。きっと動物たちも珍しいお客様を歓迎してくれるだろう。

 このお茶会はエルが何ヶ月も前から準備していたものだ。
『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は慌ただしく駆け回るエルを見つめる。
 最高の時間にしてあげたい。そんな思いを胸にイーリンは小さく呟く。
「神が……いいえ、貴方が、私達もそれを望むから」
 イーリンの視界にエルの元に駆け寄る『星月を掬うひと』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)が映り込んだ。ふわふわと白い髪が風に揺れる。
「エルさん招待してくれてありがとう! とびっきりの素敵なお茶会にしようね!」
「はい!」
 満面の笑みを浮かべるエルの周りには次々と仲間が集まってくる。
「エルはお茶会に招待してくれて、ありがとな!」
『祝呪反魂』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)は青金の瞳に友愛を浮かべた。
「──君の選択や門出に、祝福を。歩む道に幸あらん事を。
 今日はエルの『物語』を一杯語って欲しい。俺は、それを聞きに来たンだ」
 エルの頭をふわりと撫でたレイチェルは彼女がこくこくと頷くのを見遣る。
『楔断ちし者』ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)と『闇之雲』武器商人(p3p001107)もお茶会に招待されたことに感謝を述べた。
「話をしたり、依頼に参加したり色々あったけれど……ここまでで終わりじゃないんだ。これは君が紡ぐ物語(ハッピーエンド)だ。是非そうなる為に、音色を奏させておくれ」
「そうだね。キミの素敵なモノガタリ、とても楽しみにしているよ。キミはまだまだ、この先も沢山のモノを見聞きできる……そのために、我(アタシ)は喚ばれたのだからね」
 武器商人とヨタカは小さなエルに視線を合わせるように腰を折り、お茶会のお姫様に親しみを込めた挨拶を交す。見目麗しいヨタカと武器商人にエルはキラキラと目を輝かせ照れた様に笑った。

『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)はエルへ視線を移す。
「お茶会に招待をしてくれてありがとうエル。みんなで思い出に残る楽しいお茶会にしようぜ……」
 されどジェイクは緊張していた。この緊張は冠位魔種と戦った時と同じ……否それ以上。
 何せ今回のお茶会ではジェイクが皆にスコーンを振る舞う事になっているからだ。
「スコーン楽しみです!」
「てか、射撃しか知らないこの俺がだぜ……子供が出来て俺も変わったのかね」

「思えば鉄帝での激戦からこっち、ちゃんとした休息というのも取らなかったか……」
『騎兵隊一番翼』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)はエルに感謝せねばと瞳を伏せる。
 その隣では『陽の宝物』星影 昼顔(p3p009259)が少し緊張した面持ちで周囲を見回していた。
「エル氏、招待有難う。正直、女性の家に呼ばれるの初めてで緊張するけど……皆で楽しみたい、かな」
「レイヴンさんも昼顔さんもいらっしゃいです!」
 元気なエルの上に影が落ちる。顔を上げれば『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)が少女を覗き込んでいた。
「エル。フリック 起キテカラ初メテデキタ友達ノ一人。トテモ 大切ナ友達」
 フリークライはエルへと手を差し出す。それをぎゅっと握るエル。この小さな少女と出会った時の事を思い出す。フリークライがお腹が減らない事にエルは驚いていたのだ。
「デモ フリック 美味シイ 眼ヤ味覚センサーデ 感ジル 好キ 話シタラ エル オ茶会シタイ 言ッテクレタ。トテモ 懐カシイ」
「そんなこともありましたね!」
「エル。オ茶会 フリック 楽シミニシテタ。キット 想像ヨリモ モット楽シイ」
『ぬくもり』ボディ・ダクレ(p3p008384)は澄原 龍成(p3n000215)と共にエルの元へ歩み寄る。
「招待して下さってありがとうございます、エル様」
「晴れて良かったなエル」
 久し振りの友人達との交流にお互い顔がほころぶようだ。
「今日という日を待ちわびていました。お茶会、楽しみましょう……まずは準備からですね」
「はい!」

