PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ひとにぎりの愛情

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「ねえ、お腹すいていない?」
 唐突に、劉・雨泽(p3n000218)がそう尋ねた。
 きょとんとした顔でお腹に触れてみたニル(p3p009185)には空腹がわからない。
「あ、ごめん」
 どうやらニルの種族を思い出した雨泽は一言謝って、言葉を変える。
「おいしい『おにぎり』を食べたくない?」
「ふふ。はい、たべたいです」
 良かったと笑った雨泽が事情の説明を始めた。
「豊穣のとある村でね、昨年は豊作だったんだって」
「それはよいことですね」
「けれどね、今の時期になっても倉の中がいっぱいなんだって」
 その何がいけないのだろうか。生き物が生活する以上、食べ物はあるにこしたことはない。ニルが不思議そうに首を傾げた。
「倉がいっぱいすぎて今年の分の収穫がーってなってね……」
 置き場がないのは困る。かと言って廃棄も勿体ない。食料が足りていない所へ配ろうにも、村には伝手がない。
 という訳で雨泽は鉄帝への復興支援として安価での買上げ等に動いた。
 鉄帝にも送ったし、これで一安心!
 そう思った矢先、事件が起こった。
「追加で……というか、僕へのお礼として米が送られてきたんだ」
「雨泽様はたくさんのお米にかこまれてしまっているのですか?」
「そんな感じ」
 お礼にと貰ったものだから、自分で消費した方が良いのだが――量がとても多かったのだ。
 だからね。
「僕と一緒におにぎりを作って食べてくれる人を募集してるって訳」
 そんな訳で、君もどうかな? と目があったあなたへと雨泽は声を掛けた。
 明るい声といつもの笑顔ではあるが、どうやらそれなりに困っているらしい。


 ことことと土鍋が鳴いていた。
 お米の炊ける甘い香りが広がって、それだけでお腹がぐうとなりそうだ。
「雨泽様の『おいしい』はどれでしょう?」
「うーん、今日の気分はね……」
 ふっくら焼いた塩鮭を大きくほぐしたおにぎりにしようか。
 鰹節を混ぜた昆布にしようか。
 貝のしぐれ煮も、牛肉のしぐれ煮も捨てがたい。
「しぐれ煮だったら生姜が効いてるものが好きだし、練達で食べた唐揚げおにぎりもおいしかったし……」
「小さく作って、全部いきますか?」
「……小さく握れる自信がないかも」
 何故か大きくなってしまうんだよねと笑った雨泽に、ニルはお任せ下さいと袖を捲るのだった。

GMコメント

 ごきげんよう、壱花です。
 おにぎりを食べたい!!!!
 おにぎりを握っている子たちが見たい!!!!
 仲良しさんたちで食べている姿を見たい!!!!
 現場からは以上です。

●目的
 おにぎりを握って食べましょう

●シナリオについて
 時系列等関係のない、平和な『とある日』です。
 各自でおにぎりを握ります。そして食べます。
 ひとりで握って食べてもいいし、誰かと握って食べてもいいです。
 サポートを開けておくので、NPCさんやお友達も呼べます。

●フィールド
 豊穣のとある施設を借りています。
 お米は一度に沢山炊いてあり、大きな机にドンと色々置いてあります。
 拘りがあるので炊くところからしたければして頂いて大丈夫です。(が、おにぎりを作ったり食べたりの描写が減ります。)
 おにぎりを食べる場所は縁側でもお庭でも、作った端から食べるでも大丈夫です。お庭では紫陽花が綺麗に咲いています。

●おにぎり
 大きいのも小さいのも、三角のも俵型のも丸いのも……皆違って皆いい。
 豊穣にある一般的なおにぎりの材料は揃っています。
 具の持ち込みは歓迎ですが、お米を消費することが目的なのでお米の持ち込みはできません。
 また、緑茶等の飲み物もあります。

●同行NPC
 劉・雨泽(p3n000218)が同行します。
 大きめのおにぎりを作ります。いっぱい食べます。
 お声掛けがあれば反応します。

●サポート
 おにぎりを握ったり食べたり出来ます。イベシナ感覚でどうぞ。
 同行者さんがいる場合は、お互いに【お相手の名前+ID】or【グループ名】を記載ください。一方通行の場合は描写されません。
 シナリオ趣旨・公序良俗等に違反する内容は描写されません。

