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シナリオ詳細

<廃滅の海色>海の平和を護るため

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●竜宮城よりの依頼
「この海底が廃滅病におかされるなんて最悪ですわ! 史上最大の事件ですわ!?」
 あたまを抑えてうわーと叫ぶお嬢様風バニー。その名をテティシア・ネーレー。通称くいーんめんてん。
 静寂の青の海の底に存在した竜宮城にて様々な用途に使用される精霊めんてんちゃんの女王にして神霊である。言い方を選ぶなら、竜宮城の守護神的存在と言っても過言では……ない、きがする。
「ですが、私達自身にできることはあまりないように思われますが……」
 そう答えたのはバー『ヴィージア』のマスター、アレクサンダー・スターミュージー。 その低くダンディな声色とすらりとした立ち振る舞いで女性に人気のイケメンである。ただし頭はサンマだが。
 そのサンマフェイスでちらりと視線を向けたのはもう一人のイケメン。アレクサンダーとは別の意味で女性に人気の『男性版竜宮嬢』ソーリス・オルトゥス。
 クラブ『the play』のオーナー兼店長兼ナンバーワンバニーボーイを務める彼は、どこか憂鬱そうに、しかしどこか艶めかしくはあと息をついた。
「そうだね。『神の国』のことを知ったからといって、直接飛び込んで解決できる問題じゃあない。やっぱり、彼らに頼むしかないのかな」
 何かにつけて依頼を飛ばしてしまうのは心苦しいね、と苦笑するソーリス。
 アレクサンダーは全くですと首を振ったが、優しい声で続けた。
「ですが、あの方々ほど世界を救うに相応しい方はいません」
「その通り、ですわ! さあそうと決まれば依頼書を作るんですわ! 作るんですわ!」
 紙とペンを! と叫ぶテティシア。めんてんたちが慌ただしく動く光景に、残る二人は笑顔を見合わせたのだった。

●シレンツィオ海中バトル
「また、変わった組み合わせになりましたね……?」
 シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)は依頼書を手に集まった面々の顔ぶれを眺めた。
 アレクサンダーからの推薦を得たのはシフォリィ。バーの常連客で、過去に彼の個人的な依頼にも応えた経験から馴染みが深く信頼されているからだろう。
「知らない間柄というわけではないはずですけれど」
 リディア・T・レオンハート(p3p008325)も苦笑してそれに答える。
 彼女を指名したのはテティシアだ。竜宮城で起きたあの大事件の中で意気投合し、なんだか深く親しくなった間柄なのである。
 一緒に絵柄の揃った具合のバニースーツで並んで写真に写ったのはいい思い出だ。
「一応、竜宮城繋がりということか」
 アーマデル・アル・アマル(p3p008599)が依頼書を畳んでポケットへと入れた。
 彼を指名したのはソーリス。彼から『バニーボーイやろうよ』と熱心に誘われ結果としてめっちゃやりまくることになったので、この中では一番付き合いの深い指名相手ということになるだろうか。
「まあとにかく、依頼内容の確認をしよう。確か、『神の国』の排除だったな?」

 『神の国』。
 それは天義で猛威を振るった異空間。冠位魔種ルストの権能によって作り出されたというそれは、放置すれば『帳』をおろし現実の街をリンバスシティへと上書きされてしまうという。
 いわば神の国とは帳の種であり、放置すればそこに内包された、彼らが主張するところの『あるべき世界』に上書きされてしまうのである。
「その世界は廃滅病に満たされた海。竜宮城の民は溶けて崩れ、そうでない者はアルバニアを崇拝する怪物と成り果てる……と。地獄ですね」
 リディアの感想ももっともだと、シフォリィは頷いて見せる。
「場所は……海中ですね。『神の国』が海中で再現されるのは少し珍しいですね」
「竜宮城を標的にしたからでしょう。あれは海底都市ですから」
 リディアとシフォリィは頷き合い、アーマデルも納得だとばかりに頷く。
「敵は半魚人型のモンスター『フォアレスター』が群れ単位……ボス級のワールドイーター『ミメーシス』が一体か。敵戦力の詳細が分かっていないのは不安だが、この戦力ならなんとかなるだろう」
 彼らは再び頷き合い、それぞれの準備に入るのだった。
 海の平和を護るため。皆の明日を守るために。