 家の中に「お邪魔します」と入ったボディは二階の掃除を買って出る。
「龍成もお願いします。こういう時は男手が必要らしいです」
「じゃあ、お前も今だけ男になれば良いんじゃね?」
 それもそうかと考えたボディは二階の空き部屋に入り、男の姿で出て来た。
「……外から見ても大きい館でしたし、部屋数が凄い。全霊を以て取り組まねば」
「そうだな。じゃあこのデカイ棚から運ぶぞ」
 ボディと龍成は力を合わせエル一人では到底運べないであろう棚を動かす。
「ありがとうございます。お二人とも、エルはとても助かります。では次は向こうの家具をお願いします」
「わかりました。えいやー」
「お前、最近女で居る時の体格に慣れ過ぎてんじゃねーか? 男の時はお前の方がデカイんだから、えいやーしたら俺潰れるだろ」
「龍成……なまったのでは?」
「んだと、こんなん一人でも運べるし!」
 ボディと龍成。男の子同士のやり取りを久し振りに聞いてエルは笑みを浮かべる。
「あの高いのを取って欲しいのですが、龍成さん」
「あいよ。これでいいか?」
 備え付けの高棚に手を伸ばし、箱をエルに渡す龍成。
「そういえば、二階だけでいいのか? 掃除するのは」
 言いながら龍成は三階へ続く階段を見遣る。
「……三階、エルのお部屋、散らかってるので、めっ、ですよ?」

「そうか。エル君はヴィーザルの復興の手伝いをするのか。それは良い事かもしれないな。何せ、あの国は、そういった復興だのなんだのと言ったアフターケアの類が酷く下手そうだ。エル君の様に繊細で気配りのできる子ならば重宝されるだろう」
「はい。エルは頑張りますよ」
 二階に顔を見せた『ご馳走様でした』恋屍・愛無(p3p007296)はエルの横にあった戸棚を持ち上げる。
「何にせよ辛い事も大変な事もあるだろうが。なに気長にやる事だと思うよ。生きてさえいれば、縁なんてモノはどうにか転がっていくものだ。エル君ならば、君が困ったときには、きっと誰かが助けてくれるさ……この戸棚は何処へ置けばいい?」
「はわ……愛無さん、お一人で大丈夫ですか?」
「なに、力仕事ならば任せてくれたまえ。二人も手伝ってくれているとはいえ、人手は多い方がいいだろう。存分に頼ってくれればいい」
「ありがとうです」


 そよぐ風が庭園を歩くレイチェルの銀の髪を揺らす。
 凜と咲き誇る花々に目を奪われるレイチェル。
「あんまり言う機会は無かったンだけど、花とかは嫌いじゃない。好きなんだ」
 少し照れくさそうに頬を掻くレイチェルにエルは「ふふ」と微笑んだ。
「良く手入れされた庭だな。大変だろ? ヴィーザル特有の花とかはあるのか?」
「特有の花かは、エルには、分からないのですが、この時期は薔薇が綺麗です」
 赤い薔薇はしっとりと熟れて、薄紅色の薔薇は弾けるような瑞々しさを誇る。
「黄色も薄紫もあるンだな……綺麗だ」
「ン。大キナ家。ダカラコソ 大キナフリックデモ ノビノビ。 オ花モ トテモ 愛サレテル。フリックニハ 分カル」
 レイチェルとフリークライは一通り庭園を歩いてお茶会の準備に取りかかった。

 広いキッチンにはヨタカや武器商人、昼顔やジェイク、フラーゴラの姿もある。
「おお、賑わってンな。何か手伝おうか?」
「レイチェル 料理 シナイ?」
 紙袋を持って来たフリークライが首を傾げる。
「俺が料理するとさ、何故か『物体X』みたいな奴が出来上がるンだよなぁ。黒い奴。だから、下手に料理には手を出さない方が良いのだ……だから、俺は味見係!」
「アジミ? ツマミ?」
「……つ、つまみ食いなんて考えてないぞ! 本当に!!!」
 頬を染めたレイチェルの耳はそわそわと動き、視線は泳いでいる。
「頼マレテイタ 果物 野菜 ハーブ類 持テキタ。 コノ日ノ為ニ フリック ギフトデ 育テタ。今ノ季節ノヴィーザル地方 入手不可ノモノモ イッパイ。産地直送? ウウン。産地《フリック》ガ 来タ」
 フリークライから材料を受け取ったフラーゴラは「ありがとう!」と元気よく声を張る。
 その隣ではジェイクが深呼吸をしていた。一発気合いを入れてスコーン作りに取り組むためだ。
「よろしくお願いします!」
「はい!」
 フラーゴラに頭を下げたジェイクは普段使わない敬語で教えを請う。それだけ気合いが入っているということなのだろう。それに応えるようにフラーゴラもキリっとした表情でエプロンをつける。可愛い。