●EXプレイング
 開放してあります。
 文字数が欲しい、関係者さんと過ごしたい、等ありましたらどうぞ。
 可能な範囲でお応えいたします。

●ご注意
 公序良俗に反する事、他の人への迷惑&妨害行為、未成年の飲酒は厳禁です。年齢不明の方は自己申告でお願いします。

 それでは、良いおにぎり日和となりますように。


交流


【1】ソロ
 米との語らいこそがジャスティス。

【2】ペアorグループ
 ふたりっきりやお友達と。
 【名前+ID】or【グループ名】をプレイング頭に。
 一方通行の場合は適用されません。お忘れずに。

【3】マルチ
 参加者さんと絡めれられそうだったら絡みます。単独行動がすぎるプレイングだとソロになります。
 NPCは話しかけると反応します。

【4】NPCと交流
 おすすめはしませんが、弊NPCとすごく交流したい方向け。
(サポートでNPCさんを呼んだ場合は【2】です)

  • ひとにぎりの愛情完了
  • GM名壱花
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2023年06月12日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

(サポートPC2人)参加者一覧(8人)

チック・シュテル(p3p000932)
赤翡翠
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
ジルーシャ・グレイ(p3p002246)
ベルディグリの傍ら
リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)
木漏れ日のフルール
メイメイ・ルー(p3p004460)
約束の力
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
祈光のシュネー
佐倉・望乃(p3p010720)
貴方を護る紅薔薇

サポートNPC一覧(2人)

建葉・晴明(p3n000180)
中務卿
劉・雨泽(p3n000218)
浮草

リプレイ

●にぎにぎたいむ
 ことこと、ことこと。土鍋が鳴いている。
「いやー、ゴリョウが来てくれて助かったよ」
 三角巾とたすき掛け。手袋も外した姿で、劉・雨泽は厨で機嫌よく笑った。
「こういう依頼は俺にとっても渡りに船だ」
 皆に告げた時間よりも早い時間。米を炊いておく必要があった雨泽にそういう事ならと『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)が挙手をしてくれた。彼は領地で米を育てている、謂わばプロだ。そして料理も美味しい。手伝ってくれるというのなら、とことん甘えてしまうのが雨泽である。
「味はどう?」
「古米寸前でもこの品質なら良い米だねぇ!」
「太鼓判だ。昆布と一緒に炊きたいとかあったら自由にしちゃってね」
「おう、任せとけ!」
 具材に関しても用意してくれるというのだ。雨泽は料理が得意ではないが、アシスタントを頑張った。
「っと、劉。リクエストがあれば聞くが?」
「肉。甘辛の肉巻きがいいな。肉しか勝たない」
 勿論、リクエストするのも忘れない。