GMコメント

 海の平和を護るため、竜宮城からの依頼で『神の国』を滅ぼしに出発します。

・『神の国』とは?
 ルストの権能によって異空間に作られた「あるべき世界」です。例えばローレットによって魔種が倒されていなかった世界や、絶望の青が踏破されていない世界などでしょう。
 天義にできたその異空間からワープする形で、海洋に発生したいくつもの『神の国』にもアクセスできるようになりました。
 そもそもなぜ海洋にできたのかといえば、聖遺物や聖痕を刻んだワールドイーターなどをばらまくことで世界じゅうに神の国を作り出せるようになってしまったからであるようです。
 ……といった細かいことを全部すっとばして結論だけ言うと、この状態を放置すると竜宮城は部分的に廃滅病に飲まれて滅びてしまいます。そうなるまえに、この『神の国』を破壊するのです。

●海中戦闘
 ここでの戦闘は海中で行われます。
 飛行戦闘と類似したペナルティをしており、水中呼吸や水泳といったスキルによってこれを軽減できます。
 また、竜宮城から『水中呼吸(弱)』相当のアイテムを借りることもできるため、呼吸が出来なくなるということはないでしょう。

※また、ここでは竜宮幣から交換できる携行品アイテムが使用できるものとします

●エネミー
・フォアレスター
 半魚人型の怪物たち。
 彼らは水中銃や銛といった武器を用いこちらに襲いかかってきます。
 とにかく数が沢山おり、こちらが範囲攻撃を使うことを察して散開しながら攻撃をしかけてくるでしょう。
 敵を引き寄せて一網打尽にしたり、離れた敵を個別に狩ったりといった役割分担ができると効率的に倒せるはずです。

・ミメーシス
 この領域を維持しているワールドイーターです。聖痕が刻まれており、こいつを倒す事で『神の国』を破壊することができます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <廃滅の海色>海の平和を護るため完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年06月06日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
バルガル・ミフィスト(p3p007978)
シャドウウォーカー
リディア・T・レオンハート(p3p008325)
勇往邁進
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
レイン・レイン(p3p010586)
玉響
カトルカール(p3p010944)
苦い

リプレイ

●バニーと作戦会議
 カランとグラスの中で転がる氷。
 ドリンクに口をつけた『灰想繰切』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は、やけに密着してくるソーリスをチラリと見た。
「今回は……バニーボーイはしなくていいんだよな」
「え、したかった?」
「しない。しないぞ」
 わざわざ念を押すアーマデル。そして、コホンと咳払いをした。
「しかし、神の国……か。リンバス・シティは見たことがあるが、竜宮城があの状態になるのは許容できないな」
 これでも案じているんだ、と言外に言って目を伏せる。
 コレに関してできるのは、それこそ戦う事だけだ。だが他にあるとしたら?
 ――などと考える一方、『酔狂者』バルガル・ミフィスト(p3p007978)が液体の入ったグラスをちょいっと翳してみせる。
 仕事前はアルコールを入れない主義なのか、それとも気を利かせられたのかはわからないが中身は果実で味をつけたソーダ水である。
「全くまた海が荒れるのは嫌なんですけどねぇ……特に竜宮城がまた荒らされるのは、ですねぇ。
 折角バニーの方々が多数いる場だってのに。反吐を撒き散らす相手に容赦は不要ですので」
 今度もギタギタにしてやりますよといわんばかりに目の奥でぎらりと光を灯すバルガル。
 その隣で『玉響』レイン・レイン(p3p010586)は炭酸飲料にちびちびと口をつけていた。
「竜宮城は……都会だから……狙われやすいのかもね……」
 といいつつ、ちびちびするのに夢中なようだ。
 終わったらまた飲ませて貰おう、なんて考えながら。
 同じようにグラスを傾ける『勇往邁進』リディア・T・レオンハート(p3p008325)と友に、『白銀の戦乙女』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)が皆を振り返った。
「それでは、作戦会議の続きといきましょうか。ある程度は話は固まっていますし……」
 そう言って自分とレイン、そして『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)の顔イラストを描いたミルクキャップを机に並べる。その周囲には煮干しが数個置かれた。
「私達三人がフォアレスターの集団を抑えます。数は不明とのことですが……領域まるごと占領しておいて数匹ということはないでしょう。かなりの持久戦になると思います。そのための準備をしておいてください」
「おう、まかせとけ! またこいつらと殴り合う時が来るたぁなぁ!」
 ゴリョウは豪快に笑うと、グラスの中身を飲み干してから手元の肉団子をパクパクといった。
「まあ、相手がかなりの集団だった場合、素直に分断させてくれるとは思えん。最初は俺たちも相手させられることになるだろう。多少はケチらす準備をしておかないとな」
 『波濤の盾』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)が顎を撫でながらテーブル上の図を見つめる。
 そして自分を含め他のメンバーを描いたミルクキャップを並べ、ゴリョウの肉団子を一個奪って隣に置いた。
「で、残る俺たちがミメーシスの対応ってことか。詳細が分かってないのが未だに不安だが、これだけメンバーを割いておけば大丈夫だろう」
「だな! もしフォアレスター側がヤバくなったら支援に回るぞ。一番の支援は能率付与だよな、やっぱ」
 『苦い』カトルカール(p3p010944)がチェリーを口に含んでもぐもぐとやりながら呟く。
「海の中にまで作れるのかよ神の国ってやつは。冗談じゃないぞ。
 シレンツィオ・リゾートは僕の担当(シマ)だし、シレンツィオと近い竜宮城も僕の担当みたいなものだ。
 廃滅病なんて蔓延させてたまるかよ!」
 その気持ちは皆同じだ。『廃滅病なんて蔓延させてたまるかよ!』である。
 話し合うべきことはもう充分に済んだとばかりに、全員は立ち上がる。
 テティシアとアレクサンダーが上品に礼をし、出口へと案内した。
「それでは皆様」
「ご武運を――」