「そうそう! 上手! スコーンも色々な味のものをね」
「プレーン、ハーブスコーン、無花果、胡桃のスコーン……」
 二人が作っているお菓子に入っているハーブは先程フリークライが持って来たものだ。
「スコーンも味付け工夫次第で変わるものだな、ホント奥が深い」
 フラーゴラに教えられ、要領を得たジェイクは少しずつ上達している。そうなれば、楽しくなるもので。
「ほんと、ありがとなフリック。素材が良いから味も良さそうだ」
「ありがとうだよー!
「ン。ヨカッタ……」
 ジェイクとフラーゴラの言葉にフリークライは頷く。
「あと『春野菜と真鯛の香草グリル』に『ゴラたべよ』……作りすぎちゃったかな?」
「これぐらいなら良いんじゃねーか?」
 人数も多いのだ。多少作りすぎたとしても食べてくれるとジェイクは微笑む。
「あとあとこれは特別……! 『ポルボローネ』! 雪玉みたいなお菓子だよ。エルさん冬が好きって言ってたから」
 フラーゴラの料理を居間へと運ぶジェイク。高そうな食器を並べながら、落さぬよう注意を払う。

 昼顔は腕を捲りながら「まずは……」とキッチン台の前に立つ。
「僕は動物達が食べられるお菓子を作ろうかな? 僕のひいろも含めて割と動物達がいるなぁと思うし」
 動物たちもお茶会の参加者なのだ。彼らが食べられるものも用意した方が良いと昼顔は考える。
 事前に調べてきたメモを手に、フリークライへ視線を上げる昼顔。
「えっと……フリークライ氏が良ければ、一緒にクッキー作らない?」
「ン? 昼顔? 鳥サン用クッキー 作ッテル? スゴイ。是非トモ ゴ教授 願ウ。フリック ゴチソウ作リ 頑張ル」
「うん、じゃあその子が食べられるものを教えてくれる? 一応、鳥用のレシピだけど。材料を変えれば他の動物達用にも応用が効くはずだから」
 昼顔のひいろ以外の小鳥のことは飼い主であるフリークライに聞いた方がいいだろう。
 仲間が居てひいろも嬉しそうだと昼顔は目を細める。
「普段食べてるペレットや穀物。そして彼らが食べられる果物や野菜をすりおろし混ぜ合わせ」
「ン。ワカッタ」
 フリークライと昼顔は手分けして動物たちのためのクッキーを作る。
 ラップで整形した生地をオーブンで焼き上げて完成だ。
「よし、良い感じだね」
「小鳥モ 喜ブ」

 キッチン台の前に立つヨタカは隣の武器商人を見つめる。
 武器商人がアップルパイを焼くらしいからヨタカはその手伝いなのだ。
「冬の娘にお茶会されたとあれば、出来る限り最高の手土産を用意したいところだね。キッチンを使わせてくれるし、作りたての料理をお茶会に提供させてもらうとしよう」

 武器商人のアップルパイは眷属達にも一番評判が良いらしい。
 パイ生地は寝かせる時間を鑑みて、予め家で作り保冷したものを持ってきていた。
「質のいいバターをケチらないのがサクサクの秘訣だよ。それから墓守のコが育ててくれたりんごを使ったアップルフィリングを作って、隣でカスタードを作って……ヨタカ、一緒に作っておくれね」
「カスタードはお手の物だからね、任せてよ紫月!」
 嬉しそうな笑みを浮かべるヨタカはきらきらと輝いて見える。
「あとはオーブンで焼き上げたら、カスタード入りアップルパイの完成だよ」