「んーっ、とってもいい匂い♪」
 米が炊きあがる頃、声を掛けた面々が時間通りに集まった。胸いっぱいにあ美味しい空気を吸い込んだ『ベルディグリの傍ら』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)が沢山握って沢山食べるわよと告げれば、姉と一緒にやってきた『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)も「みゃー」と腕をあげた。やる気いっぱい、えいえいおーのみゃーである。
「晴さま、晴さま、こちらです」
 可愛らしいエプロンをギュッと結んで、仕事の合間に抜けてきてくれたのであろう建葉・晴明(p3n000180)に対して『ちいさな決意』メイメイ・ルー(p3p004460)は手を振った。
「あれ、中務卿だ」
「今日はよろしく頼む」
 豊穣男子たるもの、にぎれないこともないだろう。えらいひとが来たーっと笑いながら引っ込んだ雨泽は『燈囀の鳥』チック・シュテル(p3p000932)とともに皆で握るスペースへ具材や米を運ぶのに忙しい。
「自由に始めちゃってね」
「はい。それではたくさんにぎにぎしちゃいましょう!」
 可愛いエプロンを装着し、『ずっと、あなたの傍に』佐倉・望乃(p3p010720)が夫のフーガ・リリオ(p3p010595)に微笑みかける。
「フーガは何から握りますか?」
「鮭にしてみようかな?」
 やる気いっぱいの新妻の表情が何とも微笑ましい。見惚れてしまわないようにと米へと視線を向ければ、フーガの手に望乃が米を載せた。今日はめいっぱい、一緒ににぎにぎしましょうね!
「力加減、難しいですね」
 ぎゅっぎゅっと米を握りながら『深緑魔法少女』リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)が眉を寄せた。力を入れすぎると米が潰れてベタッとするし、あまり握らないとボロボロ崩れてしまう。
「ゴリョウ様、ゴリョウ様、手の形はあっていますか?」
 指を曲げて三角にして『あたたかな声』ニル(p3p009185)が問えば、ゴリョウがサムズアップ。
「ちょっとくらい形が崩れちゃったって、美味しければ問題ないわよね♪」
 そう言ってジルーシャは、丸く米を握る。大きくなりすぎないよう、ちょうど良いサイズになるよう気をつけて。
「ジルーシャ様のは何になるのですか?」
「これはね、紫陽花よ」
 桜でんぶや赤シソパウダーで色を付け、花形に小さく切った蒲鉾と、その真ん中にあられをマヨネーズでくっつければ完成!
「ニルも同じの作ってもいいですか?」
 以前雨泽と食べた菓子を思い出し、ニルも作りたいと口にすれば「勿論よ」と返ってきて、ふたりで沢山の紫陽花を咲かせていく。庭の紫陽花にも負けないくらい、たくさんの味彩を。
「あつ、あつ……」
「……祝音君大丈夫? もう少し冷ましてからにぎる?」
「うん……大丈夫。手をお水で冷やしたら、またにぎれるよ」
 お姉ちゃんのヤーガが案じるが、祝音は大丈夫と微笑んで頑張る。空気を混ぜて少し冷まして、ツナマヨとおかか、ウィンナーと卵焼き……小さいけれど沢山のおにぎりを。
「懐かしいね」
 ヤーガが言った。
「祝音のおにぎり、家で食べてたおにぎりだね」
 滅多に遠出が出来ない祝音のために、お家ピクニックっておにぎりを作った日もあったよねとヤーガが優しく笑っていた。
「おにぎりって色々ある……するんだね」
「そうだね。チックは握ったことある?」
 うんと返ってきた言葉に、そうなんだと雨泽が笑った。
 綺麗に握るのは難しかったけれど、『美味しい』と言ってもらえて嬉しかった記憶がチックにはある。ご飯を作ると、食べた人は美味しいと喜んでくれる。だから頑張って覚えたいと思うし、食べてもらいたいなと思う。