 空があった。
 どこまでも広い、青、青、青。
 見下ろせば海があって、それは青空を映している。
 自分は自由落下のように落ちていく。しかし恐怖はない。不安もない。
 知っているのだ。これが、偽物の海だって。
 ざぷんという音と共に海中へと沈むカトルカール。
 竜宮イルカのアロードが素早く泳いでくると、その背びれに捕まって素早くカトルカールは騎乗した。
 竜宮イルカは海中での騎乗行動を可能とする優秀な騎乗生物だ。レインとバルガルも用意があったらしく、泳いできた竜宮イルカへと騎乗する。
 敵の気配は探らなくてもすぐにわかった。透き通る海のずっと向こうから迫る魚群の姿。否、半魚人型モンスター『フォアレスター』の群れだ。
 それも、数えるのが嫌になるくらい大量に。
「これはこれは。もしや無限に沸いて出ているのでは?」
 バルガルは冗談めかして良いながら懐から小ぶりのナイフを取り出した。続く鎖がまるで意志を持ったように彼の腕にぐるぐると巻き付き盾となる。
 その判断は正しかったようで、巻き付いた鎖がぱきんと弾丸を弾く。フォアレスターのもつ水中銃による射撃だろう。
 当然一発だけではない。群れによる雨のような弾幕がすぐに叩き込まれる。
「ここで油を売ってちゃあミメーシスのもとにいつまでもたどり着けねえ。突っ込め!」
 ゴリョウは全身を覆う装甲の背部よりスクリュを起動させると、真っ先にフォアレスターの集団へと突進した。
 そう、シレンツィオを守る戦いでも幾度となく使用した水戦特化型駆動大青鎧『牡丹・海戦』の本領発揮である。
「かかってきやがれ駄魚ども! この豚さんの輝きを恐れねぇならなぁ!」
 自らを砲弾に例えたかの如き突進はフォアレスター一体を押しつぶし、そこから放つ『招惹誘導』の眼光が鎧の奥からギラリと光った。
 周囲のフォアレスターたちは目の色を変え、ゴリョウの頑強な鎧を殴り始める。その有様は獲物に群がるピラニアのごとしだ。
 しかしかかったのは全てのフォアレスターではない。影響範囲外にあった者や、抵抗に成功した者たちが迫る。
「イワシの群れみたい……」
 レインはそんな風につぶやきつつ、フォアレスターの集団へと突進。まずは仲間が通るための道を開かなければならない。引きつけはその後でも充分だ。
 竜宮イルカの機動性能によって俊敏に泳ぎ回るレインは、まるで光る海月がそうするように微光の奇跡を残しながら魔法を発動させる。
 ピリッと一瞬水中に走った紫電が、そのまま広範囲に向けて伸びていった。
 そもそもの魔力が圧倒的に高いレインである。彼女の電撃を受ければ常人は即座に意識を持って行かれるだろう。これで『焼き殺す』わけではないあたりがレインらしさといったところである。
「レイン。アンタの燃費がいい方がこっちとしても助かるからな、頼りにしてるぞ」
 そんなレインにカトルカールが『ソリッド・シナジー』の術をかけてやった。
 こくんと頷くレイン。カトルカールはあとは任せたとばかりに、彼女の開いてくれた活路を竜宮イルカでリディアたちと共に突っ切っていく。