 甘い匂いが二階で掃除しているエル達の元にも運ばれてきた。
 お茶会の準備が、もう間も無く出来るようだ。


 エルたちが二階から下りてくると、イーリンの可愛らしいメイド姿が目に入る。
「わ、可愛いです。イーリンさん!」
「あらそう? ふふ」
 エルの言葉に笑みを浮かべるイーリンの向かいでレイヴンが怪訝そうな顔をしていた。
「いつの間に持ち込んだのだイーリン。その何時ぞやに渡したメイド服」
「ふふん、普段から紅茶を淹れているのよ。給仕くらいできるってところを見せてやらないとね?」
 イーリンはレイヴンに不敵に微笑み、自分が持ち込んだ紅茶を取り出す。
「お師匠先生! 紅茶はマスカットフレーバーのちょうだい」
「はい、フラーゴラ嬢。マスカットのフレーバーティーでございます」
 お茶を淹れる時にえらい高さから注いだりも出来ると得意げな表情を浮かべるイーリン。
「ふふっ」
 エルの笑い声を皮切りに、イーリンやフラーゴラも堪えきれず笑い出す。
 肩を竦めたレイヴンにウィンクで給仕を任せたイーリンは、ソファにゆったりと腰掛けた。
「因みに高い所から注ぐのは空気に触れさせいい感じの温度に調整するのと、味になめらかさを出す目的があってな……」
「そうなのですね!」
 レイヴンの慣れた所作にエルは目を輝かせる。
「ミルクとシュガー、はお好みはありますか? エルお嬢様」
 予め温めておいたカップに、蒸らした紅茶を洗練された動作で淹れるレイヴン。
「さ、どうぞエルお嬢様。皆様方も要望があればこのポルードイめにご用命ください」
「わわ、ありがとうございます、エルは、こんなにも美味しい紅茶は、初めて、かもです」
 ふわりと香る紅茶にエルは目を瞠る。
「じゃあ俺は、ダージリンのマスカットフレーバーかな。香りを楽しみたいしさ、砂糖は入れないでストレートで頂こうか。普段、フレーバーティーを飲む機会が無いからさ。新鮮!」
「畏まりました。レイチェルお嬢様?」
 レイチェルが希望を出せば、素早くレイヴンが紅茶を淹れる。
 素早く貞淑に準備せねばとレイヴンは頷いた。
「……この感じも久々だ」
 昔の血が騒ぐとレイヴンは懐かしさをかみしめる。

「やァ、猫の感覚で言えば久方ぶりだねモリアーティ」
 武器商人はモリアーティへの挨拶がてらもふもふと撫で回した。
「可愛がってもらってる様で何よりだ。伸びすぎには注意しておくれ。分裂してしまうとちょっとややこしくなるからね」
「ニャァ」
 猫のように鳴いたモリアーティに「よしよし」と武器商人は頷く。
 ボディは甘い花のシロップ入りのミルクティーを口にした。
 フラーゴラとジェイクが作ったスコーンにも蜂蜜を掛けて、口の中が甘さに満ちる。
 ほくほくしたボディの顔を龍成が愛おしそうに見つめた。
 ボディが視線を上げればヨタカが黒いケースを取り出すのが見える。
「さ、お茶会の準備が出来たら音楽は必要だろう?」
 吹いてくる風と、小鳥の囀りの合間を抜けて、ヨタカの美しいヴァイオリンの音色が響いた。
「エル……君に捧ぐ曲だよ。これからもずっとこの先、君の未来に幸せが訪れますように……そんな気持ちを込めて」
「わわ、ありがとうございます。嬉しい、です」
 ヨタカのヴァイオリンの音色に耳を傾けるジェイクは武器商人が作ったアップルパイを食む。
 ジェイクの視線の先には動物たちに干し肉を分け与えるエルの姿が見えた。
「ちょっとお高め干し肉、どうぞです」
「お、今日は特別なお茶会だからな」
 動物たちの元へやってきたジェイクはエルの傍に居るサメエナガの頭を撫でる。
「よしよし。良い子だな」
 こう見えてもジェイクは動物が好きなのだ。動物たちもそれを感じてジェイクに好意を示す。

 ――――
 ――

 エルはどきどきしながらお茶会を楽しむ皆の顔を見つめる。
「エルは、ローレットを訪れてから、たくさんたくさん、思い出が出来ました。そしてエルは、たくさんたくさん、物語を知りました。物語は、心に雪のようにやってきて、やがて解けて心を潤してくれます。だからエルは、鉄帝の方々に、色々な物語を伝えたいって、思いました」
 だから皆のお話を聞かせて欲しいとエルは友人達を見渡した。