「雨泽……おれがにぎったのも、食べる……してくれる?」
「じゃあ交換する?」
「……いいの?」
「小さく握る自信がないんだけどね」
 ご飯にワカメを混ぜながらチラリと雨泽の手元を見れば、確かに大きなおにぎりが握られている――し、言った端から「包むのに米が足りない」と足している。ぐるりと皆の手元へと視線を向けてみても、誰よりも大きい。体の大きなゴリョウだって、彼の手からしたら小さなおにぎりを生み出しているというのに。
(……ひとつでお腹いっぱい、なる……しそう)
 でも食べたいなと思うから、頑張ろうとチックは思った。
「リディアのは何おにぎり?」
 自分の大きなおにぎりと皆の小さなおにぎりを見比べた雨泽が、小さいけれども形の良い三角を作って行っているリディアの手を覗き込む。
「これは梅干しです!」
 梅干しが好きなのだと微笑むリディアに、身体に良いもんなとゴリョウも笑った。
「あとは鮭、おかか、昆布……色々と作っていますよ」
 周囲を見渡せばお花型だったり猫型だったりと一風変わったおにぎりが多かったから、オーソドックスなおにぎりの方が少ないかも知れない。大皿に並べたおにぎりは、列ごとに味が違うのだそうだ。
「ニルのおにぎりは小さいね」
「はい。雨泽様がいろいろ食べられるように、ニルは小さめのをたくさん作ります」
「……僕も皆用の小さいのを作ろうかな」
 ジルーシャは赤紫の紫陽花だったから、雨泽はピンクの桜。ニルもと並んで作り出せば、皿に花が咲いていく。
「桜でんぶは……桜の粉? ではない?」
「なんだろう。甘いけど……ゴリョウせんせー」
 料理のことは、大抵ゴリョウが解るという認識だ。
「ありゃあ白身魚だな」
「へー、魚」
 白身魚をほぐして酒と砂糖で味付けし、食紅で着色した佃煮の仲間である。
「アラ、お魚なのね。それなら猫も好きかしら?」
 丸いおにぎりに猫耳を着けたジルーシャが、口をピンクにしてあげましょうと桜でんぶをちょんとつけた。
「じゃーん、どうかしら! よかったら味見して頂戴な、雨泽」
「食べるのが勿体ないね」
 醤油を垂らしたぶち模様の三毛猫に、海苔で包んだ黒猫。海苔やチーズで違う表情を作ったニルも、どれも可愛いですよと微笑んだ。
 各自好きなタイミングで握るのをやめたり、好きに食べてしまっていいから、皆より先にお米と向き合っていた雨泽はお腹すいたと味見をしていく。
「三毛猫におかかを混ぜても美味しそう」
「それ、いいわね♪」
「雨泽様、こちらもどうぞ」
「これも可愛いね」
「中身はしぐれ煮です」
「アラ、ニルのおにぎりも可愛いじゃない♪ ね、ね、アタシにも作り方を教えてくれない?」
 薄焼きの卵焼きで来るんだヒヨコさん。しぐれ煮は生姜をしっかりと効かせている。
 いっしょに作りましょうとジルーシャに微笑んで、けれどもニルの視線はおにぎりを頬張る雨泽を追いかけた。
「ニルのおにぎり、おいしいですか?」
 そわそわと見守れば「美味しい」と言葉が返って、ニルは嬉しくなる。いっぱい食べてほしいから、もっと作ろうと頬を紅潮させた。
「晴さまはおにぎりはお得意でしょうか……大きなおててをしていらっしゃいます、し」
 自分の小さな手と見比べたメイメイが晴明へと告げれば、「ああ」と言葉が返った。
「おにぎりを作るのは得意だ。幼い頃に霞帝が不格好な握り飯をくれてな、あの人に握らねばと努力した事がある」
 小さな手で大きなおにぎりを握るのは大変だが、逆は気をつければそうではない。狡いだろうかと晴明が目元を綻ばせて米を握れば、メイメイはその表情こそが狡いと思った。このひとに美味しいと言ってもらいたくなる。
 美味しいと感じて貰えるものを。そう思うのは料理上達への第一歩だ。
 手で直接米を握るおにぎりは、尚更のことだろう。
 ひとつひとつ愛情を込めて、握る。誰かの『おいしい』を想像して――。