「こっちの勝利条件はミメーシスをぶちのめすこと。ってことは……相手としてはミメーシスは逃がそうとするよな」
 アーマデルはドルフィンキックで水中を器用に進みながら、海底に存在する古代遺跡のようなエリアまでやってきていた。
 並ぶ石柱の一部は倒れ、それを盾にするような形でフォアレスターがこちらに水中銃を乱射してくる。
 彼らの水中銃は長いパイプの先端に赤いひらひらのついたライフルめいた形状をしていた。射撃することによって仕込まれた小さな槍状の物体が発射されるいわゆるスピアガンである。
 そのためリロード速度は遅いものの、数が凄まじいため全てを避けきることはやはり難しい。
「なら――」
 アーマデルは蛇銃剣アルファルドを突き出し、発砲。コイン状の散弾が散らばり、その一部はフォアレスターの顔面に激しくめり込む。
 広範囲に散った射撃は牽制となり、その間にアーマデルが彼らの間を突っ切っていく。
 追い詰められたのを察したのだろう。巨大な海月めいた怪物が物陰から飛び出し、激しく水流を噴き出すと逃走を始めた。
「逃げてくれるのは、ある意味ありがたいですね」
 シフォリィが横を泳ぎながら言うと、エイヴァンがその心は? と問い返す。
「フォアレスターが盾になりにくいです」
「なるほど、確かに」
 無限に沸いてくるフォアレスターが盾になったらこちらが疲弊しきって終わりだ。相手の臆病さに助けられたといったところだろうか。
 シフォリィは、行かせまいと腕を掴んでくるフォアレスターをその腕ごと剣で切り落とし、『フルーレ・ド・ノアールネージュ』を突きの構えにとったままバタ足でミメーシスを追いかけた。
「さて、足止めはそこまでだ。俺たちは行かせて貰うぜ」
 エイヴァンはぐるりと反転すると、追ってくるフォアレスターめがけて斧砲『白狂濤』を叩きつけた。
 巨斧の内部に艦砲の機構が組込み込まれた海洋技術工房の逸品である。それが彼の腕力によって豪快に叩き込まれ、そして至近距離で砲撃が爆発する。
 追いすがったフォアレスターが爆発四散し、エイヴァンはその勢いも借りつつミメーシスを追いかけ始めた。


 海底遺跡の間を縫うように、そして高速で泳いでいく巨大海月などそうそう見ることはない。
 エイヴァンは牆壁『摧波熊』の機能を利用しサーフボードにでも乗るような姿勢でミメーシスを追跡していた。
「俺の『凛乎』が効かない? どういう理屈だか知らないが、フォアレスターと混じらないなら問題無いな。だがもしこっちに戻ってくるようなら――うお!?」
 エイヴァンはミメーシスが急にターンをかけこちらにもどってきたことに一瞬だけ驚きつつも、乗っていた盾を素早く翳して防御姿勢へとシフト。そんなエイヴァンに……ミメーシスは巨大な斧でもって殴りかかった。
「『斧』だと!?」
 インパクトの瞬間に激しい砲撃を撃ち込むさまはエイヴァンの斧砲『白狂濤』そっくりだ。そして盾の隙間から様子を見ると、相手はエイヴァンそっくりのクマの形に変形していた。
「ミメーシス(模倣)――そういうことか!」
 どおりで相手の能力が不明だったわけだ。こちらの能力をコピーする性質があるらしい。
「気をつけろ、こいつは俺の『凛乎』を見てる!」
 言うが早いか、ミメーシスはゴオッと咆哮を放ってきた。
 全員即座に防御姿勢。【怒り】の効果に抵抗する。
 バルガルは首を振り、そして改めて腕から鎖を解放。生きた蛇の如く操りミメーシスの腕へと巻き付けた。途端、ミメーシスはグレーのスーツと眼鏡を着用した半透明な物体へと変化。腕から鎖を伸ばすとバルガルの腕へと巻き付ける。
「これも模倣しますか。しかしこれはカロン・アンテノーラが符で作り出していた鎖。形だけ真似した程度では――」
 フッと笑い、バルガルは鎖を引っ張りながら相手との距離を詰める。
 相手も同じく鎖を引いて距離を詰めにかかったことで急速に互いは激突。
 バルガルは竜宮イルカから飛び出すと宙返りからの踵落としを叩き込んだ。
 鉄板の仕込まれた靴底がミメーシスの顔面を破壊。と同時にミメーシスの腕から斧が生え、バルガルの腕に食い込んだ。
 直撃――かと思われた瞬間にカトルカールがバルガルの服を引っ張って無理矢理に威力を殺す。
 カトルカールは拳を振りかざすとミメーシスへと殴りかかった。
 すぐにミメーシスとの殴り合い状態に入るが、イモータリティの能力を解放することでカトルカールの身体は即座に修復されていく。
 どうやら相手も同じように自己再生を行っているようだが――。
「燃費勝負ならこっちが勝つんだ」
 『光芒パルティーレ』を発動。カトルカールは自らのエネルギーを急速に回復させると、相手との殴り合いに打ち勝った。
「アーマデル、バルガル。トドメは頼むぞ」
 言うが早いかアーマデルは蛇鞭剣ダナブトゥバンをチェーンモードで展開。石の柱にひっかける形でミメーシスの腕に剣の先端を絡みつけると、バルガルも逆側の柱をフックに腕へと鎖を絡みつける。
 バルガルが『やわらかい思い出』を発動させると同時にアーマデルが突進。
「これでも愛着がないわけじゃあ、ないんでな」
 ソーリスに言われてバニーボーイをやらされた思い出が脳裏をよぎり、その時に感じた悪くない心の揺らぎが胸に去来する。あの場所には感謝があった。幸せがあった。一見してふざけた歓楽街だが、皆真剣に、そして楽しく生きていた。
 それをなかったことになんか、させない。
 蛇銃剣アルファルドの刀身とバルガルのナイフが、ミメーシスを切り裂いて行く。