「あっ!! 武器商人さんとヨタカさんのお話聞きたあい……! 武器商人さんとヨタカさんはワタシもあんな風になりたいなって憧れ」
 フラーゴラは武器商人とヨタカをワクワクした表情で見つめる。
「我(アタシ)と小鳥の話を聞きたい? そうだなァ……小鳥が最近、温泉旅館の魅力にハマってね。デートで日帰り温泉旅行なんかもするんだよねぇ……もしいい旅館があれば教えておくれ」
「温泉旅行!? いいなぁ!」
 ヨタカが少し照れくさそうに目の前のアップルパイを取る。
「紫月のお菓子、ホントどれも美味しいし最高なんだけれど……その中でも一番がアップルパイなんだ」
 宝石みたいなアップルパイをヨタカは愛おしそうに見つめた。
「俺がアップルパイ好きなの知って、こっそり練習してたのが切っ掛けだったかな。俺のばあやが作ったアップルパイが美味しいから最初は食べさせたくないってゴネてたのが懐かしいな……俺がお願い! ってゴリ押ししたから食べられたけど、あの時食べたアップルパイはホント、蕩けるくらい美味しかった」
 更に武器商人は腕を上げ、今日に至るというわけだ。
「今日も食べれるんだって嬉しくなっちゃうね。ふふ、どうも紫月の話になると沢山話し過ぎちゃうね」
 微笑むヨタカが幸せそうで隣の武器商人と並ぶと更に楽しげな雰囲気を纏わせる。

 フラーゴラはシュクメルリをもぐもぐと頬張る。ぷくりとした頬袋が可愛い。
「騎兵隊のお話を聞かせてください」
 エルの問いかけにフラーゴラはごくんとシュクメルリを飲み込んで「うん」と頷いた。
「エルさんと一緒に行ったのはどれも練達で激戦のばかりだったね。ジャバーウォックと暴走するセフィロト・マザーの時……あっサメエナガさんもその時いたね!」
 名前を呼ばれサメエナガが嬉しそうに尻尾を振る。
「エルさんってばほわほわ~ってして見えてとっても頼りになるんだから」
 ジャバーウォックの時は準備期間が短く、マザーとの戦いは連戦だった。
「マザーの時に初めて『騎兵隊のラッパ』を吹いたんだっけ。ぶおお、ってね。お師匠先生が突然ラッパ吹いてって言うからビックリしちゃった。来てくれてとっても助かったし、がんばったね!」
「はい!」
 レイヴンも数々の戦場を思い出す。
「中でも……あのリヴァイアサンとつい直近の黒い太陽は……本気で覚悟をするほどだったな」
 騎兵隊ではレイヴンは古参になるのだろう。それでもどれ一つとして手を抜いた戦いなど無い。
 思い出を懐かしみながらもレイヴンは給仕の役目を怠らない。
「なぁに、騎兵隊の話。私もちょっとは詳しいわよ」
 たった五年前。結成された小さな隊は、今や大所帯となっている。
「居る者、去る者、来る者。出会いと別れ、ある意味人生そのものかしら」
 けど、一つだけ変わらないのは……
「今も昔も、私がこうしてお茶をする相手は変わらずその中に居る、ということ」
 己は果報者だとはにかむイーリンにエルの瞳に涙が浮かんだ。

「ボディさんと龍成さんのお話しは!?」
 フラーゴラはシュクメルリを頬張りながらもちもちのほっぺで顔を上げる。更に可愛い。
「祓い屋では……色々とありましたね?」
 龍成をチラリと見上げたボディは口の端を指で持ち上げ笑顔を作る。
「何だよ……」
「ちょっとした意地悪です。殴り合って、友達になって。エル様や昼顔様、龍成と一緒に色んな所に行きましたね。海や祭りや、それはもうたくさん……えぇ、今でも鮮明に覚えている。大切な思い出です」
 ボディの言葉にエルも昼顔も頷く。
「今は私は龍成と同居を……親友同士ですからルームシェアというのでしょうか」
「えっ、ボディさん同居してるのにカップルじゃないってどういうことお!?」
 フラーゴラはボディの言葉に身を乗り出した。
「ん、フラーゴラ様? え、カップル? 私と龍成が?」
 どう説明すればいいかと龍成を見つめるボディ。
「龍成さん、どうなの?」
 フラーゴラは今度は龍成に顔を上げる。
「子供には内緒だ」
「えー、教えてよお! 今後の為に!」
 大切な人との接し方は人それぞれだと思うけれど、それでも他の人達がどんな風に過ごしているのかは気になるお年頃なのだろう。