(……フーガと手を繋ぐ時の力加減が良さそう、かも?)
 ぎゅっぎゅっと握っていく望乃の前には、たくさんのおにぎりが作られて行っている。まんまるおにぎり、三角おにぎり、俵形おにぎり……俵型はいろんなことが出来そうだ。
「フーガ、見て下さい」
「ん……、あ、うさぎさんか!」
「こんなふうにも出来ますよ」
 海苔はへたりとしてしまうからチーズの耳を生やしたうさぎさん。
 それから鮭を載せて小さなおにぎりの手足や耳をつけたクマさん。
「可愛すぎて食べるのに困るな……へへ」
「ふふーん!」
 可愛いおにぎりの前に綻ぶあなたの方が可愛いけど!

●もぐもぐたいむ
 大きなお皿や小さなお皿。そこにたくさんの形も違えば味も異なるおにぎりが並んだ。
「この一際大きいのは雨泽のね」
「おおきい、みゃー」
「大きいのは正義じゃない?」
「皆でシェアするのなら小さい方が良いですね」
「一個でお腹いっぱい、なる……しそう」
「……それがいいのに」
 ちゃんと小さいのもニルと作りました! と桜でんぶの桜おにぎりと薄焼き卵のひよこさんを指さし訴える。因みに大きいおにぎりは、明太子と卵焼きと昆布と鮭と唐揚げを混ざらないように握り、おかかをまぶした後に醤油をつけた海苔で包んだ爆弾おにぎりだ。「男の子の考えるおにぎりって感じ」と零したジルーシャに「君も男の子でしょ」とひとつ押し付け、ゴリョウも大きいから食べれるよねと押し付けた。
「気に入ったのがあればおかわりも作るから遠慮しないで食ってくんな!」
 ゴリョウが作ったのは、料理人らしく一味も違うものばかり。
「僕これ好き。あーでも、ねぎ味噌の焼きおにぎりとかも食べたくなっちゃうなー」
 揚げた塩むすびに大根おろしといり汁をかけた和風おこげ雑炊を口にした雨泽が次のリクエストもする。最初のリクエストの肉巻きおにぎりもぺろりと食べて、お土産分も所望したばかりだ。
「うーん、どれもおいしい」
 他にも釜揚げシラスの洋風アヒージョ風おにぎりに、中華風チャーシューおにぎりに、ガパオ風おにぎりもあって、ゴリョウのいとこのノエルが美味しそうに頬張っている。……似ていないが、血縁関係だ。ファントムナイト時の彼の姿を覚えていた雨泽は疑っては居ないけれど。
「ゴリョウ様のおにぎり、すごいのです!」
「うふふ、どれも美味しいわー♪」
 精霊たちにも分けてあげるジルーシャの隣で、ニルもニコニコとおにぎりを頬張った。みんなの『おいしい』笑顔が溢れていて、ニルにも『おいしい』を言ってくれて、とても嬉しい。
「お花型のおにぎりに、猫さんや動物型のおにぎり……可愛いね」
 おにぎりの可愛いお顔をジッと見すぎると食べづらくなりそうだから、その前に、ぱくりと祝音はおにぎりを食べる。色んな種類が食べれるように消費はヤーガとヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)にも手伝ってもらって、雨泽の大きなおにぎりも頑張って頬張った。
「ヨゾラさんのはお星さま」
「そうだよー」
 僕らしいでしょと笑えば、これも可愛いみゃーと祝音が笑う。星型を握るのは大変だけれど頑張ったのだと振る舞えば、皆すごいねとヨゾラの皿へと手を伸ばした。
「おにぎりはシンプルな料理だと思っていました」
 基本的には米と塩と具、それから海苔。けれども一手間も二手間もかければ違った姿を見せてくれる。皆でにぎやかに食べるおにぎりはまるでお祭りのようなのも楽しくて、リディアは食べすぎてしまいそうだと腹ごなしの散歩へと庭へと降りていく。
「雨泽……おれ、縁側で食べる、したい」
 皆とおにぎりを食べている雨泽を誘うのは欲張りかなとも思ったけれど、チックがしたいことを口にすれば雨泽は「いいね、紫陽花見ながら食べよっか」と一緒に着いてきてくれる。
「チックの、玉子が入ってる」
「うん。炒り玉子……入れる、したよ」
 指についた米粒をぺろりと舐め取る雨泽の横顔を見てから、雨泽作の大きなおにぎりを頬張った。皆で作って、皆と食べるおにぎり。大切な友人と過ごす、優しい時間。それが特別で幸せな事だと一層強く思えるのは、烙印の期間を経たからかもしれない。
(……嬉しい気持ちでいっぱいな筈、なのに。どうして、胸がぎゅっとするんだろう)
「チック? やっぱり量が多すぎた? 多かったら無理しないで残して」
 俯いたことに気がついた雨泽が問いかけて、チックはううんと首を振った。
「今度、お弁当におにぎり……詰めて。出かける、してみるの……どう、かな?」
 考え事をしていただけだと誤魔化して。
 その提案に「いいね」と笑った雨泽は、山とかかなぁなんて零していた。
「ふふ、フーガの大きな手で握ったおにぎりは、わたしが作ったものよりも大きくて食べ応えがありますね」
「おいらのも、美味しい? ……へへ、ありがとう」
 縁側に座って足をぶらり。
 望乃の作った可愛いおにぎりと、フーガが作った普通の形のおにぎり。米の量も形も違うけれど、どちらも『食べてくれる相手』への愛情はめいっぱい。
 紫陽花を眺めながらのおにぎりは、また一層美味しく感じられた。
「ふふー、晴さまの作ったおにぎりも、美味しい、です」
 縁側に晴明と腰掛けたメイメイも、おにぎりを幸せそうに頬張った。メイメイが握ったものよりも大きいけれど、彼が努力したと言っていたとおり、ふっくらと握られてとても美味しい。
(わたしの作った分は、どうだったかな……)
 やっぱり、気になってしまう。ぴぴぴと耳を震わせてからそろりと見上げれば、最後に指へ残った米を舐め取る晴明と目があって――悪戯が見つかったような穏やかなその笑みにまた『ずるい』を覚えてしまう。

「うーん、もうお腹いっぱいですぅ、むにゃむにゃ」
 お腹が膨れて庭の散歩をしていたリディアがいつの間にか眠っていた。
 最初に気付いたジルーシャがしいっと指を立てながら雨泽に報告して、お昼寝の邪魔をしないようにしようねと皆で笑いあった。
 ひとりひとり、やっぱり自由にごちそうさまをして思い思いに過ごし、食べきれなかった分は分けっ子して持ち帰り――だが、ゴリョウはお土産用を作ってとリクエストをされて厨に引き返した。
「お持ち帰りもできて、うれしいです」
 みんながおいしいと言っていたおにぎりを、帰ったらだいすきなひとたちに差し入れたい。晴明も御所の皆へと差し入れをするようで、一緒ですねとニルは笑った。
「また、一緒にごはん、作りましょう、ね。晴さま」
「ああ、次は何を作ろうか?」
 知っている料理でも、知らない料理でも。
 皆で作って、皆で食べれば――きっと美味しい。
 『また今度』を考えるひとときも楽しく、イレギュラーズたちはくすくすと笑い合いながら持ち帰り用のおにぎりを包むのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

おにぎりおいしいやったー!
ごちそうさまでした!

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