 ゴリョウたちの役目はシンプルだ。
 ミメーシスを倒すまでの時間、フォアレスターたちを引きつけておけば良い。
「にしても、この数は厄介だな」
 ゴリョウは見回した。半魚人のフォアレスターは無尽蔵ではと思えるほど大量に湧き、そして群れを成して自分達の回りをぐるぐると回っている。きっと外側から見れば巨大な銀の球体にでも見えることだろう。
 そんなフォアレスターたちが一斉に水中銃を発射。
「任せて……」
 レインは折りたたんでいた傘に力を込めると、その氷面に淡くブルーの微光を灯した。
 そのまま傘を大きく振れば、微光は小さな海月の群れとなって広がりゴリョウたちの身体へとぺちぺちと張り付いていく。そして彼らの身体に刺さった小さな槍を引き抜き、出血を止め毒の作用を吸収していく。
「おお、こいつぁいい!」
 ゴリョウはぶははと笑うと改めて火焔盾『炎蕪焚』を構えた。炊飯器の蓋を翳したように見えるが、前方に備えた噴出口からは高温スチームを放出する。
「こいつをくらいな!」
 噴出された黒色のスチームがフォアレスターたちを包み込み、彼らは目の色を変え、水中銃を装備した者でさえ直接殴りかかってくる。
 数が数だけに捌くのは一苦労なのだが――。
「相手から集まってくれるなら、好都合です」
 シフォリィは『フルーレ・ド・ノアールネージュ』を一度ぴんと垂直に構えると、その場で豪快な斬撃を繰り出した。
 斬撃は青白い刀身の光を延長させいくつも放たれ、広範囲にわたって破壊をもたらす。
 ゴリョウやレインまで巻き込むような斬撃だったが、どういう理屈か二人だけをスルーして群がったフォアレスターたちだけを切り裂いて行く。
「これをくり返していけば……」
 シフォリィは剣を再び構えてフォアレスターの群れの引きつけを待つ……が、どうやらその必要は無かったらしい。
 周囲の風景にぴきぴきと亀裂が走ったかと思うと、突然フォアレスターたちが泡となって消えていく。
「どうやら、皆さんはうまくやったようですね」
 ふう、とシフォリィは息をついたのだった。


 『神の国』は滅び去り、またひとつ竜宮城の平和は守られた。
「これは奢りです。この街の皆からの」
 アレクサンダーの経営するバーのカウンター席に八人は並び、それぞれドリンクを差し出されている。
 エイヴァンとゴリョウは礼を言うと、それぞれグラスに入ったそれをちびちびと飲み始める。度数の強いアルコールなのだろうか。彼らの表情には渋い魅力がある。
 一方でシフォリィやバルガルやリディアはゆっくり楽しむつもりのようで、淡く色づいたカクテルを揺らしながら楽しんでいた。
「こういう場所は……残っていて、ほしいですね」
 サイダーをおいしそうに飲むレイン。同じくサイダーを出されていたカトルカールとアーマデルが肩をすくめ、その通りだと呟いた。
 竜宮城の眠らぬ夜は、今日も平和に過ぎていく。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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