 レイチェルはエルや皆の話しに耳を傾けながら、ゆっくりと瞼を伏せ、過去の記憶に思い馳せる。
「……龍成がROOに閉じ込められた時はさ、本当にどうなるか心配だった」
 しかも、蓋を開けてみれが関与したのが己の宿敵であるヨハネだったのである。
「俺の先祖が迷惑を掛けて、すまなかった。あの時、一緒に奮闘したのがさ。凄い印象深いンよ。
 こうして……うむ、龍成とボディの恋バナを聞けるのはさ。凄い幸せな事なんだなぁ」
「恋バナ……? いえ、その、決してそんな関係では、なく」
 レイチェルの言葉でボディは頭の中にエラーが発生する。
「そうなの? カップルじゃないの?」
「確かに二人で過ごす時間は長いですが、その……」
 追い打ちを掛けるフラーゴラの問いかけに、更にはボディの頬に熱が集まって来た。
「……えぇい何です皆様! エル様も何故じーっと見るのですか! ヨハンナ様もその、これはそういう話ではなく! ……龍成助けて下さい」
「俺が口挟むと余計ややこしくなると思うんだが……?」
 それはそうなのだがと、やり場の無いエラーを龍成の腕を掴んで何とか押さえ込むボディ。
 楽しげなやり取りをカメラで撮影するのは昼顔だ。
「写真ですか?」
 エルの問いかけに「そうだよ」と頷く昼顔。
「きっと今日は誰にとっても大事な思い出になるから」


 紅茶をそっと置いたイーリンはエルを見つめ問いかける。
「ねぇ、エル。貴方は将来何になりたい?」
「将来ですか……」
「私はこれからも戦場に身を置くけれど、だからこそ聞いておきたいの。奥さんでも、お金持ちでもなんでもいいわ。誰かの夢を聴くのって、私はとても好きだから」
 視線をボディとフラーゴラに写したイーリンは微笑みを浮かべ「まあ……」と続ける。
「わかりやすい人も多いけどね。私は……どうかしら」
 ちらりとレイヴンを見上げたイーリンの真意はエルには分からなかったけれど。
 エルは勇気を振り絞って言葉を紡ぐ。
「……えっとえっと。いつかエルは、お父さんみたいに、エルの考えた物語を、書いてみたい、です。
 それが、エルが見つけた夢、です」
「良いじゃ無い。とても良い夢だと思うわ」
 イーリンの言葉にレイヴンも「そうだな」と頷いた。
「………将来、か。イレギュラーズとしての活動をおえた時、自分はどうなっているのか。ポルードイ家に戻って社交界に出るのか或いは……そんなに遠くないはずなのに、想像できないものだな」
 だからこそ、自分の夢を決めたエルが凄いとレイヴンは思うのだ。

「皆、色々考えているんだなぁ……エル氏も龍成氏も将来の夢を持ってて」
 昼顔は自分が何をしたいのか漠然とした不安がある。
 学園は不登校ではあるが進路希望を出さなければならないし。
 召喚された直後は『元の世界に帰れるようになったらさっさと帰る!』と決めてたのに。
 けれど、エルやボディ、龍成と過ごした日々は楽しくて大切で……
「僕も目の前の出来事だけじゃなくて、未来について考えないとなぁ」
 昼顔の隣でフリークライは紅茶と料理を楽しんでいた。
 戦いの話、恋の話、夢の話。どれも楽しくて。
「エル。フリック 長生キ。キット フリック 君ヲ送ルコトニナル。デモ 思イ出 ズット コノ胸ニ。
ソレニ 君ノ物語モ フリック 未来へ語ロウ。キット 君ノ物語 オ父サン語ッテクレタ童話ノヨウニ 誰カノ 好キニナル。未来 楽シミダネ」
 フリークライに住んでいる賢くて可愛い二匹の青い鳥は、エルとの出会いを授けてくれた。
 青い鳥は幸せを呼ぶもの。これも縁なのだろう。
 クッキーを食んで喜んでいるのは青い鳥たちととひいろ、それにモリアーティやミルクも一緒だ。
 サメエナガには驚いた様子の鳥に大丈夫だよとフリークライは慰める。

 ジェイクはエルの元へやってくる。
 エルとの出会いは、彼女の父親の事件だった。
「大丈夫、エルならきっと父親よりも良い物語を書けると俺は信じている。
 物語ができたら真っ先に読ませてほしい」
「はい! 物語が出来たらジェイクさんに読んでほしいです」
 しばらくはこのヴィーザルから離れることが出来ないけれど。
「だけどエルは、大好きな皆さんと、またお話もお茶会もしたいです。その時は、またご招待しても、いいですか?」
「もちろんだ」
 エルの問いかけにジェイクや他の皆も頷く。

「エル様……少しいいですか?」
 ボディはエルを少し離れた場所へと呼び出した。内緒話はきっとそよぐ風しか聞いて無いだろう。
「どうしました?」
「私の、あの人への気持ちは正直まだ判別がつかないのです。友情なのか、それとも……別の何かなのか」
 ボディはエルに向き合い自分の気持ちを告げる。
「だから、貴女に次会う時までには決着をつけてきます。私が抱えてしまったこの■心(バグ)に」
 緑の瞳に決意の輝きが見える。
「だからまた会いましょう、エル様。私の大事な友達。貴女がヴィーザルに居ようとも、友情は不変です。
 貴女がこれから描く未来と物語に、幸多からんことを。そう、祈っております」
「はい。友達、です」
 手をぎゅっと握ったボディとエルはお互いを見つめ微笑んだ。

「思えばエル君には、色々と世話にもなった」
「愛無さん」
 練達で誘拐された時もエルには助けて貰った。思えば、あの時も春泥が発端だったと愛無は思出す。
「まぁ、その縁で救われたモノもあるというのは矢張り奇妙な縁ということなのだろうな。僕は寝ていてイマイチ覚えてないのだが」
「頑張りました!」
 だから、と愛無はエルに向かって手を差し出す。
「練達の事は任せてくれたまえ。エル君が何も心配する事が無い様に僕が何とかしておくさ。深道の事も。燈堂の事も。だからエル君は自分の為すべき事を為せばいい」
 握られた手は確かな友情の証。
「さて。僕もいくとしよう。お土産にどーなつを置いていくよ。生きてさえいれば繋がる縁もあるだろう。またどこかで、ひょっこり出会う事もあるかもしれないしな」
 紙袋からドーナツの箱を取り出した愛無はくるりと踵を返す。
「道などというモノは結局何処かに繋がっているモノだからね。
 それでは息災でな。君の幸せを願っているよ」
 ゆっくりと去っていく愛無の背をエルは何時までも見つめていた。

「エル氏、贈り物受け取ってくれる?」
 昼顔はエルにプレゼントの包みを差し出す。
「何も持ってこないのは流石にねって。一般的に食べ物や飲み物だと思ったけど……此処で作るとなると余計かなと思って。なら手軽で長く使える物と考えて中身を追加できるルーズリーフ。カートリッジ式万年筆のセットにしたんだけど……」
「わわ、エルは、とても嬉しいです!」
 エルの夢を鑑みれば丁度良い贈り物だっただろう。
「メモとか武器とか自由に使ってくれたら嬉しい。そしてまた今日みたいに招待して……?
 ――その時は君が綴った物語を僕に聞かせて欲しい」
 こくりと頷いたエルの瞳には涙が浮かんでいた。

 ――フリックさんと、ジェイクさんと。
 お父さんと戦い、一緒に弔って頂いたお話。

 ――司書さんと、レイヴンさんと、フラーゴラさんと、騎兵隊の皆さんと。
 とっても大変な戦場で、戦ったお話。

 ――ヨタカさんと、武器商人さんと。
 大切な方を守るために、頑張ったお話。

 ――恋屍さんと、ボディさんと、星影さんと、ヨハンナさんと、龍成さんと、祓い屋の皆さんと。
 ぶつかったり遊んだり、大事な時間を過ごしたお話。

「全部、全部。ぜんぶ……」
 ほろほろと、涙が零れ落ちてくる。
 思い出と共に、雫は溢れ。止め処なく流れて行く。
「――――エルの大事な思い出ですよ」

 忘れることなど出来ない。大切な思い出たち。
 エルはその大事な物語に囲まれて、大きすぎる家で今日も筆を走らせているのだろう。


成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。
 リクエストありがとうございました。
 楽しいお茶会を彩れていましたら幸いです。

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